海の底、森の奥

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20161230

呪文のように囁いて(リアル短編・年末企画2)
暗雲の中で稲光が幾何学的な模様を描いているのを見ている人間は多くなかった。
今年分の暦がもうすぐ終わりを迎える。
雨だと思ったら雪に変わり、やんだと思ったら雷が厳かに鳴り出した頃、ジョンインは移動車の中でゆっくりと目を覚ました。
きちんと雪対応のタイヤに変えた車を、マネージャーは疲れから憔悴しきって無表情のままひとことも言葉を発さないながらも、彼と同じかそれ以上に疲労の蓄積したメンバーのほとんどが熟睡するのを邪魔しないよう、その運転技術を遺憾なく発揮し音を立てずに疾走させていた。
すっかり辺りは薄墨から漆黒に染まり、時折遠くに雷が落ちた。
目を半分ほど開け、もこもこの真っ黒いダウンコートに顔を埋めたジョンインは、窓の外にちらりと視線を走らせると、すぐ逆横にも同じようにした。そこにはギョンスがおり、ポータブルのゲーム機の灯りを顔に受け、緑の混じった白に顔を光らせていた。
ジョンインが見つめているのに気付き、ギョンスは目だけで彼を受け止めた。
おおかたが闇の中で、ギョンスの白い顔の上、白目が異様に浮き上がり、ジョンインはいっきに覚醒した。
マネージャーとふたり以外、起きている者はいないようだった。寝息が規則的にいくつも聞こえ、中には軽いいびきも混じる。
追い越していく外の灯りや、かすかな稲妻が、互いの顔を一瞬強く照らし出し、そのたびにどちらもが初対面かのようにはっとする、というのを少しの間繰り返した。くっきりとかたち作られたそれぞれの唇は力が抜かれ、隙間ができていた。ジョンインのそれはわずかにかさついてもいた。
先に口を開いたのはギョンスだった。
「起きたんだな」
 ゲーム機を止めたらしく、もうその顔は下からの光を浴びていなかった。歯と目だけが白くジョンインを射した。
「…うん。……起きてたの?」
 もぞもぞと座り直し、腕組みを深めてジョンインは答え、そして問うた。目は逸らしていた。ギョンスがまだ自分を見ているのは分かっていたが、見返すのが苦しかった。小さな飼い犬たちの胸に耳を当てたときのような音が身内からしていた。掌が湿る。
「ちょっと寝たけど。…うん、でも、起きてた」
 先程踊ったダンスが想像以上に堪えたらしく、腰を下ろしてからの記憶がなかった。隣り合って座れていたんだ。そう思いジョンインは唇を噛んだ。雷が強く鳴ればよかったのに。そしたらもっと早くに目が覚めていたかもしれない。そんな浅はかな考えを本気で抱くのがジョンインだった。
「起きるかなと思ったけど、ほんとに起きるとは思わなかったな」
 ギョンスが笑っただろうことをジョンインは見ずとも感じた。その言葉と表情のようすで、ジョンインはかっと顔に血が上った。自分を待ってくれていたのかも、この考えは自意識過剰ではないはずだ、耳の奥がじんじんしながら頭の中で思考が膨らみ続けるまま、ジョンインはむっつりと黙っていた。
窓際に座っているジョンインの横に、静かにギョンスは近付いた。
車が擦れ違うと、さーっ、さーっ、と、溶けた雪を弾く音がやけに響く、そんなことを思っているうちにギョンスがどんどんと接近していた。俯いて、自分の太ももをじっと見つめるだけしかジョンインにはできなかった。いつもそうだった。待っているだけ。そしてひたすらに怖くなった。歓喜と恐怖に我を忘れそうになり、押し黙り、熱を体内にこもらせた。
 肩と肩が触れた。
背の高さにずいぶんと差があるため、とは言っても顔の横に顔が来るという感じではなかった。膨らみを持ったコートがギョンスを弾いていた。なんでこんなものを着てきたんだろう、と毎日着ている、早朝着込んだ、ひどく気に入っている、ギョンスに似合うと言われたこともあるこのダウンコートを心の底から忌々しくジョンインは思った。ギョンスも厚手の黒いピーコートを着たままだった。もちろん車内は暖房が効いているが、今日の冷え込みは格別だ。何層もの衣類に邪魔をされ、ギョンスが遠い、とジョンインは悲しく、苛立った。みずからは何も行動を起こしていないのに、心の中ではとにかく暴れ回っていた。それを見透かしたかのように、ギョンスは言った。
「お前っておっかしいなあ」
 空気と笑いがこもったその言葉は囁きで、ジョンインは吐かれた息の熱さまで感じ、もう少しでうめくところだった。
 こっち向けよ、と続けられた。
ぎぎぎぎ、と油を差さなければならない機械が立てる音がするような動きで、ジョンインは首を回した。まぶたを伏せ、きょろきょろと黒目でギョンスを捉えると、十数センチの距離しかなかった。
思わずため息を漏らすと、ギョンスは柔らかく顔をほころばせた。
たまらなくなったジョンインは、心臓がきゅうきゅうと締め付けられるのをもじもじしながら我慢しつつ、兄さん、とだけ呟いた。
それは好きだ、と言うときとまったく同じ声色だった。
 ん?という返事のしかたまで、ジョンインを否応なく反応させた。
眉間に皺を刻み、唇を舐めていると、ギョンスがもっと距離を縮め、頬のすぐそばにその鼻と口を持ってきた。耳の穴に言葉を注ぎ込む。
「手、出せよ」
体が軽く震えている自覚がジョンインにはあった。それを恥ずかしく感じるため、なるべく隠そうと変に大きく動き、結果非常に不恰好な動作となってしまう。だがギョンスは何も言わない、からかいもしない。ただ微笑み、出された手を自分のそれできゅっと握った。
ああ、とジョンインは思う。
ひどく汗をかいた手に、乾いたギョンスの手は心地よかった。申し訳なさも同時に当然滲むが、圧倒的な幸福感に抵抗できるはずもない。決して優しくはない、その掴む強さ。それがほんとうに、痺れるほど嬉しかった。
体を交わらせているとき。そのときも、ギョンスはこうした強さでもってジョンインにしがみついてきた。さらさらとした皮膚が汗を軽く噴き、筋肉という筋肉が触って確かめられる。抱かれる際、ギョンスは生理的反応で薄く泣き続ける、それは性器も同様だった。塗れそぼるそこにジョンインはどうしても触れずにおれない。手で、口で。彼の中に入る頃には、もうこれが現実なのかなんなのか定かでなくなるほど、見境がなくなっている。全身の躍動と、締め付けてくる肉壁と、ギョンスの顔、体、声、息。ジョンインは後ろから突きながらギョンスの肩甲骨の盛り上がりを見つめていると、そのまま彼がどこかに飛んでいってしまうのではないかという妄想が頭で繰り広げられた。毎回だった。それはそれは優美な動きで、彼の背は鳥の翼にしか思えなくなるのだった。そう、ギョンスは力強い大きな鳥だった。今握られている手から伝わってくるようなすべてが、彼とのセックスを思い出させ、ジョンインは完全に勃起していた。
繋いだ手の首に、ギョンスのもう一方の手が触れた。
袖をめくり、そこにはめられた腕時計を指先がなぞる。
「…つけてんだな」
 ギョンスを見下ろすと、彼のまぶたとまつげが自分たちの手の方を向いているのが分かった。手首の骨や時計と肌の隙間をいじられ、くすぐったくて肩をすくめる。
「お前包装びりびり破くよなあ」
 思い出したようにギョンスはくすくすと笑いながら言い、やはり手を握ったまま、ジョンインの腕と時計を弄び続けた。
「…開かなかったから」
「鋏使うとかさあ」
「……ごめんなさい」
「怒ってないよ別に。お前らしいと思っただけ」
 空が光った。
光線が木の枝のように雲の上を這うとき、ジョンインとギョンスは双方の目を見合っていた。雷鳴が轟く。
「…兄さん、ゲーム何やってたの」
「…野球の」
「野球のって、なんの…」
「……黙れって」
 ドアにぐっとジョンインは押し付けられた。
そして襟首を掴み、ギョンスはジョンインの顔だけを自分に引き寄せた。マネージャーの完全な死角で、ギョンスはジョンインの唇を己のそれで捕らえた。
 キスしたいキスしたいキスしたい。
そう思っていたのがばれたのだろうかとジョンインは訝る。
眠りから覚め、緑の垂らされた白光の中のギョンスを目にした瞬間から、おまじないのようにそう唱えていたのだった。
 いろいろあったけど、と上唇と下唇で唇をつままれながらジョンインは考える。
こんなふうに終われるなら万事OKだ、と彼には一年のすべてが突如薔薇色に見えた。



おわり



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2016/12/31 Sat 02:01:15
Re: 本来 : ミス・レモン @-
鍵コメT様

こんばんは!
そしてコメントありがとうございます!!

そうだったのですね…それは存じ上げませんでした!!
それでは「人さらい~」は、なんと言うか…酷な話でございましたよね(泣)
「シング~」ありきで作ったようなお話で、かつわたくしがカイを書くのに苦しむタイプであるがゆえに、非常に独特なお話になってしまったこと、T様にとってはかなり複雑と言うか、ほとんど辛いことであったかもしれません。なんだかスミマセン(;;)

しかし、ふたりがくっついてしまうのもありなのでは…という見方はわたくしの友人も同じでして、彼女もほんとうはそれをものすごく望んでいたのですが、当初の予定から、そういうわけにも行かず、初志貫徹した次第でございました。
なので今回こうしたふたりを続けて書けて、なんだか私もひどく満足感を得ることができました。
T様も少しでもそうならいいな…と願っております。

セフンは見た、を、T様ご自身でも考えてらっしゃったなんて!!
わたくしたちのシンクロ率は半端ではございませんですね。嬉しいなあ。
そしてそれがあのチェンシウに関連付けられていたこともすごく幸せでございます。

セフンを絡めたお話にしてみたものの、なんとなく、やはり他のメンバーにもあるのですが、このふたりはカップルには難しい…私には…というのがありまして、それのひとつがセフドでございます。
それ以外ですと、チャニョルはほとんどのメンバーとの絡みが難しく(笑)、スホもそうです。
ディオとシウミンとベッキョンがいちばん柔軟性といいますか、汎用性がございます。
それでも私NGな相手はいるのですが。
なのでセフンをディオと絡めて具体的にあれこれすることが実際には厳しく感じられ、ああいう話になりました。
確かにチェンシウを覗くセフンはもっと淫猥な感じがいたしますね!いいですねえ。

正確に言うとまだ一年は経っていないんです~。
いつだったっけ、一周年…。←
一周年記念企画などはやりたいなあと思ったりいたします。

わたくしこそT様の存在がいかに大きいことか。
それをどうしたらお伝えできるのか分からないほどでございます。
ほんとうにありがとうございます。
新年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。


フェリシティ檸檬


2017/01/01 Sun 19:23:38 URL

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