海の底、森の奥

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20170926

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 1」
企画2

企画概要(↓クリックすると記事に飛びます)
ブログ『夢の続き』EXO小説企画「EXOTICA」

参加者様のお話一覧(↓クリックすると記事に飛びます)
「夢の続き」EXOTICA:洞窟の外「LA SIESTA」
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・1」
「大帝男子」EXOTICA:緑の洞窟 「触手」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 1」
「緑黄色野菜」EXOTICA:青の洞窟 「cruel spiral arousal 《1》」



蜜柑のような色合いの灯りが体をそっと包んだ。
蛍光色に近い黄色を予想していたミンソクは柔らかなその色調に少々虚を突かれ、頭上や四方に目をさっと走らせた。するとそれどころではない驚きが更に彼を襲った。
橙に近い色味で岩肌の照らされたかまぼこ型の穴ではなく、目に映ったのは四隅のある、完璧な四角を成す奥に行き止まりらしきものの見える、ベージュ地に茶色で花模様の描かれた壁紙の貼られた、建物内の廊下と思しき空間だった。
間接照明が薔薇のつぼみを模した琥珀色のガラスの中で光っている。それによって通路は落日を受けたような淡い風情をたたえていた。
ミンソクは一瞬、ものすごく手を掛けてこうした装飾を洞窟内に業者が施したのかと思い、口を半開きにしながら足を止めぬまま、ぐるりとまた周囲を見渡した。背後までそれをすると、そこには先刻足を踏み入れたはずの入り口がなかった。縦に長いぼこぼことした半円が口を開けてはおらず、進行方向と同様に繊細でありながら豪奢な作りの、家屋の廊下にしか見えぬ光景がミンソクの双眸に、幻や何かではなく現実として迫った。
「え?」
 思わず声が漏れた。足が止まる。
前を向き、再び振り返る。
前方を見れば、もう少し進むと側面にドアのある、正面奥は絵の飾れた美しい壁の続く通路である。後方を見れば、少し戻ると横に折れているらしい、同様の通路である。
とりあえずミンソクは、道を引き返してみようと進行方向を変えかけた。もしかしたらあの道を曲がれば、そもそもの洞窟に、そして皆の元に戻れるかもしれない。そう、きっと知らぬうちに道を曲がっていたのかもしれない。やっぱりどこかの企業が、余興のためにこうした凝った演出をしているのかもしれないじゃないかと、ミンソクは半ば震えながら自身に言って聞かせた。
頭のどこかでは、完全に何かがおかしいと分かっていた。その恐怖が全身を貫き、わななく体をどうにか押さえて走り出そうと身構えた。
そのとき、女性の、悲鳴にしか聞こえない高い声が耳に入った。
既に恐ろしい予感に捉われていたミンソクは、びくりと激しく肩を揺らし、背後のドアにおずおずと顔を向けた。じっと耳をそばたてていると、再度ひゃあ、とも、きゃあ、ともつかぬ声が分厚そうな木材を貫くように響いた。
誠実で優しい性分のミンソクは、明らかに誰かが切迫した状況に陥っているらしいことに、見て見ぬ振りをできなかった。しかも届く声の中に悪寒の走る何かがあった。
咄嗟に武器になるようなものはなかろうかと辺りを見回したが、ない。しかたなく、意を決してミンソクはドアまで素早く近寄り、大きな声で「すみません!大丈夫ですか!」と言いながらドアを拳でどんどんと叩いた。
するとがたがたと大きな音が室内で轟くのがこの危険を前にして全身の神経が鋭敏になったミンソクに伝わった。彼は考えうる最悪のシナリオが頭に描かれた。先程聞こえた女性の声音は、そうしたことを想像するのに十分な悲劇性を帯びていた。
ミンソクは覚悟した。刹那が永遠になるかのようなそれだった。
ノブを捻って勢いよく扉を開くと、壁に据えられたいくつかの小さな照明が灯る中、浮かび上がるようにふたりの人間の姿が見えた。
 夜であった。
墨色の窓の向こうから激しく風が吹きつけ、揺らめくカーテンに包まれるようにして中背だが、痩身の男が独特の形状の帽子を被り、マントを肩から下げ、ミンソクを振り返った。陰になった顔はほぼ見えず、ただ双眼が表の街灯を受けてきらりと光った。
そして男の横、ベッドの上では、女性が服を裂かれ、体から血を流して倒れていた。音もなく顔を傾け、ミンソクと目を合わせた。
危惧したことが、それ以上の惨状となって眼前で繰り広げられており、危うく彼は発狂しかけた。こうした悪行が行われているという現実を知ってはいたが、今実際に見せつけられるとにわかには信じられないというのがミンソクという青年だった。がくがくと膝が揺れ、開いた口の奥、喉がひりつくように渇き、めまいによって上半身が傾いだ。
ミンソクがよろけたの同時に男は窓から身を乗り出した。
我に返ったミンソクは、逃がしてはなるまいということだけが頭に閃き、俊敏な体を活かして素早く駆け寄ると男のマントを掴みかけた。
だが絡め取るように男はマントを自身に引き寄せ、一足早く、窓の下に体を落とした。落下していく男の後頭部をミンソクは凝視した。見えたのは黒く短い髪、そして耳の裏。窓枠に手を付け見下ろすと、着地の際倒れはしたが怪我はなかったようですぐさま立ち上がると、一目散に走って逃げた。
追い掛けることも頭をよぎったが、それよりもとミンソクは振り返りながらベッドに近付き、背負っていたリュックサックを放った。
よりはっきり見ると、ドレスの残骸の中、女性はほぼ裸であった。ミンソクは彼女が部分的に服を着たままであると思い込んでいたため、少なからず驚いた。それは彼女の体に人工物が嵌め込まれていることによる錯覚であった。
金属のような、プラスチックのような、見たこともない質感を備えた精巧な機具により、彼女の片側の肩から胸、腕、手までが構成されていた。反対側の脇腹も同様だった。それは褐色で、女性の濃い肌色と合わせたような色を示していた。血は残った肉の部分を奪い取るかのように傷付けられた、豊かな柔らかい肌から噴き出していた。脚の間、陰毛の中からも血は滴った。
傷が見えぬほど真っ赤に濡れた体と、こちらを見つめる彼女の顔をミンソクは目で行ったり来たりした。女性はどこの国の出身か皆目見当の付かない、小麦色の肌と黒く大きな瞳と焦げ茶の毛をした髪の長い、若く美しい人だった。機械仕掛けの体もその美貌もまったく未知のものであり、ミンソクは状況も相まって恐慌をきたしかけた。
「電話」
 混乱しながらミンソクは言った。
「電話はどこですか」
 口にした瞬間、その言葉は普段使っている言語ではないことがミンソクに分かった。聞いたこともない、まったく知らない国の言葉を自動的に話していた。卒倒寸前になりながらもベッド脇に目をやってミンソクは電話を探した。だがそれらしきものはない。揺れるまなざしを女性に注ぐと、がくがくしながら彼女は指をナイトテーブルに向けた。灯されていないランプの下に、懐中時計のような、鎖の付いた丸い黄金色の何かがあった。指差す彼女の指示通り、それを取って蓋を開けてみると、下部にボタンらしき出っ張りがあり、その上にはするするとした材質の透明な薄い板が貼ってあった。
「押せばいいんですね?」
 またもや言おうとした韓国語が耳慣れない言葉に変化して口から出て行くのを聞きながら、ミンソクが問うと、女性はかすかに頷いた。急いで力強く押すと、ツツー、ツツー、と音が鳴り、ぱっと上部に人の顔が映った。
「どうした!?無事か!?」
 顔中髭といった態の五〇がらみの男性がこちらに向かって叫んでいた。自分の口から飛び出るのと同じ、知らぬ言語で喋られているのに一言一句理解できることに尻込みしながら、それでも一刻の猶予もないミンソクは叫び返した。
「無事ではありません!!すごい怪我をされています、男に襲われたんです、早く救急車を呼んでください!」
 彼女以上に黒い肌をした男性であったが、それでも彼の血の気が引いたのをミンソクは見て取った。思い立ち、彼女にその通信機をかざしてその姿を映してから、再び画面と向かい合った。
「すぐに医者に見せる。待っててくれ」
 男性がそう言うと通信は途絶えた。
画面から姿が消えると女性は機械ではない方の手でミンソクの手を掴んだ。涙の滲んだ、光を受けた海の面のような目をミンソクに捧げ、唇を動かした。
「ありがとう」
 思いがけない言葉にミンソクは衝撃を受けた。
 己も急激に涙が目の上に膨らみ、ミンソクはぼたぼたとそれを落とした。もう一方の手でも彼女の手を包み、首を横に激しく振った。
「…あなたはどなたなのかしら」
 言いながら瞳を隠しかけ、涙の筋がこめかみに向けて作られた。そのさまを見たミンソクは声を張り上げた。
「駄目です、目を開けてください」
 まぶたが小刻みに震えると、泉の湧くように女性の目から緩やかに涙が流れ、
「…とても、痛くて、熱いの…」
と零すように彼女は言った。
「助けが来ます、大丈夫です、お願いです」
 子供のように喘いでミンソクは懇願した。
「……とっても、色が白いのね……」
 肉感的だが何故かひそやかさもある桜色の唇から、そんな言葉が吐かれ、涙と鼻水で顔を光らせたミンソクは瞬いた。
「…手が、冷たくて気持ちいい…」
 唇の両端を儚げに上げる彼女にそう言われ、ミンソクはようやくそのとき気付いた。女性の手を握った両手が、文字通り氷のようだった。
とにかくこれ以上彼女の体を冷やしてはいけないと手を離し、訝しげにふたつの掌を見下ろしたとき、足音が聞こえた。
地鳴りのような音を立てて画面を通して会話した髭の男性が部屋に現れ、その後ろから医療関係者と思しき人々が担架を押して続いた。
 女性が弱弱しい声で、
「この人じゃ…ないの…。あいつよ……」
と告げると、髭面の男性はミンソクと彼女を交互に見ながら苦渋から眉を傾斜させてうんうんと頷いた。
 その光景を前に呆然と立ち尽くしながら、建物の内装も、逃げた犯人も、横たわる女性も、男性を呼んだ道具も、登場した当の男性も、今女性を担ぎ出そうとしている救急隊員たちも、どれもこれも自分の生きる時代、知る事物とまるで違うことに張り手を食らわされたようにミンソクはなった。その差異に困惑を深めながらも、ただ女性の身を案じるあまり彼女の容態にだけ意識を集中しており、奇異な道具を人々が用いているのに気付きはするがそれは放って、起きてください、や、しっかりしてください、と声をしゃにむに掛け続けるのみであった。その横で、大男であることが分かった通信機の向こうにいた髭の男性も、女性の生身の方の手を取って、顔を寄せて小さくなり、必死に彼女に語り掛けていた。
つい先刻、ミンソクが向かおうとしていた廊下の曲がり角を皆で行くと、玄関ホールに出た。頭の片隅で、静かにミンソクは絶望した。しかしそれを更に奥に押しやって、ぞろぞろと救急車と思しき、しかしまるで見たことのない設計の大きな車に乗り込んだ。深まった夜の中、おぼろな灯りの下で、街はミンソクにここは異国、それも世界中のどの街とも微妙に印象の違う家々の立ち並ぶ、完全に見知らぬ国であることを教えた。車内では白っぽい照明が多種多様な医療器具を輝かせていたが、ミンソクの多少の知識の中のそれらとはまただいぶ様相を異にしていた。保身の意識からすべてに対し注意を怠らないながらも、自分に出来ることなど何もないと認識もしていたので、てきぱきと処置をする隊員たちにすがるように女性を任せた。
ミンソクはとにかく女性が心配であったし、あそこにひとり取り残されてもどうしたらよいか途方に暮れるだろうことが予想されたこともあり、鞄を背負うと流れに混じって車に乗っていた。これからどうしたものだろうかと案じる気持ちは、まだ大きく膨らみこそしなかったが拭い去れるはずもない。これは刑事事件であり、ミンソクは重要な目撃者だ。しかしここは明らかにミンソクの生きていた場所とは違う。何が起きたのかさっぱり理解できず、ただでさえ八方塞がりだというのに、万一女性が死んでしまったら―――そのことを考えるだけでミンソクは意識が遠のく感じがした―――、殺人事件に関わりを持つこととなる。あらゆる理由からどうかそうならずに済んで欲しいと目が眩みそうなほどミンソクは願った。と同時に、とにかくあの逃げた男を捕まえるために尽力したいとも欲した。果たして己にどこまでできるのか不安でしかたがなかったが、彼女の無事と、男の逮捕をなんとかして叶えたいというのが彼の偽らざる本心であった。
車が動き出したさなか、ふと、自分は夢を見ているのかもしれないと思い至った。こんなふうな、所謂悪夢をミンソクは見たことがなかった。それに彼女の体温や、血の感触の生々しさは彼の実感として現実以外の何物でもなかった。これが夢?そんな馬鹿なことがあるか。自分の手が恐ろしく冷たいことも、意味不明な現実味を持ってミンソクを襲った。夢だと思いたいのに、どうしてもそう信じさせてはくれぬ生の手触りがそこには溢れるようにあった。
髭の男性はミンソクに目もくれず、一心に女性に話し掛け続けていた。止血に努める隊員たちがみるみるうちに赤く染まる。椅子に腰掛けたミンソクは、役に立ちたいと思いながらも、冷えた手で彼女に触れることをためらい、ただ青ざめながら時折しっかり、しっかり、と声掛けをするだけであった。


つづく


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始まりましたEXOTICA、5色の洞窟+黒い浜辺!(記事修正済み) | 睡魔夢子さん企画「EXOTICA」、明日から開始です!!!(+映画「怒り」)

comment

初めましてこんばんは。 : roiniy(ooba) @-
大帝男子の管理人のroiniy,ろいと言います。
此方から先にお伺いすべきでした、遅くなってすみません。

実は、昨日サイトには伺っていたのですがコメント書く勇気がなくってすみません。

過去記事を読んで雰囲気ある方だなと…私はちょっと粗削りなところがあるもので失礼な書き込みしたらどうしようと…少し気おくれしていました。

昨日、シング シング シングというお話を読んだのですが描写がまるで絵本を読んでいるみたいな気持ちになりました。
内容はちょっぴりセクシーでしたけれど…
まるで思春期のような関係。

今回の企画のお話は異世界に行ってしまったミンソクさんのお話ですがミンソクさんと同じ気持ちです。
先が全くよめません。

毎日更新されるのを楽しみにミンソクさんになったつもりで読み進めたいと思います。



最終話を読んだらまた来ます。^^
2017/09/26 Tue 21:10:42 URL

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