海の底、森の奥

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20170930

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 5」
企画2

企画概要(↓クリックすると記事に飛びます)
ブログ『夢の続き』EXO小説企画「EXOTICA」

参加者記事一覧(本日更新分↓クリックすると記事に飛びます)
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・5」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 5」
「緑黄色野菜」EXOTICA:青の洞窟 「cruel spiral arousal 《3》」


道中ミンソクは気になり続けていた女性について紳士に問うた。
「それについては」前方を向いたまま紳士は言った。「後にしよう。もう、すぐに署には着いてしまうから。ただ彼女と私の関係だけ先に言っておくと、私はあの子の後見人という立場なんだ」
 後見人、という単語のとき、ミンソクに一瞥を紳士は投げた。それ以外、そしてその後ずっと、車が止まるまで視線が前に向けられた状態なのは変わらなかった。
紳士と別れると署内に足を踏み入れ、ミンソクは用向きを受付で語った。
椅子に腰掛け待つ間、この建物はどうやらとても古そうだと首をあちこちに向けながらミンソクは印象をまとめた。この世界全体がそういう傾向があるが、古いものの中に先鋭的なものが実は縦横無尽に潜んでおり、つまりそれはなんとかして元のその文化的な遺産を壊さないようにという努力を一致してしているためらしいのだった。
数分ののちに若い刑事がひとりミンソクを訪れ、部屋に案内した。
そこにはミンソクの世界で言うパソコンにあたる精密機器が大量に備えられ、その中に収められた膨大な資料の中から彼の証言に該当する犯罪者情報とその写真を抜き出した状態にしてあるのでそれを検めて欲しいと説明された。
 使用方法を解説しながら、刑事はこの文書管理システムには髭の紳士が関わっているとミンソクに話した。作成は主に彼の手によるものと聞き、病院で刑事らに影響力を持っているらしいと感じたことをそう言えばと思い出した。
そして言われた通りに操作しながら、ミンソクは記憶と画面の内容とを照合していった。
本来備えた生真面目さとこの件への義務感から、周りで見守る者も驚くほどの集中力を持って休むことなくミンソクは作業を進めた。途中出されたコーヒーを飲み、コーヒーがあるのだなと感動したり(それになかなか美味であった)、ほんの少しだけ菓子を摘んだりしながら(脳の栄養補給にと頑張って飲み込んだ)、せっせと目と手を動かした。
日も暮れ、宵闇が近付き出した時分、ミンソクはこれと思う情報に行き当たった。
目と、耳の形が相当近く、何よりも三六〇度回転する映像を部分拡大してみると、耳の裏に黒い点が縦にふたつ並んでいるのが確認できた。
 そのことを待機していた刑事に教えると、少し待たされたあと、協力に対する謝礼と、もう帰ってもいい旨を伝えられ、ミンソクは入り口付近の待合所に戻った。
ほんとうは、捜査についてや起訴され有罪判決を受けた際の犯人の処罰についてなど、聞きたいことは山のようにあったが、ミンソクはその質問を喉の奥で押し留めていた。それはぎりぎりのところで押さえ込んでいるさまざまなものが決壊してしまうのを恐れていたためだと言えた。先刻見つけた犯人と確信するに足るあの男の顔や体、その名前がもう既にミンソクの網膜に焼き付いたようになっており、血の生臭さすら匂った。それに侵食されるのを食い止めるので精一杯であった。
渡された通信機を開き、ぷくりと突き出たボタンを押した。
コール音が小さく鳴ると、疲れの皮膚に現れた、血管の浮いた目をした紳士が現れた。
「終わりました」
「お疲れ様。さぞくたびれただろう。今から行くから待っていてくれ」
「分かりました、ありがとうございます」
 来たときにも座った椅子に陣取り、眼精疲労から目を閉じた。と、肩を掴まれた。仰向くとそこには紳士がいた。
「お待たせ。さあ、行こう」
 彼は常に時空を飛び越えているようだと思いながらミンソクがその後ろに続くと、もう外は色の減じた世界であった。
夕食を摂ろうと提案され、応じると紳士は車に情報を入れ込み、前部に座った彼とミンソクは無言のまま車が連れて行くところまで過ごした。
レストランに到着すると、ふたりは恭しく店の者に出迎えられた。紳士の行き着けなのだとそれで知れた。
おすすめを紳士から聞き、それに従って注文すると、警察での進捗をミンソクは語った。
犯人と思しき人間について言及すると、紳士の目の紫色が水底にあるかのようにゆらめいた。
しかし言葉としてはただ相槌を打った程度で、予想したよりも紳士が反応を示さないことをミンソクは怪訝に思ったが、彼も紳士も疲労の色が濃いのは明らかだったため、あれこれ考えるのをひとまずやめ、料理に手を付け始めるとほとんどまた言葉を交わすことはなくなった。
食事を終えようというとき、やっと紳士は口を開いた。
「このあと病院に行こうと思うが、きみも来るかい?」
 複雑な感情の入り混じった表情を顔に乗せた紳士を見ると、ミンソクの胸はきりきりと痛んだ。はい、是非、と答えると、髭に隠れた頬が軽く上がった。
まるで宙に浮いて走っているかのような経験のない心地と、この街の夜の、絹のような豊かな質感をきっと忘れることはないだろうとミンソクは病院への道々思った。隣に座る紳士のどこか野生的な体臭と、重いコロンの香りも同様だった。帰ることができるできないに関係なく、こうして過ごした夜が一生ミンソクの体に染み付くことはもう疑いようもなかった。
病院に入るとすぐ、担当医を呼び出して紳士は状態の説明を求めた。昼間ここを出るときと容態の変化はないということと、まだ面会を許可することは出来ないということを告げられ、かすかに肩を落とした紳士はそのまましかたなく引き下がった。
焦燥に駆られる彼を見てミンソクはどう声を掛けたものかと惑ったが、紳士はしっかりした口調で言った。
「きみを家まで送ろう。そして先に寝ててくれ。私はまた病院に戻るからね」
 家までの道のりはあっという間であった。
踵を返して車に再度乗り込む紳士の背後を迎えた従僕と共に送った。つややかな闇の中、風を受けて庭にある何本もの大木が声を上げていた。車の照明は精霊の影のように夜の底で溶けていった。
従僕のさりげないいざないでミンソクは歯磨きと入浴を済ませ(どこもかしこもこの屋敷は広いのだが、浴室は特別面積を取って贅沢にしつらえられており、ホテルの大浴場のような湯船もあった)、用意された着心地のいい下着とワンピース型の寝巻きを着込むと、来客用の寝室に連れて行かれた。
従僕の手際が見事としか言いようのないことを証明しているかのような部屋の清潔さであった。ふっくらと膨らんだ枕や香りのよいネンは、ミンソクを眠りへと急速に引き込んだ。記憶が曖昧なほどいつの間にか、彼はベッドに潜り込むと気を失ったように眠ってしまった。
カーテンが厚いために、ミンソクは目を覚ましたときまだ夜明け前なのだと思い込んだ。しかし違った。時計の作りはほぼここでも同じなのだが、ミンソクがそれを見遣るとすっかり日が昇っている時間であることが分かった。
その体には大きすぎるベッドからミンソクは這い出ると、重たいカーテンを引いた。途端強い光が部屋に満ちた。昨日同様晴天だった。どこかしらここに来てから夜に生きているような感じがするミンソクにとって、温かな日の光はこの世界にそぐわない気がして、なんとなく逆に薄ら寒さを覚えもした。
おはようございますという声が聞こえて振り向くと、数歩後ろに従僕が立っていた。仰天したミンソクがうわっと言うと、ひとこと謝り、だがすぐ何事もなかったかのように着替えを出して下に食事を準備しますと告げ、しずしずと彼は出て行った。
昨夜教えられた隣室の洗面所を使って顔を洗い、伸びた髭をこれはきっと髭剃り機だろうという機具を用いて剃ると、寝室に戻った。出されたものを見るとまた別の衣服を調達してくれたらしく、紳士の瞳の色を深く濃くしたようなそのスーツ一式に感嘆しながら身を包むと、鏡でさっとみずからを確かめ、髪を撫で付けて部屋を後にした。
一階の食堂に入ると、紳士が食卓についていた。静かに朝の挨拶を交わす。何も包み隠さぬ太陽光は紳士の目の落ちくぼみや髭の合間から除く皮膚の色の悪さを教えた。
憔悴の度合いの激しさにミンソクは衝撃を受け、言葉を探していると、先に紳士が声を発した。
「まだ彼女は起きないよ」
 感情を極力抑えた声音でそう言うと、パンとナンの中間のような小麦で出来た主食を紳士は口に入れた。
さんさんと降り注ぐ日は眩しいほどで、それを受けながらの朝食はしかし切ないものだった。強い悲しみと苦しみが足元を漂っているかのようで、紳士に劣らずミンソクも顔を青ざめさせていたが、いつもの如くほとんど丸呑みのようにして出されたものを食べ切った。
「コーヒーを飲まないか」
 食事を終え立ち上がった紳士がそう言うと、座っているミンソクは彼を見上げた。
「好きです、コーヒー」
「よかった」
 彼が食堂を出るあとにミンソクも続いた。
書斎の肘掛け椅子にそれぞれ座っていっとき待つと、従僕がやって来てコーヒーをふたりに手渡し、辞して行った。
芳しさに目を細めたミンソクの斜め横で、紳士はあらぬ方を見ていた。湯気の渦を前にして一点を見つめる紳士に何故か恐怖をミンソクは感じ、大丈夫ですか、と声を掛けた。
「ああ」
 顔を素早くミンソクに向け、表情を和らげると、カップを口に寄せて紳士は言った。
「あとでまた病院に行くよ」
「僕も、よければ僕も行きたいです」
 勢い込んで言うミンソクに、今度ははっきり笑顔を見せて紳士は黙った。
数秒ののち、茂みのような口元が分かれた。
「―――彼女のことを、話していなかったね」
 白目を広げたミンソクに、微笑みを絶やさぬまま紳士は続けた。
「あの子は私の弟の娘なんだよ。私の父の再婚相手―――要するに私の継母には男の連れ子がいて、それがあの子の親なんだ。つまり血の繋がりはないんだが、私にとっては姪に当たるんだよ。あの子の母親が遠い国の出でね―――出産の際に帰郷したのに夫である弟も付いて行って、あの子が産まれてからもしばらくそこにいたんだが、そこで内戦が始まってしまって、その際弟夫婦は爆撃で死に、あの子もひどい怪我を負ってしまった。―――体を、見ただろう?あの機械部分は、私が作ったんだよ。一命を取り留めたという連絡を受けた私は、かの国に飛んで行って容態が落ち着いてから連れて帰った。それから私はあの子の親代わりとなって、成長に合わせて何度も何度もあの子の体の一部を作った。あの子はこの家で育ったんだよ。数年前まで、きみの寝室の近くの部屋で寝起きし、私と生活を共にしていた。成年に達して遺産を継ぐと、ここを出てあの、―――事件の起きた家に越した。幼少時とんでもない災難に見舞われ、際限のない辛い快復運動に堪えてきたことなどおくびにも出さない、朗らかなおおらかな子で、人付き合いべたというわけではないのだがひとりを好んでよく家でひっそりと過ごしていた。きみも知っての通り、とても綺麗な若い娘だから、社交の場に出れば男が寄ってくるんだが、ほとんど相手にしていなかった。そんな中、あの子が少し前から誰かに付きまとわれているような気がすると教えてきた。具体的なことは何も起きていないのだが何かしらの気配を感じるとのことだった。私はここに来るか、防犯の設備を私自身に整えさせるかだと強く言ったんだが、あの子は少し考えると言って帰ってしまった。ただあの子が持っている携帯電話の他に、私に対してのみ緊急連絡手段として使用できるきみが使ってくれたあの機器を無理矢理渡しておいた。私はその受信機を肌身離さず持っているからと。それが数日前のことだ。私はあの子の家に設置する探知機や録画機や通報機を準備していて、事件のあった次の日、つまり昨日、ほんとうは押し掛けて行って有無を言わさず取り付けるつもりだった。それが―――その前に、ことは起きてしまったんだよ」
 気を抜くと脳裏に浮かぶあの夜の、あの部屋の光景がミンソクにまた襲い掛かった。実際の視界の中にいる紳士の生気のないさまも相まって、濃厚な死の匂いが立ち上り、コーヒーの香を退けると共にミンソクの手を冷やし、湯気がぱたと消え去った。
 紳士はもう、何も言えなくなってしまったようすで、大きな溜め息を吐くと、口を閉じ、また沈黙した。
穏やかな陽気の屋外から、鳥の鳴き声が時折届いた。巨木ばかりの庭の木に集まり鳥たちが会話を交わしているのを、ミンソクは目をすがめてなんとか見れぬものかと苦心した。知らぬうち、生を感じることを渇望していた。
おもむろに紳士が口調を変えて話し出し、ミンソクはそちらを向いた。
「前に話した装置だけどね」
 少しだけ目に力を込め、紫色を輝かせながら紳士はミンソクを見た。
「これから少しいじってみる。以前は仮定の話だったものが今では事実なのだから、きみの話に沿って改良しよう。それから一緒に病院に行こう。それまで好きに過ごしていてくれ」
 席を立った紳士は足早に部屋を出て行き、ミンソクは窓いっぱいに見える木々と再び相対していた。手に持ったカップの中身は完全に凍り付いており、ローテーブルにそっとミンソクはそれを置いた。



つづく



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