海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160725

砂糖壺に落ちる 2
仕事の最中なのに、集中しなきゃ、と思ったけど、どうしても差し入れの、チョコレートのかかった小さなケーキみたいな駄菓子を頬張ると、うちに帰りたい、と願ってしまう。
特別美味しいお菓子というわけではなかったけど、パリパリ割れるチョコのコーティングだけは素敵だった。
まずその食感がいいし、甘みも苦みも匂いもよかった。
チョコが大好きな俺の恋人も気に入るだろうか、と考える。
「レイー」
スタッフに呼ばれ、広げられた位置チェック表に目を通しながらも、心のどこかは家にある。
もぐもぐ中の薄っぺらな味のクリームを咀嚼しつつ、それでもこれを好きかもしれないし、と俺は再度思う。持って帰れるほど残っているかな?
指先で紙を指して自分の意見を伝えると、時計を見上げ、時間を確かめた。
10時かあ。
確認していないけれど、たぶんメッセージが携帯に入っている。
俺がそういうことに無精なのを分かっているから、返信がなくてセフンは怒ったりしない。
……ちょっと怒ってもいいよ、と思っちゃうくらい、セフンは怒ったりしない。
「じゃあもう一回4曲目の動き確認しまーす」
ステージのディレクターが大きな声で皆を集める。
口の中に、もうケーキはない。
唇を手の甲で拭って、俺はちらりと雑然としたテーブルに目を走らせる。
まだ、だいぶ残ってるみたいだな。
皆の中央に立ちながら、飲み込んだチョコレートが、俺の心臓を少し焦がすような気がした。


灯りは点いているけれど、おそらく誰も起きてないだろう、と予想しながら、俺はリビングのドアを開けた。
オレンジ色の小さな灯りがぼんやりと部屋の中を照らしている。
ふわりと匂いが漂ってくる。ケーキ屋さんにいるような。
鼻をひくつかせながら目を動かすと、ソファの上に、誰かいる。薄い布団を掛けられて、すう、すう、と寝息を立てて。
「セフン」
途端に俺は喜びと驚きとで全身が膨らんだみたいになる。
慌てて近寄り、荷物を放り、興奮で強くならないよう気を付けて、そっと肩を揺らす。
「セフン」
自分から出た声の、糖度の高さに赤くなる。
眠った顔の眉の線が、やっぱりすごくしっかりしていて、いいなあ、と笑みが出てしまう。
もう一度軽く揺らすと、ん、という声が漏れて、その響きに胸がきゅうと縮まる。
薄く開いた目で、俺の顔を映したセフンは、
「……あ、兄さん?あれ?あ、帰ったの?お帰り……」
言いながら体を起こす。きょろきょろ見回すようすを座って見上げて、俺は「ただいま、今、2時半」と告げる。
「ごめ……寝ちゃった……」
目を擦ってぼうっとした顔をこちらに向けると、夢ではないかと訝しんでいるようだ。
「……待ってたの?」
俺は自分の期待を思わず尋ねてしまう。
するとふにゃりとセフンは笑う。
「うん。ていうか寝てたけど」
この嬉しさがどれくらい伝わるだろう?
俺はいつも歯がゆくて切なくなる。
気持ち悪いくらい顔が緩んでいるだろうことが自分で分かる。
「ありがと、ごめんね、遅くて」
「しかたないよ」ふわーと大きなあくびをしてセフンは言う。「仕事だもん」
そしてソファからずり落ち、俺の横に体育座りになる。
「お腹空いてる?」
ごく近くで小首を傾げて甘い顔でそう問うセフンに、俺は胸が高鳴るのを抑えられない。
「…少し」
「なんか食べる?」
「……遅いし……どうしよう……」
ほんとは食べるよりもしたいことがあった。
くたくただし眠たいしお腹もちょっとは空いてたけど、それよりもなによりもしたいことがあった。
でもいつもと同じにそんなことは言えない。
「パイがあるんだよ」
にこにことセフンは言う。
そして俺たちの前のテーブルの上の、白い箱をかさかさと開く。
「ほら」
中身を見ると、高そうで美味しそうなてりてり光るパイが3つ、入っている。
「まだ、ギョンス兄さんとチャニョル兄さんも食べてないから。中身全部違うんだよ」
俺は持ち帰ったたいして美味しくもない駄菓子のことを思い出し、なんだか少し恥ずかしくなる。
「……兄さん」
「ん?」
「兄さんてさ、…果物何好きだっけ?」
なんでかほのかに、セフンは後ろめたそうだった。俺は不思議に思いながらそうだな、と考えてみる。
「……桃?かな?」
「桃?」
「うん。他にもたくさん好きなのあるけど」
セフンは箱の中に手を入れて、パイのパイ生地の隙間をじーっと見つめた。
「…あ、これ桃じゃない?」
ぱあっと笑みを零して嬉しそうにセフンは俺を見る。
確かに薄黄色の桃っぽい姿がパイとパイの間から覗いていた。
「そうだねえ、桃だね」
「よかった。どうする、今食べる?」
夜中にしかもこんなどっしりしたものを食べるのはいろいろと思うところがないではなかったけど、セフンとふたりきりでパイを食べるなんてなんだかとてもいいと思った。
「うん、食べる」
えくぼが浮かんでいるのを自分でも意識しながら、俺はセフンの顔を見る。
「分かった、お茶持ってくるね」
そう言ってセフンは立ち上がり、キッチンの方へ消える。
俺はパイを持って口に運んだ。
齧った果物のかけらは、…アプリコットの味だった。
戻ったセフンは機嫌よく聞く。
「どう?やっぱり桃?」
とぷとぷとぷ、とグラスを満たしながら、俺を見つめる。
「うん。おいしいよ」
そう答えて俺はふた口目を齧る。
ほんとはアプリコットだけど。
ほんとはパイでないものを口に入れたいけど。
でも俺はそんなこと言えない。いつもと同じに。



つづく



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trackback (0) | comment (2) | 砂糖壺に落ちる(セフン × レイ)
慈雨、降りそそぐ 10 | 慈雨、降りそそぐ 9

comment

: はな @-
おはようございます☀😃❗
朝起きたらお話更新嬉しいです

砂糖壺…お話のタイトルにぴったり✨
まさに今の状態は砂糖壺のように甘いですね~♥
お互いの好きな物を取っておいたり、持ち帰ったり…
寝ちゃったけど相手の帰りを待って一緒に…
何気に好きな物を聞いたり…
まるで付き合いたての二人のよう💓😍💓
甘いです。
二人とも笑った時にふにゃりと目尻が下がるのが特徴なので
小さな事でも幸せそう。
甘いお話…好きです。
2016/07/26 Tue 05:49:24 URL
Re: タイトルなし : ミス・レモン @-
はなさん

おはようございます!
いつもコメントありがとうございますm(_ _)m

本当に嬉しい、私の心を満たすコメントをしてくださって胸がいっぱいです。・゜・(ノД`)・゜・。
私が描きたいことを汲み取ってくださってて。

これからそのお話も織り交ぜていこうと思っておりますが、御察しの通りふたりはほやほやでして、そんなカップルのいろんなようすを描写していけたらなと書き始めました。

タイトルも褒めていただき幸甚です。
壺っていう字が、個人的にツボです(笑)なんか本当に象形文字だなと思って。

個人的にすごく相性がいいんではないかなと思うふたりなので、そんな私の思いを込めて、これからもせっせと書いていきたいです。

お言葉、すっごく嬉しかったです*・゜゚・*:.。..。.:*・’(*゚▽゚*)’・*:.。. .。.:*・゜゚・*
またお越しくださいませ!


フェリシティ檸檬

2016/07/26 Tue 08:18:15 URL

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