海の底、森の奥

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20170518

繁茂する夜(「ことの共犯」番外編・人気投票御礼企画2)
 作業室のテーブルは今、何かを叩き壊したかのように細かいかけらで埋め尽くされている。
ギョンスのハーブティーをまた、ジョンデは淹れて飲みながら、椅子に腰掛け、一心不乱に作業に取り組むリーダーのつむじを見つめていた。
「兄さん」
「…んー?」
「冷めないうちに、飲んで」
 傍らの床の上、丸い盆にジュンミョンのカップはあった。まだ緩く湯気が螺旋を描き、上っている。
「…んー」
 シンナー臭さを逃すため、窓が薄く開いていた。カーテンが揺れる。夜気を通すその隙間から覗く濃い青の上に、光るものがひとつふたつ、浮いているのをジョンデは振り返って見た。
「兄さん」
 再度、ジョンデは脚を組み、ジュンミョンの今度はうなじを見下ろしながら声を発した。
「…んー?」
「それ、なんになんの」
「……これー」
 顔も上げず、ジュンミョンは指の先でテーブルの下、胡坐をかいた自身の脚のすぐそばに置いた箱を指した。
 灰色の、ごつごつとした、巨大な船らしきものの写真。
「…これ、なんて書いてあるの」
 蓋には漢字とひらがなとカタカナと思しき文字が並んでいた。
「イージス護衛艦あたご」
「…は」
「ファンがくれたんだよ、日本の」
 会話の最中、一度もジュンミョンはジョンデを見なかった。ただ自分の手と、海上自衛隊の戦艦の一部となるはずの部品だけを目に映している。
「チャニョルとじゃんけんして勝ったんだから…」
 さ、と言いながら部品と部品を接着した。続けておし、と小さく満足の声を漏らす。
「これ兄さん宛ってわけじゃないの」
 手に取った箱をじろじろ眺めながらジョンデは問うた。
「うん、多分チャニョル宛かもな。誰宛ってなかったんだ」
「…奪い取ったんだ」
 呆れた笑いをジョンデは顔に上らせた。しかしその笑顔はいつものそれとなんら変わることはない。皆が知る、絵に描いたように完璧な笑顔。
「そんなことはないぞ」口を尖らせながら眉間に力を込め、それでも下に目線を落としたままジュンミョンは反論した。「正々堂々と勝負して勝ったんだ」
 箱を元の場所に下ろすと、ジョンデは残りのお茶を太い喉に流し込んだ。喉仏が何かの機械のように上、下ときっちり動く。
吐息が宙に浮く。
ハーブの柔らかな香りなど、この神経に直接殴り込みをかけてくるような接着剤のにおいにすぐさまかき消される。ジョンデは夜の、特に今時分の緑の濃くなる時期の夜のにおいを懐かしく思った。
「兄さん」
「…んー?」
「それ、いつ終わんの」
「…いつって…」
 そのとき初めてジュンミョンは動きを止めた。
彼の視界いっぱいに広がる大小さまざまな模型の部位を見渡し、うーん、と唸るような音を出す。
「…朝?」
 小首を傾げてそう零した。
 腹に目いっぱい空気を溜め、ジョンデは盛大に嘆息した。
「そんなの無理でしょ」
「うん、無理だ」
「だいたい、今何時だと思ってんの」
 え、という声と共にジュンミョンは壁を仰いだ。
「わ、やべ」
「でしょ」
「そっかー。これ続きはまただな」
 今度はジュンミョンが溜め息を吐いた。しょんぼりと首を落とす兄が、接着剤の蓋を閉めるのをジョンデは苦笑して見守った。
「これ、このままにしといてな」
 両手をかざすように、テーブルを指してジュンミョンは真面目に告げる。
「分かってるよ」
「みんなにも言っとかなくちゃ」
「うん、ドアに張り紙貼っといた方がいいよ。ジョンインとかベッキョン、たまにすごい勢いでここ開けてるよ」
「勘弁してくれよ」
 泣きそうな声でジュンミョンは紙、紙、と言い始めた。
「書いたげるよ」
 隅に置かれた物入れ用の箪笥に、立ったジョンデは向かった。引き出しを上から開けていき、目当てのものを見付けて取り出す。
戻りしなに小さな書き物机の上の筆立てからサインペンを取り、立ったままきゅきゅ、きゅきゅ、と文字を走らせた。
 蓋を閉めながらジョンデは言った。
「できた」
 びりびりとスケッチブックから書いた紙を切り取ると、それだけを持ちジュンミョンの横に立つ。
差し出された紙をようやくジョンデを見上げたジュンミョンは受け取った。
「…さんきゅー」
「忘れずに貼りなよ」
「うん」
 白い紙に真っ黒な字で、「静かに開けて、中の物はいじらない!!」と書かれているのにジュンミョンはじっと見入った。
「…ここで寝れたらなあ」
 白雪姫の飲み込んだりんごのかけらのような言葉の粒が、ぽろりとその小さな唇から落ちた。
そして放ったその文言の意味に改めて身を浸し、ジュンミョンは体を強張らせた。寄り添うように立つジョンデの方をもう、見上げることはできない。
「兄さん」
 ぐ、という、床の音がした。ジョンデの裸足の足の裏が、フローリングに圧をかけていた。顔の近くに顔が来たことを、息で、温度で、気配でジュンミョンは知る。
「兄さん」
「…ん」
「お茶、飲んでないよ」
「……え」
 思わずジュンミョンは声の方を向いた。
するとやはりそこにはジョンデの笑顔がある。そこここに角度の付く、独特の甘い表情。手にはカップを持っている。
「冷めたね」
 長いまつげを下げて薄い黄緑の面を見ている。
「…悪い」
「しょーがないね」
 口角の切れ上がった幅のある唇に、カップの縁を当てるのをジュンミョンは目を開いて見た。肉のない頬がぷうと膨れる。
 唇の上下が勝手に別れていた。揺れる黒目で弟を見つめたまま。
ジョンデはジュンミョンの筋肉質な肩を掴んだ。硬いな、といつも思う。自分を見上げ、ひたすら待つだけのジュンミョンの、呆けた顔に顔を寄せた。
「む」
 小振りの唇の端から液が伝う。白い喉がこく、こく、と鳴った。
「…少しは、あったかいでしょ」
 ジョンデは目も、唇と同様横に長く、端が上を向いている。その中にはひどくとらえがたい揺らぎが実は、常にある。これほど近くでそれを見るようになってから、ジュンミョンはこの事実をリーダーとしてと、ひとつことにあたるある種の仲間として、深く感じ入るようになっていた。瞳に映っているということに、信じられないような反応を体が示す。恥ずかしさに身内から発火してしまうような心地がし、ジュンミョンは目をきつく閉じた。
「もっかい」
 同じように、ジョンデは口に含んだ茶をジュンミョンの口に流し入れた。今度は零さず、すべてを干した。
「上手にできたね」
 にっこりと、ジョンデは笑った。細く開いた目でそれを見返すジュンミョンは、肌の表面に何かが走る。これはなんだと自問する。
「それじゃ、最後だよ」
 そして飲み下すと、そのまま中に別のものが進入してきた。かたちある、更に熱い、粘りのある、生き物の一部。
は、と酸素を求めるジュンミョンは口を大きく開こうとした。
それを遮るようにジョンデは更に大きく口を開け、
「ちゃんと飲んで」
と言ってジュンミョンの唇を覆い、背中に腕を這わせた。
 いつの間にかあたりには夜の外気が満ちていた。カーテンは絶えず風を感じ身を揺らす。緑が育つ。夜半、その体を信じられぬ豊かさをたたえて身を繁らせる。
冷えた爪先をもぞもぞとうごめかすと、ジョンデが唇の前で言った。
「大丈夫」
 どうやら笑っているようだ、とまぶたを下ろしながら、眠りに就かないまま夢を見ているジュンミョンは考える。
「寒いなんて思わせないから」
 そうして朝まで、そこにいた。



おわり



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2017/05/18 Thu 14:38:20

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