海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160910

人たらしの獲物(チェン、ベッキョン)前編
あるときからジョンデのバイト先のコンビニに、後輩が入って来た。
後輩と言ってもそいつは同い年だった。
だからジョンデはまるで絵に描いたような笑顔を広げて、その男に向かって、敬語はいいよ、とすぐさま言った。
「そうですか?」
と制服を着ながら彼は上目で聞いた。
うん、と変わらず笑みを向けると、負けないようなぴかぴかの笑顔を見せて、
「じゃあ、俺のこともベッキョンて呼び捨てで。俺もジョンデって呼んでいい?」
と人懐っこさを全開にした。
ほんの少し、驚いた。
こんなふうに距離を縮めて来る相手は、ジョンデとしても初めてだった。
「う、ん」
「よろしく」
笑うと、垂れている細い目が更に垂れるんだな、とジョンデは同じ高さの視線を笑顔のままで受け止めた。


それから、ふたりは急速に仲良くなった。
と言うか、ふたりは基本仲良くないという人間がいないタイプの性格だった。
だから当然ふたりの間も良好だった。
ジョンデは自分が思うのもなんだけど、と思いながら、ベッキョンのように相手構わず笑顔で近寄っていき、気に入られるすべはすごいなと感心していた。
ああいうふうに、自分よりもっと本能に近いところでそうできるのは、生来のものだろうな、とかすかに羨ましく思った。
だが妬んだりするには、ベッキョンをジョンデは好き過ぎた。
一緒にいると否応なく楽しい気分になり、それもただ高揚するとかそういうことではなく、芯からリラックスし、自由に話せた。
友人を見回してみて、そういう心持ちになる相手はあまりいないようだとジョンデは思った。
彼女といるときに近い感覚かもしれない、とあるときふと思い当たった。
ジョンデは彼女と、高校2年生の時分から付き合っていた。
別々の大学に進学しても、ずっと変わらず交際し、彼女といるのがいちばん無理のない自分だと、ジョンデは日々感じていた。
それは育ててくれた両親や、一緒に育った兄弟以上かもしれなかった。
そのことを休憩中にベッキョンとおやつを食べながら彼に話すと、感に入ったように、
「それはきっといい彼女なんだなあ、大事にしなきゃだな」
と薄い唇の周りにお菓子のカスを付けて言った。
「お前は彼女は?」
と、そのカスを気にしながらジョンデが尋ねると、ベッキョンは眉を寄せてんー、と唸り、
「今はいない。こないだ別れた」
と唇の先で言った。
「あ、……ごめん」
もぐもぐとお菓子を食べ続けながら、ベッキョンは破顔した。
「いいって。謝ることじゃねーよ。それに別にへーきだから」
汚れていない掌だけで、ベッキョンはジョンデの背中を軽く叩いた。
するとその口の端に付いたカスがぽろりと落ちた。
「そっか」
ジョンデはひっきりなしに動くベッキョンの口元を見つめ、なぜだかちょっとがっかりしている自分がいるのを感じていた。


バイト以外でも、連絡先を交換したふたりは遊びに出かけるようになった。
それこそ彼女のいないベッキョンは、休みの日になると友人と遊ぶことはしょっちゅうで、その中のひとりがジョンデだった。
「悪いな、彼女いいの?」
とベッキョンは会うたび言った。
なら誘ってこなければいいのに、と思いながら、ベッキョンの気遣いが嬉しくなくはなく、緩く笑みを浮かべて大丈夫だよ、とジョンデは答えた。
ベッキョンの誘いはジョンデの心を浮き立たせた。
それは会えば必ず、ああ、楽しいなと思えることが分かっていたからだった。
そんなふうに思える人間がごくわずかしかこの世にはいないということを、ジョンデはまだ若かったが、だんだんと知り始めていた。
彼女はベッキョンについて、ひどく興味を持ったようだった。
それでしばしば、3人で会って飲んだ。
「ベッキョンくんて、人たらしだね」
面と向かって、彼女はベッキョンに言った。
そういう、彼女だった。
ベッキョンは笑った。
酔って、上機嫌で、あははは、と、よく通るハスキーな太い声で笑いながら、そう?と問うた。
「うん」
にこにこと彼女は笑いながらワインを干した。
「みんなきみにめろめろになるんだな」
その言葉は喧騒のただ中で不思議と響いた。
やだー、とおねえ言葉で返すベッキョンを、ジョンデと彼女は隣り合って見つめていた。


「お前の彼女、面白いな」
初めて会ったときから、ベッキョンはジョンデにそう感想を告げた。
今日は一緒に本屋に来ていた。
ジョンデは論文を書くための資料を、ベッキョンは漫画と雑誌を求めていた。
まったく違うところを探し回りながら時折顔を合わせ、そのまま2、3時間過ごし、そのあとお茶をしながら、ベッキョンはまた、彼女についてそう言った。
「なんだよ」
ジョンデは軽く笑った。
ストローの袋を指輪をはめた指でいじった。
指輪は彼女からのプレゼントだった。
彼女の趣味も、ジョンデは好きだった。
「いや、いいなー、と思って」
ストローを咥えたベッキョンは、窓の外を見ながらぽつりと言った。
「彼女、欲しいのか?」
ふにゃりと笑みを零してジョンデは問い掛けた。
珍しいな、と思いながら。
視線をガラスに預けたまま、ベッキョンは考えごとをするときに出る、眉間を寄せる癖を見せながら、グラスを置いて言った。
「どうだろうな。ちょっと前、懲りたしなあ」
「その歳で何言ってんだよ」
ストローの包みは小さな塊に変貌していた。
「相手によるかな」
硬く締まったその白いゴミを、ジョンデは指先でくるくると弄んだ。
「彼女の友達とか、紹介してもらおうか?」
ベッキョンがジョンデを横目で見た。
頬杖をつき、最初見たときジョンデの目を奪った、その美しい手指を晒した。
「うん、まじで欲しいなと思ったら、お願いするかも」
にやりと唇の端を上げ、ベッキョンは言った。
ジョンデは残りのアイスコーヒーを啜った。
ほとんどが氷の溶けた水だった。


デートで映画館にやって来て、並んで彼女と腰掛けると、ジョンデはベッキョンのその話を、何の気なしに持ち出した。
まだ予告も始まらず、ふたりの腿の上にはポップコーンが置かれ、人々が席に着こうと動くさまを目に映し、前を向いたままジョンデは半ば笑って言った。
「ほんとに?」
彼女は言った。
かなり不審げなその声音に、ジョンデはポップコーンを口に入れようとしながら彼女を向いた。
かし、と噛みながら、うん、と応じると、彼女は口を尖らせるようにして、ふーん、と言った。
「なんで?」
やっぱりバター味にすればよかったかも、と考えながらジョンデは問い返した。
「……そんな感じしないと言うか」
彼女は眼鏡の下の目をスクリーンの方に向けたままだった。
「そう?」
「うん」
「嘘ついたってこと?あいつが」
なんだろうな、この会話、と思いつつジョンデはポップコーンを食べる手を止めなかった。
対して彼女はポップコーンに手を付けなかった。
ジョンデを見ない状態で、
「嘘って言うか………」
と呟くように言った。
あたりの照明が落とされた。
そしてそのまま会話は途切れた。



つづく



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trackback (0) | comment (4) | 短編〈パラレル〉
お祝いに | いわゆる、兄弟

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2016/09/10 Sat 08:39:19
管理人のみ閲覧できます : @
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016/09/10 Sat 09:55:44
Re: おはようございます! : ミス・レモン @-
鍵コメSS様


こんばんは!

お返事遅くなってしまい申し訳ありません!!


このお話、お楽しみいただけましたでしょうか?^ ^

いっきに内容全部をお上げできなくて私自身残念なんですが、この前編をお読みになっただけでいろいろ思っていただけたならとても嬉しいです。

このふたりのようすを書くのはすごくスムーズで楽しくて、そしてその中に混じる彼女ちゃんを書くのもそうでした。

怖さを感じましたか?(笑)
ベッキョンの悪い顔かあ(笑)

後編も是非お楽しみいただけたら幸いです(^ν^)
SS様の予感は当たるのか否か!?
ご確認くださいませm(__)m


フェリシティ檸檬

2016/09/10 Sat 23:14:31 URL
Re: おはようございます : ミス・レモン @-
鍵コメM様


こんばんは!

コメントありがとうございます^ ^

ご返信遅くなって申し訳ありません!!


食べられちゃいましたか^ ^
それはベッキョンもきっと美味に打ち震えたことでしょう!


この彼女を書いていると、ちょっと自分が憑依しているかのような感じになるところがあって^^;、実際こんなふうかというと違うのですが、M様にそういうふうに言っていただくと、なんだかむずがゆいような恥ずかしいような気持ちをほのかに抱きました。
彼女の場合、チェンの彼女だからというより、彼女自身の洞察力から何かを感じ取ったのではないかな、と私は思っております。
ベッキョンの振る舞いとか、物言いとか、姿形とかからですね^ ^

明日朝の後編も、是非お読みいただいて、その際ご満足いただけるものになっていたらいいなあ、と思っております!


ああ、やはり!!
あの漫画は素晴らしいですよねえ!!
1巻目読んだとき、あまりにうまくて唸りました(´Д` )
私の友人も好きです。
早く続きが読みたいなあと思っております。
M様とわたくし、お仲間ですね♪

絵は山田ユギ先生のところにいらっしゃったのだったかな?(違ったらごめんなさい)、彼女に似た印象をお受けしますね。
あっさりとしつつエロティックでいいですよね^ ^


いえいえ、そんなことございませんよ!!
わたくしこそすぐ気付かなくて申し訳ございませんでしたm(__)m
お部屋にお邪魔させていただけて嬉しかったです♪

M様は私の勝手な印象で大変申し訳ないのですが、美を受け取ることのできる、そして少し退廃的な似合いの感じられるものがお好きなのかなあ、なんて感じております(これも違ったら本当にごめんなさい)。
それをお部屋の中を覗かせていただいてまた、少し僭越ながら思った次第です。

お言葉いただけていつも本当に嬉しいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

またよろしければ是非、お越しくださいませ!


フェリシティ檸檬

2016/09/10 Sat 23:39:57 URL

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