海の底、森の奥

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20160917

蜜月旅行(レイ、ベッキョン)
背中に手を置くと、その表面は汗で滑るようだった。
イーシンは横になった自分の上に座って腰を振っている、ベッキョンの脚まで手を下ろした。
眠りにつきそうに見えるほど、うつろな目でベッキョンを見上げるイーシンは、視界に入る光景に心底恍惚となっていた。
何度交わっても、そうだった。
ベッキョンを抱くということは、イーシンにとって生まれてきた意味と等しいところがあった。
奥二重の、際の染まった目を自分に向け、尖った顎の力を抜いてきっちり並んだ白い歯や、薄桃色の舌を晒すベッキョン。
貫かれながら自分よりもやや小さい、しかし恐ろしく綺麗な性器(実際、イーシンはこんなに混じり気のない色と整ったかたちのそれを見たことがない、と思った)を、ぴんと上に向かせて、てらてらと照りかえらせているベッキョン。
漏らす吐息に時折混じる声は、あの、イーシンの大好きな少しかすれた、甘みの格段に上がったそれだった。
イーシンはバイトで鍛えた腹筋で、軽々と体を起こし、ベッキョンをその身に抱えるようにした。
その瞬間、奥の奥まで楔は穿たれ、ベッキョンは喉の底から「んああっ」と、目をつむって声を出した。
布団の上はぐしゃぐしゃだった。
電気代の節約で、イーシンの部屋はサウナ状態だった。
汗と精液がふたりのまわりに絶えず広がり続けていた。
薄目を開けたベッキョンのその表情の底知れなさに、イーシンは魔法にかけられたかのように無意識に口を近付けた。
ついばむように、そして舌を食べるように、キスをした。
汗と、さっき食べた、ラムレーズンアイスクリームの味がした。
そしてイーシンは、口同士を繋げながら、ベッキョンを後ろに倒した。


大学のとあるイベントで、イーシンとベッキョンは出会った。
イーシンは留学生で、少しベッキョンよりも年上だった。
だがそんなことを構うベッキョンではなかった。学年は同じであったし。
その夜開かれた飲み会で、ふたりはたくさん、話をした。
ベッキョンに多くの友人がいることに、イーシンは少なからず驚いた。
その場にいるすべての者と、顔見知りであるようだった。
けれどその日は、イーシンといちばん、ベッキョンは時間を過ごした。
「イーシンはハンサムだな、いいなあ」
とビールを飲みながら、ベッキョンはまじまじイーシンの顔をすぐそばで見つめ、感に絶えぬように幾度も言った。
そんなことを面と向かって、しかもなんのてらいもなく告げる人間とあまり会ったことがイーシンはなく、酒のせいだけでなく体に熱を回らせた。
全身赤くなったイーシンは、体育座りをして壁に寄り掛かり、ちびちび焼酎を舐めていた。
そんな彼に寄り添うようにベッキョンは壁に肩をもたせかけ、イーシンだけを見て男とは思えぬような指の先で落花生を食べていた。
会話しながら、イーシンは横目で彼をちらちらと見た。
自分の家族のことや専攻のこと、好きな音楽や漫画や映画のことを語り、イーシンのさまざまな、そしてすべてに関して聞いてくるベッキョンは、イーシンがこちらで初めて、なんの気負いもなく付き合いを持てる友人になりそうな予感がした。
その喜びは腹の底から湧いてくるようで、目尻を垂らし、えくぼを浮かべていつの間にかベッキョンをまっすぐ見ていた。
ベッキョンはそんなイーシンを見返して、自身も垂れた目をもっとそうした。
そして
「えくぼ、あるんだなあ」
と言って、海で拾う薄い色の貝のかけらのような爪の付いた、指をくっと、イーシンの頬のくぼみに置いた。
酔っていたため、驚きはしたが、特段何も、イーシンはしなかった。
黙って瞬きをしながら、ベッキョンをただ見ていた。
指を離したベッキョンは、にこにこしつつ小首を傾げて「な?」と、イーシンに言った。
そのとき、イーシンは落ちた。
経験のない、どこに終わりがあるのかも分からないそれに、イーシンはまっさかさまに、落ちていた。


初めてキスしたときのことを、イーシンは鮮明に覚えている。
キスしながら、これが現実であると、イーシンには信じられていなかった。
寒い日だった。
だがイーシンは暖房代を節約し、部屋で何も器具を用いず、厚着をして、布団を被って過ごしていた。
そんな中にベッキョンは来た。
ベッキョンはしょっちゅう、イーシンの小さなアパートを訪れた。
イーシンはそのたびに胸を激しく震わせていたが、言葉や態度では微塵もそんなそぶりを見せなかった。
「さみっ」
ベッキョンが両腕で体を抱えるようにして部屋に上がって来ると、暖房を点けたくなったが、光熱費代を考えるとそうもいかないと、イーシンは恋心より現実問題をいつものごとく優先させた。
布団はたくさん実家から持って来ていた。
こういう状態を見越しての対策だった。
ベッキョンはもう勝手に、自分の分として使っている布団を体に巻き付けた。
お湯を沸かそうとするイーシンの背後から、
「カップ麺買って来た」
とベッキョンの声が掛かった。
そうだろう、とイーシンは思った。
だからこそ茶のためなどでなく、薬缶を火にかけたのだった。
ベッキョンがやって来て、彼の買って来たカップ麺をふたりで食べて、他愛もない話をするのが、イーシンの幸福だった。
湯の蒸気と熱が部屋を巡る。
布団でもこもこになったふたりは小さなふたつの山のようで、何度繰り返してもお互いを見ると笑ってしまった。
カップ麺を食べ終えると、イーシンのバイトの時間までふたりは横になって喋ったり、ベッキョンの持ち込んだ漫画を読んだりして過ごした。
腹がくちたイーシンは、温かくなった体を丸め、眠りそうになっていた。
ベッキョンがいるとどうしてか心底安心した。
どきどきと鼓動は速まりながらも、体の芯では安堵していた。
もともと重いまぶたが、イーシンの目の中をすべて隠そうとした。
ふにゃふにゃと上まつげを下まつげに付けようとしているとき、唇の上に何か触った。
ふわ、と、左右時間差でまぶたを上げた。
そこにはベッキョンの目があった。
むしろそれしか、見えなかった。
きっちり開いた双眸は、イーシンのそれからひとときも離されなかった。
ごそ、という、布団と耳の擦れる音を立てながら、ベッキョンはイーシンに寄った。
少し彼が動いただけで、さっき感じた唇の上の何かを、イーシンはまた受けた。
ベッキョンの、唇だった。
目を見開いたまま、イーシンは黒目をうろうろ動かした。
俺は今、眠っているんだろうか、と思った。
ベッキョンは顔を横にし、さっきよりも範囲を広げて、イーシンにくちづけた。
イーシンの目に、つむったベッキョンのまぶたが映った。
その上の血管の流れすら、分かった。
ひとしきり唇を吸われ、離されると、イーシンは呆然として顔を戻したベッキョンを見た。
相手はちょっと困ったような顔をしていた。
いたずらの見つかった、悪ガキのような顔を。
ふたつの山はほとんどくっついて、布団の上に横たわっていた。
ベッキョンの手が伸びた。
イーシンはベッキョンの手が自分に近付くと、いつも金縛りにあったように動けなくなった。
胸の前に置いていた手を、取られた。
温かいベッキョンの手が、自分の少し温度の低い手を包み、どんどんしっとりしていくのを、イーシンは感じた。
「……やだった?」
かすれた声が、ベッキョンの唇から零れた。
初めて会ったときのように、心なしか小首を横に曲げていた。
ひっきりなしに瞬きしながら、イーシンは急いで首をふるふる横に振った。
顔を崩すように微笑まれ、イーシンもつられて少し笑った。
ベッキョンはイーシンの頬のへこみを、握り合った手の人差し指で、ちょん、とつついた。
「イーシン」
俺はやはり夢を見ているのかも、とイーシンは疑った。
「好きだよ」
なんて言うんだっけ、と、ベッキョンは続けた。
「ウォーアイニー?」
ああ。
目が、覚めて欲しくない。
イーシンは懇願した。
まだ、まだ。
頼む。
こんな甘い夢は、見たことがない。
願いは叶った。
それからずっと、夢は、終わらなかった。


「ひぃー、すごいよー体」
体重が減ったのではないかというほど、イーシンとベッキョンは体を濡らしていた。
イーシンは扇風機の角度を調節し、並んで座った裸の自分たちに生ぬるい風を直撃させた。
そばには沸かした茶が、薬缶に入ったまま置いてあった。
持つとかすかに残った氷が、からからと鳴った。
イーシンはふたつのグラスをたっぷり満たすと、ベッキョンにそのうちのひとつを渡した。
いっきにそれを飲み干すベッキョンを、イーシンは常のようにじっと見守る。
細く長い首がごくりごくりと鳴り、動くのが、イーシンは大好きだった。
ぷは、と口を開けると、ベッキョンは口角を手で拭いながらグラスを置いた。
「これ、洗濯しなきゃ駄目だな」
長い指を広げて布団のシーツを触るベッキョンがそう言うようすを、イーシンも茶を飲みながら眺め、喉だけでうん、と返事をした。
この部屋に、洗濯機はなかった。
あとでコインランドリー行かないとな、とイーシンが考えながらまた、杯を満たしていると、
「イーシン」
とベッキョンの声がした。
「ん?」
彼に顔を向けると、ベッキョンが心から楽しげな表情をしてイーシンを見ていた。
「コインランドリー行って、スーパーで食材買って、帰ってから鍋しよーぜ。激辛のやつ」
あははと笑い、ベッキョンは言う。
「そんでまた汗だくになんの。で、もっかいやってぐーぐー寝よー」
独特な口のかたちで笑うベッキョンを、イーシンは薬缶を持ったまま見つめた。
激辛なのはどうだろう、とイーシンは思うが、それでも、ベッキョンの言葉すべてを、細胞ひとつひとつに染み渡らせるようにイーシンは味わった。
「……じゃあ、まず、シャワー浴びよう」
小さな小さなシャワールームがこのイーシンの城にはあった。
「うん。行こーぜ!」
いつもだが、イーシンのその言葉は、一緒に入ろう、という意味では特別なかった。
そうするには狭すぎる部屋だったから。
だが何も言わず、イーシンはえくぼをこさえてベッキョンに手を引かれるままに立ち上がる。
体をぶつけるようにしながら笑って互いを洗い合う入浴も、イーシンにはすべてが夢の途中だった。




おわり




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レイのえくぼ、ベッキョンの指 | 朝から素敵

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2016/09/18 Sun 01:13:24
Re: やっぱりレイさんは…^m^ : ミス・レモン @-
鍵コメY様


こんばんは!

コメントありがとうございます^ ^


そうなのですね、最近の受験ってそういうものなのですね〜。
お母様やお父様は大変ですねえ。
私のときもそういうところはありましたが、もっとそれが進んだんじゃないでしょうか。
まあ、子供にとって受験ってかなりのストレスですので、それを緩和できる方向に進んでいるとしたらよいことなのかもれませんね。
Y様も息子様も無理はしすぎず、目標に進んでいかれるとよいなあ、と思っております。


とにかく、Y様、本当にお疲れ様でした^ ^


「蜜月旅行」をお読みいただき、その感想をいただけて嬉しいです♪

そして、「俯瞰の角度」がお好きと聞いて少し驚きました!
「俯瞰の角度」はなにげに人気があるようでして、わたくしそのことにいつも意表を突かれます。

書いているとき、誰がこれを喜ぶんだろう、というような気持ちがつねにつきまとっておりましたし、なかなか執筆自体、苦労いたしました。
ですので、お好きだと言ってくださるとそれが報われた感じがしてより喜びが増す思いです。
ありがとうございます!

幸せで少し苦しいくらいなレイをお好きと教えてくださり、Y様はそう感じてくださるのだなあ、と心が温かくなりました^ ^
「砂糖壺〜」もそうでしたが、この甘い雰囲気というものに、Y様は萌えの芽をお持ちでらっしゃるのかなと思いました^ ^
私もそうなのですが。

ラムレーズンは突然ふっと浮かんだんですね。
多分ベッキョンが好きなんだと思います^ ^
ふたりでひとつ食べたんでしょう。
私の周りも好きな人が多い味です^ ^


エアコンをつけないのもそうなのですが、薬缶のままお茶を飲んでる感じが、すごい昭和感があるなあと自分では思ったのです。
ほんとイメージがそんな感じで、畳6畳一間に、布団がべろっと敷いてあって、みたいな、昔の苦学生的なレイを想像しておりました。

私は汗だくになっているセックスってなんかいいなあ、と思っているところがあって、よくそういう描写をしますね。昔から。
それが少しでもこの話からも伝わっているといいなあと思います。


ああ、編み物、そういう意味というよりは、なんと言うか、何日も何日も同じことをしつづける感じに、ちょっと尻込みするところがあるのです^ ^
思い立ったらそのとき作り切ってしまいたいような感じがなにごとにもありまして、わたくし^^;
編み物いろいろ気をつけて大変なのは分かるんです!
祖母の作っている横によくおりましたから。

だから余計、Y様すごいなあ、と尊敬するのです。


今日会ってきましたが、やはりとても喜んでくれそうなので、絶対作ろう、と思いました^ ^
楽しみになりました〜!
プレゼントも、娘ちゃん本人が喜んでくれました♫


私の祖父はものすごく運動神経のいい人で、私は全然、普通なので(むしろものによっては以下で)、彼の大車輪しているところや、何キロもずっと泳ぎ続けるところや、アイスダンスを美しく滑るところをあっけに取られてそばで見つめていたものでした。
こういう思い出は本当に宝物ですので、私は一生忘れないと思います。
死ぬとき思い出すかもしれない、とすら思います。

Y様も仲良くされていたとお聞きして嬉しくなりました^ ^
おじいさまやおばあさまって特別な存在だと思うので。
私は母方の祖父母が死んだところも、同じく忘れられません。
ずっと死に顔を覚えています。
こちらも自身が死ぬとき思い出すかもな、と思います。


いつも私に寄り添ったコメントをお寄せくださってありがとうございます^ ^

明日も祭りは続きます♪
よろしければ、また、お越しくださいませ〜。



フェリシティ檸檬


2016/09/18 Sun 21:46:55 URL

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