海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20191226

こぼれ落ちるこころ(クリスマス企画/パラレル短編/EXO)

 扉を開けて狭い玄関を抜けると、ようやく人心地着けるといったようすで、男たちはやおら騒々しく荷物を置き上着を脱ぎにかかった。あー、とおかしな低音で声を上げながら窮屈そうにコートを脱ぐ連れを横目で見つつ、ギョンスはてきぱきと暖房をセットした。
 ふたりは職業柄許される範囲のラフさを含んだ格好に身を包んでおり、実際大して私服と変わらなかった、特にギョンスは。よって部屋着に着替えることもなく、首を両サイドに曲げて体を伸ばすと、部屋を見渡しながらベッキョンはベッドに勢いよく腰掛けた。
「疲れたなー」
 筒のような白い喉から異様なほど大きく膨らむ声を出す。ギョンスはキッチンと寝室の間に立ち、放心したような態のベッキョンに静かに聞いた。
「食事にしていいだろ」
「んー」
 焦点の合わない目をしたベッキョンをいっとき見つめたあと、支度の間聴くための曲を掛けようとギョンスが部屋を横切ると、背後から声が追った。
「そう言えば、誰かさ、後ろから付いてきてなかった?」
 レコードラックに指を差し入れていたギョンスは、その動きを止めて振り返った。
「何?」
 見返しているベッキョンは訝しげに言った。
「感じなかったか?お前」
「ううん」
「気のせいかもしれないんだけどさ。学校からずっと誰か後ろにいる感じがして」
「学校から?」
「うん。生徒かなとかちょっと思ったんだけど」
 ギョンスはラックに向き直り視線を下げて言った。
「お前のファンじゃないの」
「そうかな」
「可能性大だな」
「やべーな」
 ふふ、と息を抜くだけの笑いを漏らしてギョンスは何も返さなかった。
「見られたかな、ちゅーしたの」
「知るか」
「やべーな」
「あんなとこでするからだろ」
「嫌がってなかったくせに」
 再びギョンスは返さない。もうさせないと言わんばかりに唇の上と下をぴっちりと閉じ、ジャケットに神経を集中させた。
「あ、もらったプレゼント忘れた」
 羽毛布団が潰れた間の抜けた音がする。後ろに倒れ込んだベッキョンは天井を仰いでうめいた。
「お前と分けようと思ってたのになー」
「いいよ俺」
「あんなにどうしろってんだよー」
「他の先生に分ければいいだろ」
「ばれたらまずいだろ、非難轟々だよ」
「口止めしろよ」
「お前ほどみんな口固くないんだよ」
 と言うかお前は無口だから、と続けてベッキョンはごろりと横を向いた。
「やっぱ年末は疲れるな」
 嘆息混じりの言葉に、選び取った円盤を携えギョンスは振り向いた。
「寝るのか?」
「寝ないよ」
 届いたのが何故か不機嫌そうな声音で、ギョンスは自分のベッドへと距離を詰めた。
「無理して食べなくてもいいぞ」
「食べるよ」デッサンの狂ったような顔でベッキョンは起き上がった。「作ったんだろ」
 整髪料をまとった長めの髪の毛はほぼ中央から分けられてまとまっていたが、今やあちこちへと勝手に跳ね、そのまぶたは半ば甘く閉じられていた。ギョンスは見下ろしてつぶやく。
「着替えれば」
「いや、起きてるって」
 そう言って立ち上がると、ベッキョンはレコードプレーヤーの横に設置された電子ピアノの前まで行き、その椅子を引いて腰を据えた。
「なんか弾きたい」
 関節関節できちんと整えたようなかたちをした細長の指が、鍵盤を順に押さえた。涙がこぼれるように音階が連なる。
 そのまま音量調節を慎重に行うベッキョンの後ろから、ギョンスは乱れた髪と伸びた首と骨ばった肩を見つめ言った。
「クリスマスだろ」
「そうだなあ」
 音を確かめるようにベッキョンは繰り返し指を鍵盤の上で動かしていた。そのたび花びらが時を得て落ちるように音符の名残が床に散る。と、くるりとギョンスを向き横長の椅子の隣をぽんぽんと叩いた。
「来いよ」
 わずかに目を泳がせながら、ギョンスは音も立てずに傍に寄った。
「もっとそっち行けよ」
「やだ」
 そうしてぴったり腰をくっつけ合い椅子に並んで座った。さも楽しげにベッキョンは笑う。
「さあて」
 そう言うと、目を伏せてゆっくりと古いクリスマスソングを弾き始めた、小さくハミングしながら。ごくごく抑えた音であるのに、ベッキョンの声は場を支配してギョンスをその中に完全に取り込んだ。ひとときまぶたを閉じ、そして開けると、ギョンスは横の青年を盗み見るように目に映した。子供のような、薄く小さな唇の両端が軽く上向いている。息を吸うごとにかすかに喉仏が上下する。
 ギョンスは振動する染みひとつない首に唇を置いた。指が止まる。やはり音はこぼれ落ちていく、何かに耐えきれないといったように。野生の動物を彷彿とさせる特徴的な耳の端を、ギョンスは歯で優しく噛んだ。あ、とあの声が漏れ、次いで耳たぶを含むと、不協和音が鳴り響いた。魔法を紡ぐ美しい手が上から握られ、ベッキョンの指はそのまま編まれた毛糸のようにするすると絡んだ。
 中の光った目がギョンスの顔を追った。上まぶたは下りかけているのに強く反射する瞳が、探るように彼を捉えていた。ギョンスはカーテンを開けるがごとく相手の前髪の下から手を差し込み、額から頬を撫ぜた。薄く開いた唇の隙間から、熱い吐息が絶えず届く。ベッキョンは空いた手でギョンスの耳から頬に触れた。その細い手首にくちづけ、ギョンスはベッキョンを見つめ返した。
 ベッキョンは強くギョンスの手の指に指を絡め直すと首の後ろに手を回し、自分より少しだけ小さな体を抱いた。頬と頬を触れ合わせ、深く息をつく。鎖骨のあたりに鼻を擦り付けるようにして、骨の影へとキスをした。
 顔を上げたベッキョンをギョンスは焦燥に似たもののこもった黒目で見つめ、額に、まぶたに、鼻の頭に、頬に、唇を付けていった。ベッキョンは相手の折れそうな腰を逃すまいと、無意識のうちに力を込めて自分に貼り付けさせていた。
 やがて唇にキスはされた。互いにしながら服の下に手を差し込んでいた。汗ばんだ肌が指に触れる感触。衣擦れと舌の絡む音と声にならないような声が夜に溶けた。
「落ちる」
 それは椅子からのことを言っているのだとギョンスはよく分かっていた。なのにこう返していた。
「とっくに落ちてる」
 ベッキョンは何も言わなかった。何も言う必要などなく、ふたりはただ落ちていくだけだった。
 
 
 
おわり





 
 
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 短編〈パラレル〉
あとがき『2019クリスマス企画』、お返事、的な… | 実を啄む(クリスマス企画/パラレル・グループミックス短編/EXO・NCT127)

comment

コメントを送る。

URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 

trackback

この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

最新記事

人気投票 1

人気投票 2

人気投票 3

人気投票 4

人気投票 5

ブログ村

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 韓流二次BL小説へ

人気ブログランキング

アクセスカウンター

有料アダルト動画月額アダルト動画裏DVD美人フェラポルノ動画フェラ動画美人フェラ無修正アダルト動画フェラチオ動画無修正フェラ
アクセスカウンター高画質アダルト動画無修正フェラ動画アダルト動画無修正アニメ動画海外アダルト動画
無料カウンター無修正DVDクレジットカード
無料アクセスカウンターウォーターサーバーアダルトグッズランジェリー無修正盗撮動画AV女優名教えて
ブログカウンター