海の底、森の奥

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20170927

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 2」
企画2

企画概要(↓クリックすると記事に飛びます)
ブログ『夢の続き』EXO小説企画「EXOTICA」

参加者様記事一覧(本日更新分↓クリックすると記事に飛びます)
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・2」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 2」



疾走する車はやたらに速いようにミンソクには感じられた。ものの数分で病院に到着し、可能な限り急いで女性は中へと運ばれた。
真白な空間で構成された、ミンソクの知るような典型的な病院といった佇まいはそこにはまるでなく、深緑色を内装の基調とした、木と、金属に似た材質で組み立てられた何風とも言えぬそれは建築物であった。これが病院なのかとミンソクは戸惑いながらも走って担架を追い、処置室の扉が目の前で閉まるとそこで髭の紳士共々手や衣服を血に染めてしばらく棒立ちになった。
看護師らしき人々が彼らに声を掛けた。聞き覚えのないはずのそれをやはりミンソクは理解できた。血を洗い落とすように言われ、体中に飛んでいるからと入浴を求められた。
言われるままふたりはシャワールームに向かった。
それはドアを閉めるときっちり密室になる作りの小部屋で、更衣室の中にいくつも並んで設置されており、それぞれそのうちのひとつに入った。入り口付近にあるスイッチを押すと穴の開いた天井と四方の壁の中の一つの面からお湯が飛び出してくるという仕掛けにおののきながら、くるくると回転してミンソクは体の汚れを洗い流した。渡された洗浄力の高い医療専用の石鹸を体中に塗りたくり、またシャワーでそれを流した。
さし当たって、患者用の衣服を着替えとして準備してもらっていたため、それを身に着けようと体を拭いていると、髭の紳士がすべてを済ませてミンソクの前に現れた。
ワンピースのような形状の服は踝まで丈があり、濃紺であった。背が高く、恰幅のいい男性はそびえるようにミンソクの手前に立ち、ミンソクが汚れなかったみずからの下着を再び身に付け、その後借りた服に腕を通し、濡れた髪の毛をタオルで擦るのを見守っていた。
 髭が割れるようにして声が響いた。
「彼女は今も治療中です。失血がひどいので、大量に輸血している最中です。まだまだ掛かるでしょう」
 なんの前置きもなく歌うような低い声でそう教えられ、ミンソクは目を伏せた彼の暗い顔を仰いで猫に似たまなこを見開いた。
 紳士は脱衣籠に脱いでおいたミンソクの衣類の中から、看護師が汚れたものだけ別に詰めた袋を差し出した。
「きみを私の部下か何かだと勘違いして私に渡してきました」
 手を伸ばすミンソクに紳士は続けた。
「見慣れぬ衣装をお召しでしたね」
 目を泳がせたミンソクは手提げ袋の紐部分を握り締めてから、また瞳を上に上げた。相手の、横に長く細い目の中で、紫色の小さな中心が光って待っていた。
「―――鞄も洗った方がいいから、中身をこれに移し替えてお持ちなさい」
 つぶやく如くそう言ってもうひとつ手提げ袋を差し出し、食い入るようにミンソクを見つめた。
アメジストのような光彩にさらされ、その中に知性と剛毅を見て取ると、張っていた気が溶けるように彼の中で散らばった。
目の涙と喉の渇きがミンソクを再度訪れ、みっともないからやめろという脳の指示を無視して体は口をぱくつかせて涙を落としながら鞄の中身を―――財布や音楽機器などごくわずかな手回り品で、そのうちのスマートフォンを少しいじったがやはりまったく通信は出来ず、喉の奥の塩辛い液を飲み下した―――移し、リュックサックを折り畳んで鞄に突っ込むと、やっと言葉を出した。
「何か、飲むものをもらいませんか」
 情けなかった。だが目からはあとからあとから水分が溢れ、それを追うように手で頬を擦るしかなかった。
「そうしましょう」
 掠れた穏やかな思いやり深い声が降り、それだけでミンソクは礼を言いたかったが、嗚咽が漏れそうで唇を引き結んだ。背中に大きな温かい手が触れ、それに押されて休憩所に向かった。
そこは大きな盆のような、しかしよく見ると細かな細工の施されているらしいガラスの照明が天井に据えられた、温かな雰囲気の比較的広い部屋だった。ここも青の落とされた深い緑の壁紙が貼られ、かすかに金色の鳥の模様が巡るように配されていた。濃いブラウンのソファに、向かい合わせに彼らは座った。手には端に設置されたティーセット一式から淹れた茶を持っていた。
髭の紳士が準備し、受け取ったその表面を眺めながら、なんのお茶だろうかとミンソクは訝しんだが、香りはレモンのようなそれで、こびりついたような気がしていた血の匂いを若干遠ざけてくれた。おそらくハーブの一種だろうと思いつつ、熱いカップの中身を口にした。ポットもカップも、アールヌーボー調とかろうじて言えただろうが、それにしても曲線を描き過ぎている感があり、しかし茶そのものはきっとミンソクの元いた国にもあるものだろうと思うと、不思議な安心感が湧いた。茶の効能もあるかもしれなかったが、とにかくミンソクは少しだけ体の強張りが解け、熱いシャワーを浴びてもあまり治らなかった手の冷えが改善されてくるのを感じた。
 しばらく黙って茶を飲んでいたが、ミンソクは落ち着いてくると共にやはりどんどん気になり始め、顔を上げて斜に座った紳士に言った。
「あの」
 紫の目と、うん?という唸りのような声で応じた男性に、ミンソクは尋ねた。
「女性の手術室の近くに、僕も行っていいですか」
 照らしてくる灯りのせいだけでなく、紳士の瞳が一瞬鮮やかに輝いた。
「もちろんですよ」
「ありがとうございます」
「何言ってるんですか。でもその前に、検査を受けなければなりませんよ。体液が体に掛かりましたからね。先にそれを済ませましょう」
「はい、…ですが…」
「なんですか?」
「僕、多分今、その検査費用をお支払いできないと思うんです」
 不安を隠さずミンソクが告げると、紳士は腹の底から出すような低音で、だが安心させるような声音で言った。
「大丈夫ですよ。こういった検査は無償です。さあ、行きましょう」
 ふたり揃って立ち上がり、茶器を置いて部屋を出た。
深夜に差し掛かった院内は、急患が運ばれて来た際は騒がしくなるが、今は静かだった。
 看護師に声を掛け、用を告げるとすぐ採血がなされ、検査結果は明日だと言われ、その場を双方共に離れた。
 それから女性の手術室に連れ立って向かっていると、ミンソクはずっと感じていたことをまた感じずにはいられなかった。ついさっき血を採ってくれた女性も、すれ違う他の医師や看護師も、彼が目にする人々全員、程度の差こそあれ肌の色が黒味がかっていた。ミンソクのような色白が珍しいらしく、出会う人の多くから、あからさまな視線とまではいかないが軽い好奇心を含んだ一瞥を投げ掛けられた。襲われた女性や横にいる紳士と同じく、ミンソクが出身地をある程度特定できる容姿では誰もなかった。顔立ちや髪質や髪色がそれを拒否していた。あらゆる民族を混ぜ込んだような外見を目に入った者すべてがしていた。
背も性別に関わらず、ミンソクよりほとんどの人間が高かった。この世界で自分は完全に異物だという確信が彼の中で固まっていた。しかしそのことでの恐怖は実のところあまりなかった。それは彼が差別的な扱いを受けたりなどはまったくしていないからだった。多少異質である、という反応はされるが、ただそれだけで、おそらくかなり特異な存在であろうという自分が難なく受け入れられていることがミンソクには心底ありがたかった。
そんなふうに考えながら通路を渡って手術室の前まで行くと、その近くに置かれたソファに並んで座った。
「―――ここまで一緒に来てくれて、ありがとう」
 ぽつりと紳士は前を向いたまま言った。
「きみは―――きっと旅行者なんでしょう?」
 そうして目の中で瞳を下ろすようにしてミンソクを見た。
それを受けながらミンソクは奥にある手術室のドアを視界に入れ、答える内容を逡巡した。
「僕―――僕は―――」
 歯や舌や唇を用いて紡ぐ言葉が自国のそれでないことに、だんだんミンソクは慣れてきていた。どうやって話しているのか自分でもまったく分からない。だがやはり、何を言われているのか、どう言えばいいのか瞬時に解し得たし、更には書かれているものを読むこともできた。同時通訳と字幕の付いている映像を見ているときのような感覚があった。こうした事象をどう説明すれば作り話でないと信じてもらえるのだろうかと、ミンソクはほとほと困り果てた。
けれども目の前にいる紳士が非常に信頼に足る、優しい男性であるという実感は強く、そしてとにもかくにもこの状況を誰かに話してしまいたいという欲求もあり、ミンソクは順序立ててというわけにはいかなかったが、できるだけ率直に、自分のこと、起きたこと、それ以外の細かなことを目を瞬きつつつっかえつっかえ語り出した。そうしながら、相手が驚いたり惑ったり、ときに興味から強く目を光らせたりすることはあっても、呆れや怒りを見せることはないことを確認していた。
話し終える頃には疲れ切り、己の顔から血の気が失せていること、胃が空腹を訴えていることを痛切に感じた。
ここに来る前から仕事で疲労は蓄積しており、それがもっと顔や姿に出ているだろうとミンソクは思った。隈やげっそりした頬などをすぐ傍で相手に見つめられ、心許ない風情や自身の体型や顔の作りも含め、きっと無力で可哀相な子供のように自分のことを捉えられるだろうということが、悲しさや恥ずかしさを湧かせたが、それを大きな諦めがくるみ込み、ミンソクの矜持を静かに打ち負かした。



つづく



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