海の底、森の奥

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20170524

まじないの使い手(「来訪者は真夜中に」番外編・人気投票御礼企画6)
 ちょっとピントのずれた男だ。
それが俺の、あいつへの第一印象で、そのあともそれはあまり変わらなかった。つまり今も、そう思っている。
多少付き合いにくいなとすら思った。俺は自分の性格をよく知っている。気遣いのうまい相手といっしょにいないと、実はすごく、疲れてしまう。とてもじゃないけど気の回るやつとは言えなかった。
だが、誰もが見れば分かるとおり、ほんとうにきれいな男で、これはなかなかやっていくのが厳しいところがあるなと初対面で思いながらも、こんな見た目の男が現実にいるのかと、呆気に取られてもいた。
決して視線を逸らさなかった。いつも、目の中を潤ませて、見つめる相手が自分に骨抜きになるのを待っていた。
ルハン。
自信家で、快活で、兄貴肌の、元、メンバー。
 俺のことを好いていた。困るくらい、そう、深く考えると、仕事が手に付かなくなりそうなほど悩むくらい、俺のことを好いていた。

中国での仕事があると会うようになってから、どれくらいになるだろう。
メールのやり取りは以前ほどではなくなった。そもそもやり取りなどというものではなく、あいつが一方的に送りつけてきていただけだったけれど。
だがまだ、定期的に、俺のパソコンへと手紙は届く。主に深夜、もう寝ようかという時間帯に。
You've got mail.
その言葉が嬉しいのかそうでないのか、俺は未だによく分からない。最初からずっと、そうだった。
眠る前に読むことも、起きてから読むことも、むしろ仕事から帰ってから読むこともあった。そのときどきによって違った。
読むと、あいつがいたときのことを驚くほどくっきりと思い出して、まるで味やにおいや手触りまで感じられそうで、俺は苦しくなってよく、窓を開け放した。そして大きく息を吸った。肺に新しい、今の風を入れるために。
会ってから、そしてそれが繰り返されるようになってから、あいつの強い郷愁の色が文面から減って、俺はパソコンに向かうたびに緊張が走ることは少なくなった。
代わりにまたそれまでとは異質なものが滲み出てはいた。どちらがより困惑させられるのかは判断がつかない。しかし逃げ続けていたときよりも、ある意味自分の気持ちは楽だった。
いた頃と、いなくなってからと、どちらがいいなんて言えはしない。それはいた頃の曲と、いなくなってからの曲のどちらがより優れているか、という問いと同じくらい、答えられることではない。
ただ、ルハンという男が、いてもいなくても変わらないなんてことにはならないのは、やつを知っている者ならば分かるだろう。再会して―――ボールを返して―――話をして。そして思う。よくこんなやつといっしょにいたなと。それと同時に、よくいないでいられたなと。そんなふうに感じられることに、内心ショックを受けながら。

今回は夜、会うことになりそうだった。
仕事を終え、やはり薄暗くなった街の中、約束の場所に向かった。メンバーは知らない。知っているのは、と言うか気付いているのはイーシンだけだ。多分。きっと。そうだといい。
あいつの指定したホテルに着き、部屋までひっそりと足を進めた。人の目がとても気になる。できるだけ目立たない格好をと思って来たし、実際こちらを見ている人間はいないようだったけれど、あらゆる意味でいたたまれなかった。
ノックをすると、返事があった。
解錠の音、そしてドアが開く。
「やあ」
 そこにはあの笑顔がある。同郷の人間のそれとはまったく異なる、目尻が下に流れる甘やかな表情。イーシンにも、同じニュアンスがある。だからイーシンを見ていると、たまにルハンを思い出した。
「よー」
「入れよ」
 相変わらずなかなかいい部屋を選んでいることに俺は少々目を見開く。きょろきょろ首を回していると、コーヒー飲む?と聞かれた。
「うん、悪い」
「はっきり言ってうまくないから」
「期待してねーよ」
 はは、と笑うその目元と口元から視線を離す。夢を見ている気分になる。
ふたつの湯気の立つカップを持って、俺が腰を下ろした椅子のところにルハンはやって来た。丸テーブルにカップを置き、斜向かいにある椅子に座る。
「ミルクとか入れないのか」
「うん。このまま飲む」
「変わったな」
「ミンソクのまね」
 また、笑う。ふふ、と口の中で声を転がすように。
カーテンは開けられており、夜景が大きな窓いっぱいに広がっていた。俺たちふたりがその中に亡霊のように映り、自分たちを見返している。
 カップに口を付け、言った。
「仕事何してんだっけ」
「今?今はまた、映画の撮影」
「どんなの」
「えーと、恋愛もの」
「悲恋?」
「うーん、とも言えないかな。三角関係だけど」
「へえ。男ふたり?に女ひとり?」
「うん」
「お前選ばれんの」
「それは見てよ」
 へへへ。長い腕が伸びてきて、俺の二の腕を軽く叩くように触れる。その感触の生々しさに、体の毛が逆立った。
「共演者って、今までいっしょに仕事したことある人?」
 カップから上る湯気だけを見て俺は話した。
「ううん、ない。男の人は、多分ミンソク知らないんじゃないかな。最近すごい中国で人気出てきた若手の子。わし鼻で、目が大きい」
「へえ。わし鼻?」
「うん。なんかすごい顔の中のパーツが大きい。ちょっとタオっぽい」
「…俺、わし鼻好きだよ」
「え、まじ?」
「うん、いいなと思う。ちょっとうらやましい」
「そーかー?」
「男っぽいじゃん、なんか」
 えー?と首をひねって眉を寄せるルハンはおかしく、俺は今日会ってから初めて笑えた。それに気付いてほっとした。
「…じゃあ、俺わし鼻だったら、いいなって、思う?」
 今度はルハンが目をテーブルに置いた手の上に落としていた。そのようすを視界に入れ、俺は質問の醸し出した雰囲気に血を送る器官の音が大きくなり始めるのを感じた。
「…お前は、わし鼻、似合わないよ」
「…そっか」
「それに別に、わし鼻の男が好きってわけじゃ」
 言いながら何か言葉の使い方を間違ったことを悟る。しかし後の祭りだ。ルハンが俺を向いた。
「…ミンソク」
「俺は自分が、そういう鼻だったらなとか思ったりするってだけだよ」
「…俺は今のままのミンソクがいいよ」
 音はない。何もない。時計の音すらこの部屋はしない。だから自分の中の音だけが轟音のように轟く。
「…わし鼻になったら、それはそれでいいけどさ」
 たぶん、と続けるルハンはとてもルハンらしかった。思わず唇が緩む。
「三角関係とか、ほんとになったらきついよな」
 ワントーン上げた声で俺は言った。空気の中でかたちが見えるかのように、しっかりと。
「女優さん、きれいな人なんだろ?」
 無理矢理に笑顔を作る。さすがに俺だって、それくらいはできるようになっていた。
 ルハンは俺の顔に、あの例の目を置いたままだった。篭絡しようと画策している、卑怯で魅惑的な、またとない目。
「…きれいだよ。人気もあるし」
 かたちのいい、薄い唇だけ動かして、人形のようなルハンは答える。
「いいじゃん。うらやましーよ」
「嘘つけ」
 にやりと笑う。そのさまのとげとげしさに、逆立った毛が張り詰めた。
「ミンソクは嘘ばっかりつく」
 溜め息交じりにそう呟くルハンに、何故だかかっと血が上った。
「嘘じゃねーよ」
 いっしゅん動いていたまなざしがこちらに戻った。光の加減で色の違うまなこ。今は青と緑が混じっている。俺に魔術をかけようと力を込めて。
「じゃあ、これから言うことには絶対本心を言えよ」
「…なんだよ」
「言うって誓えよ」
「…なんだってんだよ、分かったよ」
 カップの取っ手をいじくりながら、俺は逃げるように下を向いた。意気地のなさが腹立たしく、なんでここに来たのだろうと自分をなじった。
 立ち上がった気配がした。
顔を上向ける勇気はなかった。毎回そうだ。
こういうことを口にし、態度にし始めたルハンを相手にすると、俺はなすすべなく時が過ぎるのを待ってしまう。
「…ミンソク」
 見下ろしているだろうルハンの口から、女ならきっとこんなふうに囁かれたいだろうという高さと響きの声が降った。
「こっち向けよ」
 言われたとおり、渾身の力を込めて顎を上げた。目と目がぶつかる。瞳を揺らすまいと思う。
「俺と会いたくないのか」
 俺の前に直線のように立ったルハンは、彫像のようだった。高価そうなペンダントライトを受けて、鼻や唇、首、あらゆる高低に濃い影が浮いている。
 あ、と出した声ががらがらで、俺は真っ赤になりながら咳をし、改めて言った。
「会いたくなかったら、来てない」
「俺が話すこと、聞きたくないのか」
「聞きたくなかったら、来てない」
「俺がこういうふうに問い詰めるのが、怖いのか」
 詰まった。
ここで目を背け、誤魔化しで応じたら、今後俺は自分が自分でいやになる、と分かった。
「怖くない」
 言った先から唇が震えた。そしてそれを見られていた。
「嘘ついたな」
 嘘をついたつもりはない。そんなことはないと、ルハンと自分に向かって、言ったのだ。
 だがルハンは信じる気などない。それは顔の中に表れた、口にしていない言葉で如実に伝わってくる。
「嘘つきには罰が下るんだぞ」
 俺は、もう全身が震えていた。
ばっと立ち上がり、ルハンの横を通って部屋の奥へと走った。後ろから激しい足音が聴こえてくる。
ベッド脇のカーテンの前まで来たところで羽交い絞めにあった。
「やっめろ」
 大きな声を出したつもりだった。なのに聴こえたのははかない、ようやく耳にできるほどのそれ。
俺よりずっと上背のある男が長い腕で俺を捕らえていた。力は俺のほうが何倍も強い。けれど体の芯が溶けたようになり、腕を振りほどくことができない。
「ミンソク」
 耳の中に声が押し込まれた。細かく生えた毛、すべてが揺れる。
腹に回った両腕に力が入った。
「ミンソク」
 涙声のようなルハンの言葉。俺の名前。
 なんで俺はこうしているのか。
いったいどうして?
百万個ほどのWhyが全身に満ちる。部屋全体にまで飛び出ていくほど。
ふたりの体が揺らいだ。
ベッドに倒れこみながら、いつの間に俺の方が訪れる側になったのだろうとふと考えた。
ルハンの髪が俺に雨のごとく降りかかる。
中国語で何かを言っている。
その言葉の意味を、知らない振りをして、夜は過ぎた。



おわり




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2017/05/25 Thu 02:40:38

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