海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20170425

夜の下(東方神起・兵役終了企画2・リアル短編)
紫を流したような夜である。
顔を上向けるとちらちらと光る点があった。
日本の夏はどれだけ汗をかいてもまたかいてしまうというくらい、蒸す。チャンミンは額に汗の粒が浮いていた。対してユノはそれほどでもない。ただ浅黒い肌がやたらと輝いていた。
並んで道を歩きながら、アイスキャンデーを頬張っていた。
蜜柑味のそれはふたりの気に入りだった。夏、日本のコンビニに行けば必ずと言っていいほど買い求める。
ほんとうに夜は深く、道に人はほとんどいない。たまに車が行き過ぎる。
サングラスも帽子も被らずこうして連れ立って歩くことなどまれだった。薄いビニールサンダルの裏からアスファルトに溜まった熱が上ってくる。それすらも変に嬉しくチャンミンには感じられた。
ユノが氷菓に歯を立てているのをチャンミンはその大きな、大きすぎるくらいな黒目をスライドさせてさりげなく捉えた。ずらりとならんだユノの歯はとても白い。闇の中で浮いている。
高い塀がずっと続くところまでいつの間にかやって来ていた。
「寺だ」
「そうだな」
 大きな、育った木々が影絵のようにそびえていた。
背の高い双方は、塀の上から中が覗けた。
「誰もいませんね」
「そりゃそうだろ」
「肝試しするじゃないですか。夏の夜のお墓って。子供たちとか」
「ああ、映画で見たな」
「してないですね」
 今は夏休み真っ最中のはずだ。でもそれが行われるのは今日ではないようだ。それかもしかするともう終わったあとなのかも。チャンミンは何故か少しがっかりした。子供たちがきゃあきゃあ言いながら墓の間をすり抜けているさまを、是非見てみたいと一瞬にして強く思った。
「肝試ししたいな」
 はは、とユノは歯を見せて笑った。
「そうだな」
「ほんとに」
 チャンミンの視線をユノはようやく受けた。まだその顔には笑みが残っていたが、チャンミンのまなざしの色を見て呟いた。
「本気か?」
「うん」
 ちょうど塀が途切れ、木が植わってはいるが人ひとりが通れる隙間があるところにふたりは来ていた。
「ほら、入れる」
「やばいだろ」
「行こうよ」
 手首にかけたコンビニの袋をがさがさ鳴らしてチャンミンはユノの手を取った。先に立って寺の中へと滑り込む。強く手を取られたユノは、引きずり込まれるように自身も体をより濃い闇の中へと入れた。
日本の墓地に夜中来るのはどちらも初めてだった。こちらでできた友人といっしょに訪れたことはチャンミンもユノもある。だが真っ暗な中、四角い石が人のように立ち並ぶのが陰影のみで確認できるその場所は、異界のように見慣れぬところで、ふたりは足を進める速度がひどく遅くなっていった。
手を繋いだままでいた。チャンミンの掌は熱い、とユノは思う。少し汗もかいている。男の手というのは自分のものと似て、作りが大変しっかりしている感じがする。女の手は違う。ぐっと握ったら、ばらばらになりそうだ。手をこんなふうに長い間繋ぐ男は、チャンミンしかいなかった。チャンミン以外とこうするなど、違和感しかなく胃がせり上がる気すらする。
街灯と星あかりのみを頼りに、チャンミンはユノの手を引いていた。
漢字が並ぶつやつやした石は自分たちに迫ってくるようだとチャンミンは感じた。ユノの骨張った長い指を強く握る。親指でかすかに皮膚をなぞった。チャンミンはユノの手を美しいと思っていた。だからとても好きだった。
ぐるぐるとゆったりとした足取りで迷路のような道を辿った。卒塔婆を、花を、供え物を見、わずかに残った好奇心を満たしながら。
真ん中に生えたいちばん大きな木の下で、ひととおり探索したふたりは足を止めた。夜の色はいよいよ濃い。酔っ払いの笑い声も、おおかたしなくなっていた。
「アイスは?」
 チャンミンはユノの繋いでいない方の手に視線を落とした。
少ししょんぼりしたふうにユノは答えた。
「溶けて落ちた」
「まじで」
「うん。足にかかった」
「へ」
「親指の爪のとこ」
「なんで言わなかったんですか」
「あ、って言ったよ」
「ほんとに?」
「うん」
 やはり恐怖に囚われていたのかもしれない。いつもならチャンミンは誰かの発した声に気付かないことはない。気付いて無視することはあれど。確かに一心不乱であったと、チャンミンは己を省みた。
「べたべたする?」
 ビーチサンダルの上のユノの親指は光が足りずによく見えなかった。なんとなくうごめいているらしい、とだけしか分からない。
「ちょっと」
「まあ、帰ったら洗えばいいよ」
「そこらへんの水道で流そうかな」
「それもありですね」
 ぷらぷらとアイスの棒をユノはチャンミンに差し出した。
「袋入れといてよ」
「ああ、うん」
 自分の分もそこに放り込んでおいたチャンミンは、小さな袋を開いてユノに棒を入れるよう促した。
「帰る?」
 大木に背をもたせ掛けたチャンミンを見て、ユノは尋ねた。相変わらず手と手は繋がれている。上目にしていた瞳をチャンミンは唇に隙間を作って声の方へと向けた。白い部分も黒い部分も、弱い彼方の星の光だけなのに、よく照った。ユノはうらやましいと思った。こんなにきらきらしているものはそんなにはないと、ずっと、常に、考えていた。
 長い腕をチャンミンが引いた。
「来て」
 引かれるままユノは一歩、二歩と距離を縮める。
「もっと」
 とうとうふたりの間に何も空間はなくなった。チャンミンは手首に袋をぶら下げたまま、ユノの肩に両腕を置いた。
 わずかに背の高いチャンミンを、ユノが見上げる格好で、ごく近い場所で視線は絡んだ。
 おかしそうにチャンミンは笑みを作った。
「何笑ってんだよ」
 ユノも白い歯を見せて言いながら笑った。
「外でこんなことするなんてと思って」
 言葉すべてに笑いを含めてチャンミンは言う。
「こんなことってなんだよ」
「こんなことですよ」
 そうしてチャンミンは鼻のすぐ下にある横長の唇を大きく開いた。
小振りのユノの唇はあっけなく奪われる。音を立ててチャンミンはそれを吸う。蜜柑の味がほのかに分かる。舌の甘みを残さず奪う。
「やば…いって…」
 きれぎれにユノはその気もないのに拒絶を口にした。チャンミンは熱い。どこもかしこも、それこそ舌も。
「しっ」
 目を開けたチャンミンはユノの薄く開いた細い目を見た。ユノは胸が高鳴った。この目が自分だけを見ている。そう思うとただ、苦しくなった。
「足、洗ってあげるから」
 そして唇をにい、と横に伸ばしてチャンミンは笑った。ユノは背後、Tシャツの下の黒い肌にチャンミンの体温をじかに感じ、びっと跳ねた。骨を擦るように肌を撫でられる。
「こ、んなとこで」
「ちょっとだけ」
 背中を指が上る。はあ、とユノが息を零す。それを掬うように、チャンミンはまた小さな口を自分のそれで覆った。



おわり



 
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