海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20170414

キャンバスに赤を(リアル短編・誕生日企画)
赤。それは生き物の中をまんべんなく、縦横に通っている液体の色。
そう、血は赤いはずだ。
薄曇りの、雨が時折世界を濡らすような朝に、そんなことをセフンは思った。
リビングの入り口に、紙で作った人形のような顔色の小柄な兄貴分が立ったのを目にしながら。その血の気のなさは日本で見た、彼の誕生日に程近い女の子のお祭りで飾られていた人形を髣髴とさせた。美しいけれど、怖いなとセフンは思ったのだった。
ミンソクは部屋着姿で、足は裸足だった。スリッパも履かず、フローリングをぺとりぺとりと音を鳴らし、歩いた。
「おはよう」
 ドアを開けた瞬間に、ミンソクはその挨拶を口にしていた。セフンの返事が遅いのだ。
部屋には誰もいなかった。セフンと、ミンソクだけ。
セフンはそんなにテレビを好まない。音楽も鳴らしっぱなしにはしない。
だから部屋の中には何も音がなかった。ミンソクの足が、木の床に、くっついたり、離れたりする音だけが、そこに侵入した。
コーヒーメーカーには既にコーヒーが作られていた。くく、くくっ、という、思い出したように中身を温める機械のかすかな音がし、部屋中をミンソクの愛してやまない香りが満たしている。
セフンはテーブルについて、みずからのマグカップにカフェオレを作って飲んでいた。朝からカカオ率七〇パーセントのチョコレートの粒をつまみながら。
そこまで空腹でないのもあったが、はっきり言えば料理をするのが面倒なのだった。しかしセフンはこの朝食でもかなり満足だった。
濡れ、線を描く窓の表面と、空の灰色を眺め、濃い茶のものを胃に落としていると何故かとても満たされた。不思議と、幸福だと感じた。
くぷぷぷぷ、とコーヒーをカップに注いでミンソクは言った。
「まあたそんなもん食べてご飯ーとか言ってんのか」
 呆れ顔の、眉のひしゃげたようすをセフンは見た。その顔が好きだった。思わず微笑む。
「うん。おいしいよ」
「ジュンミョンに怒られるぞ」
「うん」
 白い、セフンの歯の先はたしなめられていることなどまったく構わずチョコレートをまた割った。
嘆息するミンソクはブラックのコーヒーを持ってセフンのいるテーブルまでやって来た。
斜向かいに座るミンソクを、マグカップから立ち上る湯気が包む。
柔らかい光がミンソクを窓から照らした。セフンはやはり血の色を忘れそうになる。ミンソクは白とグレーで作られていた。
「兄さんこそ、なんか食べないの」
 雨を見つめていたミンソクが、我に返ったようすでセフンに目をやった。目の下はかなり濃い、墨の色。セフンは途端、やたら口の中が苦くなる。
「食欲なくてなあ」
 そう言って、コーヒーをすすった。
 視線をテーブルの上の両手に落としたセフンは、指先を弄びながら返す。
「…よくないよ」
「お前なあ」くしゃっと顔を崩し、ミンソクは言う。「自分にも同じこと言えって。ちゃんとしたもの食べろ」
「分かってるよ」
 でも兄さんは、なんにも食べてない。
 頬杖をついて、また、ミンソクは綿ぼこりのような雲を見上げた。
「…夢見がさあ」
 セフンは目を上げる。
「悪くて。悪夢、見るんだよ」
 頬の輪郭の線がつかめない。セフンはこの感情をなんと言うんだっけ、と焦る。けれどその焦燥は決して見えない。
「…どんな?」
「いろいろ。…今日は誰かの葬式に出てた。こんな天気でさ。傘差して、行きたくない、と思いながら、葬式に向かった。濡れて寒くて、早く帰りたいって、ずっと思ってた」
「…誰の、お葬式」
「分かんなかった。ただ、とにかく悲しかった」
 ミンソクの吊り上がった、足の速いしなやかな動物を思わせる目が、セフンを向いた。
「お前が死んだくらい、悲しかった」
 目の合ったふたりは、白目の上を雨が流れていた。
「…俺」
 ごめんごめん、という言葉に被せて、セフンは言った。
「俺の今日の夢は」
 セフンは考えた。テープを、懐かしいテープを早回しにしたときのような音がするくらい、脳みそを回転させた。
「焼き肉」
「焼き肉?」
 曲がった、特徴的なその口元が笑みのかたちに整い始める。
「うん。焼き肉食べてた。て言うか食べようとしてた」
「…つーことは、食べてないのか?」
「うん。やったー!食べるぞー!てとき、目が覚めた」
「最悪じゃん」
 俺のより悪いかも、そう言ってはははとミンソクは笑った。よし、いいぞ、セフンは奮い立つ。
「だからさ」
「うん?」
「俺、今日、これから焼き肉食べに行こうと思ってて」
「え?これから?」
「うん。仕事まで間があるし」
「まじかよ」
「昼ごはんだよ」
 丸い壁掛け時計を、ミンソクは振り返る。
「ああ、まあなあ」
「兄さんも行こう」
「は?」
「仕事、今日まだなんでしょ。そんなにゆっくりしてるってことは」
「ああ…、まあ、そうだけど…」
「じゃあ、そうしよ」
 にっこり、セフンは意識をしてしっかりと笑顔を作った。大きくない目と口が、月の欠けたように変形する。
「行こう」
 椅子の足が大きな音を立てた。
立ち上がったそびえるような細長いセフンを仰いで、ミンソクは大きな目を揺らした。
「俺の行きつけにしよ」
 ほら、と回り込んでセフンはミンソクの腕を取った。
最後にとひとくちコーヒーを含み、促されるまま席を立つ。
「夢の続きを堪能しよう」
 それも、いい方を。
そして頬に、血の色を思い出させる。
雲が割れていた。
その光景を見ることなく、背を向けたふたりは静かな部屋を後にした。



おわり





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2017/04/20 Thu 22:17:58
Re: こんばんは~♪ : ミス・レモン @-
鍵コメY様

こんにちは!
お返事遅くなってしまい申し訳ございません~><
もう何度申し上げているのか分からない台詞でございますが。まことに、まことにすみません。
Y様はお優しいから、お返事要らないといつもおっしゃってくださって、でも、したいので、こんな時期になってから、する、という、しょうもない私…。
ほんとうに、まごうかたなき馬鹿者でございますけれど、もしこんなわたくしでよろしければ、今後ともお付き合いくださると幸いでございます(__)

だいぶ暖かくなりましたね!
初夏に向かっている感じがいたします。それと共に梅雨がやってまいりまして、湿気に悩むわけですが、わたくし紫陽花が大変好きでございまして、また、夏の初めの、緑の色がいちばん鮮やかな頃を愛しているのもございまして、どこか嬉しい気持ちもございます。

ユノ、お帰りになりましたね!
わたくし、ふたりになってからの彼らを注視しているというわけではないのですが、東方神起というものの存在はいつも気にしてはおりまして、やはりパフォーマンスを見たいなといまだに思ったりいたします。五人のものはやはり五人の方がいいのですが、ふたりのものでもいいなと思うものはございますので^^
Y様も、喜ばしいお気持ちになられたというのは、よかったなあと思いました。
そういうことってとても素敵なことでございますよね。ときめきが含まれていて。
これからも、私はやはりよりEXOの方を期待し、見ていくのは間違いないのですが、東方神起が、これまでよりもっといいものを歌い踊ってくれるように祈り続けてもいくだろうな、と思っております。

Y様の、私の書いたお話を読めて嬉しい、というお言葉は、ほんとうになんと言いますか、ブログをやっていく上での私の励みになっております。
Y様はいつも、私の書いたもの、それはEXOであるとか、BLであるとか、そういったこと関係なく、楽しみに読んでくださっている、という、温かいお言葉を掛けてくださり、そういった読者様がどれくらいいらっしゃるのかしら、と、まことに涙が出るような思いでおるのです。
友人とのやりとりをご覧にかけ、嬉しいような、恥ずかしいような心持ちでおりますが、私はそれがY様に少しでも何か面白いであるとか、楽しいであるとか、興味深いであるとか、そういった何かしらの感情を起こさせるものであるとよいなあなどと、僭越ながら祈っております。

春生まれの、穏やかな彼らの話は、私も書いていて心温まるものがございました。
(「受容について」ではかなり違った雰囲気を醸し出すふたりでもありますが^^;)
シウミンは、私は色白そろいのEXOの中でも、特に白いなあという印象があるようで、彼を描くとき、大変意識に上ってまいります。それがよく出たお話になりました。
あと、シウミンはきっと気疲れすることも多いだろうなというのも、よく描いてしまいますね。
私はそういうところも含め、たぶんいちばんストレートに彼の性格が好きだなと思います。
友達になりたいなと申しますか。すごく気が合うわけではないでしょうが^^;

セフンはなんだかんだとほんとうによく書いている印象がございます。
Y様がお好きでよかったなあなんてことをふいに思ったりもいたします(笑)
彼は、いろいろなキャラクターにしやすいという点が、登場頻度を高めているのでしょうね。
相当な遊び人から、一途な青年まで、ふり幅が大きいです。

Y様からは、繰り返しとなりますがいつもこうしたコメントをお寄せいただくことで、読者様とのつながりがある、というような実感が得られ、非常に安堵し、やる気が出ます。
こんなにお返事が遅れながらいうことではございませんが、まったくひとりごとのようなもので構いませんので、これからもいただけたら嬉しいなあと思います。

ほんとうに、ありがとうございました。

フェリシティ檸檬

追伸
なんて素敵な予想でしょう!嬉しいですー●^^●
彼女はその見た目が名前のヒントとなっております!色と、柄、ついでにリボンも!


2017/05/16 Tue 11:05:49 URL

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