海の底、森の奥

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20170526

さざんか効果(「束の間から」番外編・人気投票御礼企画8)
「なあ」
 こちらを向く小さな目。
「ゆず茶飲むか?」
 俺は内心首をひねっている。手に持った水筒を相手に少し掲げるようにしながら。
「飲む」
 ふうーと息を吐くベッキョンの顔には疲れが滲んでいた。わずかに眉の下全体が落ち窪み、皮膚の色に赤みがない。
水筒を渡しながら、俺は胸の中がちりちりとするのを感じていた。先刻の疑問は毎日毎分毎秒のことで、それは絶えず頭のあちこちにありながら、それでもこういうベッキョンを見ると、地団駄を踏みたいようないかんともしがたい焦燥のようなものに襲われ、参った。
受け取るベッキョンの細い指の先はひどく冷えていた。
「さんきゅー」
 蓋を開けると湯気が上がる。それを浴びたベッキョンが一瞬気の抜けた顔をしたことで、俺は喉の奥がしゅるしゅると通りがよくなる。
「あちーぞ」
「うん」
 唇を尖らせて息を吹きかけているベッキョンは子供のようだ。点のような黒目は寄り、改めてまた思う。まったく好みの顔じゃないなと。
他の色の混じらない澄んだ青がどこまでも上に広がっていた。雲の色もあくまでも白い。
茶色に輝く馬体が視線を下ろすと鮮やかな緑の上、あちこちに目に入る。茶色以外に、葦毛、黒、真っ白と多様だ。
施設近くの生垣の傍に設置されたベンチに腰を下ろし、俺たちは休憩していた。スタッフは向こうに固まって談笑している。久々のただただのどかな空気だった。
とにかく俺は馬たちを見、触れ、彼らといっしょに過ごせることが嬉しく、楽しくてしかたがなかった。仕事の一環ではもちろんあったが、こんな仕事ならいつだって大歓迎だ。
乗馬練習が俺以上に必要なのはむしろいっしょにやって来たベッキョンで、なのにこいつは疲労も手伝い、乗り気でなかった。馬に乗ることを多少怖いと思っているらしく、さっきもなんとか背に乗れはしたが、走るところまでいかなかった。俺が笑顔を抑えられず、サイコーだな、と感極まりながらギャロップさせたくてしようがなくなっているとき、ふと目をやると固まった表情のベッキョンが体を強張らせて馬の上にいた。ほとんど青い顔して、脂汗さえ流しそうなやつを見て、しばらくしてから俺は休憩を提案した。あそこまで安心したようすのベッキョンを見たのはいつ振りだろうとしみじみ思った。
そろそろとボトルに口を近付けたベッキョンは、するりと中身を吸い込んだ。それでも「あち」と声を出す。
「へーきか」
 思わず笑って俺は尋ねた。
「うん。うまい」
「どーも」
 鳥がかなり上の方を飛んでいくのが声で分かった。ぶるる、ぶるる、という馬の鼻音もしょっちゅう聴こえる。目を閉じると、まだかなり気温は低くはあったが、太陽が体中に降りそそぎ、俺はいっとき、幸福にただ満たされた。
「ん」
 声の方を振り向くとベッキョンが水筒を差し出していた。唇を手の甲で拭っている。
「もういいのか」
「うん、またほしくなったら言う」
「もうやらねー」
「はくじょーもん」
「じょーだんだよ」
 軽い笑いが空気に溶ける。
深い溜め息を耳が捉え、俺はキャップの後ろを直しつつ体ごとベッキョンに向いた。
「なんだよ、もうギブアップか」
 伸びをしているベッキョンは目が半分ほどしか開いていない。色の抜けた髪と顔の色が混じり合い、水彩画のようなたたずまいを覗かせていた。
「…高くてさあ」
「馬が?」
「うん」
「お前背低いしなあ」
「低くはねーよ」
 半笑いでそう返すベッキョンはしかし確かに不安げだった。
「まあ急には無理だよ、慣れないと」
「分かってるよ」
「…なんか大変な仕事でもあったのか」
 視線を落とすベッキョンはますます水をたっぷり含ませた絵の具で描いた誰かのようだ。消えていきそうな気がして、手でやつの肩を掴みたくなる。
けれどそんなことはせず、片足を椅子にかけ、帽子のつばを上げて俺は待った。
「…全体的に」
 言いながらベッキョンは腰を折って地面に落ちたピンク色の何かを取った。
 指先でそれを弄び、呟くように言う。
「…自信って簡単になくなるよなあ」
 濃いピンクに染まったそれは花びらだった。伸ばすようにベッキョンはその表面を何度も撫ぜた。
 俺は瞬きを繰り返しながら、じっとそのさまを見つめた。
やはりこいつは俺の好みでは絶対ない。なのに。
そのとき俺はベッキョンの、全身の色彩の淡さ、まつげの影、尖った爪の下にある、鮮やかな桃花色、そのすべてに、言いようのないほど幻惑された。
耐え切れず手を取った。
ほろりと花びらが落ちたのと、ベッキョンの白目に浮かんだようになった黒目が、目の端に映った。
建物内のトイレを目指す。個室にまっすぐ入り、鍵をかけた。
「ちゃ」
 と言いかけたベッキョンは俺を見上げて押し黙る。蛍光灯は部屋の中のすべてを照らすことはない。しかも俺が影を作る。その中で、ベッキョンの灰色の顔の上、あんなに目立たないと日頃思っている、目ばかり異様に光っていた。見開いたそれはおののくように震えている。
いつの間に、俺にとっての引き金になったのか。
俺は顔を下ろし、壁に背をついたベッキョンの額に鼻と唇を置いた。髪と肌の香りを吸い込む。口は自然開いてしまい、勝手に髪の付け根にくちづけていた。
「チャニョル…やばいよ…」
 胸の辺りの服を両手で掴み、なだめようとするベッキョンなど無視をする。唇に温度を感じたら最後、止めることなどできなかった。
鼻の頭で顔をなぞるようにして降りると、顎を上向かせて目と目を合わせた。髪が絡むと、まつげさえも出会いそうになる。ベッキョンは俺がこういうときに見つめると、何かに心底驚いたように言葉を失い、眉を寄せる。
キスをすると、ゆずの香りがふわりとした。
飴のような舌を探すことはたやすい。そして引き寄せられることをほとんど拒まない。ベッキョンは淫猥だ。これまで抱いたどの女よりもずっと。
ふ、ふ、と息を零すベッキョンのベルトを手早く外し、下着ごと下げた。既に膨らんだ性器がぼろりと顔を出す。最後の抵抗というようにかすかに腰をくねらせるのにやつを殴りつけたいほど欲情した。
ベッキョンのペニスは大きくも小さくもない。ただとてもきれいな色だ。そう、ベッキョンが拾った、あのひとひらの花弁のように。
擦りあげると鼻にかかった声を出す。だが場所が場所だと分かっているため、より俺の唇に噛み付くようにキスをしてきた。
唇をもっと強く押し付けて舌を突っ込みながら、俺は自分のパンツも下ろした。取り出した自身とベッキョンのそれを重ねて、泡立つようにとにかくしごく。
「ちゃ、そ、れ」
 眉間に縦皺の濃く入ったベッキョンは目を開けることもできない。息も絶え絶えに震えながら俺の首に手をかけ、腰を落とすまいと必死だ。
このところ頻繁にはこうしたことをしていなかった。
ベッキョンがもうやめようと言い、それを受け入れ、やはり拒絶してから、俺はベッキョンに対し自分自身を持て余した。自分の意思と感情が乖離し、そして体はまた自己中心的にふるまってはばからない。触れたい、なぶりたい、犯したい。惹かれるはずのないその顔立ちが、俺をもっとも奮い立たせるそれに変容するのが見たくて見たくて死にそうだった。
衝動に駆られ唇を奪ったり、抱きしめたり、ほとんど強引に抱いたりをした。
その都度ベッキョンは戸惑い、拒み、結局受け入れ、終えると怒る。しばらく口を利いてくれなくなることもある。
さすがに疲弊し、俺もベッキョンから距離を置こうと努力していた。そして時間は経過した。
今、ベッキョンが何を求めているのか、俺以上に理解している人間はいない。
射精する寸前まで持っていくと、俺はべとべとに汚れた手をやつの股の間に滑り込ませた。中指を立て、穴の周辺をくすぐるように揉んだあと、コツを思い出しすうっと入れた。
「ふあっ」
 耳の横で声がした。肩が小刻みに揺れている。
抜き差ししながら今度は前を優しく、とにかく優しく撫で擦る。
「はあー、はあー、はあー」
 我慢してはいるが音になってしまっている声で、ベッキョンが行為の最中のベッキョンに生まれ変わっていることを知る。俺は先から液が滴る。これが欲しいと泣いている。
「ベッキョン」
 低音で呼びかける。熱くなった耳の中へと吹き込むように。
これまでの、数限りなく行ってきた俺とのセックスを思い出したように、ベッキョンはいちばん入りやすい角度で尻を突き出しながら壁に手を付いた。指の抜かれたアナルは濡れながら蠢き、ひたすら訪れを期待している。
ベッキョンを貫くと何故だか体から火花が散っているような感覚に陥る。いつもだ。
その生命の塊のような存在に俺が取り込まれたような気になるからかもしれない。これまで誰と交わっても、そんなふうに感じられたことはなかったから。
常のことながら、時間はなかった。俺は急いだ。ベッキョンも。
最も早いゴールへの道を辿りながらふたりで駆けた。ギャロップ、ギャロップ、ギャロップ。風を切る錯覚と共にベッキョンから抜いた。紙で抑えながら射精し、俺は笑っていた。ベッキョンがいきかけているのを知っていたため、こちらをばっと向かせてくわえた。懐かしい舌触りと味わいだった。鼻を抜ける独特の、だが薄いにおいは、きっとベッキョンゆえだろう。やつは細い指を噛んで快感から出そうになる嬌声をやっとのことでこらえていた。
精液すべてを飲み干すと、服と呼吸を整え、個室を出た。
手を洗う俺たちは呆けた表情をふたりして浮かべている。だがベッキョンの面には、空の下では認められなかった、ひとしずくの赤がある。
俺は無意識のうち、その頬に指を置いた。
 とろりとした目の中を、しかしもともとの瞳の色をわずかに戻したそこを、俺を仰いでベッキョンは向けた。
「…さざんか効果」
 笑みをどうにか混ぜて言った。
「…なに?」
「なんでもない」
 できればいつでも、どこででも。
キスをし、抱きとめ、囁きたい。




おわり






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だんだん、だんだん | 明星によせて 10(東方神起・パラレル長編)

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2017/05/27 Sat 03:55:15

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