海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160720

グレーゾーン 番外編 「花の色は赤」
「ねえ、それ、なに?」
タオのハングルは、すこぶる発音が悪くなっていた。以前以上に。
思わずスホは笑ってしまう。
中華料理店の個室は、全体が朱色で、ふたりは赤い花の中にいるようだった。
頼んだ注文は、まだ来なかった。
お腹が空いた、とかたことでタオは零す。
スホは袋の中の缶に手を伸ばし、包装とテープを解いた。
その間、タオはわあー、と、目を輝かせ、掌を合わせ、少女のような歓声をあげた。
蓋を開けた中身は、昔、ふたりで食べたクッキーの詰め合わせと、ほとんど変わらぬものだった。
「これかー!」
タオは財宝でも見るかのように、テーブルの上の缶に顔を寄せた。
「食べよーよ」
顔を上げ、スホに笑顔で言う。
「今から、料理来るだろ」
苦笑しつつ、スホは蓋を閉じようとする。
「えー」
眉を寄せ、本気で哀しそうな表情をするタオに、スホは閉じかけた蓋を少し開け、缶から1枚、クッキーを取り出す。そしてぐっと、缶を密封する。
「はい。これ1枚だけ。今は」
それはぐるぐるとチョコレートが渦を巻く、四角いクッキーだった。
タオの目の前に、人差し指と親指で挟んだそれを掲げる。
寄り目になったタオは、なにも言わず、じっとそのマーブル模様を見つめた。
口をぱか、と開く。
スホは反射的に、タオの口に入りやすいよう、水平にクッキーを倒した。
ぱく、と、指まで、その唇はクッキーを包んだ。
ぷに、と、ぬる、という感触が、スホの末端を、一瞬、襲った。
内心、びっくりしたが、顔にはなにひとつ、表わさなかった。
顔を離したタオは、もぐもぐざくざく頬を動かし、満面の笑みでうまーい、と言う。
手を、膝の上に置き、スホも微笑む。
「…よかったな」
こく、と首肯し、ごくりと飲み込むと、タオは言った。
「…兄さんの指、たべちゃったー」
あはは、とタオは笑う。
それを受けたスホは、なんだか赤面してしまう。笑顔も消える。
膝に置いた指先は、唾液が乾き、変な感じだ。
くすくす笑うタオの耳では、ピアスも一緒に、笑っている。
花の中は、蜜で満ちている。




おわり




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