海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20170113

落ちるとき(リアル短編・誕生日企画)
「トンボだよ」
 トンボ?
セフンは心から拍子抜けして聞き返した。目の前に座る、肩をすくめてなるたけ冷気を体に当てまいとしている兄貴分に対して。
ここはカフェ。その、店外に設置された道路に面した席だった。今は一月で、正直こんなこと、やっぱり正気の沙汰とは言えない、とセフンは苦々しい心境で唇を噛んだ。
「やっぱ中、入んない?」
 何度も繰り返した提案を、先刻の問い返しへの答えを聞く前にまたセフンは口にした。 可能な限りの変装に身を固めてはいたが、特に自分の身長とスタイルが、人目を惹きやすいことをセフンはきちんと自覚していた(当然だ)。対面からほんの少しずれたところに腰を下ろして、ゆっくりと熱い、それも濃いコーヒーをブラックのまますするのは、特段目立つ風貌をしている男というわけではなかった。むしろその黒づくめの服装と言い、雰囲気と言い、かなり地味なタイプと言えた。しかしセフンは、ほんとうについ最近、彼が実に美しい所作をすることにようやく気が付いていた。伸びた背筋、俯いた顎の角度、コーヒーのカップを手に取るときの指の線。それらがふとしたとき、セフンを非常にはっとさせた。他のメンバーと何が違うのだろうと、この兄さんの演技方面での出迎えられ方を見るに付け考えさせられていたが、きっとこういうことが大きいのだろうと、なんとなく感じられるようになっていた。あるきっかけがあったとは言え、これはセフンの成長の表れと言ってよかった。そこまでの自覚はなかったにしろ。
「お前入りたかったらいいよ、入ってて」
 そんな返答をギョンスはした。目は伏せられている、真っ黒なコーヒーの面を見つめて。
「そんなの意味ないじゃん」
 意味って?言いながらセフンは今の言葉を自分でもよく理解できない。とにかく中でひとりでお茶なんて全然意味がない。さみしいってわけじゃないけれど。
「…いいよ、ここにいる」
 そしてセフンは肩を丸め、手袋をしたままの両手で、まだかろうじて温かいカフェオレのカップを包んだ。指先がじんじんする。ギョンスが片方の唇の端だけで微笑んだのが目の上に映る。
「それで?」ひとくち含み、ぬるくとろりとした飲みものが喉を下っていくのを感じながら、遠ざかっていた質問にセフンは戻った。「トンボって何?」
 黒縁眼鏡の内側にある、白目の目立つまなこを往来にぼんやり向けていたギョンスは、ああ、と呟いた。セフンを向く。
無言のまま、ギョンスは人差し指をセフンの顔の前に突き出した。
寄り目になって、こちらも丸眼鏡を掛けたセフンは、出された指の先とギョンスの顔を交互に、ちんぷんかんぷんだという表情で見た。ギョンスの鼻の頭と同じように、その指先も赤く染まっているのが妙に気になった。
「な、に?それ」
 若干笑いながらそう返すと、それを受けたギョンスは手をまたカップに添え、温かみを取り戻そうとするようにぎゅっと力を込めた。今度は頬全体で微笑んでいた。どうしてか分からないが、セフンは胸の中をかりかりと爪で掻かれたような心地がした。
「なんなの?」
 何故かうっすらと苛立ちを覚え、セフンは食い下がる。誤魔化され、馬鹿にすらされているような気がした。そんなことはまっぴらだった。ガキ扱いなんてさせない。
 ギョンスがセフンの目を見返した。笑いを含んだ声で言う。
「昔、やんなかったか?トンボに」
 再び人差し指を宙に向けると、ギョンスはそれでくるくると円を描くようにした。口を開け、セフンはその動きをただ見つめた。
「ジョンインな」指を止める。深い、鼓膜を震わせる、底のない声。「これやると、絶対見るんだよ。何度やっても」
 馬鹿だよなあいつ、そう言うと、それこそ見たことのないような溶けたような笑顔で、ふふふとギョンスは笑った。
ジョンイン兄さんのどこが好きなの?
黙っているつもりだったし、ある程度までそうしていたのに、このことについて、どうしてもギョンスと話したくてたまらなくなり、年が明けてから、こっそりふたりのことを知っていると、セフンはギョンスにだけ、明かしたのだった。当然ギョンスは驚き、狼狽したが、すぐ諦めがついたのか、自然な振る舞いにたちどころに戻った。
内緒な。
そう小声で囁かれ、唇の前で指を立てられ、しー、というジェスチャーをされたセフンは、細かく幾度もうなずくしかなかった。もちろん元からそうするつもりであったが、ふたりだけの秘密だという考えと、その親密な空気に、セフンはほとんど酔ったようになった。
今日、仕事と仕事の合間の短い時間に、少しだけジョンインと会うとギョンスから聞き出し、無理矢理セフンは付いてきた。そしてずっと気になっていた、この質問を早速ぶつけてみたのだった。
「…そこが、好きなとこ?」
 呆気に取られたセフンは、吐く白い息の向こうに、まぼろしのように映るギョンスに問うた。
 頬杖を付いてまた、人の行き来を眺めていたギョンスは目だけでセフンを捉えた。
「例えば、な」
 はちきれそうな唇からそんな言葉が零れ出る。すぐ、瞳は街の方へ取って返す。
 セフンは気付いていた。
こちらをほとんど向かず、どうしてこうして、凍えながら、外の席で人ごみばかり、ギョンスが注視しているのか。
「来た」
 ふわあっと、白い吐息と共にギョンスの小さな声が漏れた。その声の響きに、セフンはまた、はっとする。
誕生日と誕生日の間に、どうしてもふたりだけで会いたいって、言うから。
この店にやってくる道すがら、ギョンスを見下ろしながら、その黒々とした髪の毛の中のつむじを食い入るように俯瞰しながら、セフンはなんで今日会うかについて、教えられた。それは尋ねたからだった。
セフンはその細面を、白い肌が、たとえぐるぐるにマフラーを顎まで巻いていても、冷え、頬を桃色に変えている細面を、ギョンスの視線の先に向けた。
照れくさそうに小走ってくる、見慣れた、歳の近い兄が映る。彼もまた、セフンの知らない顔をしている。
ジョンインを待つギョンスに目を走らせる。
きらきらと目は輝き、唇は今にも何かを語り出しそうに開きかけていた。
目がくらむような想いに支配され、セフンは小さな子供、それこそ一番下の役立たずの弟に舞い戻ったかのように、ふたりの狭まる隙間をただ黙って、見守った。



おわり




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2017/01/13 Fri 23:46:11
Re: 昨日今日明日 : ミス・レモン @-
鍵コメT様

こんにちは!
お返事遅れまして申し訳ございませんでした!><

T様から更新したその日にコメントをいただいてほんとうに嬉しかったのです~●^^●
ああ、書けてよかったなあ、と心から思いました!
ディオとカイがこんなに誕生日が近いこと、カイドカップルをお好きな方にとっては胸がきゅうっとなるような事柄だろうなあと、その事実を知ってからよくしみじみと考えておりました。

ここのところカイを書くことが多いためか、彼とディオだけの、それもセックスを含めた濃いぃお話を書こうかなあとも考えたのですが、どうもなんとなく違うなと、結局セフンの目から見たふたりの、それも温かみのあるようなお話に相成りました。
気に入ってくださったとお聞きでき、幸せでした~^^
ディオが息を吐き出してカイを見つけ、カイがディオに走りよるさまは、私の頭の中で、いつもですが映像として、さまざまなサイズや長さで、編集されております。
「来た」と呟くところはディオのどアップの横顔(ふわっと息が出る)、カットバックでセフンの正面のショルダーサイズ、彼が視線の先を見る目の動きでカット、カイがフルサイズで人ごみからこちらに来る、という感じですね~。

セフンのこくこくしているところは確かにキュートですねえ^^
けれどこれから切ない思いに胸を占拠されるのかなと思うと、早く帰りなさい、出会いを求めなさい、と言いたくなってしまう私がおったりもいたします。
こちらから見ている分には、萌えて萌えてありがとうという感じでございますが(笑)

T様とふたりの誕生日がお祝いできて私の願望がかなったなという思いです。
またよろしければお言葉をお寄せくださいませ。
お待ちしております♪


フェリシティ檸檬


2017/01/17 Tue 12:07:27 URL

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