海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20170805

解放区(誕生日企画・EXO・リアル短編)
 土産を求められるのはいつものことだ。
俺は笑って、そんないいものはないかもしれないよ、とベッキョン兄さんに言った。
「なんでもいいよ」
 そう返すと、小さな黒目を上に上げて、数秒黙った。
「いや、なんでもよくはねーか。ちゃんと選べよ」
 脱いだ服を身に付けたところだったのに、兄さんは言い終えると俺に向かってちょいちょいと掲げた手の指を折った。
「何」
 振り向いた格好の俺は反射的に再び笑った。兄さんはベッドの上、素っ裸だ。使い終えた後の性器が、くたりと脚の間に伸びたようになっているのさえ目に映る。白い体は、鍛えたことで筋肉のかたちが浮かび上がり、そこここに陰影が作られている。化粧っけのない薄い顔とその上半身は妙に不釣合いだと体を重ねるたび思う。薄い、平べったい体と今のそれ、どちらがいいかと問われたら返事に窮する。きっと前者を挙げたら兄さんは予想通りとは思いつつ、ちょっと、いやかなり不満だろう。男らしい体がいやだとかそういうことではないのだ。ただ、何もしていない兄さんこそに一番惹かれるような気がするだけだ。それこそもし腹回りに肉が付いても、それも愛しく感じられるような予感がした。メイクだって、していない方がそそられる。まっさらな、何も手を施していない状態の兄さんにもっとも感情と欲望を引き出される感覚があった。
 汗で少し額に張り付いた髪の毛が、首を傾けることでぱらりとまぶたに落ちた。厚みのない唇には不敵な笑み。そのさまにまた俺は無意識のうちに笑った。まな板の上に寝かされたようになりながら、早くと料理人を誘っている。きっと毒があるのだろう。死ぬならこいつもと手を掴んで絶対離さぬつもりなのだ。
近寄ると、ぽんぽん、と先程まで横になっていたベッドの隣を叩かれた。促されるままそこに座る。
 ヘッドボードに寄り掛かりながら、肘を付いた兄さんはみずからの肩に首を乗せて俺を仰ぎ見た。上目が俺を捕らえる。にこ、と改めて笑顔を返した。
「ずりぃよな」
「出掛けんのが?」
「それもだけど、あいつがだよ」
「ああ。やきもち?」
「はっきり言うな」
 逆の手が伸びてきて俺を軽く小突く。
「嬉しいな、焼いてくれんの?」
 そのまま繰り返し、何度も拳で俺を押す。
「うる、せえ、なあ」
「んふふ」
 口の中で笑いを転がすと、俺は下を向いた兄さんの髪の毛に唇を付けた。
「汗臭い」
「うるせっ」
 顔を上げた兄さんの唇をさっと奪った。
「むぐ」
 抵抗などしない兄さんはすぐ上下を離す。早速舌を絡めようとしてくるが、時間がないので唇だけ丁寧に愛撫し間もなく解放した。
 眉間同士をくっつけたまま、潤んだ瞳を見据えた。兄さんは行かせたくないと思っている、心の底から。だけど仕事があるのは兄さんの方だ。大きさを増し、逆方向を向いたペニスを人差し指でつつとなぞりながら囁いた。
「…仕事、頑張って」
 動きに伴いあ、とかすれた声を出したのは、聴かなかったことにした。


 鉄板の上の肉や野菜はあらかたなくなっている。そこにご飯が投入されると、勢いよく混ぜられ、すべてが炒められていった。
「まじいいにおい」
 向かいに座るチャニョル兄さんが、満面の笑みで瞳を輝かせながら、男性店員の動きを目で追っていた。あらかじめ個室を予約し、一応何事もなくここまで来ていたが、俺たちの間に立つ彼は正体を知って体が強張っているようだった。だいぶ若く、もしかするとこの店の息子か何かで、未成年かもしれなかった。真っ赤になった頬を汗が伝い、それを手の甲で拭うと、できました、と小さく告げた。
「ありがとうございまーす」
 兄さんが感じよく答え、俺も続くと、はにかんだような笑みを垢抜けない顔に乗せて、そそくさと青年は部屋を出て行った。あんなにシャイな若者もまだいるんだなと、俺は軽く感動していた。
「可愛いね」
「あ?ああ、今の子か?」
「うん。ちょっと話し掛けたそうだったよ」
「そうだな、でも忙しそうだし、会計してもらうときに少しだけ声掛けようかなと思って、今はやめといた」
 チャーハンをせっせと自分の分、俺の分と盛りつけながら兄さんは話した。
「ほら」
「ありがと」
 湯気の立つ色の付いた飯が、たっぷりと器に供されている。だいぶ腹は満ちていたが、米のにおいとタレの香ばしさで食べずにはいられない心境にさせられた。
 スプーンで掬って黙々と食べた。
いつも、背の高い俺たちがいっしょにものを食べていると、その肩や腕や脚がテーブルや椅子からはみ出したようになって、なんだか滑稽に感じた。今もそうだった。はふはふ言いつつ舌鼓を打つ俺たちは、食器に顔を寄せて、一心不乱に、子供のように食べており、それなのにガタイはこんなで、いろいろなことがちぐはぐだととても思った。男ふたりで、それも恋人同士でもなくて、単なる友達というのとも違って、同い年ですらなくて、日帰りの弾丸旅行にまた来ている。幼い俺にもしこのことを話したら、いったいどう思うのだろう。
いい?俺は、大人になったら、すごく大きくなって、あんまりない休みが急に取れた日、仕事仲間でいっしょに暮らしているこれまた俺より大きい男の人と、遠くまで来てタッカルビを食べるんだよ。
はあ?という顔をするふにゃふにゃの俺が目に浮かぶ。
しかも俺は、彼じゃない男の人に恋をしていて、その人も俺を好いてくれているんだけど、休みが全然合わないからこんなこと彼とはほとんどしてないんだよ。
これを言ったらお母さんを呼ばれるかも。それも泣きながら。俺は女の子がすごく好きだったから、嫌がらせを言っているとしか俺のことだからきっと考えない。と言うかこれはいったいどういうシチュエーションなのだろう。そもそもタイムパラドックスだし。
なんてことを考えていたら平らげていた。兄さんも同様だった。
「あーうまかった。お前は?」
「おいしかったよ。食べ過ぎた」
「たまにはいーだろ、よし、金払って出よーぜ」
 呼び出しブザーを押すと、来たのはあの男の子ではなく、年の頃五十程度の女性だった。
「ほんとにこのたびはどーも!!」
 ここの女将さんで、どうやら先刻の青年の母親だった。それから小一時間、彼女の話にとことん付き合われる羽目になり、その上息子さんにはもう会えなかった。


兄さんの運転する車で目的地のひとつへと足を伸ばした。
「今日なんか見れんじゃね?この感じなら」
 わくわくした声で兄さんが言う。確かに今日は今年もっとも晴れ渡った春の日で、気温も高い。期待してもよさそうだった。
止めた車から降り、見学可能な場所に、標識を見ながら向かった。すると歩いている最中水の粒が俺たちの頭に降ってきて、思わず顔を見合わせた。
「よっしゃ!」
 並んだかたちのいい歯を全部見せ、兄さんはほー!!と言いながら走り出した。俺も苦笑して後を追う。
見学地にまで足を運ぶと、時期が時期だけに平日とは言え人が多く、俺たちは被っていた帽子を目深にし、伊達眼鏡を取り出してそれぞれ掛けた。おおー!や、うわー!といった歓声があちこちから上がっている。その人ごみの後ろから、気付かれぬよう眼前の光景をじっと見つめた。背が高くてよかったとしみじみ思いながら。
水の流れというのはどうしてこうも人の心に何かしらを感じさせるものなのだろう。緩やかであっても激しくあっても。その絶え間ない変化のようすに自分自身、いや、世界すべてを見たような気がするからだろうか。時折頬に冷たいものが飛んでくる。吐き出す、吐き出す、吐き出す。すべて溶かし、溢れさせて。俺は立ち尽くしながら腕を組み、己を抱えるようにした。そうしてそっと隣を見た。兄さんは瞬きさえも忘れ、白目をぎらぎらさせて放水を見ていた。口が少し開いている。
感じやすい人だからな。
そう思うとふわっと心が温かくなった。兄さんといるとそうしたところに真実救われたような心地になることがよくあった。だからいっしょにいるのが好きだった。こんなことをもしも言ったら、ベッキョン兄さんに殴られるかもしれない、そうしてくれたらくれたで俺は嬉しいだけだけれども。
壁や設備が破損してしまうのではと危ぶむほどの水流は、日々溜まっていく俺たちの心の澱まで洗い流すようだった。ぽかぽかと暖かかったのが少し冷えたのも快かった。腹の中の肉や野菜や米が、雨のような恵みの水で冷まされていく。
こうした日があるから、またやっていける、そう思うと同時に、もっと、もっともっとだろう、と思えた。ベッキョン兄さんの割れた腹。膨れた胸。それをほんとうは素晴らしいと思っている。そうでない兄さんに恋をしたが、そうなった兄さんを尊敬していた。畏敬の念とはすごいものだ。ただぼうっと浸っていたような、甘い関係に変化をもたらす。言葉ではっきり言われなくとも、何かを諭されていたのが分かる。
生き返ったような気分でまた兄さんを向いた、今度はしっかりと。すると兄さんもこちらを見た。眼鏡のレンズと豊かな頬に水滴をたくさん乗せて、にまあと笑った。
「やったなあ」
 こんなに低い声の人を他に俺は知らない。少年のような顔立ちと表情をしながら、大人そのものの声で話すこの人は、俺がこの世でもっとも親しく、頼る人だ。
こんなことを言ってしまったら、そのときは完全に、ベッキョン兄さんはお冠だろう。けれどきっと、まあ確かにそうだとも思うだろう。
「俺だって頼っていいけど」
 そんなふうにぽつりと言うかもしれない。そうしたら、多分俺は愛しさに息が詰まってあっけなく死んでしまう。
「兄さん」
 それはそれでいいかもしれない。いつかそんな日が来ても。まだそれは先だけれど、兄さんの毒が全身を冒して、死に至っても構わない。
「お土産買って帰ろうよ」
 俺には旅行先の土産か、俺自身しか捧げるものは今何もない。兄さんからはあらゆるものを受け取りながら、ほんとうに兄さんの望むものを、まったく返せてなどいない。
「行くか」
 踵を返す兄さんの足の隙間を見下ろした。俺は兄さんのそこが好きで、少し後ろに立つといつも視線をこっそり送った。
 今この瞬間、背中に水しぶきを浴びながらチャニョル兄さんといることも、帰ったら疲れ果てたベッキョン兄さんに土産の品を渡せることも、幸福だった。
爪先だけ、踵だけで宙に浮いているかのようにステップを踏んで歩きたいような気がした。しないけれど。くるくるとジョンイン兄さんのように回れたらいいのにと思った。たとえもし出来ても、ここではしないけれど。
早くそうできるところに行けたらいい。
シートに埋まりながら、兄さんが掛けたNellyに合わせて、静かに足の先を動かすことで我慢した。



おわり


 
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trackback (0) | comment (1) | 短編〈リアル〉
お誕生日おめでとうございます! | ただ美しいなんていうのはつまらないことです【『海に沈む森の夢』企画1・東方神起二次小説】

comment

本当にありがとうございます! : みむ子(ゆうりんち) @-
レモンさん、こんばんは~♪

何度も繰り返しになってしまいますが、本当にありがとうございます!
とっても素敵なプレゼントに今でも胸が熱くなります(#^.^#)
それなのにコメント遅くなりました<m(__)m>
しかもまたしても私の妄想、願望炸裂になりますが(笑)

私、このお話のセフンになりたいと思いました~><
ベッキョンが恋人でチャニョルが頼れるお兄ちゃんだなんて羨ましすぎです。
改めて思うことは、私はセフンペンではありますが、彼に対して男性としての理想は持っていないのだなということです。
まぁ、ルックスは好きなんですが、それよりも彼が苦難の多いグループの末っ子である、というところに共感しているのかもしれません。
そして兄たちにとっても可愛がられているところが、やはり羨ましいとも。
このお話の中のセフンも、やはりそうですよね。
ベッキョンとチャニョルから受ける愛の種類は違うけれど、とっても愛されている。
セフンも勿論、その愛を返していますが。
ただ、そこが私とは違うところかな(笑)
だからこそ、このお話のセフンになりたいと思いました~^m^

本当に素敵なお話をありがとうございました。
これからも何卒よろしくお願いします。
またすぐにお伺いします♪

2017/08/08 Tue 22:43:17 URL

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