海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160903

ふたりのゆくえ(シウミン × D.O.) 前編
合格祝いは何がいいだろうかと、考えていた。
そもそもギョンスは物欲自体がなさそうで、実際、誕生日のときも、ものを欲しがったりはしなかった。
映画のDVDなど、どうだろう。
いや、特別なお祝いなのだから、もう少しインパクトのあるものがいいか。
家を出るかどうかでも、これから要るものは変わるだろう。
そんなことを思いながら、電車で乗り継ぎ、いつものように彼の住むマンションへと向かった。
とりあえず、花束だけは、うちの最寄り駅前の花屋で買っておいた。
なんの花にするかというだけでも、悩んでしまうものだった。
だいたい、花束を買う、ということ自体、もしかして初めてなのではないかと思った。
母へ一輪のカーネーションを買ったくらいしか、覚えがなかった。
彼女と呼べる存在に対してだって、花を贈るということはついぞなかった。
腕を振るたびかさかさと、束になった白い花が包みの中で鳴っていた。
目の端に入ると、照れくささが胸に沸く。
なんという花だったっけ。
緑色のリボンを茎に結わえられた、俺に顔を向ける花たちは、白一色だった。
なんとなく、ギョンスは色のないものの方を好む印象があった。
いつも黒い服ばかり着て、部屋もほぼモノトーンで統一されているから、おそらく彼を知る者なら、聞かずとも誰もがそう思うだろう。
気に入ってくれるといい、と、純粋に俺は祈った。
部屋のチャイムを押すと、間もなくドアが、相手を気遣うようにそっと開いた。
「ミンソク兄さん」
俺の顔を見て、はにかんでギョンスは言った。
「よ、おめでと」
「うん」
体を後退させて、俺を中へと促す。
「部屋、行ってて」
「あ、これ」
尻に回して隠していた花束を、振り向いたギョンスの顔の前に掲げた。
一瞬寄り目になったギョンスは、一拍置いて、俺の顔へと視線を移動させた。
「お祝い」
さすがに恥ずかしく、俺もにやけた変な笑いが顔に浮かんだ。
「………ありがとう」
がさがさと、両手でギョンスは、柔らかい、壊れやすいものを扱うようにその贈り物を受け取った。
「じゃ、行ってるな」
そう言って、逃げるようにその場を離れた。


家庭教師中に使う俺の椅子が、変わらず同じ場所に置いてあるのを見つけ、感慨深い心境でそこに腰を下ろし、この生活も終わりか、と改めて俺は嘆息した。
机の上に整然と並ぶ、使い古された参考書や問題集の数々を、もはや懐かしい気持ちで俺は眺めた。
部屋全体を見回しながら、この部屋も見納めかもしれない、と、考えていたとき、扉が開いた。
ギョンスがお盆に、コーヒーと菓子を乗せて立っていた。
「……何天井、見上げてんですか」
かすかに微笑んで、ギョンスは言った。
「ん?さみしくなるなー、と思って」
こちらにやって来たギョンスは、机の上にお盆を置き、勉強するときのように、自分の椅子に腰掛けた。
ゆるやかに立ち昇る湯気を前にして、俺たちは少し黙った。
ギョンスは片方のカップとソーサーを、俺の手前に静かに置いた。
さんきゅ、と言うと、ギョンスは口の片端を弱く上げた。
「………よかったな、受かって」
想像以上に、喜びよりも今後の別れの気配に彩られた会合になる雰囲気に、俺は胸のあたりがざわざわしていた。
そこまで意識をしていなかった。
ギョンスに教えることがなくなり、つまり、ギョンスに会うことも、ほとんどなくなるだろうということを。
しかしギョンスは何も言わずとも、そのことに対する哀しみを全身で伝えていた。
俺は少なからず、驚いた。
そこまで俺に、そんな態度を示すのは、どこかギョンスらしくないように思った。
俺はバツが悪くなり、カップを取って中を含んだ。
ここで毎週飲んできた、濃いコーヒーの味がした。
「おいしい」
常と変わらず、そう言った。
ギョンスはまた、片頬のみで消え入りそうな笑みを浮かべた。
かちゃ、とソーサーに戻すと、俺は努めて明るい声で、問うてみた。
「お前、お祝い何欲しい?」
本当は何も聞かずに買うつもりだったが、少しでも気分を変えられたらと思い、とにかく頭にあったことを声に出していた。
広い白目の中で黒目を動かし、俺に目だけで問い掛けた。
「花は別だよ。何か、他にさ」
2年近い付き合いで、俺はギョンスが言わんとするところを、表情でおおよそ見当をつけることができるようになっていた。
「なんか、欲しいもんないの」
いちばん魅力的に見えるはずだと、自分で思っている笑顔で、俺はギョンスに肩を寄せた。
「奮発したるよ」
嘘ではなかった。
第一志望にギョンスが受かったことは、自分の人生の中でも上位5位に入るくらい、心底嬉しいできごとだった。
ギョンスの親から払われたバイト代をギョンスに戻すようなものだったが、それでも、俺の気持ちを表したかった。
「なんでも」
呟くように、ギョンスは声を出した。目は自分のカップに落ちていた。
「なんでも、いいの」
そんなふうな返答が来るとは予想しておらず、俺は心中驚いたが、それを出さずに、うん、とすぐさま答えた。
こちらを向かぬまま、ギョンスがぐ、と喉を上下させたのを、俺はきょとんとしながら見つめた。
「き」
と言ったあと、数秒、間が空いた。
思わず俺は「き?」と、聞き返した。
はー、と息を漏らし、意を決した表情で、でもやはり俺のことは見もせず、ギョンスは再び口を開いた。
「きす、したい」
そう言うと、ギョンスはこちらを見ないどころか、反対を向き、すさまじい速さで、首から耳を真っ赤に染め上げた。
刈り込まれた髪の毛は、俺から、その肌がどんどん赤味を増していることも、細かく震えが走っていることも、何も隠すことができなかった。
手を膝の上でぎゅっと握り締めるギョンスを見つめ、俺は言われたことを脳みその中でただ回転させていた。
ひとことだけで。
それだけで、すべてが明らかとなった。
対象が俺でない、という可能性の低さを、俺は先程述べた、ギョンスの思惑を感じ取る経験から、既に把握しきっていた。
だから、「誰と?」などの、デリカシーに欠けた、大馬鹿な発言をすることは回避できた。
それでも、この場をどうしたらよいのか分かるわけではなかった。
確かに、ギョンスから、女の子の話を聞いたことはほとんど皆無だったことを思い出した。
告白された、と、バレンタインのあとにこっそり教えてくれたことはあった。
しかしすぐさま、断ったことも、同時に告げていた。
もったいないな、と言うと、しかたないよ、とギョンスは机の上のノートから目を離さず、言った。
好きじゃないし、これからもきっと、好きにならない。
そんなの分かんないだろ、と、俺は年上ぶって考えていたけれど、頑固で意思の強いギョンスに、何を言っても変わらないのを知っていた。
そして。
今、俺は、ギョンスが言葉でなく、それと正反対のことを伝えてくるのを感じていた。
ずっと見つめ続けた頬に、これ以上ないほど色を付けて、俺に何を言われるのか、恐れている。



つづく



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