海の底、森の奥

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20170928

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 3」
企画2

企画概要(↓クリックすると記事に飛びます)
ブログ『夢の続き』EXO小説企画「EXOTICA」

参加者様記事一覧(本日更新分↓クリックすると記事に飛びます)
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・3」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 3」
「緑黄色野菜」EXOTICA:青の洞窟 「cruel spiral arousal 《2》」


少しの間黙したままだった紳士は、毛を分けるように口を開くと、またいっとき間を置き、次のように言った。
「きみが」一拍あった。「きみが来てくれて、ほんとうに嬉しく思います」
 目玉が落ちそうなほど、ミンソクはくぼんだ眼窩の皮膚の切れ目を大きく広げた。そして紳士と見つめ合うと、信じてくれるんですか、と囁くように聞いた。
「信じますよ。何故信じないと思うんです」
 眉を寄せて怪訝な表情をする男性に、慌てて手を振りつつミンソクは許しを乞うた。
「いえ、いえ、あなたは信じてくださるかもしれないとは思っていたんですけれど、やはり内容が内容ですので、とんだ嘘つきと思われる可能性もあるだろうなと…」
「何故?ありえることですよ。あなたの話に突拍子もないところなどまったくないではないですか」
「あ、そう、そうですか?僕、僕はもう、頭が変になったか夢を見ているかといったくらい、もう大混乱で…」
 きょときょとと目を揺らすミンソクの、また冷え切ってしまった手を取り、握ると、じっとそのさまを観察した紳士は、何かを解したようすをしながら落ち着いた声音で顔を寄せるようにしてまた語り掛けた。
「きみのいた世界では、こうしたことはまるで起きないんだろうね?」
「はい、はい、そうです。あの洞窟を通ってこんなところに出るなんてこと、ありえません」
「そうか。それではきみ、きみの手がとても冷たいことは気付いているね?」
「え?あ、…はい。すみません、冷えますよね」
 引こうとした手を両手で掴まれたまま引かれ、ゆっくりと紳士の片手の掌を見せられた。
「ごらんなさい」
 太い、ミルクチョコレートのような色をした指の先が、白くぼけたようになっていた。
視線をぶつからせると、つぶらな紫が射るようにミンソクのくっきりとした両の目を指した。
「これは、霜だよ」
 唇に隙間を作ったままミンソクは目で問うた。
「きみ、きみは、元いた世界で、握った相手の手を凍らせることができたかい?」
 鼓膜を通した言葉が脳の中でわんわんと舞った。
仕事上の人物設定。
ふざけて仲間内で持ち出したり、テレビなどでもネタとして話題にすることはあれど、特殊能力など本来持っているわけはない。そんなもの、売り出す際考えられたただの特徴付けに過ぎない。
―――凍らせる?
ミンソクは紳士の手を取り、白い部分に触れた。そして注意深く見た。確かにそれは紳士の言う通り、冬の朝植物の上に降りていたり、冷凍庫に張り付いたりしているあの霜に相違なかった。
え、え、と意味のない言葉を発するミンソクの肩を優しく掴み、紳士は言った。
「いいかい、この世界では、こうした能力を持った人間が稀にいるんだよ」
 怯えた獣をなんとかなだめようとするかのようにひとことひとことはっきり、そして柔らかく彼は告げた。
「そしてそれは皆知っている。知能指数や運動神経や音楽センスが飛び抜けて優秀だというのと同じことなんだ。そういう人たちならきみの世界にもいたろう?そもそも、きみの仕事の話からすると、きみ自身そういう能力も高い人間のようだしね。そうしたきみの突出した能力の中に、温度を極端に低下させられるというものも含まれていて、ここではそれも使えるようになったということだと思う。それはきっと、ここがそうした能力を開花できる世界であるからということなんだよ」
 手を自分の膝の上に戻すと、覗き込むように、首を落として視線を下げたミンソクに尚も言った。
「だから、私はきみの話が事実であると疑わないよ。それに誰が聞いても、そうしたことは起こりうると思うだろう。つまりそういう意味で、きみが居心地の悪さを感じることはないんだ。いろいろな要因が重なり、きみは自分の世界からこちらの世界に来てしまった。きみが驚きと恐れから混乱し、絶望しても当然だ。しかも来た途端」言葉を切った紳士は苦しげに唇を噛んだ。「―――あんな事態に、巻き込まれたわけだから。だがきみがいてくれたから、彼女はまだ生きてるんだ。ほんとうにありがとう。きみの悲劇が、私たちを救ってくれた」
「いえ、そんな」
「いや、きみがいなかったら彼女は―――。うん、間違いなくね。こんな思いをさせてしまい申し訳ない。だが私たちが感謝してもし切れないほどきみの存在は私たちを助けたということだけは分かって欲しい」
 息が苦しいとミンソクは思った。女性の裸体、肉と機械の混じった肢体から零れ出る血、血、血、傷口から垣間見えた内臓の照り。彼女と自分の、潤んだ瞳同士が世界でただそれだけしか存在しないかのように寄り添っていた。甘く低めの声で、慈愛に満ちたそれで、何よりもまず自分に感謝の言葉を投げ掛けてくれたことで、女性の、その顔から伝わってくる人柄の印象をいよいよ決定付けてくれていた。
あの人が誰かの手により死に至らしめられるかもしれない―――痛めつけられ、陵辱されて。
助けた?自分が彼女を?いや、もっと何かすべきことがあったのではないか、彼女をよりよい状態で病院に連れて行く方法が、何かしらあったのではないか。心のどこかで絶えずあったその自身への疑念が、紳士がこう言ってくれたことでかえってミンソクの眼前に浮かび上がるようになった。自分の今後ばかりを憂えていたように感じられ、羞恥と自己嫌悪から震えが起きた。確かに、知らぬところ、それも存在すら認知していなかったところに来てしまったらしいこと、それも覚えのなかった能力とやらまで携えて、このことは気が狂いそうな事態ではあったが、それでも彼女を襲った惨劇に比べたら一体なんだと言うのだろう。怪我ひとつ負わず、命の危険にさらされてもいない。帰ることができなかったらという恐怖は当然あるが、しかし生きてさえいれば、何かしらの希望は持てる。おそらく想像を絶するような目に遭い、ああした体で生きていた彼女に、更にあんな悪意が降り掛かる―――ミンソクは、とにかく彼女に申し訳がなかった。あの女性に対し、もう、自分が男性という性で、五体満足で生きているというだけで申し訳がなかった。叫び出したいような、走り回りながらめちゃくちゃに暴れ出したいような強烈な衝動がミンソクを覆った。
だがミンソクはそんなことはしなかった。ただ沈黙し、冷気から手の周りが白く紗が掛かったようになっているのをじっと見下ろしていた。
紳士はミンソクを見つめていた。虚ろな目に能力を発動させている両手をただ映しているだけというようすを、唇を引き結び―――髭のせいでそれを人が確かめることは叶わなかったが―――憂えていた。
「きみ」
 先程よりも力強く、紳士は言った。
「あまり案ずるな。まだ伝えていなかったが、私は研究と発明を生業としていてね」
 呆けた顔のミンソクが振り仰いだのを確認してから、紳士は話した。
「きみの語ってくれたような事象についても、長く考え続けてきたんだ。研究しながらそれに関する装置も多く作ってきた。だから、私はきみが帰る手助けをできるかもしれない」
 青白い頬と黒い目周りと充血した白目を向けながら、ミンソクは言われたことを反芻した。絶望と希望が渾然一体となって彼の体を巡り、何と答えていいのか分からなかった。
ミンソクは紳士を見据え、彼が情熱と意欲を内で沸き立たせているらしいことを知った。それがミンソクの心を多分に和ませた。
「私は、彼女の容態次第ともなるが、以前作った装置を可能な限り早く見直してみるからね。使えそうなら、試そう。そして、それと並行してなんだが―――」
 紫が白の中で浮いた。ぎらぎらと燃えるようになったそれは、紳士の中の抑えがたい、先述した欲求とまったく異質な望みを激しく訴えていた。
「きみはさっき、犯人を見たと言ったね」
「はい」
「どんな容貌だったか、詳しく教えてくれないか」
 肯定の返事を繰り返し、ミンソクは頭の中で窓辺に立った男を描き出しつつ、話した。
目の前にいるこの紳士もそうであるが、その男もスーツに似た服装をし、マントを身に着けていたこと(ここの男性の普段着なのだろう)。
頭頂部が丸く、つばが斜め横に張り出し、しかもその先が反り上がっている妙な形の帽子を被っていたこと。
薄暗い部屋で、街灯の方が明るかったため、逆光になって服も帽子も色は黒っぽいとしか言いようがなかったこと(だがグレーなどの明るい色ではないはずだとミンソクは付け足した)。
手袋をしており、逃げる際手を付いた窓枠にその手形がくっきりと残るほど血が付いていたことから、犯行時ずっとはめていたと思われること。
マントやスーツから浮き出ていた骨格や肉の付き方から、かなりの痩せ型と分かったこと。
目の色は多分、黒か茶であろうということ。
肌は紳士や女性よりは白いが、ミンソクよりはずっと黒いということ。
左耳の後ろに並んだほくろがあったこと。
「これくらいしか、分からないんです」
 すみません、と呟くと、顔中に憎悪を漲らせていた紳士は、はっとして、微笑をこしらえた。
「いや、きっと恐ろしく短い間だったろうに、ずいぶんたくさん覚えていてくれたんだね」
「そんなことないんですが…まるで映画を観ているようで(こちらに映画というものはあるのだろうかとミンソクは思いながら、しかしどうやら言語が変換できているから大丈夫だろうと判断した)…、印象がものすごく強かったんです」
「そうか、きみには珍しい装束や装飾ばかりなのだものな」
「はい。それに、これはきっとあとから警察の方たちに話さなければならないだろうっていう頭もあって…」
「そうだな。だいぶ遅れているが、そろそろそういった連中もここにやって来るだろう、彼女の家に向かいながら通報もしておいたから。来たら彼らに話せるかい?」
「はい」
 年若の可哀相な旅行者の気を和らげようと意識して微笑みを作ったままの紳士の顔は、彼がもともと持っている愛嬌を目立たせており、その優しい目の際の皺を見たことと、これから起きることに対しての心構えが多少できたことで、ミンソクはさっき全身を回って自身を殺そうとした毒素が極めて弱まってくるのを感じた。ほおー、と腹の底から息を抜き、手を握ったり開いたりすると、元の体温が戻ってきていることが分かった。
 手術室からは相変わらず誰も出てこない。
何か食べた方がいいな、とひとりごとのように言うと、紳士はのっそり立ち上がった。
と、靴音が廊下に鳴り響き、速足でこちらに向かってくる複数の人間がいることが知れた。
顔を上げたミンソクと、来訪者と相対するように体を向けた紳士の前に、スーツの変形のような服装に身を包んだ男性ふたりと、警察官と思われる制服を着込んだ男性と女性合わせて三人が、彼らを囲むように立っていた。
職業柄なのか、彼らの視線は一様に油断ならないもので、ミンソクは自動的に背筋が伸び、鼓動が高鳴るのを感じた。それに反して掌から指先は冷えていった。
 刑事らしきふたりが両掌を上にして差し出し、それを受けて紳士もそうした。
その雰囲気から察してこれはおそらく挨拶の仕草なのだろうとミンソクが考えていると、刑事の片方がこの事件に関する話を聞きたいと切り出した。
思った通り揃った全員がミンソクよりずっと色黒で、異様に白い彼は大変目を引き、紳士と話を始めてからほどなく声が掛けられた。
つまびらかに話してもいいかと目顔で問うと、こくりと紳士は頷いた。
署での聴取を求められたが、紳士がミンソク共々病院内に留まりたい意向を示すと、驚くべきことにそれが了承された。ミンソクは紳士と刑事たちのようすから、どうやら紳士は人々から深い畏敬の念を抱かれている、名の通った人物らしいことを見て取った。
休憩所に移動し、話すことで一致した。
容態に変化のあった場合すぐに知らせるよう紳士がきつく警官に言いつけ、第一発見者であるミンソクから聴取は始まった。
席を外した紳士がしばらくすると温かい食事を持って部屋に現れた。それに伴いミンソクの話は中断された。
卵の落とされたおじやのようなものと玉葱のスープをミンソクたちが食べ終えるまで待ってもらいたい旨紳士が申し出ると受け入れられ、どちらも食欲からではなく今後のために無理矢理料理を口に押し込むと、紳士が部屋を退出し、ミンソクのみの聞き取りが再度始められた。
 紳士に一度話していたため、二度目のこのときはもっと筋道立てて成り行きを説明でき、また紳士の言った通り荒唐無稽な絵空事とは感じられていないことも彼らの表情や態度から伝わり、なんとしても捜査の助けになりたいという思いだけが募ったミンソクは、年齢相応の振る舞いと口調を貫き、すべてを終えた。
第一発見者という理由からミンソク自身が疑われる可能性も考えないではなかったが、現場検証において明らかに第三者が逃げた痕跡が残っていたことと、「彼ではない」という発言を被害者がしたのを紳士も、また救急隊員も耳にしていたことから、容疑者リストから早々に完全に外されていたことを翌日に知った。
紳士の番になり、ミンソクが廊下のソファに腰を据えると、すぐ脇に警官がひとり付いた。もう明け方近くになっていた。疲れが頂点に達したミンソクは、下りて来るまぶたを持ち上げる力を、いつの間にか逸した。座ったまま、上半身が傾いた。特有の美しく歪んだ唇の下が力なく落ちたとき、彼は眠りの世界に沈んだ。




つづく




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