海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20170528

明星によせて 11(東方神起・パラレル長編)
シフトの終了時刻が来ると、ユンホは急いで帰り支度を始めた。
そうしながらチャンミンのこれまでのようすを思い浮かべて、そう言えばと思った。
彼がやってくるのはいつもだいたい同じ時間帯だった。夕刻。多くの勤め人にしては早い位置に、時計の短針がその身を置いている頃、その縦に長い体が背に夕日を浴びて入り口に立つのだった。だからチャンミンを思うと、いつもユンホはその体のかたちが黒く脳裏に浮かび上がった。
煙草休憩の際、真冬であっても外に出て喫煙スペースに赴き、ダウンコートをかき抱くように腕組みをして空を見上げると、薄い黄色の混じった濃くなり始めた青の上に、粒のような小さく光る星があった。吐息が煙のせいか寒さのせいか色をたたえて消えていく先にその輝きを目にすることがあり、しばらくして施設に戻るとチャンミンの訪問が知らされるということが何度かあった。
また逆に、チャンミンを見送ったあと、その下がった肩の線を見つめながら灰皿の前に立つと、紫と橙に別れた上空の中、それを見付けることもあった。ユンホの尖った指先は凍りつくようだったが、チャンミンの目の中に浮かぶようなその光を目に留めると、まるで四葉のクローバーを探し当てたかのような高揚感が体に満ちた。運がいい、そんな気がした。
軽く走って約束した駅前の居酒屋へ向かった。
別れる間際、明日がどちらも休みであると分かって互いがほっとした表情を浮かべた。どちらも、それぞれの負担になりたくないという思いがあった。そんなことをするには、ふたりの心はまだふわふわと安定しないものであったから。
話をしてみたい。
そういった純粋な欲求は、まるで小学生に戻ったかのようだとユンホは思った。○○くーん、あーそーぼ、と大声を放ちながら玄関に立った幼い時分の己の姿が目に浮かぶ。
こうした思いというのはそれほど珍しく、えがたいものであるとユンホは直感して長かった。仲良くなれるかというのには正直自信はなかった。シムを思い浮かべても、自分では分不相応であるとユンホは感じた。ユンホは分不相応という言葉を知らなかったため、俺じゃあ駄目かな、という呟きが心の内ではされていたが。
だが生来明るい性分の、楽観的でもあるユンホは、可能性にかける気満々であった。たとえうまくいかずとも、やれるだけやってみよう。それがユンホの生き方だった。
扉を開くと、カウンターにチャンミンはいた。他の連中とまったく違う等身を持て余すように折って、座った彼はユンホの立てた音に振り向いた。絵のような光景に、一瞬ユンホは立ち尽くした。



つづく


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20170529

明星によせて 12(東方神起・パラレル長編)
隣に座ったユンホはカウンターの上を見て、チャンミンがビールを頼んでいたことを知った。
「じゃあ、俺もビール」
 そう店員に告げると、はい、ビールーという声が厨房を渡った。
冷えた背の高いグラスに白と金で別れた酒が満たされ、ユンホの元にやって来た。
「それじゃ」
 遅れてすみません、という言葉と共に、グラスを掲げた。それにチャンミンは応じながら、いいえと答え、横長の口を更に伸ばした。
 ひといきに半分ほど減らす。酒がすごく好きなわけではないが、走ったために喉が渇いていた。首の内側をころころと転がるように落ちていく泡を感じて、目を閉じたユンホは恍惚となった。
 はあーと吐息を漏らし、唇を拭う。
「すみません、汗臭くないですか」
 こんなこと男に言うのもなと思いつつ、だがユンホは聞いてしまっていた。
「うーん、少し?」
「ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。僕もすごく汗っかきなんです。だから人のことは言えません」
「そう見えないですね」
「夏に会ってないからですよ」
 目を細くして微笑むチャンミンは、そうしながらつまみを口の間に入れた。豆腐とキムチを合えたもののようだった。
「何か他に頼みましたか?」
「えーと、サラダと、チヂミを」
「チゲは?」
「食べましょう」
 注文を済ませると、ユンホは肩をすぼめるようにしてちびちびとグラスの中身を口に運びながらチャンミンに話しかけた。
「今日、応じてくれて嬉しかったです。いきなりだったのに」
 すぐ横のチャンミンもユンホ自身も、小柄だなどとはとても言えない体を誇っており、狭いカウンターでは動くと簡単に互いにぶつかりそうになった。
「いえ、お誘いくださってありがとうございました。光栄です」
 チャンミンは台に肘を突いて肩越しにユンホを見た。もう、今までのようにとにかく目を逸らすということはなく、アルコールも手伝ったためか目尻が垂れるように柔らかくなったそれが、さりげなくではあったがユンホに向けられていた。
 途端ユンホは自分の顔の状態が気になった。汗はかいているし、この時間だともうかなり髭も伸びてきている。何も鏡など見ずに来てしまったが、もう少し気を付ければよかったと悔いた。そしてその後悔がもたげたのとほとんど同時に、今は別にデートに来ているわけではないのだと思い直す。相手はただ珍しいくらい綺麗な男ってだけだと、自分に言い聞かせた。



つづく





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20170530

明星によせて 13(東方神起・パラレル長編)
「目、悪いんですね」
 おそらく鞄にしまったのだろう眼鏡の存在を思い出し、ユンホは聞いた。
「ああ、はい。でも近視じゃないんです」
「え?」
「あ、えーと、遠くが見えづらいんじゃないんです」
 足元に置いた仕事用鞄を漁り、チャンミンは先程ユンホの手の中にあった銀縁の眼鏡を耳にかけた。大きな目がより大きく、迫るようにユンホに向かった。
「分かります?」
「えー…と」
「これ、遠視用なんです」
 元から人より目立つ、目自体も、黒目も大きいそこは、常以上に広がり、いっそ珍獣に似た趣さえたたえていた。
 外したチャンミンにユンホは言った。
「老眼鏡と同じような眼鏡ですか?」
 苦笑したチャンミンは返す。
「そうです。仕事に要るんです、これ」
 鞄に再びしまう。
そのようすを眺めてユンホはずっと気になっていたことを口にした。
「シムさん」
「はい」
「仕事って…」
「ああ」
 名刺渡してませんでしたね、と言いながら、胸ポケットにチャンミンは手を入れた。
「どうぞ」
 両手で受け取ったそこには、製薬会社の名前と、チャンミンの役職と名前が連なっていた。
「…薬の?」
「そうなんです。多分うちの薬を使ってらっしゃる入居者の方、いらっしゃると思います」
 照れくさそうな表情でビールを干したチャンミンは、厨房に向かって同じもの、とグラスを持ち上げた。そして上着を脱ぎ、椅子の背にかける。
「あっつ」
 薄く香水の香りがした。
いちばん上のボタンを外し、ネクタイを緩めると更に香り、ユンホは意外な感に打たれた。
「作ってるんですか、薬」
 前を向いてそう問うと、だいぶリラックスした姿になったチャンミンは答えた。
「はい、研究してます。だからだいたいずっと会社の研究施設にいます」
「そうなんですか」
「顕微鏡とか見てますよ」
 お代わりがやって来る。首肯して受け取るチャンミンがまた、その麦の酒を気持ちよさげに体の中に落としていくのをユンホは左側面で感じていた。



つづく




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20170531

明星によせて 14(東方神起・パラレル長編)
チャンミンのピッチは早かった。
強いらしく、どんどんビールの杯を空けた。
対してユンホは弱かったが、飲まないではいられず、甘いサワーを頼み、会話するごとに口に運んだ。
 仕事の詳しい話はきっとちんぷんかんぷんだろうと思ったユンホだったが、それでもこれは聞きたいと顔を向けた。
「シムさん、来る時間って…、いっつもだいたい同じくらいですけど、会社…あれくらいに終わられることがあるんですか」
 呂律が怪しくなっていたが、肘を突いて半目になったユンホはなんとか質問を口にした。
「あ、伺う時間ですか。そう、いつも、行くときって、薬についての会議と言いますか、進捗の報告や相談なんかを行う際に出掛けることがありまして、その帰りに寄らせていただいてるんです。で、そのまま直帰してるんです」
「おうち…お近くなんですよね…?」
「祖父に聞きました?」
「はい」
「そうなんです。駅の逆側です。すぐですよ、ここから」
「お勤め先も…?」
「はい。もっと奥の方ですけど。祖父、ここのホームに決めたの、きっとそれもあると思います。何も言いませんけど」
 そう言ってほわっと笑った。もともと色の濃い皮膚がいっそう濃くなっており、膨れた頬の高いところがつやつやと照明を受けて照っていた。
「そうですかあ…」
「チョンさんは?」
「俺…俺は、二駅隣に住んでます」
「近いんですね」
「はい」
 半ば隠れた目をチャンミンのそれと合わせていたが、大きな瞳がふいに離れてするすると自分の体の上を這ったのがぼんやり分かった。よく見る、何かを我慢しているような、眉と口角の上がった顔をしている。
「チョンさんの私服って初めて見ましたけど」
「え?…はあ」
「そういう感じなんですね」
 こらえきれないというようにチャンミンは大きな笑みをこしらえユンホに尋ねた。
へ?と首を傾げるユンホの体は、真っ赤な上に雷のようなマークが斜めに走るシャツと、黒いハーフパンツに包まれていた。
何をどう答えたか、ユンホは覚えていない。そしてそのまま、記憶は途切れた。



つづく




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20170601

明星によせて 15(東方神起・パラレル長編)
煙草を我慢していたせいかもしれない。
何故だかユンホは、チャンミンが嫌がるかもしれないと思い、喫煙席であったのに火をつけなかった。
思った以上に緊張をしたし、疲れもあった。いつもよりずっと強烈に酔いがユンホを襲った。
なんとなく、トイレに立ったり、会計を結局割り勘にしたことは覚えている。店を出たことも。
飲み出した時間から推して、まだまったく深夜などという時間帯ではなかった。だが足元がおぼつかないほど体が揺れていた感覚が確かにあった。腕や背や胸に、しっかりとした手がときどき全身がかしいだ瞬間触れていたのがおぼろげながら記憶にある。
「チョンさん」
 困ったようすの声音、だがどこか笑いを含んでいるようなそれを耳にしたような気もする。返事をしたはずだとユンホは思う。だがまともなものではなかったかもしれない。
ふと目を開けると、蛍光灯の下、集合住宅らしき建物の見知らぬ部屋に自分が仰向けに寝ていることがユンホに分かった。それも柔らかな、布団だろうと感じられるものの上に。
額に手を置いて、顔の熱さを感じ、自分の体内でくぷくぷと音がするように酒が回っているのに浸った。灯りがまぶしく、目を細めると何かで翳って力を緩めた。
「チョンさん?」
 その体のラインは見覚えがあった。いつもの肩の四角さはないが、斜めの線や、木の幹のようにすっとした首の感じも、同じだった。
「起きますか?」
 ユンホを覗き込むようにしてくる顔の中身は、やはりよく見えなかった。
「何か飲みます?」
 今まで聴いた中で、いちばんソフトな彼の声だとユンホは思いながら頭に浮かんだことを呟いた。
「…スーツ…」
「え?」
「スーツ…じゃない…」
 そして再び目をつむった。けふ、と咳をひとつ漏らして。
「そうですね」
 チャンミンが離れた気配を感じ、薄目を開けた。横顔を仰ぐ。先程よりも表情が分かる。何を考えているのか分からないそれの下は、思ったとおり黒い上下のスウェットだった。
「チョンさんも私服ですしね」 
乾いた笑いがかすかに聴こえた。
それに安心したユンホはまぶたを下ろすと、再度深い眠りの中へ落ちた。



つづく



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20170602

明星によせて 16(東方神起・パラレル長編)
軽い吐き気がした。かなりみずから頑張らないと戻すことはない、というくらいのそれで、ユンホは明るみ始めた部屋の中、目を瞬いた。
頭の痛みもあった。それでも動けないというほどでなく、ゆらゆらと中で脳がたゆたうような感覚の頭を抱えつつ、起き上がった。
筋張った手の下でベッドがきしんだ。ふっくりとした感触は、しかし知らない寝具のそれだ。
カーテンの隙間から漏れる光だけでユンホは辺りを見回した。1DKの、おそらくマンションの一室。ブルーグレーの世界は、何かとても自分から遠い感じがした。雑多なところがあまりなく、あちこちが整っている。そしてすぐそこのふたり掛けほどのソファの上の両端から、零れた大きな体のかけらが見えた。
少し伸びた毛先の、癖の付いた髪の毛と、スーツと同様、少々足りていない丈の部屋着とそこから覗く細いくるぶしと、男っぽいが、作りが綺麗な足を上半身を起こしたユンホはぼうっと見つめた。寝息が聴こえる。規則的で、穏やかで、すこやかな体を思わせるそれだった。
「やっちゃったな」
 こめかみを自分の片手で押さえつけ、目を閉じたユンホはあーあとひとりごちた。迷惑をかけた。それもひどい迷惑を。
頭痛も吐き気も、その自己嫌悪と後悔が彼を襲うとどこかに霧散した。もともと非常に丈夫なユンホは、こうした二日酔いでもそこまで参ることはなかった。ちょっと気分が悪いな、という程度で、過ごしていたらほとんど忘れてしまうのが常だった。
今、ユンホにとってはチャンミンにどう謝ろうかということだけがすべてであった。足をフローリングに下ろしながら、襟足あたりを執拗に引っ掻く。足のみを覆うタイプの小さな靴下もいつの間にか脱いでいたらしく、裸足の足の裏にぺとりとした感触を得、靴下どこだよ、という考えも混ぜてこれからどうするか逡巡した。その間もずっと、チャンミンの呼吸の音はユンホの鼓膜を優しく揺らし続けた。
とりあえず立ち上がり、申し訳ないとは思ったが手洗いを借りた。そこも、キッチンも、少し目に映った浴室も、そして戻ってきたベッドやソファ、本棚、テレビ、パソコンが置かれたかなり広めな部屋も、ある程度掃除が行き届いていた。カーテンを閉じていても入り込んでくる陽光で、ほとんどのものをしっかりと判断できるようになっていた。
ユンホは立った状態で、薄い毛布を被り、仰向けで寝ているチャンミンを見下ろした。ひどく幼い印象の寝顔で、子供や、童顔の女性を髣髴とさせた。大きなまぶたはぷっくりとささやかな山を形成し、鼻の先が白く照り、唇は真一文字だった。伸びた腕で自分の体をだらりと覆っている。手も爪が短く、丁寧な造作で、どこもかしこも神様が手をかけてこしらえたというような男だなと、ユンホは思った。



つづく



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20170603

明星によせて 17(東方神起・パラレル長編)
足音を忍ばせていたが、細身とは言えぬ180センチ超えの男の動きである。しかもユンホは繊細な動作が得手なタイプではなかった。出勤時に携帯する小さなショルダーバッグを忘れてはいないだろうかと床の上を歩きながら探していった。ぎ、ぎし、という音がし、それでも寝息が途切れることはなかったためほっとしていると、ソファと窓際に据えてあるこまごましたものの置かれた棚の間に、ソファに立てかけるようにして目当てのものが置いてあるのを見付け、思わず
「あった」
と小さくではあったが声に出し、ごそりとその表面をチャンミンのすぐ頭の下に擦りながら手に取った。
「ん」
 体を戻したユンホは、チャンミンの声らしきものを耳が捉えたと思ったと同時に下にある彼の姿に視線を移した。腕を頭に当てたチャンミンが、んーと、唸っていた。
 起こした。
ユンホはこのあとどう振舞うかということを決め切れていなかった。だからいっときとても焦った。しかし実際は、もしもっと時間があったとしても、対応についてどうするかなどおそらくユンホはなるようになれと考えるのをやめていただろう。このときも焦ったが結局その直後にまあいいやと腹をくくった。何はともあれ謝るしかない。
は、という息を吐いたと思ったらチャンミンの丸々とした瞳が現れた。寝起きでも確かにそれはよく光り、ユンホはすごいもんだなと感心した。鼻で呼吸しながら身じろぎもしないチャンミンを、斜め上から黙って俯瞰していた。
布と髪の擦れる音を立ててチャンミンは周囲に目を走らせた。よく動く眼球をユンホは見惚れるようにただ眺めた。そしてそのまま目が合った。瞬間チャンミンのそこはふわっと白い部分を広げた。



つづく


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20170604

明星によせて 18(東方神起・パラレル長編)
「わっ」
 突っ立った大男が自分を見下ろしているわけだから、その反応は当然だった。しかもプライベートでは昨夜が初めての接触であるわけで、寝起きのチャンミンが瞬時に身の危険を感じたと分かる表情と仕草をしても、ユンホはそりゃそうだよなと妙に納得するしかなかった。急いですみません、すみません、チョンです、と、両手をかざすようにして名乗った。
「あっ、…そうだった」
 二重が若干重たげに目に被っているチャンミンは、もしゃもしゃの頭で呟いた。ユンホはそのさまにくすりと唇の片側を上げた。
「ごめんなさい、起こしちゃって」笑っている場合ではないと気付きユンホは告げた。「それに昨日は、ほんっとうにすみません」
 頭を深々と下げ、そろそろと上げる。
上目で見ると、だいたい同じ高さに視線はあり、それが示す内容は、しょーがない人だな、であった。
「びっくりしましたよ。泥酔するんで」
 例の困ったようなはにかむような笑顔を作り、チャンミンは頭を混ぜた。もうユンホを見ておらず、キッチンを向いて話した。
「弱いんですね、酒。そうならそうと言えばいいのに」
 長い首に日光が当たり、盛り上がった部分と凹んだ部分に見事に分けていた。ユンホはそれを目にしつつ、またすみません、と謝った。
「電車に乗っても絶対寝過ごす感じだったんで、うちに来てもらいましたけど。寝れました?」
 立ったチャンミンは当然ながらユンホよりも目の位置が高いほどの長身だ。ユンホはソファにいた彼の顔やふるまいから何か勘違いをしていた気がすると思った。彼への態度を元に戻さなければと考えながら目をしばたき、顔を上げた。そこにいるのは見目いい、大人の、男だ。朝の光を受け、骨や筋肉が、服の下にあるというのに浮いているようによく分かる。人から見られるために生まれたような生き物は、本棚に並んだ薬学や医療、化学、美容、その他多くの理系の本を背景に、目を伏せて笑い、具合どうですかと聞いた。



つづく



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20170605

明星によせて 19(東方神起・パラレル長編)
平気である旨をチャンミンに告げると、それを受けてまた彼は笑った。
「頑丈なんですね」
 既にチャンミンはスリッパを履いてユンホからより遠ざかっていた。と思ったら、玄関からスリッパを持って来て、これよかったら、と言ってユンホの足元に置いた。
チャンミンのつむじを見ながらユンホはまたかすかに戸惑う。
「すみません」
「いいえ」
 視線は絡むことのないままチャンミンはキッチンに向かい、再びふたりの距離は離れた。
「腹減ってます?」
 やかんに水を注ぎながら大きな声でチャンミンは問うた。ざー、という水音を乗り越えるようにユンホは縦に長く口を開いた。
「あ、はい」
 まだ流れる水を眺めつつチャンミンは唇を横に広げて笑いを言葉に混ぜた。
「やっぱり?」
 蛇口を戻してやかんをコンロに置くと、火を灯した。小さなキッチンではあるが、使い込まれているのはユンホにも見て取れた。鍋をはじめとした調理器具がチャンミンの視線の先にたくさんぶら下がり、シンクやコンロはよく使うからこそのまっとうな使用感があった。
「料理するんですね」
 立ったまま肘の裏を掻きながらユンホは言った。自身がまったくしないことや、友人の料理などもあまり食べた経験がないことを思い、チャンミンといるとよく感じるカルチャーショックを再び得ていた。
「少しですけど」
 冷蔵庫を開けて中をとっくりと見つめ、検討しているらしいチャンミンが質問をユンホに投げた。
「なんか食べられないものとかないですか」
「え?」
「アレルギーとか、もしくは嫌いとか」
 扉の縁からこちらを覗く目。
言われたことが示していることをなかなか脳が納得せず、しかしそれでも返事はしなければと呆けた顔でユンホは答えた。
「ないです」
「何よりです」
 手にいくつかの食材を掴むとチャンミンは台にそれをごとごとと置いた。
「えっと」
「洗面所とか使いますか?」
「あ、っと、さっきトイレ借りました、すみません」
「当然ですよ。歯ブラシとかストックあるんであとで使ってもいいですよ」
「え」
「クライアントとかから結構ごっそりもらったりするんです。全然気にしなくていいですよ」
「あ、そうなんですか」
「と言うか、シャワーとか浴びますか?」
「え」
「別にいいですよ、使って。多分メシそれまでにできてるんで」
「はあ」
「髭剃りもそういうわけでかなりあるんです。むしろもらってくれると助かります」
 指の腹で顎を撫でると、ユンホの濃いそれはもうはっきりと痛いくらいに存在を主張していた。


つづく


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20170606

明星によせて 20(東方神起・パラレル長編)
チャンミンは話しながらどんどん作業を進めていた。スープらしきものや、炒め物の準備をしているとユンホにも分かった。
「タオル、棚見ればすぐ分かりますよ。どうぞ」
 長い脚の膝を片方少し折るようにしてチャンミンは包丁を用い、ユンホをまるで見ずに促した。
 催眠術にかかったようにユンホはそれなら風呂に入らなきゃなと思った。歯ブラシも、髭剃りも、タオルも使わなければと。それはもう義務のようにすら感じられた。
持ったままだった鞄を、ベッド脇の小振りなテーブルの足元に置いた。するとまたそれにぶつかり、上に置いたものがぶるりと揺れた。セルフレームの黒縁眼鏡、単行本と文庫本一冊ずつ、シンプルなデザインのベッドランプ。こういう眼鏡もかけるんだと、体を起こしながらユンホは思った。
最低限のものが、だがおそらくこれがいいとチャンミンが吟味しただろうものが置かれた浴室でユンホは頭から湯を浴びた。後ろのドアの向こうから通る声で呼びかけられる。
「歯ブラシと髭剃り、ここに置いときますんで」
 はあい、と言いながらユンホは混乱した。
ここ最近女性とは関係を持っていなかった。彼女は一年以上前にふられてから、ずっといない。
だがどの付き合いを持った女性よりも、ごく自然で気の利いたもてなしのしかたをチャンミンはしてくれていた。しかしそれは女性的であるというのとは全然、違った。
体をソープで洗い流し、洗濯機に置かれた新品の剃刀を取って髭を当たりながらユンホは考えた。
寝顔や置きぬけの顔も、単に女の子っぽいと感じたとか、そういうことではなかった。端的に言えば無防備さを受け取ったのだ。それは誰にも訪れる瞬間で、その、人の隙間をユンホは久しぶりに目の当たりにした印象があった。しかも気の合う友人とはとてもまだ言えない、それどころか今後もそう言えるかどうかは非常に心もとない相手であるチャンミンの、ずっと知り合いではあったが、濃いそれであるなどということのなかった彼の、気の抜けたよそいきでない部分は、ユンホにこの人ともっと仲良くなりたいという気持ちを改めて起こさせるものがあった。そしてそういった面とはまた正反対とも言える、気が回り、しかし表面上の、ただ少し社会人として関係があるからというようなものでない、プライベートであるというニュアンスを含んだ、だが意思の強さやコントロール能力をも感じさせる会話の運びを行う面に、ユンホはまた違った感慨を持って、やはり彼への興味を強くさせられていた。
泡を落としつつ、ユンホはこうしたことをもっと取り留めなく、きちんと言語化せずふわふわとそれこそうたかたのように脳に浮かべては消した。
上がると洗面台で歯も磨いた。湯でけむりがちではあったが、その靄がかった鏡に向かったユンホは、二日酔いだとは信じられぬほどつやつやとした茶色い肌をしている自分を見つめた。
脱衣所兼洗面所を出ると食事のにおいがした。


つづく


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  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

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