海の底、森の奥

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20170603

夢なんかじゃない(リアル短編・スホ誕生日企画)
 ひどく幸福な気持ちを呼び起こすにおいがドアを開けると鼻を通った。砂糖。小麦粉と、油と、砂糖だ。
はたしてローテーブルの上にはケーキを入れる箱、しかし通常のそれより横長のものが置いてあった。
俺は足をそこまで進め、どうしたこれ?と見下ろし、尋ねた。
パッケージは色彩に溢れ、その中に穴の開いた揚げた菓子の絵があった。Sweet dreams.と文字がそれを囲んで踊る。
「お土産」
 キッチンから物音がすることで、視界には入らないが誰かがいることが分かっていた。俺は肩から鞄を下ろし、ソファの傍らに置くと、その声で部屋にいっしょにいるのが誰かということが知れ、腰を下ろしながらわずかに鼓動が速まった。
 きっと俺が玄関のドアを開ける音に合わせて、お茶でも淹れ出したのだろうと思った。コーヒーかもしれない。いや、きっとお茶だろう。ノンカフェインのミルクティーか何かだ、多分。そんなどうでもいいことばかり考えて、自分の動揺に気付かない振りをした。
やはり盆にマグカップふたつを乗せたギョンスが、俺のいるリビングまでやって来た。俺は顔を振り上げ笑みを向けた。あまりうまくは作れていないだろうそれを。
 湯気の向こうにギョンスはいた。おかえり、と言いながら膝を付いて盆をテーブルに置く。
「お前が買ってきたの?」
 懲りずに笑顔を浮かべていた。声も陽気なそれにする。ギョンスはこ、こと、とはかない音を立ててガラスの上にカップと、丸い取り皿をふたつ並べた。
「うん。なんか人気のとこ」
「知ってるよ。テレビで見た。並んだのか?」
「兄さんが並んで買ってくれた、俺が仕事中」
 兄さんというのは最近ギョンスに付いているマネージャーのことだ。髭面の強面をさらして、おそらく腕でも組んで行列に並んでいるところを想像し、俺はほんとうの笑いが思わず零れた。
「あんまり我侭言うなよ」
 盆をカーペットに置いたギョンスは、目を伏せて答えた。
「うまいのかな、って言ったら、兄さんが俺時間あったら行ってきてやるよ、って言ったんだよ。兄さん絶対自分が食べたかったんだよ」
 ロケ先の、待ち時間中暇だったのだろう。そして確かに彼は食い意地が張っている。甘いものも大好きだ。
 立て膝を付いて箱の蓋を開けつつギョンスは言った。
「兄さん俺が仕事終わったらもうすでにふたつ食ってたし。二箱買って、ひとつ自分ち持って帰ったよ」
 若干呆れて俺はギョンスの動きを追いながら言った。
「そりゃ兄さんきっと嬉しかったろうな、食えて」
「うん」ぞ、ごそ、という紙の音を鳴らして黒目を向けたギョンスは問うた。「兄さんどれ食べる」
 口の周りをぐるりと囲んだ髭にざらめや粉糖を付けて満足げに頬張っている四十男を頭に思い浮かべていた俺は、目の前の自分を見つめるさらりとした肌をした新進気鋭の役者になりつつあるメンバーの印象的かつ稀有な顔と、向けられた箱の中のさまざまなかたちと色をした魅惑的なドーナツに意識を戻すと、その落差に心臓がひゅうっとした。
丸く突き出た唇が更に突き出るように動く。
「どれ」
「…じゃあ、普通の」
「わっかのやつ?」
「うん」
「兄さんらしいね」
 確かにそうかもしれないと思いながらまた微笑んだ。かさ、さ、と手を入れたギョンスが俺がリクエストしたひとつを皿に乗せる。じっと中を凝視すると、硬そうな棒状のものを取り、それを自分の皿へと盛った。
「お茶冷める」
 予想通り、紅茶だった。ちゃんとミルクも温めたらしく、まだ強い渦を巻いて靄は俺たちの前を通り過ぎていた。
 指で掴むと荒い砂糖の感触が皮膚を刺激した。懐かしさが何故か湧く。子供の頃特に食べたというわけではないのに、ドーナツとはとても気分を幼くさせる。
隣では光る白目を俺に見せるギョンスががじがじと棒を口の中で噛んでいた。
「うまいよ」
 まだ口に入れていない俺をさっと見てギョンスは言った。そうか、と俺は単純に嬉しくなる。喜んでいる誰かを見ると、とにかく胸が温かくなった。
「兄さん」
「ん?」
 ギョンスは俺が片手に持った浮き輪のようなドーナツに視線を走らせ、言った。
「そういうのって、なんか、沸かない?」
「あ?」
「分かんない?」
 そうしてギョンスは自分の指の間にあるドーナツをぷらぷらと振って、唇の端の一方を頬に近付けた。
 その光景を見つめて思考が一点に結論目指してまとまっていくのに二秒ほどかかった。答えを得た瞬間、ばっ、と声が出た。
「…お前、そういうこと言うのかよ」
 はは、と面白いほど顔の中身を変形させてギョンスは言った。
「兄さん顔真っ赤」
「やめろ」
 ドーナツを置いた俺は顔を背けてカップを取った。熱かったがごくごくと飲んでテーブルに戻す。
「兄さん」
「なんだよ」
 反応しすぎである自覚はあった。だがギョンスにこうしたことを言われるということほどショックを受けることはなかった。いやなのではないけれど、戸惑いを隠せはしない。
 さすがに大人気ないとは思い、首をギョンスの方に心持ちひねると、肩に手を置かれた。
 まぶたを上げて視線を上にするとそこにギョンスのそれがあった。近い。俺はいっきに小さな自分が脳の深い海の中溺れかかっている妄想が浮かぶ。
「兄さんにしか言わないよ」
 熱かった頬がかっとそれ以上に温度を上げた。
 眉間が変なふうに寄っているだろうと思いながら言葉を失っていると、俺と全然違う、低く深い声でギョンスが告げた。
「ねえ」もう片側の肩に手が置かれた。「しよう」


 ギョンスと付き合うようになってからどれくらい経つのだろう。そもそも、付き合っているということになるのだろうかと俺はいつも訝しむ。
ある夜ギョンスがしてきたのだ。キスを。ギョンスとキスをしたなどと頭で文字にするだけで俺は辛い。なんだそれと思う。だが同時に幸福でもある。
酔っていた。確かに。俺もギョンスも。
でもギョンスの目は本気だった。たいていギョンスは本気だ。することすべてに対しふざけることがあまりない。
それを知っているから俺は冗談で通すことができなかった。しかもそれを喜んでいる自分がいることに驚いてもいた。全然、気付いていなかった。そんな願望があることに。
夜だし、マンションのリビングであるし、いつの間にか眠ってしまい、夢を見ているのかと思った。だが現実だとも分かっていた。だってこんなにもキスが甘いということを俺は知らなかった気がした。ギョンスの舌はどんな砂糖よりも鮮烈な甘みに溢れていた。
今、俺たちは俺の部屋にいた。今日俺はひとりだった。ギョンスのことだからそれを知っていたような気がする。それを思うだけでも俺は得たことのないような興奮で体が鋭く反応した。
ベッドの上はくしゃくしゃだった。ふたりで向かう前からそうだった。後悔するが、どうしようもない。何も言わず服を脱いだギョンスが横になって俺を仰ぎ見た。
ボタンを外すのにもたつく俺の手を引っ張った。みっつだけ、繋がっていた部分が離れて、俺はシャツがはだけていた。引かれたまま倒れたギョンスに俺はくちづけられ、服を脱がされた。
「早く」
 ささやきを口の中に押し込まれる。
 金属音を立ててパンツが性急に双方から取りさらわれる。
「待てない」
 キスの音と共に言葉が耳に流れ込む。
下半身が空気に触れ、心もとなくなりながら、はやる気持ちもいや増した。
ギョンスは俺と交わるとき、ずっと淡く笑みを口に添えている。何かがおかしいというように笑うのをこらえているように見える。そうしながら俺にあらゆることをする。
全裸になったギョンスに、同様の俺がためらいながらものしかかる。ギョンスのものも、俺のものも、重力に逆らった格好になっている。いつ見てもほんとうのこととは思えない。俺はまたこれは夢なのではと考えを改める。自分が見たい夢を勝手に見ているだけなのではと。
明晰夢。
「来なよ」
 我に返させるようなはっきりとした声とまなざしが俺を射す。
 再び腕を取られ、ギョンスの体の上に倒れ込むようになる。
キスは執拗だ。こんなそれはしたことがない。
だいたいこんな唇の人間はあまりいない。
啄ばまれ、舌を食まれ、俺はとことん篭絡される。入れる前からそれだけで達しそうになってしまう。
なのにギョンスは重ねた俺たちのものを強くしごきすらする。あっ、と声を出した俺にふふ、とギョンスは笑う。
「ぬっるぬる」
 耳が湯につけたように熱くて取ってしまいたくなる。
ダウジングをするように、ギョンスは俺に触れ、声が上がるところを探す。荒いが丁寧でもある動き。会話するときそうでもないのに、こうしたときの彼の口と手は、言葉を使いはしないが饒舌だ。
俺は声が高い。そしてギョンスに弄ばれると、更にそのトーンは上がる。
それが恥ずかしくてしかたがない。ぎゅっと目を瞑り、しかし我慢できずに口を開けて時折声を漏らした。
「兄さん、いいから」
 諭すようにギョンスは言う。
「大きくなければ、ばれないよ」
 プライドがゆるゆると溶けていく。
薄目を開けるとギョンスの潤んだ瞳がある。俺にだけ、こうした目を捧げてくれているのだと思うと、否応なく感情がほとばしり、びくびくと一部は揺れた。
「あるよ」
 ベッドの下からもぞもぞと引っ張り出したものを手に擦りつけ、ギョンスはみずからの尻の間に指を入れた。そのさまがどうしたって慣れない。そして余計、熱に浮かされたように俺はぼうっとしてしまう。
 脚を広げたギョンスの股をもう今となっては食い入るように眺めた。濃い毛が生えている。粘度のある液で全体が濡れている。棒と、穴がある。
「早く」
 ぷつりと俺は何かが切れる。
ギョンスの中に入るのは、他の誰かに入るのとはわけが違う。
耳のすぐそばでたまに笑いが聴こえる気がする。だけどそれは、ほんとうは全然、いやじゃない。



おわり



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2017/06/04 Sun 08:51:12

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