海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20161104

メタモルフォーゼ(短編)
裸足の爪先が安っぽいサンダルの上に乗っているのをずっと眺めていた、そうしながらどれくらい時間が経ったのか俺には分からなかった。
 爪は短く切り揃えられている―――やりすぎと言っていいくらいかもしれない、俺は爪が伸びきっているこいつの指を見た記憶がない。手も、足も。手の方は噛んでしまっている可能性もあった、歯で、無意識のうちに。悪癖を直そうという努力の甲斐もなく、やはり爪は伸びる間を与えられていないのだろうか。そんなことも分からない。なぜならいっしょにいられる時間が驚くほどない。俺も、こいつも、忙しすぎる。特にこいつは。
にこにこと上機嫌な顔を向け、天気がいいからと言いながらやつは俺の手を引き、共にベランダに出てバニラアイスクリームを食べていた。真っ昼間。天気がいいどころではない。真夏の日差しは全身を容赦なく焼いた、日焼け止めをものともせず。持ち出してきたクリームを何度も重ね塗り、帽子とサングラスを身に付け、まるでどこかに出掛けているようなさまで俺たちはどんどんかたちを成さなくなる氷菓と格闘した。席を外したと思ったら、手にはちみつの瓶を持って戻ると、「なんか味、ものたりないから」と言い、どろりとスプーンで中身を小さな雪山のようなアイスの上にあけた。ますますガラスの器の中身は絡み合うようにしてほどけていった。透けたうす黄色とチープな白がお互いを飲み込んでいくようすを、こめかみから汗を滑らせながら俺は眺めた。
自分の分を口に運びながら、満足げな、喉を鳴らす猫のような顔をする男を斜に見て、俺はいったい何をしているんだろうという気になった。俺が今食べたいものはこれか?この、もとの状態をまるでとどめていない、冷たいとはもういいがたいとろとろの甘い食べ物?いや。
「中、入るぞ」
 頬のいちばん高いところをほんのりと桃色に染め、こちらに顔を向けるのを確認すると、何か言葉を発せられる前に俺は立ち上がり、手を取って窓を開け、冷房の効いた室内に足を踏み入れた。逆の手にははちみつの瓶を持って。
 振り向くとキャップと真っ黒いサングラスをしたままの青年が俺を見返し、ぽっかりと分厚い唇を開けていた。そこは俺を待っているとしか思えなかった、そういう、穴だった。
そんなわけで俺はベッドの上にサングラスと帽子とはちみつを放り、手を引いてほんとうに舌の欲するものを求めた。俺の少しゆがんだ小さな唇と、その豊満な唇は反発を示しながらも溶け合った、ベランダに置かれたあの皿の中のように。とにかく甘い、あらゆる意味で、甘い。唾液を口の周りにまで撒き散らしてくちづけながら、サングラスとキャップをむしり取った。
 視線の高さの同じ俺たちは、立ったまま目を開けたり閉じたりしながら口の中をむさぼった、息つく暇もなく。久しぶりだった。手を互いの背や尻に這わせる間も、必死に舌で相手の味を堪能した。次がいつになるかなんて、分かったものじゃない。
ぴたりと張り付いた正面の中心がぶつかり、すれると、どちらからも声が漏れた。あ、とか、ん、とかいった。細く開けた目には太く、濃い眉がしかめられ、まぶたがきつく下ろされているところが映った。まつげが細かく震えている。俺は回した腕に力が入り、立ち上がった先からぬるぬるとこぼれるものがあるのを感じ、腰をよじる。それを受け、相手の体ももぞもぞと虫のような動きをする。
はちみつはそれこそ効果的に使われた。アイスクリームといっしょくたに腹に収められるよりもずっと有効に、意味と、情熱を持って。
「そんな困ったみたいな顔しないでよ」
 言われた意味が分からず、俺が首を傾げると、ふふふと口の中で笑われた。そのとき俺ははちみつをやつの股に垂らしていた、たっぷり、気の済むまで。太陽を混ぜた色のシロップは白い体の上で輝いた。硬い毛も、海草のように柔らかく見えた。
 困っている?その言葉を額のあたりで弄びつつ俺は大口を開け、上を向いたペニスにむしゃぶりついた。ああっという声が頭上から届く。ベッドの上は何もかもが散乱している。溝に沿って滴り落ちるはちみつは、すぼまった部分にまで達し相手は体をひねった、逃げたいとでもいうように。甘い。そこに少しだけ塩辛さが侵入する。俺は脳のどこかが鋭敏になり、どこか別の箇所は遮断されたようになる。夢中というのはそういうことを言う。何も考えず指は動き、ずるずると中に押し入っていく。
「くうううう」
 普段なら絶対聞けぬような声が、部屋の中でひそやかに響く。びくびくと全身―――出っ張った部分と奥まった部分も含め―――が振動する、間断なく、まだまだ足りぬとでも言うように、貪欲に。俺は口と手を駆使し、快楽にただ仕える。零れる声が俺への褒美だ。
ほんとうに、その小さな喘ぎを聴くだけで、俺はなんでも、どこまでもやれる気がする。
 いろんなもので照った棒は、鉛筆でふちをなぞったようにくっきりとし、俺を向いていた。これ以上成長はできないと無言で俺に訴えた。
入れる前に、俺は膝を持ち上げ、足の指を口に含んだ。さっき見ているだけだったそこ―――おしゃぶりを与えられた赤子のように無心で舐めた。ふん、ふん、と鼻から息を抜く音が聴こえ、そのまま俺は腰を進めた。
半分も開いていないまなこは、それでもその白目の白さと多さを俺に伝えてきた、緩く涙の膜が張っていることも。思わず俺は頬に手を添えた、腰を振るのはやめず。
「兄さ」
 すべてを言うこともできず、大きく開いた小鼻から激しく呼吸するのを見下ろし、体じゅうに汗を迸らせて俺はそこかしこの筋肉を使った。肩や、腕や、腰や、太ももや、ふくらはぎが、それぞれの役割を果たしていた。ベッドは際限なく揺れた。
いくときはいつも腹の上に出す、どちらもが。俺は先端の穴から精液が飛び出すさま、その最中腰を浮かす相手のさまを見るのがたまらなく好きだ。それを何かで遮られたくない。そしてふたりの精液が混ざるのを見るのも好きだった。俺たちのはちみつとアイス。馬鹿馬鹿しい考えに思わず乾いた笑いが漏れた。
きょとんとした表情を浮かべた相手から、何?と問われても、ううん、とただ首を振った。
「きれいな歯茎」
 汚されたのにもかかわらず相変わらず美しい男が、目の前で力尽きたように横たわった俺に言う。
「きれいな目」
 はあはあと乱れた呼吸で、俺は言葉をただ受ける、目を相手の目に預けて。
「きれいな顎」
 夢を見ているような、うつろな瞳で俺の顔をくまなく見渡す。
「こんなにきれいなのに、俺にこんなことして」
 それはそっくりそのまま、俺の台詞だ。
意味もなく、ふたりでくくくと笑う。
こんなことをしたくなるのは、お前だけだと俺は言う、心のうちだけで。見つめ、見つめ返されると、自分が自分でなくなってしまう、どうしたらいいか分からない。途方に暮れながら一心に体を交わらせる、まるでそのやり方だけはもとから知っていたかのように。そうだ、確かに困っている。投げ掛けられた言葉を反芻する。いつも、お前といると困る。そう思いながら、俺はきっと口にせずともまた顔にそれを表しているだろうと想像しながら、しかたなくわずかな抵抗として唇の両端を上げた。



おわり



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2016/11/05 Sat 00:04:09
Re: こちらにも : ミス・レモン @-
鍵コメT様


こんにちは!

短編をお読みただきありがとうございます〜!!

おそらく気付いて下さるだろう…と思い書いてみました!
お楽しみいただけましたでしょうか?少しでも?

以前つれづれにて書いたシウドというのは、どちらかと言うと連載ものを考えておりまして、なんと言ってもこのふたりの恋愛をぱっと書ききれる感じは未だにいたしませんです。
だからほんの一瞬を切り取るといった感じの短編となりました。
かなりいろいろ自分でも考えさせられるカップリングでして、当初の思い描いていたものと様相をことにしておりますが、これはこれとして気に入っていないわけではないという状態でございます。

T様からこんな風な感想をお聞かせいただけたことで、書いてよかったなあと素直に思いました。
自分なりのBLを模索中でございまして、その一環になった一作でございました。
それにしてもいつもほんとうに素敵なお言葉……。
皆様のコメントを読者の方たちと分かち合えないのが残念でございます、毎回。
もちろん鍵コメントをやめてほしいということでなく、もったいないな…と身にあまる光栄に浴していることを都度実感しているのです。

私は読んでいただけること、そしてこうして感想を伺えることが皆様からの贈り物でございますので、それだけで十分でございます。ほんとうに。ありがとうございます。
それでもお祝いを言っていただけるのも心底嬉しいものです。野暮などとは思いませんです。

そうなんです、ミステリ読むと止まらないのですよねー!
空いた時間すべてを使って読んでしまいますので大変です。目がおかしくなりますし。
Kiki KIRINNJI、先程の返信にてもお伝えしましたが、読んでおります!お教えいただきありがとうございます!
オースティンはなんだかとってもいいですよね。
私エマだけはどうして読み進められないのですけれど(笑)、それ以外は基本とても好きです。
高慢と偏見はしょっちゅう読み返したくなる衝動に駆られますし、よくドラマや映画を流しっぱなしにします。
お母さんのことをお父さんが馬鹿にするあたりのリアリティがなんかすごいんですよね。

ディオは大学生活を満喫したのかもしれませんね。
それはそれでよいことかもですね。ボナペティの彼のようで。
なんだか小耳に挟んだところによるとまたキスシーンがあったとか?
それはまだ見ておりませんが、どうだったんでしょう?
気になります。
伏字の中身はこから始まってけで終わる感じですかね〜^ ^
あ、演出家諸氏に向けてですね〜☆

そうです、魔夜峰央先生は同郷です〜!
同郷と言っても大きい県でして、遠いとあまり関係がない感じすらするのですが(笑)、そして先生が実際どこあたりの方なのかはちょっと失念いたしました。
私パタリロすごく好きでかなり集めておりました。
最近「跳んで埼玉」というあれな漫画でまた一躍注目を集めてらっしゃいます。
魔夜先生、最初はそういった、コメディでないものを書いてらっしゃったそうですもんね。私まだそこまで目を通せてはいないのですが。いつかぜひ読んでぞくぞくしたいものです。

私のためにたくさんお時間使わせてしまって心苦しい限りです。
T様がその時間を後悔なさらないことを祈るばかりでございます。

また、是非お越しくださいませ( ^ ^ )/


フェリシティ檸檬


2016/11/07 Mon 14:07:11 URL

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