海の底、森の奥

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20170528

二重唱(「シング シング シング」番外編・人気投票御礼企画9)
 豚足を食べに行こう、とギョンスが言った。
それはほんとうに突然で、ジョンデはえ?と言いながら、それでも誘ってくれたということが顔が紅潮するほど嬉しく、深夜ではあったが早速いそいそと出かける支度を始めた。
仕事を終え、やれやれとひと息をつき、もう寝ようかという時間帯のドライブであった。
ギョンスが運転する横に座ったジョンデは、高揚と幸福と眠気で体がぽかぽかとした。横に長い、メンバー内でも特に切れ上がった目尻の彼の目は、幅の広いふたえがよりその幅を広めて中身を隠そうと試みていた。道路脇の灯りが彼の半ば閉じた瞳の上に落ちると、その表面が湖の水面のように深くうねった。
ほとんど色のない車内、訪れる橙、ギョンスの藍色を髣髴とさせる鼻歌。
Unforgettableが流れていた。父と娘の、にわかには信じがたい手触りの声が絹糸の織のように絡む。
その上にふわりと薄衣をまとわせるかのごとくギョンスが声を乗せていた。
密室に三者の豊かなビブラートが溢れ、目を閉じたジョンデはこれは夢なのかもしれないと思った。耳に入り込む音が胸にまで落ち、そこでぐるぐると渦を巻いてジョンデの心拍を上げた。彼の絶え間ない欲求、いくつかある抗いがたい欲求のひとつが頭をもたげてジョンデを襲った。だけど声を出すどころか、口を開くことも難しかった。上に向いた口角はそのままに、唇の上下が離れることはなかった。人差し指に巻かれた絆創膏を、引っ掻くように親指でいじる。自分の声を重ねて、この空間が壊されることを恐れていることが悲しかった。
あ、ナタリー・コール死んだんだっけ。
そんなことも思い、ジョンデはあんなにも浮き立っていた心が不思議なほどしぼんでいくのを感じ、しかたなく眠ってしまった振りをした。
駐車場に到着し、降りたふたりは暗闇の中、街灯と電飾のおかげでなんとかちらちらと姿が現れるのを互いに追いながら、店の方へと足を進めた。
繁華街から少し離れたところにその中華料理店はあった。巨木が数本店の脇に植わっており、もくもくとふくらんだ黒いものがこちらに覆いかぶさってくるように夜が感じさせ、見上げたジョンデは思わずたじろぎながら言った。
「あれすごいな」
 仰いだジョンデの視線の先を追ってギョンスは顔を上げた。
「ああ、椎の木?」
 看板の朱色がギョンスの顔を照らしているのを振り向いて目に映しつつ、ジョンデは問うた。
「シイ?」
「うん。これ店立つ前からずっとここにあったんだろうな」
 そう告げるとギョンスはジョンデの手首を掴んで店へと促した。触れられたことにどきりとしながら、まっすぐ目線の到達する澄んだうなじを見つめて階段を上り、扉を通った。
二十四時間営業のこの中華料理店は、忍んでくる一般客とは勤務時間の異なる客のために、個室を常に準備していた。そういった客はかなりたくさんいるようで、彼らの寵愛がこの店をゆるぎないものとしていた。一見ただのよくある店といったたたずまいをしているため、そういった側面が世間にほぼ知られていないことも非常な強みだった。人の若干途切れた奥まった土地に立つ、大木に囲まれた赤い看板の店は、毎夜人目を避ける人間たちでひっそりと賑わっていた。
その中の一室に通されたふたりは、室内の、外観から想像するよりずっと豪奢なさまをとっくりと眺めた。繁盛のほどが窺えた。
「よく来んの?」
 丸テーブルに、ギョンスと斜に座ったジョンデが尋ねた。
「いや、二回目。この部屋はこうなってんだな」
 前来たときはもっと広い部屋だった、とギョンスは天井を見上げながら続けた。
 誰と来たんだ?
その問いが尖った喉元までせり上がる。だが口からは出さず、代わりに、へえー、すごいとこだな、俺初めて、とだけ言った。
「聞いたことはあったけど」
「俺も連れて来てもらったんだよ、前。映画撮るとき、スポンサーの人たちにさ。そんときも夜中だったな」
「そっか」
 なんとなく安堵する。店員が現れて、飲み物を尋ねたのでふたりして烏龍茶と答えた。
 品書きを見ながら相談して頼むものを決め、グラスを運んできた店員にその内容を伝えると、揃って冷えた烏龍茶を手に取った。濡れた絆創膏がふにゃりとしなる。
「撮影どうだった」
 からからと氷の転がる音が音楽のない部屋に効果音のように目立って鳴った。部屋は完全な個室になるつくりで、外の音はまるでしない。マンション以外でこんなにもふたりきりになったのは初めてなのではないかと、ジョンデは考え、その考えに緊張した。太い首のその筋がぴ、と張ったように感じた。
「大変だったよ」
「そっか」
「勉強になったけど」
「うん」
「お前も忙しかっただろ」
 ノックがされ、返事をすると扉が開いた。片言の韓国語を話す店員が注文を受けた店員と共に手際よく料理を赤く円を描くテーブルに並べる。
「ごゆっくり」
 そう言うとさっさと出て行く。
さまざまな、大量のスパイスの香りがいきなり部屋に充満し、ジョンデは湯気の向こうのギョンスと料理に交互に目を走らせながら、やはり自分は夢の中にいるのではないかというようなおかしな気分に再び浸った。
「食べるぞ」
「うん」
 煮込まれた豚足は既に来ていた。
「豚足だな」
「これのために来たんだ」
 真面目くさってギョンスは言う。ふは、とジョンデは破顔した。
 手で直接掴み、ギョンスはすぐさま食べ始めた。
「お前も食べろ」
と合間に言って。
「分かったよ」
 言われるままに指で掴んだ。爪が付いた足、そのもの。毛が皮膚に触れ、一瞬ぞわりと背筋が震えた。
 噛り付くジョンデを横目で捉えながら、ギョンスは言った。
「お前」
「ん」
「その指どうした」
 唇を濡らした双方は互いの目とジョンデの指に視線を送った。
「ああ」もっとふやけた絆創膏を見つめてジョンデは答えた。「やけどして」
「やけど?」
「うん。お茶淹れようとしたら、ちょっとお湯かけちゃってさ」
「気を付けろよ」
「そうだな」
 膨らんだ頬の中身を喉の奥に流し込みギョンスは言う。
「肌もなんかいつもと違うしな」
「え、そうか?」
 実は少し自身でもそう思っていた。化粧品のどれかが合わなかったのか、睡眠不足からか、年齢のせいか、そのすべてか、ともかくジョンデはここのところそんなに悩むことがこれまでなかった肌の乾燥を感じていた。
 汚れていない指の外側を、腕を伸ばしてギョンスはジョンデの頬に触れさせた。さりさりと肌の上を動くその感触を受けながら、ジョンデは食べるのをやめてギョンスの自分を向く目を見返した。
「やっぱな」
 えらから顎までなぞられる。
落ち着いていた胸の鼓動が、思い出したように速度を速めた。太鼓の鳴るような音が身内からして、ジョンデは豚足を持ったまま押し黙る。
 ギョンスが椅子をジョンデに寄せた。
 何も言わずにジョンデの手から豚足を取る。皿に置くと、指先のあまり役に立たなくなったやけどのカバーをそろそろとはがした。ジョンデはただギョンスの下ろしたまつげの黒さだけを目に映し、されるがままになっていた。
 隠れていたところはまだほのかに赤く、外気に触れて変な感じがジョンデはした。じっとギョンスはそこを見ている。
「大丈夫だよ」
 医者のように状態を診るギョンスに向かって、こらえきれずジョンデは口を開いた。
刹那、ギョンスは上目でジョンデを見た。その誰とも違うまなこのようすに、常と同じくジョンデはさらわれる。
ぱ、と口を開けたギョンスは、その掴んだ手の指先を、その中に入れた。
濡れた口内で指は執拗に舐められた。驚きと悦びでジョンデは知らず眉間を寄せる。舌が指の周りで踊る。敏感なそこはくちづけと同等の快感をもたらした。既に多くの薬味で活性化し始めていた体が、反応よくもっと熱を回し出す。
 まだ来ていない品が今にもやってくるのではと、ジョンデは残った理性で声を発した。
「…ぎょんす…、人が…」
 ふわ、と口を離して早口でギョンスは応じた。
「平気だよ。ここ返事ないと絶対入ってこないんだ」
 そしてまた、今度は違う指、汚れたそれぞれを音を立ててギョンスは吸った。
破裂音が部屋に満ち、ジョンデはその都度股間がしびれた。食べに行くということで、緩めのシルエットの上下を着てきた自分をよくやったとみずから褒めた。
十本丁寧に舐め上げられると、ようやくジョンデはギョンスが自分の顔を見たのに合わせて視線を出会わせた。困ったような、おかしな表情を浮かべている自覚があった。情けない、決して誰にも見せたくはない顔。だがギョンスによって他愛もなく作り出されてしまう顔であり、ギョンスはジョンデがそうなることを喜んでいる。そう、ジョンデは知っていた。
「豚足じゃなくてお前食いに来たみたい」
 眉ひとつ動かさずギョンスは言った。
 そんなギョンスにジョンデは脅かされ、同時にこれ以上ないほど惑わされる。食ってくれ、と願う自分に恐怖した。
手を解放すると、ギョンスは手を拭って鞄を漁り、きれいな絆創膏をジョンデの指にさっと貼った。
これでよし、と呟くと自分の皿へと戻った。もともとの目的であるところの豚足にかぶりつきながら、ジョンデに声を掛ける。
「ほら、食え」
 色のあまり変化しないジョンデの頬はしかし今、しっとりと染まっていた。数拍遅れてうん、と答える。
「食べないと」
 コラーゲンの塊に次から次へと手を伸ばし、芸に携わる青年たちはほどよい味付けとむにむにとした触感を楽しんだ。
 他の料理も加えられ、思い思いに食べながら、会話しているさなか、ギョンスが言った。
「ここ、きっと秋になったら椎の実を出すぞ」
「シイノミ?」
「うん。外の木の実だよ。炒って出してくれると思う」
「へえ」
「そのときにまた来よう」
 丸く厚ぼったい唇をあらゆるたれで汚し、輝かせ、ギョンスはジョンデも見ずにそう告げた。
その約束がどれほどたやすくジョンデの脳を丸い骨の中、浮き上がらせたことか。
返事を消え入るような声でした。唇の端と端の切れ込みを深めて。
「あとさ」
 さかった血をいさめるように烏龍茶を干したジョンデにギョンスは言った。
「Unforgettable、練習しよーぜ」
 ラジオかなやっぱり、とやはりこちらに目もやらず話すギョンスを前に、ジョンデは胸のあたりが膨れたようになり、しばらく何も喉を通すことが叶わなかった。



おわり




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