海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160720

グレーゾーン 7
以前まだタオがいる頃、中国にやって来た際に皆で行った、ホテル近くの中華料理店が約束の場所だった。
他のメンバーとスタッフたちは今頃大勢でいつも通り食卓を囲んでいるだろう。
自分が抜けたことを不思議に思い、勘が良ければ何をしているかの見当をおおよそつけている者もいるだろう。
それでもきっとこの話題を掘り下げはしないし、自分が帰ってから追及する者もいないだろう。
スホは包装されたクッキーの缶の入った紙袋を持った。
あの夢を見てから、缶を探してあちこち調べたが、やはりどこにも見当たらなかった。見付けたらどうするつもりなのか自分でも分からなかった。ただあの黄金色に鈍く光る缶の表面や、中の焼き菓子特有の香りを思い浮かべて蓋や扉を開けたり閉めたりして回った。ないことが分かるとスホは仕事の帰り、デパートに寄ってあの缶によく似たものを買い求めた。包装の有無を問われ、考える前にお願いしますと答えていた。会うかどうかも決めぬうち、クッキーの缶だけは準備された。
スーツケースの一番上にそっと置いたのは、d.oが部屋を去り、もう寝ようと閉まったスーツケースを一瞥したあとだった。
そして今、スホは紙袋を下げて立っていた。
ファンにばれぬよう完全武装し、近い距離でもタクシーを使った。
車窓の外は暗闇とネオンがダンスを踊っている。
なんだかとても長い道のりだった、とスホは思った。自分はようやくタオの元に運ばれようとしている。クッキーを抱え、マスクの下口を開け、目を半ば閉じるようにして。
美麗な装飾に彩られた、赤い看板の、目指す店の前に着いた。
タクシーを降り、スホは入り口の前に立った。看板を懐かしく見上げ、タオはもう来ているだろうか、と考えた。時間にしっかりしているとはとても言えないタオだったが、そこは変わらぬままだろうか。
口から白い息を吐き出しながら、スホは少しずつ鼓動が早くなるのを感じた。鼻をすすり、扉に手をかける。
そのとき。
後ろから足音が近付いて来るのにスホは気付いた。ひとりの、男の、足音。
スホは振り向いた。
背の高い黒づくめの男が、灰色に陰った道をこちらに向かって歩いて来る。夜なのに大きな真っ黒いサングラスをかけて。黒で固めても、どんなふうに装っても、目立たないということができないのは変わらない。
タオだ。
彼はたぶん視線を外していた。昔のようにまっすぐ目を見、自分に向かって走り寄ったりしなかった。スホは店の前の段になった部分から彼を見下ろし、身じろぎもしなかった。
ふたりの間の距離はもうほとんどなかった。暗く色のない場所から、店の灯りに包まれたカラフルな場所へタオは足を踏み入れた。その足が階段に乗った。かつ、かつ、と高い音が響く。開いた小さな口から煙のように息が流れ出るのがスホの目に映る。タオはサングラスを取った。
毎日自分を見つめていた猫に似た目が、現実として今、スホの前にあった。
タオはぎこちなく微笑んだ。
瞬間、強い店の照明を受け、タオの耳元で揺れるシルバーのピアスが光った。それは、スホの贈ったものだった。
「兄さん」
おそらく久しぶりに口にしたであろうハングルを、スホを呼ぶためにタオは使った。
ハスキーで、高いような低いような独特な、ふわふわとしたその声音。
紅色の光の中、耳たぶにプレゼントを輝かせ、弱く微笑み、自分に甘く呼び掛ける末弟。
黒縁眼鏡の奥のスホの目に、ぶわりと涙が溢れた。
スホは慌て、かじかんだ手を動かそうとして紙袋が滑り落ちた。
カン!と鈍いが高い音が響き渡る。
ぱたり、と横に倒れたその袋を、ふたりは見下ろした。
タオがそれを拾った。
スホに渡そうとしながら、「これ、何?」と聞く。
差し出された紙袋を押し戻し、スホは言う。
「お前に」
「僕に?」
「うん」
落としていた視線をタオに向ける。涙、出るなと念じながら、スホは微笑む。
「俺にも分けろよ」
意味がよくは分からないようすで、ただスホの笑顔に、より自身の笑みをタオは顔に広げる。
マスクの下の鼻水は、もしばれたら寒いからだよ、と店に入ったら言おう。スホは考えながら、背後の扉を引いた。



おわり




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