海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20170510

対照(リアル短編・誕生日&リクエスト企画)
男の体とはなんと重いものなのかと、ふと時間が空くと考える。
ほんとうは時間が空いていなくても考える。ベッキョンはふいに襲ってくるその記憶の生々しさに、何をしていても産毛がふつふつと上を向く。
自分よりずっと上背のある、筋肉をたくさん抱えた若い男の肉体。
それが己の背中にのしかかる。体温が、汗が、吐息が、体の表から染み込むようだ。
蒸発していくような感覚を覚えながら、ベッキョンは背徳感と罪悪感と、恍惚感と多幸感が身の内を席巻するのをただ堪える。口を閉じることすらできない。目からはあとからあとから涙が溢れ、下唇から糸のようによだれが垂れる。
そんな情景がところかまわずベッキョンを訪れる。まるで高校生に戻ったかのように、知らぬうちに体が反応を示しさえする。
ベッキョンは、ジョンインとこうなってから、自慰をする回数が増えてしまった。
トイレでペーパーを引き出しながら、よく溜め息をひとりついた。羞恥心でどうにかなりそうだと終えるたび思う。しかし再び、繰り返す。自分では対処のしようがそれしかなかった。
今もまた、ベッキョンはリビングのソファの足元にもたれ、テレビをつけっぱなしにしながら、口を開けてジョンインが体の中を行きつ戻りつする感触と、兄さん、というはちみつのような香りと味と粘度を持った囁きを自分の耳に吹き込む悦びを思い出し、脚の間が熱くなり始めていた。
唇の隙間に無意識のうち、細く長く、整った爪を持つ指の先を持っていく。硬いその桜色の部分を軽く噛んだ。
他のめんつはだいたいが仕事で、ベッキョンは夜の出勤前、軽く食事を取っているところだった。面倒で、カップ麺を開けていた。ジュンミョンやミンソクやギョンスが小言を言う姿が目に見えるようだったが、いないことをいいことに、お湯を沸かしうきうきと食べた。だが満足とは程遠い。この瞬間欲しているのは、まったく異質のものだった。
肉。それも、オリーブに照る、かぐわしい、極上のそれ。
残りの汁をすすっているとき、ドアが開いた。
細長いシルエットのてっぺんについているのは、昔はひたすら愛らしかった、今ではすっかり端正なハンサムと言える、セフンの顔である。
灯りをつけていなかったベッキョンは、陰影の浮いたその面を首を伸ばして見上げると、彫刻みたいだな、と思った。セフンがぱちりとライトを灯す。
「ただいま」
「おかえり」
 セフンは目を丸くした。
「なにそれ」
 そう言ってぶはっと吹き出す。
「えー?」ベッキョンは小さな山のような唇の両端を、挑発するように上げて言った。「猫ちゃん」
 えー?へへへへへ、と、セフンの目は半分欠けた月のようになる。
「何してんの」
 笑いの合間に問うと、
「チャニョルがくれた」
とベッキョンが返した。
 強すぎると言っていい蛍光灯の白い光のもと、ベッキョンは自分の頭の両サイドに付いたふわふわした突起を両の手で触れた。うん、と頷く。
「似合うだろ」
 キャップを脱いだセフンはソファに近寄り、長い足を折るようにしてその上に腰掛けた。長毛だろうと予測できるその猫の一部分に、そっと指を置く。
「うん、似合う」
「だろ」
 鼻から息を抜いて、機嫌よさげにベッキョンは自分についたもうひとつの耳をいじらせた。
「気持ちいい」
「な」
 しばらくそうしたあと、セフンは手を離した。
「俺からも」
「あ?」
 手に持って帰ってきた紙袋を、セフンはベッキョンに向けて差し出した。
「誕生日おめでとうございます」
「おおー」
 破顔したベッキョンは、両手でカラフルなその袋を受け取った。
「なんだなんだ」
「大したもんじゃないよ」
 音を立てて中を覗き、箱を取り出してリボンを、包装紙を、丁寧に取り除いていった。セフンはそのさまをじっと見た。指の動いた跡がすべて線として描かれ、残っているかのようにセフンには映った。
「おおっ」
 四角い、光る、機械としては小さなものが、ベッキョンの手の中に現れた。
「…カメラじゃん!!」
「ポラロイドのね」
 ペンキにたっぷり浸したような、どこまでも鮮やかな黄色のそれは、直線をあちこち描き、懐かしいような甘いニュアンス、そして無骨な表情さえ湛えていた。
「おっまえー!セフンちゃんー!」
 ばしばしと広い背中を膝立ちしたベッキョンは叩いた。
「いた、いたいって」
「さんきゅー!おしゃれなもんくれんなあ!」
 輝く小さな瞳を、ベッキョンはその贈り物から離さなかった。まじまじと、あらゆる角度から眺め、いじった。
「これは仕事には使わないで、プライベート専用で」
「そうだな、うん」
 説明書を取り出し、ぱらぱらとめくるベッキョンを、セフンは膝の上に肘を置き、顎を掌につき、見つめた。
「へー」
 かしゃかしゃと、ベッキョンが指を動かすたびカメラは開き、閉じる。
「トランスフォーマーみてえ」
「かっこいーよね」
「なあ」
 心底からの笑顔をベッキョンが浮かべているのが分かり、彼への愛情と込めた思惑で心臓がふたつに分かれるような心地がし、セフンは肋骨の真ん中あたりに痛みを覚えた。
「…そのシャツ」
「ん?」
「プレゼント?」
「ああ」
 ベッキョンは自分の上半身を覆う、少しばかりオーバーサイズ気味のTシャツに目を落とした。
「そうだよ」
「…ジョンイン兄さんから?」
「おっ、そうだよ!よく分かったなあ」
 それは黄色のかけら、濃度の違うたくさんの黄色が、撒かれたように全体を包んでいる、光を見る者に飛ばすような柄だった。
太陽だ。
「ぴったりだね」
「そか?ちょっとでかいんだけど」
 唇で弧を描くと、セフンは目を逸らし、それがまたいいんじゃん、と呟くように言った。
「そういやこれも」
 胸の辺りを引っ張りながら、片手に持ったカメラに視線を戻すと、
「これも、黄色だな」
とベッキョンはきょとんとして言った。
「お前、実はあいつと示し合わせたな?」
 いたずらを見つけて面白がっているような顔のベッキョンが、セフンをまっすぐ仰いだ。
「なんで黄色なんだよ」
 ソファに上がったベッキョンは、セフンに体を預けるようにして顔に顔を近付ける。
「なあ」
「やめてよ仔猫ちゃん」
「にゃーお、なんでにゃー」
 鼻先がセフンの頬をかすった。そして何か濡れた、柔らかいものがそこにぶわりと触れた。
「わっ」
「もっかい舐めるぞ」
 互いの目を見合う。細いまなこの、小さな黒目は、飽くことなく生命を燃やしている。セフンはこの目がとてもまぶしい。いつだって、そう、ほんとうにいつだって、死にそうなほど。
「偶然だよ」
「嘘つけ」
「ほんとに」
「ほんとかー?」
「うん」
 丸みの少ない兄の体が、セフンに密着したままだった。温かい。湯に使っているかのような安堵がセフンを包む。
「それ」
 ソファの端に置かれたカメラを顎で示し、セフンは言う。
「たくさん使って」
 振り向き、黄色く光るそれを一瞥してベッキョンは答える。
「うん、使うよ。超使う」
「そんで、よく撮れたのあったら、頂戴」
 笑いの中に言葉を隠した。
こちらを再度見たベッキョンに、この鼓動が伝わってしまっているだろうかと、セフンは薄い体同士を張り合わせた状態で、更に血が素早く駆け巡るのを感じた。
「分かった」
 そう告げたベッキョンは、毛の生えた耳の先と言い、頬の中心と言い、―――ジョンインの捧げた衣と言い、全身が淡い黄色に、どこまでも光っていた。
深くなる。
セフンは思う。
そばにいると、みずからの色はまた、果てしなく深くなる。



おわり



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2017/05/11 Thu 07:57:35

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