海の底、森の奥

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20170102

きれいな人(リアル短編・お正月企画2・グループミックス)
 年明けから続く忙しい日々の中、ようやくマンションに辿り着いた頃、突然ジュンミョンは先輩から呼び出された。深夜だった。
へとへとだったが、翌朝は比較的ゆっくりとした出になることと、呼び出された相手がキュヒョンだったことで、ジュンミョンは脱いだばかりのコートをまたしっかりと着込み、家を後にした。背後から届いたセフンの「お疲れ様」という言葉が実に身に染みた。
何度かいっしょに来たことのある個室居酒屋が指定された場所だった。タクシーを使ってあっという間に到着すると、事情をよく飲み込んだ店員が何も言わずとも待ち合わせ相手のいる部屋へと案内してくれた。
「来たなー」
 防寒とファン対策に厳重に自分を包んでいたあらゆる衣類を取り去りながら、ジュンミョンは目の前でもうすでにほとんど出来上がっているキュヒョンを口と目を開けて見つめた。こんなに酔っているとは思わなかった。
「お疲れ様です…飲んでますねえ」
 向かいの席に腰を下ろすと、テーブルの上は雑然としていた。食べかけの料理、飲みかけの酒。キュヒョンはほぼ顔に出ないたちの上、姿勢もある程度しゃんとし、きちんきちんときれいに杯を干すため、喋り出さないと酔っていることは傍からは分からなかった。しかし飲みの席を共にしたことが複数回あるジュンミョンは、さっきのひとことで彼が泥酔状態に近いことに気付いていた。
「うん、酔ってる」
 真顔でまっすぐジュンミョンを見、キュヒョンは答えた。逆に冗談のようで、ジュンミョンは思わず笑みを零した。
「そうですねえ」
「お前も飲め。注文しろ」
 そう言ってメニューを荒い動きでジュンミョンに渡す。
店員に要望を伝え、目当てのものが来ると、乾杯しながら改めて新年の祝いの言葉を述べ合った。
「ひとりで飲んでるなんて、どうしたんですか」
 温めた酒が喉と胃を焼いていくのを感じつつ、ジュンミョンは不思議そうに尋ねた。
「誰も捕まんなかったんだよ。思ったより早く体空いたのに」
 タイミング悪いよな、と言ってまた勢いよくグラスを空けるキュヒョンを見ていると、なんだか可愛らしいなとジュンミョンは思った。相当さびしかったのだろうと推察できた、そういう表情をキュヒョンはしていた。少しいつもとようすが違うような気がするとも、なんとなく感じた。
「残念でしたね、俺でよかったら付き合いますよ、朝までとかは無理ですけど」
「俺だって無理だよ。安心しろよ、そんなに長く引き止めねえよ」
 唇の端を上げて微笑むキュヒョンはひどく意地悪げに見え、ジュンミョンはこれまでと同様、また、この先輩に対するとりとめのない印象をいっそうもやもやとした掴みがたいものへと深めた。自分とまったく違うタイプの人間であり、自分のことを好いてくれるのかどうか、はっきり言ってあまり自信が持てなかった。どちらかと言えば苦手と言ってしまってもよかった。だが時間を共有していると、何故かそれが苦でないことをいつの間にか感じている、といった相手でもあった。だから今日も、こうしてここにやって来た。どうなるか皆目見当もつかなかったが、どこか楽しみに思う自分も、ジュンミョンの中にはいたのだった。
 仕事のことやメンバーのことを中心に話していると、視線がキュヒョンの隣の席に留まった。プレゼント包装のリボンらしきものが見え、ジュンミョンは口からコップを離すと問うた。
「兄さん」
「あ?」
「それ、なんですか?」
 目で白いリボンを指すと、キュヒョンは顔を横向けた。
「ああ」手で一度取り、すぐ元に戻すと続けた。「マニキュア」
「…プレゼント?ですか?」
「そう」
「…へえー」
 にやにやと笑うジュンミョンに、キュヒョンは目を向けなかった。まぶたを伏せ、自分の持つグラスをただ見下ろしている。
「来る前、露店で売っててさ。買ってみた」
「優しいんですねえ、喜びますよ」
 本心から言った。ジュンミョンは感動に近いものすら覚えていた。キュヒョンにそんな思わぬプレゼントをもらったら、俺がその立場だったら驚くやら嬉しいやらでどういうリアクションを取ればいいのか分からない、と思った。
「いや、どうかな」
 そんな思いを尻目に、さもおかしそうにくくくとキュヒョンが笑うものだから、ジュンミョンは軽く呆気に取られた。化粧品類に興味のない女性なのか?キュヒョンの趣味からいってそんな気はしないなと、ジュンミョンは彼に対する謎を弄びながら顔をまじまじと眺めた。
「…付き合って、長いんですか?」
 今までキュヒョンからそういった類の話を聞いたことはなかった。彼絡みでの集まりでそういうことを比較的話すのはむしろチャンミンやミノの方で、だからよりジュンミョンはこの話題にひどく興味をそそられた。
「長くは…ないなあ。最近」
「そうなんですか、一般の人ですか?」
「いや、仕事仲間」
「ほんとですか?大変ですね」
 目を丸くすると、印象的な唇がまたちょっと皮肉っぽく笑みを作った。
「まあなあ」
「どんな…人ですか?」
「年上」
「ほんとに!?」
「うん」
「…へえー」
「意外?」
「うーん…言われてみればそんなに違和感ないかも…」
 ふは、と顔を崩して笑うと、途端に甘い顔になる。うちのメンバーにない種類のそれだなあと、酔いの回ってきた頭でジュンミョンはぼんやり思う。
「…可愛いんですか」
 とろりとした目で問いかけると、キュヒョンは一瞥し、テーブルに視線を落として口を開いた。
「…うん。可愛いよ」瞬きもせず、黒い瞳をひとつところに置いて言った。「とても、きれいな人だよ」
 そんな言葉が返ってくると思わず、ジュンミョンは動きを止め、続く言葉を失った。色の白い、背筋の伸びた、恋人をそう語るキュヒョンこそ、ジュンミョンの目には非常にきれいなものとして映った。酔っ払いののろけだなどとからかうことはとてもできない清い姿だった。
「…今日、会う予定だったんだよ」
「え?」
「でも、仕事押したらしくてさ」
「ああ…」
 ちらとキュヒョンはばつが悪そうにジュンミョンを見た。
「悪い。おまえを代わりにしたってわけじゃないんだけど」
 その気遣いと優しさにジュンミョンは一瞬反応できなかった。そういうふうな思いやり深さが、キュヒョンにはあった。不意を突かれてそれは突然現れる。ジュンミョンはキュヒョンのこういうところがとても好きだとこのときはっきり自覚した。
「いえいえ、そんな。兄さんに会えて嬉しいですよ」
「お前はいつもそんな感じだなあ」
 もっと崩れろよ、と苦笑してキュヒョンは告げる。ジュンミョンは酒とキュヒョンへの親愛で体が火照り、冬だということを忘れた。
まぶたがくっつきそうな気配をキュヒョンが見せ始めたとき、静かにドアが開く音がし、ジュンミョンははっとした。
高い靴音が響き、すぐ横に背の高い、サングラスをかけた、隙のない格好をした美しい男が立っていた。
「……イトゥク兄さん」
 ジュンミョンはふらふらと立ち上がった。心から驚き、理性でしゃんとしなくてはと思ってはいたが、体がついていかなかった。テーブルに手を付いて見上げるジュンミョンに、イトゥクはサングラスを外しにっこり笑った。えくぼができる。
「ジュンミョン。ごめんな、うちのキュヒョンが」
 あと、あけましておめでとう、と甘く告げられ、ジュンミョンはどもりながら同じように返した。
「おい、キュヒョン」
 呼ばれ、顔を上げ、目を薄く開けたキュヒョンが、黒目を泳がせて「兄さん」と呟いた。
「そうだよ」
「…なんで?」
「約束してただろ」
「だって…」
「仕事なんとか終わったよ」
 ほら、帰るぞ、と言い、イトゥクはジュンミョンを向いた。ジュンミョンは立ったままふたりを見ていた。
「ほんとごめんな。明日も仕事なんだろ?早く帰って寝な、ほら、タクシー代」
 札をジュンミョンの手を掴んで渡す。
「もう支払い済んでるから。さ、帰ろう」
 イトゥクはひとりでどうにか立ち上がったキュヒョンが上着を身につけるのを手伝い、ジュンミョンの用意が整うのを確認すると、ふたりの背を押すようにして部屋を出た。
タクシーを捕まえ、キュヒョンを押し込んで自分も乗り込むと、くるりとジュンミョンを振り向き、再度言った。
「じゃあ、今日はほんとに悪かった。あとできつく言っとくから。付き合ってくれてありがとな」
「そんな、全然」
「じゃあな、仕事がんばれよ」
 ありがとうございます、ごちそうさまですと答えるジュンミョンに、目を溶かすような笑みを浮かべ、ん、と応じると、イトゥクは運転手に行き先を告げ走り去った。
ぼうっとその車を見送りながら、手袋を部屋に忘れてきたことに気付き、慌てて店に取って返した。
部屋は片付けをしようと店員が入ったところで、完璧な笑顔を向けられ、お忘れ物ですね、と、手袋とビニールをリボンで結わえたマニキュアの包みをそっと渡された。
 あ、はい、と自動的に返事をしていたが、かさかさと手の中で音を立てる片方は、自分のものでは当然なかった。
手袋をはめ、ジュンミョンはなるたけ包みに皺をつけぬよう、優しく手の中にそれを抱えながら店を出た。


マンションの一室に到着すると、イトゥクはキュヒョンをソファの上に転がした。
暖房を強くかけ、キュヒョンが自分のアウターを暴れるようにして脱ごうとしているのを手伝おうと手を伸ばした。
その手を、冷たい手が捕えた。
キュヒョンの目がアルコール以外のもので潤んでいるのをイトゥクは見た。唇の力は抜け、逆に手には力が強く込められていく。
「…脱ぐんじゃないのか」
「脱ぐよ」
「じゃあ離せよ」
「その前に確認させて」
 中腰になっていたイトゥクをキュヒョンが引いた。ソファに寝そべっているキュヒョンの上に、イトゥクが落ちる。キュヒョンのコートやセーターが、柔らかくイトゥクを受けた。しかしキュヒョンは優しくなどしなかった。ありったけの力でイトゥクを抱きしめた。きゅうきゅうと痛いほどに体に巻きつかれ、イトゥクは手でキュヒョンを叩いた。
「いてーって、やめろ」
「やだ」
「やだじゃない」
 ふと力が弱まった。意表を突かれたイトゥクが顔を上げると前髪の先にキュヒョンの顔があった。丸い、黒いまなこに、自分が映っている。
「…会えないかと思った」
 眉を垂らしてそんなことをキュヒョンは言った。泣きそうなのかと訝ってしまうほど、そのさまは子供のような寄る辺なさがあり、イトゥクは胸の中がくくと痛んだ。
「…ごめん」
「謝ってほしいんじゃない」
「…そうか」
 髪に指を絡ませる。するすると指の間を滑る感触。高い頬骨。鼻の先。唇の端と端。
「お前だってジュンミョンとふたりでいたろ」
 ぽろりと言葉が転がり出ていた。イトゥクは言ったそばから赤面した。黒目をさまよわせ、別にいいけどさ、と付け足した。
「…あいつにやきもち焼いてんの」
 声には笑いが篭っている、イトゥクは唇を噛む。
「焼いてない」
「うっそつけ」
「焼いてねーって」
「あっははははは、ジュンミョンに」
 腹を抱えて笑い出したキュヒョンにまたがるかたちでイトゥクは起き上がった。心底おかしそうに笑うキュヒョンを見下ろし、無表情を決め込む。
と、
「ほら、来いって」
 腕を再び引かれた。
倒れるようにしてキュヒョンに抱きとめられると、にこにこ顔に迎えられた。
 手を握られ、中指の先に唇を付けられる。びくりと、イトゥクの体は揺れた。
爪を撫でるように手をさすられ、口角の上向きを強めたようすを見ていると、腰から下がしびれる感覚に襲われた。
 首の後ろに手が置かれ、キュヒョンの方へと引き寄せられる。
キスをした。
薄目を開けたまま、ふたりとも、唇の味を楽しむようについばんだ。握られた手から汗が染み出し、それを擦りこむようにずっとキュヒョンは撫でていた。
 合間合間に、キュヒョンは言った。
 きっと、兄さんに、似合う。
「何?」
 眉間に皺の跡を刻むのを防ぐため、どんなに切なく、苦しくなってもイトゥクは顔に力を入れなかった。つまりどんどん呆けた顔になり、その表情をキュヒョンはこっそり愛でていた。
 は、は、と荒い息のイトゥクを見つめ、あ、とキュヒョンは思い至る。
「忘れてきた」
「何を?」
「まあ、いいか」
 にっこり微笑む。まるで悪魔だ。
天使のように哀れみを浮かべた顔のイトゥクは、目尻がどんどん下へと下がる。
唇で、手で、他のあらゆる部位で、キュヒョンはイトゥクに、その夜堕天をそそのかし続けた。いつものように。


 朝、ベッドの上はふたりの描いた砂浜のような模様で埋め尽くされている。
イトゥクが起き出し、シャワーを浴びて戻ってくると、キュヒョンが意味ありげな笑みを浮かべてスマートフォンから目を上げた。
「おはよう」
「…おはよう。…なんだよ」
 恋人は朝から光を放つように笑う。昨夜とは別人に見えるが、どちらも間違いなくイトゥクのキュヒョンだ。甘いような苦いような、カフェオレみたいな男。キッチンのコーヒーメーカーから、深く芳しい香りが流れてくる。
「…ジュンミョンに会ったら、受け取っといて」
「え?何を?」
「プレゼント」
 きょとんとして立ち尽くすイトゥクに、キュヒョンはけたけたと笑った。そのどこまでも豊かな声は、太陽の混じる空気の中で踊るように消えていった。



おわり




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