海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160717

人さらいの条件 30
シウミンとの会話を、ギョンスは楽しんだ。
彼はやはり、恋をしているらしい。
困ったり怒ったりする兄は、ひどく愛らしく、その兄に分けてもらった華やかでエキゾチックな茶とともに、高揚したギョンスの心を温め、落ち着かせた。
ダイニングルームをあとにし、年が明けてから続いてきた苦難を終結させるため、その原因である者の待つ部屋に、ギョンスは向かった。
ドアの前に立ち、ノブを掴む。
深呼吸を、した。
音をあまり立てぬよう、扉を開いた。
カイはベッドに仰向けに横たわっていた。目を開いたまま。
入って来たギョンスを、その目だけで迎える。
再び、かちゃり、というかいわないかほどの強さでドアを閉めると、ギョンスはゆっくり、自分のベッドに向かった。その上に、腰掛ける。
むっくり、カイは上半身を起こした。
ふたりはどちらも気まずそうに、お互いの顔を見た。そうして、しばらく黙っていた。
ギョンスが、口火を切った。
「………データ」
声がうまく出てこなかった。
「…消して、くれるんだろ?」
自分は泣きそうな顔をしているかもしれない、とギョンスは案じた。
どうしても、感情が高ぶった。
胡座をかいたカイは、無表情で、「うん」と言う。
そして、ポケットに手を入れ、小さなかけらのようなものを取り出し、ギョンスに放った。
弧を描いて飛んできたそれを、ギョンスは両手で受け止める。掌の中に、SDカードが乗っていた。
顔を上げると、カイはギョンスをじっと見つめて、言う。
「……あの写真しか、入ってないから。あげる」
「カードごと?」
「うん」
「…………データって、これで全部か?」
確認しないわけに、いかなかった。
瞳が震えているのではないかと思いながら、ギョンスはカイの返事を待った。
「………うん。もう、ないよ」
胸のあたりの血の流れが、ギョンスの耳を揺らす。
「……ほんとか?」
「ほんと」
「……信じるからな」
カイは射るような目でギョンスを捉えた。しかしギョンスはもう何も気にならなかった。答えを聞く前に、弟を、信じていた。
「…しんじていいよ」
そう言って、カイは視線を落とした。
ギョンスはどっくどっくと鳴る心臓の音が、喜びを訴えるのを、自分も首を落とし、受け止めた。
終わった。
体がわずかに、ほんのわずかに、震えていた。
ごくり、と唾を飲み込むと、顔をカイに向けた。
カイがギョンスを見ていた。
その目と口は、話が終わっていないということを如実に告げていた。
ギョンスは身の内が幸福と安堵ではちきれそうになりながら、カイのそのようすを怪訝な顔で見返した。
一抹の不安が、よぎった。
「……もう、データは、ほんとにないよ」
改めてまた、同じことを繰り返し、カイは言った。
「何も証拠は残ってない」
ぱちぱちと瞼の開け閉めを行いながら、ギョンスはその瞬きの間にカイが何かを決意した瞳で相手のそれを見ていることに気付く。
大きな舞台の前のときのような、瞳。
「だけど。…………俺には、俺が兄さんにしたこと、兄さんが俺にしたことの、記憶が残ってる」
違う意味で、ギョンスは胸の鼓動が、肋骨を強く叩くようになっていくのを感じ出す。
「俺は全部覚えてる。…忘れてない」
SDカードを握った手が、汗ばんでくる。
「俺は言えるよ。どんなふうに自分と話して、どんなふうな提案をして、どんなふうに、時間を過ごしたか。——俺に、どんなことをされて、どんなことをしたのか」
これまでのことが自分たち以外の人間にどのように捉えられるのか、カイの言葉でまた、冷徹な客観がギョンスに、その顔を殴るように、もたらされた。
「それを、言える。————ジョンデ兄さんにだって」
喉元を見えない手で掴まれたかと、ギョンスは思ったほど、一瞬、息が止まる。
「事細かく、描写してみせるよ。そしたら、きっと、兄さんは笑えない。いくらジョンデ兄さんにだって、笑い飛ばせないよ」
目前でその口からすらすらと自分を脅す言葉を吐く人間は、本当にあのカイなのだろうかと、ギョンスは疑いかけた。今までで一番、これが現実なのかが分からなくなった。
「————でも、もし」
ああ、来た。
最後の、条件が。
「もし、俺と、……俺と、——————俺と寝てくれたら。…………誰にも、言わない」
皆が羨む顔と体を持った、天才。そしてギョンスにとっては弟であり、また、何度も、自分をさらっていく、この男。
「…………1回だけで、いいから。そしたら、もう、兄さんにつきまとわない。全部、なかったことにする。忘れて、前みたいになる」
カイは懇願を始めて、緊張の糸が切れたようだった。
声はこもり、肩を落として下を向いた。
「だから」
気力を振り絞るようにして、また、ギョンスを向く。
胸を大きく上げ下げしながら、見知らぬ者を見るように、ギョンスは意を決した相手の顔を見つめる。
「だから、兄さんを、……抱かせて欲しい」
耳鳴りがする。
ゴー、という音とともに、窓の向こうを飛行機が飛んで行く。
何も聞こえなかったことに、したかった。
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