海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160720

グレーゾーン 4
いつも、夜眠る前、タオはスホのベッドにやって来る。
「もう寝ちゃうの?」
広い肩幅をすくめ、ひょろ長い筋肉質な手脚をぶらぶら動かし、どこもかしこも狭いといった風にスホを訪れ、ベッドの端にちょこんと腰掛ける。
「つまんないなあ。兄さん、お菓子一緒に食べない?」
既にベッドに入り、うとうとしかけているスホを布団の上から軽く揺さぶる。
「……お菓子って……言ってるだろ、タオ、こんな時間にそんなもの食べるな。肌は荒れるし、太るし、いいことない……」
眉をしかめて枕から頭だけを上げ、寝言のように力の入らない声でリーダーは注意する。
「大丈夫だよ僕は。それに兄さんもたまにならへーきだよ。今日はクッキーがあるんだよ」
「こんな時間に……クッキー……?」
「うん。いろんなのが入ってるやつだよ。ほら、食べようよ」
羽毛布団をばふばふと上から叩き、タオは急き立てる。
「一緒に食べたいよー」
目を閉じて布団を引っ張っていたスホは、しょんぼりとしたその声音に手の力を緩める。
のっそり起き上がり、立ち上がった髪の毛を手で撫でつけ、眉間にしわを寄せて目を細めたスホは、尖らせた口から零す。
「……1枚だけだぞ」
たちまちタオの顔に笑みが広がる。
「やったー。ほら、いこ」
リーチを生かして既にスホの手を取ったタオは、立ち上がってスホを軽く引っ張る。
「分かった分かった」
体がみしみしいうような気がしながらスホは引きずられるようにベッドを出る。自分の手がタオの手に包まれ、ああ、人と繋がっているなと寝惚けた頭の片隅で思う。スホは人に乞われる感覚というものを決して無視できないたちだった。手を取られぎゅっと握られると、生きているという実感があった。
ダイニングルームに向かいながら、半分だけ開いた目でタオの大きな背中を見、兄に引っ張られているような妙な気がしてスホは頭を振る。
「そこ、座っててー」
ソファに身を投げ出すように腰を下ろし、ほとんど横になって再び目を閉じる。
駆け足のような歩みでタオが戻ってくる。
「ほらほら、おいしそーでしょ」
かなり大きめな黄金色の直方体の缶を両手で持ち、ぱかっと蓋を開ける。
「さっき開けてみたんだけど、すごいおいしそーだったから、兄さんと食べよーと思ったの」
吊り上がった目を細め、片方の口角をもう一方より高く上げ、得意げにスホに向かう。
缶の中はきらびやかそのものだった。チョコと混ぜてあるもの、フルーツが乗っているもの、薄い生地をくるりと巻いたもの、丸、四角、ロック型。シナモンやナツメグの香りが鼻に届く。
体を少し起こしたスホは確かにクッキーの詰め合わせの魔法に目が覚めた。それは子供の頃を覚えている体の反射であった。なんとも言えない幸福の匂いであった。
タオはテーブルにカコッと缶を置いた。
「牛乳持ってくる!!」
スキップしかねないようすでタオはキッチンへ向かう。
牛乳、という響き。
スホは苦笑してソファに座り直し、魔法の缶の中身を眺める。
牛乳パックとグラスふたつを手に持って戻ったタオは、スホの横にどすっと座る。
「食べよー!」
勢いよくグラスに白い液体が注がれる。零れるかと思うほどの速さでグラスふたつが満たされ、既にタオは缶の中へ手を伸ばしている。
「どれにしよー」
わくわくしているとしか言いようのない表情でタオは目移りを続ける。肩の筋肉の張りや、筋や血管の浮いた長い腕、指にはまったシルバーのリングなどとその顔は対照的だ。こんなに大きくなるなんて、ときっとタオの両親は思ったに違いない。スホは何度も繰り返すこの夢想をまた繰り返す。今何歳だっけ?20歳。嘘、何かの間違いじゃ?だってあんなに大きいんだから。ああ、そうか。そうだねえ。こんな会話を夫婦で毎年繰り返していたはずである。
タオは赤いゼリーの埋まった花のようなかたちのクッキーを取り出した。
「これにする」
クッキーに歯を立てる。ぼりっという音がする。
スホは牛乳に口を付けて、もぐもぐと頬を膨らませるタオの横顔を見る。
「おいひい。さくらんぼの味?」
大きな目をこちらに向ける。横に広がった白目の分量の多いそれは、自分のそれとまったく違い、スホは見るたび何故か感心してしまう。ぴょんと広がった耳と金髪も合わせたそのさまに、自分は今やたらと大きな妖精に夜中クッキーがメインのパーティーに招かれているという設定の、おかしな想像が頭を巡る。不思議の国のスホ。自分でぶほっと吹き出す。
「何。どーしたの」
手を横に振りながら、「なんでもない、なんでもない」と笑いを殺す。
「ほら、食べなよ。どれがいい?」
タオはまた次の1枚をどれにするか迷っている。
チョコがマーブル模様を美しく描いているクッキーに指を触れる。
「これにするよ。俺は、これだけ」
スホはタオの目の前にクッキーをかざす。
「えー?ほんとに?」
「お前も次ので終わり」
「ええ!?いやだよー2枚しか食べれないの?」
駄々っ子の顔をして、甲高い声を上げるタオに、少しだけ真面目なトーンでスホは諭す。
「明日も仕事だ。吹き出物できた顔で写りたくないだろ」
まだ眉間を寄せたまま視線を落としたタオは、ため息とともに同意する。
「……分かった……」
「で、お前どれにする?」
落とした視線をそのまま缶の中に移動する。心持ち尖らせた唇が不満を表している。
「…………じゃあ、兄さんと同じのにする」
かさ、とクッキーの山からひとつ、仲間を減らす。
再びタオが目をスホに向ける。その顔には笑いが含まれている。
スホはほんのわずかに心が痛む。その中には安堵も同居する。
ふたり同時にクッキーを唇の間に挟んだ。


目を開けたスホは口の周りのクッキーのカスを拭った。
そこにあるのはぽろぽろとした固形ではなく、ぬるりとした自分の唾液であった。
まだ薄暗い部屋の中で、スホはマーブル模様を描く脳内が次第に一色にまとまっていくのを時間が遅く流れるかのようにごくゆっくりと待った。
クッキー。
あれはいつのことだっけ?
あの缶はどうしたんだっけ?
中身は全部食べたんだっけ?
思い出せなかった。さっぱり、見当がつかなかった。
タオが好きなだけ食べられたならいいんだけど。
額に手の甲を置いて、天井を見つめながらスホは思う。
俺ももっと食べたかった。
起き上がり、スホはひとりごちる。
「…仕事だ」
今、クッキーなんか食えない。




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