海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20161205

蝉の声、太鼓の楽、くちづけの音(ミックス短編)
やめろって、という言葉を、眉の下がった男は聴こえなかったように振舞った。ただ、ますます眉を八の字にした。目は細めた。それで余計、瞳が濡れたようになっているのを眉のしっかり上がった男は目の端で認めた。祭囃子があたりに響くのは相変わらずだった。提灯の灯りがそこここで赤い光を放ち、人影のまばらな公園内をほのかに浮かび上がらせていた。どうやらカップルがあちこちに潜んでいるらしく、かすれた甘い声や衣擦れの音がふたりの男の耳にも入ってきた。垂れ眉の男が、大きな、幹の太い、年のいった木にもたれかかった吊り眉の男に全身で擦り寄っている間、すっかりうまくことを進めた恋人たちは、この公共の場で、それぞれのモラルが許す限りの交歓を続けていた。人間たちだけでなく、虫たちもみずからの生を全力で叫んでいた。ためらっているのは目の前のこのいとしい男ただひとりだ。そう、垂れ眉の男は思い、呼吸を速め、血流の勢いを増していた。少し下にある赤い、小さめの唇から目が離せなかった。かすかに曲がったその隙間から、歯が、その白を黒の中で訴えていた。自分も相手も震えていることを、どちらもが知っていた。それはそれぞれをいたたまれなくさせた。垂れ眉の男は欲望と恋情の激しさの、吊り眉の男は恐怖と困惑の深さの現れであった。双方がしっかりとそのすべてを認識していた。己が、友が、どういう状態であるのかを。分かっているからと言ってどうにもならなかった。逃げれば追われるだろう。逃げられれば追うだろう。それだけだった。それほどもう、のっぴきならない羽目に陥っていた。後回し後回しにしてきたつけが、今ここで払われようとしているのだった。
 高い頬骨を持つ、白い肌の顔に、指先が触れた。
びくりと体を揺らすのを目にし、垂れ眉の男はなお、相手にぴったりと自分を押し付けた。股間はすっかり硬くなっている、それをどこまでも教えてやる気だった。気温は夜をものともせず、恒温動物の汗腺から皮膚を冷やすための水分を溢れさせていた。つまりふたりの人間は、触れているところ全体が湿っていた。熱く、まるで少しずつ蒸発している湯のようだった。じりじりと吊り眉の男は体を動かした。しかし無駄だった。そうとはそんなに意識されないが、垂れ眉の男はしっかりとした肩と太い腕を持っていた、そして全体重を木の方へかけていた。体を若干そり返らせ、脚もまともに立たせられていない吊り眉の男は相手を突き飛ばすことが叶わなかった。唇を噛み、絶対友人を見るものかと可能な限り横を向いた。その唇に当てられた歯の先が男を更に誘っているなどと、当の本人に分かるはずもなかった。そうしてことはどんどん吊り眉の願わぬ方へと転んだ。見て見ぬ振りをしていたことを悔やんだ、実際こうなってしまった今、最善の策はいったいなんなのか、皆目見当もつかなかった。先程まで見ていた垂れ眉の男の表情が、脳の中でくっきりと像を結んでいた。あんな顔を自分に向かってしている人間を見たのは生まれて初めてだと気付いていた。そしてそれに対する感情は、自分でもはっきりとつかめない類のものであることも。確かに吊り眉の男はこの年下の友人を非常に愛していた。それはだが性愛ではなかった。こうしてそれを求められてもなお、しかし吊り眉の男は彼を愛することをやめられなかったし、彼を失いたくないと思っていた。どんなに自分が欲せられているか、痛いほどに、ほんとうに、体に痛みを覚えるほどに、実感していた。認めたくはなかったが、そのことにどこか高揚する自分がいた。太い首から、喉仏を上下させて、声を響き渡らせる年の下のこの男を、小柄な男は買っていた。いっしょにいるのが好きだった。目と眉を菱のかたちのようにして、顔を溶かすのを見ると、胸の周囲が大変温かくなった。相手の中に、自分への恋慕があり、共に時間を過ごすことでより彼を幸福感のヴェールに包ませ、その内に吊り眉の男を取り込んでしまっていただなどと、どうして気付くことができただろう。
銀の指輪のはまった指は、尖った顎の先をなぞった。
そのまま親指が下唇を押した。ずらりとなんだ歯。奥にちらつく赤い舌。ここまでの道のりで目にした金魚を、垂れ眉の男は想起した。真紅の大きな金魚であった。水の中でゆらゆらと尾を動かし、自分の美しさを気付かぬままに誇示していた。まさしく現在、そこにあるのはそういった美であった。唾液をまとわせ、今か今かとこちらを待っている、そうとしか思えなかった。指の腹で押した部分の柔らかさを確かめるたび、びくんびくんと脚の間のものが揺れた。すると相手はもどかしそうに腰を動かす。そのさまと摩擦に、吊り眉の男は霧のように消えかけた理性が完全に夜へと吸い込まれそうになるのが分かった。
好きだ。
公園に入り、木に押し付けられるなり、言われた言葉がまた繰り返し耳に注ぎ込まれ、吊り眉の男は硬直した。頬にその声の濡れた息がかかり、上がった体温が再び上昇したのを恥じた。下腹に当たる硬い部分に、自分のそれが対抗しようとするかのように同じ反応をしているのに気付いて愕然とした。勘付くな。そう祈りながら、そっと黒目だけを相手に向けた。そこにあるのは知らぬ男の双眸だった。自分が待ち構えられていたことを、この瞬間を逃すまいとただ見つめられていたことを、男は知った。指の代わりに唇が押し当てられた。口の中の赤い金魚が踊った。



おわり



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2016/12/05 Mon 22:57:06
Re: これだけ暖かいと蝉の眠りも浅くなる : ミス・レモン @-
鍵コメT様


虫たちの眠りが妨げられないとよいなと思いながらの、冬の夜…。

早速のコメントありがとうございました!!

とっても嬉しく思い、昨夜は幸せな気持ちで眠りにつくことができました。

よくあることなのですが、思っていたことを書いたり口にしたりすると、なぜか実際そうしたくなり、思い立ってばーっと書いたわけなのです。

いつもと多少趣を異にしてみようとなんとなく思い、ああいうスタイルを取りました。
私自身も気に入っています。

このカップリング自体が好きかもしれない、ということも、何か嬉しいお言葉でした。
もともとそう意識していたわけではないものを、気にせずにはいられなくなるようにさせるというのは、物語の語り手の本望ではないでしょうか。

受けの方が本気で嫌がっているけれど、だけれど、という描写は個人的にそそられます。
無理やり、力ずくで、というのは好みとは違うんですけれど、嫌なはずなのに、というのは強い官能を呼び起こします。

私はカップルに混じって、もしくは虫になって、彼らを盗み見たいものです。
提灯に照らされ、内からも輝き、赤く染まった兄さんと、すぐそこにいる恋する相手に自分でもどうにもならない焦燥を抱える仲のいい弟分。
彼らの息遣いと目の上の水分の揺らぎを全身これ目と耳にして受け止め、林に潜んでいられたら。
どんなに楽しいことでしょう。



フェリシティ檸檬


2016/12/06 Tue 13:11:51 URL
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2016/12/07 Wed 03:13:34
Re: こんばんは : ミス・レモン @-
鍵コメs様


こんばんは!

はじめまして^ ^

お声掛けくださって、ほんとうにありがとうございます!!
心より嬉しく思います。
どうぞよろしくお願い致します。

「ことの共犯」にて、s様のお好きなおふたりをカップルとできていたこと、大変光栄に思います。
エロティシズムという点では、このお話は私のここでの作品群の中でも上の方に位置しているものではないかと自分でも思います。
たまに読み返し、なかなかに萌えるなあと自家発電しているようなわたくしです(笑)
まだ途中であるのにここ最近更新が滞っており、s様をはじめとしたこのお話を好んでくださって、続きを待っていてくださる方々には誠に申し訳ない限りです。
どうか気長にお待ちいただけたらと思います。

「砂糖壺に落ちる」は、拙ブログ内で一、二を争う人気の作品でございます。
私の作品は、特に長編の中でカップルがラブラブであるというものが少ないので、この作品はBLにそういう萌えを求める方々の要望に応えているところがあるのではないかなと推測しております。
あとがきなどでも触れましたが、自分でも書いていて多幸感のあるものでした。
タイトル通りと言いますか、ルックスからも、雰囲気からも、甘い香りと味がするようなふたりだなと思います。
ある作品を何度も見返すということは、私自身の愛する創作物すべてへの欲求であり、読んでくださる方々への心からの望みでございますので、そうお聞きできて幸せでございます。

「シング シング シング」は、ここでの初めての作品でして、私自身このカップルはお気に入りでございます。
受けであるチェンのいじらしさや色気を感じられ、この作品のある意味スピンオフである「人さらいの条件」においては、彼に心底癒されました。きつい作品でしたので……。
ディオは受けになることの多いメンバーに感じますが、私は彼を書くとどうしても攻めになりがちです。
彼の性格がそういうものであると私には感じられるからです。
そんな彼をお気に召していただけて嬉しいです。
ボーカルメンバーを中心据えた話は歌を絡めて物語を紡ぐ傾向があります、「心中の道連れ」しかり。

おこがましいだなんて!
むしろご自分に重ね合わせていただける光栄に、作者として浴すことができわたくしこそ身が震えるような思いです。
「聖夜に」がお好きな方は、ルハンのファンでらっしゃるのかなあと思っておりましたが、チェンをお好きだからだということもあるのだなあと、目を開かされました。
このルハンはひどく切ないキャラで、私の胸にも強く残っております。
世のこういう思いをしているすべての方に捧げるような気持ちがございました。
そうこうしているうちにもうクリスマスがほんとうに近づいておりますね。

どこまでも心温まる、誠実なお言葉を掛けてくださり、書き手冥利につきるなあと感じ入りながら、何度も読み返してはこの返信をしたためました。

もし、お好きなメンバーが出ていないものや、むしろEXOにまったく関係ないものすらもお読みいただけ、そして、そのときまたどんなことをお感じになられたかをお伝えいただけたなら、こんなに幸せなことはございません。
もちろんお気が向いたとき、お暇なときで結構でございます。
わたくしはどんな些細なことでもお声掛けいただることを願ってやみません。

ここへのご訪問とコメント、重ねてお礼申し上げます。
どうかs様も、体調等十分お気を付けくださいませ。

また、お待ちしております。


フェリシティ檸檬

2016/12/07 Wed 21:05:41 URL

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