海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20161116

狙われたのち(ミックス短編)
部屋に来たときから窓が開いているのに気が付いていた。
時期的に寒いということはないが不用心にもほどがあると思い、それを言おうとしたらまず今日最初のキスをされた。
「何すんだよ」
 唇を離した相手に向かって声を放つと、その一瞬前までくっついていたそこに息がかかるのがこちらにも分かった。
「キスだよ」
 決まってんだろ、とは言われなかった。が、その声音は先程まで共に働いてるとき、連れ立って家路を歩いているときとはまったく違う響きと湿度の、有無を言わさぬしろもので、見事に場の空気は一変した。片手にはビールと缶チューハイの入ったビニール袋、もう片手にはスナック菓子や乾物の入ったビニール袋を持ったままだった。両手をふさがれ、押し返すこともできず、二の腕をどちらも掴まれ、再び口を口で覆われた。目は双方閉じることをしなかった。つまりあちらには横に長い、目尻の上がった目元、こちらには奥ゆかしい二重の、目尻の下がった目元が見えていた。向こうの瞳は面白いくらい輝いていた。蛍光灯の白っぽい光のせいだけではないようだった。
唇の上だけを動くのをやめ、舌の侵入が始まった。少し以前から、唇のみのキスでは済まなくなっていた。初めの頃はもちろん抵抗した。けれどそのしつこさに負け、今では好きにさせていた。とにかくキスがうまいことはいやというほど教えられた。
しばらくして解放されると、少しだけ開いていた窓を全開にするのをぼんやり眺めながら腰を下ろした、いつもの座布団の上に。薄いカーテンが風を受けひらひらと踊る。音楽がかかる。ボリウムを絞ったweekndが室内を舞う中、酒を飲み、つまみを頬張った。
夜の色はたとえカーテン越しであってもどこにでも入り込む。安いアパートの灯りなどものともしない。リズムを刻む高音と、甘ったるいアルコールに酔わされ、早々に現実と夢の境があいまいになった。時折指輪と缶が触れ合い、かつん、とかすかな音がする。そのたび手元を見下ろされているのに毎回神経がいった。このアクセサリーの送り主のことをどちらもが思い出した。感情が音符の合間を縫いあらゆる模様を描くのを黙って放っておく。そうしてすべてのことを棚上げした。差し向かいにいる男とは違い、逃げ続けていた、ずっと。
 どこからか、CDのものでない、高いキイの音が聴こえた。笛の音のようだった。
「なんの音だ?」
 溶けた目を窓の向こうにやりながら尋ねると、同じように顔を振り向けて窓を見やり、相手は答えた。
「ああ、何日か前からするな。多分近くの部屋の洗濯機が壊れたっぽい。洗濯機回ってる音といっしょにするからなあ」
 耳を済ませると、確かにごう、ごう、という、あの洗濯機特有の音も小さく聴こえた。
「なんか不気味だな」
 思わずそう言うと、意地悪げに笑い、
「まーな。なんだっけ、あれ思い出す。ハーメルンの笛吹き?だっけ?」
と返って来た。
 ああ、と応じながら、ますますこの混沌とした部屋の中がそら恐ろしいものに感じられた。笛が吹かれ、どこかに連れ去られてしまう、その恐怖がひどく現実的なものとして目の前に迫っているように思えた。唇の片端を上げて見つめてくる男は、その美しい手指で酒をあおり、どんどんと目の中の色を欲望のそれに染め上げている。手を引き、絡めとり、後戻りをできなくさせようと画策している。
笛の音は絶えず鳴り続けていた。
「子供じゃないんだから」
 ふと、そう零していた。
「何?」
 かすれながらも通りのいい声で聞き返され、かすみがかった頭を絞るようにして言葉をひねり出した。
「いや、たとえ魅力的でも、理性的な判断ができる歳だから、ついてっちゃったりはもうしないなって話」
 なんの話題なのかを突っ込まれたら困ってしまうような言い方をしてしまい、言い終えてから密かに焦った。
「何」明らかにトーンが変わった声で、言葉が襲ってくる。「俺のこと牽制してんの」
 顔を上げられなかった。見なくとも、小さなまなこが刺すようにこちらを向いているのが分かった。洗濯機の振動が激しくなった。へたなフルートに似た音はますます高くなり、警戒音のごとくふたりの人間の鼓膜を揺らした。
「そんな話じゃない」
「嘘つけ」
「ほんとだって」
「じゃあなんでこっち見ないんだよ」
「別に理由なんかない」
「だったら向けよ」
 しかし向かなかった。
洗濯機は脱水を始めているのだろう、今まででいちばんその身を震わせ、声を上げていた。 
そう、男は笛を吹く、たぶらかそうと、執拗に。
目の端に、膝小僧が映った。
シルバーリングの光る手をはっとするような作りを誇る手が取り、その体温の高さを伝えてきた。冷たい指輪までも溶かしそうに思えた。
「おい」
 斜め上に顔があるのを知っていた。それでも仰向かず、心拍を速めながらただ、床を見ていた。汗をかいた缶を、広げた菓子類を。
「こっち見ろよ」
そう言われたのと、洗濯が終わったのはほぼ同時だった。weekndと夜だけがあたりに満ち、吹き込んできた風が少し冷たく感じられた。
憑かれたように顎を上げ、再度開いた窓を見た。
「…なんで、窓、開けといたんだよ」
 外の黒に体が吸い込まれていきそうな気になった。なんでそんなことを問うているのか、自己防衛本能か、と頭の中で自問しつつ手を握られて夜の街を見続けた。
「え?」
「窓。…開けて出掛けただろ」
 少し間があって、ああ、と言うと、言葉を続けた。
「朝、蜂が入って来てたんだよ。出てかないからしかたなく窓開けといた」
 蜂、と呟くと、そう、と言われた。
「自分で入ってきたくせに出たい出たいっつって、でも出て行き方分かんなくなってんだもんなあ」
 まただ。
ゆっくり視線をずらし、ごく近くにある相手の顔を見上げた。
「…なんの話」
「蜂だろ」
「そうか?」
「…なんだと思ったんだよ」
 握られた手を包む力が強まる。全体が湿り、それがどちらのせいなのか分からない。
目の中に燃え上がるものに囚われ、じっと、待つしかない。振り払えない。立ち上がれない。どうして、来てしまうのか。何度も何度も唇を吸われ、舌をなぶられ、それでもなぜ訪れるのか。
「…もしかして、ずっとキスしかしないと思ってんの?」
 膝立ちをやめ、腰を落とし、隙間をなくして男は言う。口には残忍な笑みを浮かべて。
「だから、のこのこここまで来てんの?」
 追われるために体を後ろに傾けるしかなく、ふたりで床へと近付いていく。
 両腕の間に頭を付いたこちらを見下ろし、ふふっと笑う。
「馬鹿だな」
 揺れる前髪を、垂れて優しげに映る目の周りを、薄い唇が動くさまを、何も言わずに眺め、首に触れるフローリングの低い温度を感じていた。
 お前、俺がどんだけお前の喉仏が好きだと思ってんの、という言葉が脳を揺さぶるさなか、指にはまった愛の証が、繊細な指で丁寧に抜き取られた。



おわり


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 短編〈ミックス〉
いつでも誘いを待っている | 私ならば

comment

コメントを送る。

URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 

trackback

この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

最新記事

人気投票 1

人気投票 2

人気投票 3

人気投票 4

人気投票 5

ブログ村

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 韓流二次BL小説へ

人気ブログランキング

アクセスカウンター

有料アダルト動画月額アダルト動画裏DVD美人フェラポルノ動画フェラ動画美人フェラ無修正アダルト動画フェラチオ動画無修正フェラ
アクセスカウンター高画質アダルト動画無修正フェラ動画アダルト動画無修正アニメ動画海外アダルト動画
無料カウンター無修正DVDクレジットカード
無料アクセスカウンターウォーターサーバーアダルトグッズランジェリー無修正盗撮動画AV女優名教えて
ブログカウンター