海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160718

受容について 8
段落を追いながら、シウミンは内容に集中しようと額に浮かぶ汗をまたタオルで拭いた。
脚本をめくる指先も湿って、紙がふやけたようになる。
口元にタオルを持って来ると、ふー、と息をはいてシウミンは手元から目を上げた。
ダンス練習を続けていたd.oが、鏡の中のシウミンのようすを見て、動きを止めた。音楽だけが前進を続ける。
息の荒いd.oの口が少し隙間を作っている。顔全体にしっとりと水分をまとい、のろのろとプレーヤーを止めに向かう。シウミンは口にタオルを当てたまま壁に頭をもたせかけ、目を宙に泳がせていた。
「どうか、しました?」
d.oはシウミンの横にひとり分くらいの間を空けて腰を下ろす。手には水の入ったペットボトルとタオル。顔や首を拭きながら喉を潤す彼のさまに、シウミンは目をやった。
「どうもしないよ?」
微笑んで答える。自らもスポーツドリンクを口に含む。
「そう?…疲れた?」
d.oの視線を感じながら、自分のそれは落とし、シウミンは投げ出した足元の脚本を見た。
「…いや。演技って難しいなあと思ってさ。ギョンスすごいよな」
手に取り、脚本をぺらぺらとめくるシウミンから目をそらし、
「すごくないですよ。いっぱいいっぱいです」
照れくさそうにペットボトルの蓋をいじる。
「ううん。ギョンスはいい役者になるよ。俺すごい楽しみだもん」
「やめてくださいよ」
「謙遜すんなって」
「嬉しいですけど…でもほんとに、全然ですよ。楽しいですけどね」
シウミンはd.oの俯いた顔を見た。
「…楽しいのか。そっか。俺楽しいとは多分絶対思えなそうだなあ」
自嘲気味な笑いを漏らしてシウミンは再び脚本に目を落とす。
かり、かり、と蓋の溝に爪を立てながら、とつとつとd.oは言う。
「楽しい、と言うか…。やりたかったし、やれて嬉しいし、…面白みを感じます。いつものただの自分ならしないようなことができるし」
ほんの少し、唇の片方の端を持ち上げて話すd.oに、羨ましさと誇らしさ、そして満足を感じてシウミンは黙った。
ぱ、と顔を上げてd.oはシウミンを見る。
「だから兄さんも、何かしら得るところがあると思いますよ」
低音で響く力強い声を投げかけられ、シウミンは思わず笑みを浮かべる。
「うん。ありがとな。なんとかやるよ」
ピンク色の歯茎が覗く。
「…でもやっぱりちょっと、疲れてます?」
スポーツドリンクを喉を鳴らして飲むシウミンの顎のラインを見ながら、心配を表してd.oは言う。自分の鞄を引き寄せて中をごそごそと探った。
「はい。よかったら」
シウミンの前に差し出された手の中に、小さなチョコレートの塊が乗っていた。
大きな瞳をd.oの手と顔に交互に動かし、戸惑いを隠してシウミンは言う。
「うん、ありがとう。もらう」
へへ、とシウミンは笑い、相手の手からチョコレートを受け取る。
「気、使わせてごめんな」
包みを剥がし、姿を現した焦げ茶色に艶めく立方体をシウミンは見つめ、香ってきたカカオを吸い込んだ。ぽん、と、なんでもないように口へ放り込む。
口の中に懐かしい味が広がる。懐かしさと、あと他に何かが混じった味。
「…よく気がつくよなあ、ギョンスは」
「こんなことくらいで、なんですか」
はは、とd.oは笑う。
「そんなことないよ。…ギョンスと付き合える子は幸せだよ」
「なんですか、やめてくださいよ」
ほのかに顔を染めてd.oは更に笑った。
はー、と肩を上下させてシウミンは大きい溜め息をつき、腕を伸ばして大の字になった。床がひんやりと肌に触れ、喉の奥にチョコレートが流れていく。
「…兄さん、好きな子がいるの?」
おそるおそる、と言ったようすでd.oの声がシウミンに降ってくる。
好きな子?
初めて耳にしたように、シウミンはチョコレートと一緒にその言葉を飲み込んだ。
好きな子なんていない。ずっと。
「…いねーよそんなのー」
「…ほんとに?」
シウミンは目を閉じていた。まぶたの上の蛍光灯が弱まった。目を開けると、d.oの顔があった。
「うわっ」
思わずシウミンは腕を顔の前で交差させた。しゃがんでシウミンを覗き込んでいたd.oは、笑いながら言う「そんなに驚かなくても」。
シウミンは起き上がり、頭をくしゃくしゃとかき混ぜて目を伏せた。
「驚かせんなよー」
「…兄さん顔が真っ赤だよー」
笑いながらそう言ったが、頬から耳、首へと色を持った兄貴分の戸惑いを見て、d.oはなんとなくそこに踏み込んではいけないものを感じる。
「からかうなって」
タオルを取って頭から被る。
目だけ出したシウミンは、どんなに筋肉質な体付きをしていても小学生のようだ。同じような印象を持たれやすいd.o自身でさえも、年上なのに悪いなと思いつつ、恥ずかしがるシウミンを愛らしく感じた。
「兄さんだって、付き合える子は幸せだよ」
シウミンは近くでゆるい体育座りをしている弟分を見た。何故か慰められている自分が情けなくてますます顔に血が上った。眉がおかしなかたちに歪む。
「ほんとだよ」
近くでいつも聴いているのに、いつ聴いても初めて聴くように心のうずく声が、シウミンの胸に水滴を落としたように広がった。




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 受容について(セフン × シウミン)
受容について 9 | 受容について 7

comment

コメントを送る。

URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 

trackback

この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

最新記事

人気投票 1

人気投票 2

人気投票 3

人気投票 4

人気投票 5

ブログ村

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 韓流二次BL小説へ

人気ブログランキング

アクセスカウンター

有料アダルト動画月額アダルト動画裏DVD美人フェラポルノ動画フェラ動画美人フェラ無修正アダルト動画フェラチオ動画無修正フェラ
アクセスカウンター高画質アダルト動画無修正フェラ動画アダルト動画無修正アニメ動画海外アダルト動画
無料カウンター無修正DVDクレジットカード
無料アクセスカウンターウォーターサーバーアダルトグッズランジェリー無修正盗撮動画AV女優名教えて
ブログカウンター