海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20171001

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 6」
企画2

企画概要(↓クリックすると記事に飛びます)
ブログ『夢の続き』EXO小説企画「EXOTICA」

企画参加者記事一覧(本日更新分↓クリックすると記事に飛びます)
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・6」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 6」


脱力して椅子に腰掛けた状態でいたミンソクに、突如ドア向こうで大きな音や声が響き出したのが届いた。
何事かと立って扉に向かうと、それが開き、血管が稲妻のように白に走った目がミンソク自身のものと対峙した。
「病院に行く」
 すぐさまミンソクは事態を察し、ひとことも発さずにただ彼に従った。
すさまじい速度で車は走った。そのあまりの速さと正確さから、これはこの車が購入時の状態ではなく、きっと紳士の改良が加えられているとミンソクは確信した。耳が詰まり、風景はにじんだ画として飛びすさぶ。しっかと取っ手を両手で握っていると、瞬間移動したようにもう目の前は病院だった。
走って女性の部屋へと向かった。あわや転びそうになる紳士に思わず腕を伸ばしながら、ミンソクは彼と共に一目散に駆け抜けた。
処置室では容態の急変した女性への対応に大勢の人間が追われていた。その部屋に入れるわけもなく、ガラス越しに彼女を見つめながら、紳士は息を荒くしてぶるぶると震えていた。大きな彼が振動すると、地震が起きているかのような錯覚がミンソクを襲い、緊張と不安も手伝い、強いめまいと吐き気を催した。
ミンソクにも覚えのある心肺蘇生と思しき処置が、医師たちの手により繰り返し行われていた。太い指と大きな掌を透明な戸に貼り付け、紳士は口を開けて大粒の涙をはたはたと零していた。ひー、ひー、という呼吸の音がミンソクの耳にこだました。増水した川の流れのような音が自身の胸から鳴り響き、目を閉じたままの女性の顔から目が離せなかった。あの大きな、豊潤な瞳がミンソクには見えていた。あのような薄いまぶたの皮膚ではなく、その奥の、枯れることのない湧き水のような魅惑的な輝きを持った双眸が。
短いような長いような時間が経った。
医師や看護師が全員ゆっくりと手を下ろした。
壁一枚を隔てたミンソクと紳士にも、その意味するところは伝わった。紳士は膝が揺れるのが抑えられないらしく、腰を曲げて壁面にしがみつくようになっていた。ミンソクは室内と彼に交互に視線を送り、息を荒げて立ち竦んだ。
出て来たうちのひとりから、紳士はぼそぼそと彼女の死を告げられた。顔中を自身から出た液体で濡らした彼は、こくこくとかすかに頷くことしかできなかった。部屋を片付け出て行こうとする人々の中、ふらつきながら入って行った紳士は女性の手を取り、顔を顔に寄せた。空いた手を額に置き、撫でるように何度も擦る。紳士の涙は溢れては毛を濡らし、唸るような声がその隙間から零れ落ちた。ミンソクは同じところに立ち尽くしていた。握り締めた手をまさしく氷にして、紳士に負けぬほど涙をひたすら流していた。
気を遣った看護師が、彼らに茶を淹れ、傍に置いておいてくれた。だがそのふたつの器の中身は、飲まれることなく冷えていった。
日が傾いてきた頃、なんとか女性から離れた紳士は、手続きを済ませると彼女をすぐに連れ帰ることにし、その手配をし始めた。
ミンソクは彼の行動を見つめるだけしかできなかったが、彼女が搬送のため呼んだ大型車に乗せられると、紳士の目はミンソクを探し、帰ろうと嗄れた声で囁かれた。
縦に並んだ車は夕日を浴びて静かに走った。
 なんでこんなときにこれほどまでに美しい夕焼けが見られるのだろうとミンソクはぼんやり思った。車窓の向こうは甘やかな色彩の洪水で、そこに向かって自分たちは旅に出ているかのようなおかしな感覚に陥っていた。
帰り着くと、葬儀社の人々の手により家の中へと女性は運び込まれた。
紳士もミンソクも、住んでいた頃使っていた部屋に彼女が戻り、そのベッドに横たえられるのをひたすらに見守っていた。
それから速やかに、女性に死に化粧が施され始めた。
その道の一流の人々が手早く、しかし丁寧に彼女の姿を整えていく間、紳士は座って瞬き少なくそのようすを見つめ続け、ミンソクは音も立てずに部屋を出た。
 階下に降りると、従僕が目を真っ赤に染め、顔を腫らして仕事に勤しむ姿が見えた。彼は食卓の準備をしていたが、そう言えば朝から何も食べていなかったとそれでミンソクは思い出した。まるで空腹を感じていなかったのだ。
書斎に入り、昼間座っていた椅子にまた腰を下ろし、生前の彼女の顔、声、言葉、ぬくもり、そして死に顔が脳内を揺らすのに任せた。膝の上で組んだ手は、血が流れているなどと到底信じられぬほど氷の塊と化していた。
〝冷たくて気持ちいい″
 彼女はこの手に触れそう言ったのだ。
ミンソクの頬を再び涙が伝った。
がんがんと頭痛のする頭を背凭れに預け、じっと時が過ぎるのを待った。
人が玄関を出て行く物音が静寂を破った。ミンソクは足に力を入れた。
ホールに向かうと従僕が葬儀社の車を見送ったところであった。
「終わったんですか」
「そうだよ」
 背後から声がし、どきりとしたミンソクは勢いよく振り向いた。
魂を吸い取られたようなうつろな顔をした紳士が、ミンソクと従僕に告げた。
「葬式は行わない」
 ふたりから返事が返る前に更に紳士は続けた。
「のちに追悼式はやろうと思う。だが通夜や葬式はしない」
「かしこまりました」
 従僕がそう答えると、紳士はミンソクの背に手を伸ばし、軽く押すようにして歩きながら優しく言った。
「今日は、ほんとうにすまなかった」
 顔を上げて目を合わせたミンソクに、紳士は小声で話した。
「きみにも、辛い思いをさせてしまった。ただでさえ、もう十分にそういう経験をさせていたのに…。私の態度もひどいものだった。いい歳をしてきみへの配慮がまったくなっていなかった。許して欲しい」
「いいえ」
「腹は空いているかな?」
「…それがまったく…」
「そうか。何か食べた方がいいんだが。スープだけでも飲んで、早く休みなさい。とにかく疲れを少しでも取るんだ」
「はい、ありがとうございます」
「礼などいいんだ、さあ…」
 食堂に促され、紳士がミンソクに何か温かい飲み物を出すように従僕に告げ、弱弱しい微笑みをこしらえてお休みを言って出て行くと、ミンソクは席について出されるものを大人しく待った。
従僕の出してくれたクリームスープは温かく、全身に染み渡った。
少しずつ飲み、器を空にすると、席を立って従僕に礼を言った。風呂を勧められたがそれを断り、昨日あてがわれた寝室に向かった。
支度をしてすぐにベッドに入ったが、なかなか寝付くことは叶わなかった。灯りの消えた部屋の中、やはりまた彼女の生きていた頃と死んでからの姿がミンソクを訪れ、そのことが絶え間なく彼の目を熱くし、手を冷やした。
 夜明けも近い時刻、ミンソクはようやく眠りに落ち、目を覚ましたのは朝がもう終わるという頃だった。
洗面所に付いている小さなシャワールームに入り簡単に体を洗うと、身支度を整えて部屋に戻った。そこには当たり前のように従僕の置いた着替えがあった。今日は暗緑色のスーツで、袖を通してみると胸元に四角い、黒のピンが刺してあるのをミンソクは認めた。これの意味するところを想像しながら下に降り、紳士を探して歩き回った。それを従僕に見られ、用向きを尋ねられて居場所を知りたい旨話しながら彼の胸にもミンソクの胸にあるものと同じものが光っていることから、自分の予想が当たっているらしいことを確かめていると、まず食事を済ませて、その後彼の元に従僕と共に来るようにと紳士が話していたという答えが返って来た。
変わらず食欲はなかったが、体力が落ちたら困ると常の如く懸命に食べた。従僕が気を使ってより消化によいものを作ってくれたことで、だいぶ楽に皿の上のものを胃の腑に収められ、従僕の思慮深さと気配りに改めて心を打たれた。
彼に思ったことを率直に伝えると、軽い照れ笑いのようなものを浮かべてあとに付いてくるようミンソクに告げた。紳士のところへ行くのだった。
窓から覗く空は雲の多いそれだった。
そのためこれまでの日中より邸内は薄暗く、屋敷全体が喪に服しているような沈んだ雰囲気があった。
通ったことのない通路を行くと、辿り着いたのは巨大な両開きの扉の付いた部屋だった。
ドアを控えめに従僕が叩くと、足音がして紳士が姿を現した。
生ける屍といった態の彼は、それでもミンソクを見ておはようと言いながら笑みを顔に乗せた。
部屋に招じ入れられると、そこは天井が遥か遠い、広大な場所であること、そしてあらゆる材質のあらゆる装置が所狭しと置かれた研究室かつ作業室であることが一目で分かった。何かを知らせる音が絶えずあちこちで鳴り渡り、大量の操作画面には数字や記号がひっきりなしにちらついている。
首を伸ばしてその空間に見入るミンソクに、紳士は眠れたかい?と尋ねた。
「はい、遅く起きてすみません」
「そんなことはないよ。朝食は摂ったんだね?」
「はい、ご馳走様でした」
 すべてのカーテンがしっかりと引かれ、部屋は室内光で照らされているのみであった。白に近いくっきりとした照明が天井全体を覆い、それがふたりに降り落ちる中、自身の机の傍に紳士はミンソクを呼んだ。
椅子に腰掛けた紳士は、ミンソクに近くの椅子を指して座るよう示した。
足を揃えて腰を下ろすと、光の鈍ったふたつの紫がミンソクの黒目と相対した。
「装置なんだがね」瞬きを挟み、紳士は言った。「完成したと思うんだよ。使ってみないと分からないが、理論上は使用可能であるはずだ」
 帰還という望みがほんとうに叶えられるなど、どこかで諦めかけていたミンソクは、顔の穴という穴を広げて紳士に向かった。
「失敗に終わる可能性も高いが、…実際きみは元の世界から来たのだから…」
 こう言いながら、知性と意欲をその紫色の中に瞬間生き生きと閃かせたのをミンソクは見逃さなかった。情熱の一片がまだ彼の中でくすぶっているという、幻のような真実だった。
「試したいです」
 喉に絡んだような頓狂な声が出たことを恥ずかしく感じながら、ミンソクは尋ねた。
「ああ、試そう」目を細めて小皺を作り、笑った紳士は言った。「たくさんの人がきみを待っているよ」
「ほんとうに…ありがとうございます」
 こんなときにという言葉は控えた。女性の不幸を仄めかす言葉を自分からは極力口にしたくないと思いながら、ミンソクは紳士の胸に刺さった追悼の意の印を見つめた。
「今夜早速使ってみよう」
 強いまなざしをミンソクに投げながら紳士は言った。
「あの子の家のきみが初めに訪れた場所で、同じ時刻に起動させよう」
「はい」
「決まりだ」
 そう言うと再び目尻を畳んで紳士は微笑み、視線を落とすと、両の手先を弄びながら迷うように黙った。
 ミンソクが訝しく思い小首をひねってしばし待つと、今度は先程の目の色とまた違うそれを現し紳士は真剣にミンソクに対した。
「頼みがあるんだ」



つづく



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EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 7・終」 | MARRY ME!(EXOTICA5日目)

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