海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20161108

誕生日のおとなたち(リアル短編・誕生日企画)
毛布から飛び出た爪先を見て、ギョンスはそっと手を伸ばした。焦げ茶の分厚い掛け布団を引っ張り下ろしながら、靴下を履けばいいのに、と考えていた。真っ白な裸足の足を見るのはほんとうに好きだったが、触れて冷たいと哀しくなった。いつもそうして温めるわけにはいかないのだから。
小さな山が動いた。
んうー…という声と共に、どんどんと小山は崩れ、中から寝ぼけまなこのミンソクが現れた。ワックスを付けたままだったらしい。隣国の有名な漫画の主人公のように、鮮やかな金髪は逆立っていた。
「…あれ、ギョンス」
 目が合うと、ミンソクは吊り目を更に吊り上げ、歪んでいるように見える唇を不思議なかたちに更に歪めた。それはつまり彼の笑みだった。ギョンスはその顔を見ると否応なくぞくぞくした。桃色の歯茎と尖った白い歯が、いつも彼を誘惑した。
「なんかすごい寝ちゃったなー。何時?今」
 ふわあー、と特大のあくびをしながらミンソクはソファから滑り落ち、カーペットに座っているギョンスの横に腰を下ろした。
「…十二時ちょっと前」
 天井の蛍光灯がきらきらとミンソクの尖った髪の毛を照らしていた。光の届かないところは夜を表し薄墨色だ。
 脚を抱え行儀よく座り、自分を向くギョンスを捉え、ミンソクは半分まだ眠っているような心地ながらも胸がおかしなふうに締め付けられた。ギョンスといるとよくそうなった。しぐさや動作のひとつひとつ、その眉の反り具合、唇の開き加減で、ミンソクは翻弄された。今は小首をかしげるようにして体育座りをしつつ自分を上目でギョンスが見ている、それがミンソクには辛かった。辛いとしか言いようがなかったが、もちろんいやなわけではなかった。ただどうしたらいいか分からなくなったし、実際どうにもしようがなかった。
「ずっと、ここにいたのか?」
 同じようにミンソクも膝を立て、その上に両手を置いた。ギョンスが、背後のソファに投げ出された毛布を引きながら言う、ずっとってわけじゃないけど。
「帰ってきたらここで寝てるから。ジョンデもさっきまでいましたよ。風呂入りに行きました」
 そしてそれをほんとうにありがたいとギョンスは思ったのだった。もぞもぞと自分とミンソクの体に布団をまとわせる。
「キャンプしてるみたい」
 突然顔をくしゃくしゃにしてギョンスは微笑んだ。毛布の中で体を動かしながらその顔を受けたミンソクは、また不整脈のように心臓がいきなり縮んだ。ふたりはためらいがちに、体をぴたりとくっつけた。同じ高さの肩と肩が熱を分け合う。
「…そういや、夢見たよ、さっき」
 あらゆる意味で温かく、満ち足りて、たまらなくなったミンソクは顔を俯け、ふと思い出したことを口にした。
「どんな?」
 ギョンスはミンソクを向いている。熱い息が頬をかすめた。やはりギョンスを見られず、そのままミンソクは言う。
「ディズニーランドにいた」
 言いながら、くすくすと自分で笑ってしまった。
「ディズニーランド?」
 ギョンスも笑い声が言葉に混じった。
「うん。お前といっしょだったよ」
 横目で一瞬だけ、ギョンスを映した。その顔は不意を突かれた表情で、膨れてめくれ上がった唇はほのかに開いていた。
「ミッキーとかプーさんとかのぬいぐるみをお前じっと見てた」
 その横顔の白目を俺はじっと見てた。
とは言わなかった。
「ほしいのか?って聞いたら、うん、少し、って言ってたよ」
 なぜかは自分でも分からなかったが、ミンソクはまた笑いがこみ上げた。抑えられずふふふふ、ふふふふ、と喉の奥のほうで小さく笑った。
「…確かに、ちょっと、欲しいかも」
 ふざけたニュアンスのない声に、思わずミンソクが横を向くと、真面目な顔をして、よくよく考えてみたら、といった表情でギョンスがひとりうなずいていた。ミンソクはたまらず、今度はきっちり声に出し、あはははと笑った。
「あ」
 突然ギョンスが声を上げた。
そして振り向き、時計を仰いだ。十二時ジャスト。
 驚いたミンソクはギョンスの動きを呆けて見つめ、何事かと尋ねようとしていた。と。
くるりとこちらに向き直ったギョンスは目を光らせ、口を心臓の英語名のように整えはっきりと動かした。
「誕生日、おめでとうございます」
 そう言うと、耳の上部分を染めてつ、と目を逸らした。
ふたりの間に隙間などほとんどなかった。
それにもかかわらず、額を寄せ合うようにしながら、お互いを見ないでいた。
サンキュー。
しばらくしてから呟くようにミンソクは言った。とても、びっくりしていた。
誕生日のことは、寝て起きたら忘れていた。だいたい、ミンソクはギョンスといるとギョンスのことしか考えられなくなった。
だからお祝いを告げられたことを理解するより先に、ギョンスのその顔のさまにまず気を取られ、すぐに反応できなかった。嬉しさはもとより、何か強い恥ずかしさも襲っていた。嬉しいよ、と取ってつけたように言った。もっと気の利いたことが言えればいいのに、と思いながら。
「…プレゼントは、またあとで渡しますね」
 足の指を動かしているらしいギョンスは、やはり下を向いていた。もごもごともぐらが這うように、濃い茶色の毛布は弱く波打った。
目の端でミンソクはギョンスの伏せたまぶたを縁取る濃い、黒いまつげを見た。そして唐突に、ぬいぐるみに心奪われる夢の中のギョンスが浮かんだ。
「ギョンスってさ」
 妙にくっきりした声色でミンソクは言葉を発した。ぱっと、ギョンスは目を上げた。
「結構、可愛いもの、好きなの?」
 瞬きしつつなんとかギョンスの視線を受け止めると、ミンソクは答えを待った。
 魅入られたように黒目をふるふるさせながら、ギョンスは答えた。「はい」唇が、それそのものが生き物であるかのようにうにうにと目の前で動く。「好きですよ」
「…そうなんだ」
「はい」
 だから、とギョンスは言葉を続けた。
「兄さんだって、好きなんです」
 まっすぐな目で、ミンソクを離さず、愛を告げた。
体じゅうがその声に反応を示しながらも、俺はねずみや熊のぬいぐるみか?ミンソクがそう思った瞬間、囁きに近い声がした。
「…俺、結局何か買えたんですか?夢の中で」
 空気を震わせる、濃いホットチョコレートのようなギョンスの声がミンソクの耳に流れ込んだ。ほとんど無意識に、ううん、とミンソクは応じた。
「…じゃあ、夢の続きに」
 もう、ふたりとも互いしか見ていなかった。
濡れた瞳はそれぞれの胸のうちを如実にものがたり、何も隠せていなかった。ミンソクは高い頬骨を中心に自分が白から赤に変容するのを、ギョンスのまなこを覗き込みながら感じ続けた。
「俺に、代わりにいちばん可愛いもの」
 を、と言いかけたギョンスの唇をミンソクは覆った。みずからのそれで。
もう、こんな照れくさいことを聞いてやるわけにはいかない、なんと言っても、俺の誕生日なんだから。
如何ともしがたいくすぐったさと腹立たしさを心中押さえ込みながら、こうしてミンソクは、もっとも自分の望むプレゼントを誕生日の始まりに受け取ることができたのだった。



おわり



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (2) | 短編〈リアル〉
私ならば | 目の下のほくろが色っぽい

comment

管理人のみ閲覧できます : @
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016/11/15 Tue 20:34:17
Re: ご無沙汰してます! : ミス・レモン @-
鍵コメSS様


こんにちは!

お返事遅くなってしまい申し訳ございませんでした!

お言葉かけていただき、すごくすごく嬉しかったです^ ^
お久しぶりでございます♪

いつでもお声掛けくださって構いませんのに!
短編を楽しんでくださっているとお聞きできてほんとうに幸せでした〜!
連載、とくにことの共犯を滞らせていることを非常に心苦しく思っているのです〜(>_<)
それでもお見限りにならず遊びに来てくださっていること、誠にありがとうございます!

そうだったのですね!!
チェンを近距離で味わえ、そしてディオに魅了され!!
素晴らしい体験をされたんですね〜、いいですねえ!!(>_<)
SS様が私にそれを伝えたいと思ってくださったそのお気持ちが、私をなにより喜ばせてくださいました〜(/ _ ; )
私はほんとうに幸せものでございます……!

SS様がチェンベクシの活動をどのようにご覧になっているのかもとても気になっておりました(^-^)
私はかなりわくわくさせられましたが、いかがでしたでしょうか?

いつでも私はお待ちしておりますので、もし何かご要望や、ご感想などございましたら、遠慮なくおっしゃってくださいませ^ ^
SS様の温かなお言葉、いつもながら私を励まし、奮い立たせてくださいました。
また、お越しくださいませ!


フェリシティ檸檬


2016/11/17 Thu 11:23:58 URL

コメントを送る。

URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 

trackback

この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

最新記事

人気投票 1

人気投票 2

人気投票 3

人気投票 4

人気投票 5

ブログ村

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 韓流二次BL小説へ

人気ブログランキング

アクセスカウンター

有料アダルト動画月額アダルト動画裏DVD美人フェラポルノ動画フェラ動画美人フェラ無修正アダルト動画フェラチオ動画無修正フェラ
アクセスカウンター高画質アダルト動画無修正フェラ動画アダルト動画無修正アニメ動画海外アダルト動画
無料カウンター無修正DVDクレジットカード
無料アクセスカウンターウォーターサーバーアダルトグッズランジェリー無修正盗撮動画AV女優名教えて
ブログカウンター