海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20190719

昼と夜の間の夢と歌 前編(誕生日&リクエスト企画・パラレル短編・グループミックス)
 風がカーテンを大きな帆のように膨らませ、部屋の生暖かい空気は渦を巻いて動いた。
 汗で額に貼り付きかけた前髪も吹かれ、そこにいる青年ふたりの顔がそれまでよりも晒された。互いが互いを見ていなかったが。
 布のはためく音が弱まる頃、マークはシャープペンシルを握った手の力を緩め、そのままノートの上にそれをやや強く置いた。そして思い切り伸びをすると、椅子の背に体を預けた。
 開け放った窓のサッシに両腕を置き、その上に顔を寝かせたドンヒョクに目をやると、先刻からまったく変化のないその格好で、やはりただ外を眺めているらしかった。カーテンの揺らぎに合わせ、伸びた髪が草原のようにそよいでいる。
 呆れながら眼鏡を直すと、マークは心持ち声を張り、言った。
「腹減ったなあ」
 灯りの点いていない、かなり傾きの度合いの増した太陽のみに照らされた生徒会室の中、その言葉は受け止める者なく淋しげに漂った。
 夕暮れが近付き、刻々と色を変えていく空の方に顔を向けたドンヒョクを再び見ると、マークは不満を滲ませた声で言った。
「聞こえてんだろー」
 んー、という、ぎりぎり返事と言ってもいいかもしれない音が額縁のような窓枠の中のドンヒョクからようやくして、マークは後頭部を両手で掻き混ぜながら話した。
「お前、なんか食べるもん持ってきた?俺今日なんもないからさ、買うか食べに行くかするけど、お前どうする?」
 さっきと同じ、んー、という答えに、マークは嘆息し、前側を上げていた椅子の足を勢いよく着地させ、大仰な音を立てて立ち上がると、青灰色のキャンバスに描かれた、肌の色の濃い、垂れた目の後輩の元に向かった。
「お前ちゃんと話聞けよ。どうすんの、このあと」
 見下ろしたドンヒョクの横顔を、癖のある髪が優しく撫でている。マークは、また少し顔が変わったなと、そんなつもりもなかったのに弟分がかたち作る顔や体のラインをつくづく見つめて考えた。余分な肉が落とされて、頬や顎や腕がひどくシャープになっている。成長したというだけでなく、最近少し痩せたかな、と訝しく思った。
「ドンヒョク、お前、腹減ってないの?まさかダイエットとかしてんのか?」
 つい浮かんだことを口にしていたが、すると相手が反応した。
「んー、腹減んない」
 目をつむり、眉間を寄せると、ドンヒョクは駄々をこねるように肩をすくめた。
「まじで。お前、男子高校生の言うことじゃねえぞ。どんだけ食っても腹減ってんのが俺らだろうが」
「だってほんとに空かないんだもん」
 目を見開いて俯瞰するマークに、大人びた見た目に反し、なおも子供のような口調でドンヒョクは返した。
「どうしたんだよ、具合悪いのか」
 ポケットに手を入れて、マークは多少心配を顔に出し、尋ねた。  
「ううん、違うけど、…でも、そうかも」
「どっちだよ」
 思わず笑うと、目を開けて起き上がったドンヒョクがマークを仰いだ。
「あんまりよく眠れないし」
 眉の下がった、力ない目のドンヒョクの顔との距離が縮まると、確かにその隈は濃いのが分かった。始まりかけた宵闇に染まっているとは言えいつもより青味がかった肌の色も、明らかに彼の言葉を裏付けていた。
 気付かなかった自分に思いのほか失望し、マークは眉頭に向けて力強く傾斜した眉をかすかに平行にして、近くの椅子を引き寄せ背もたれを前にして座った。
 言われてみればこのところ、菓子を頬張る姿をあまり目にしていなかったことが思い浮かんだ。冗談を言い馬鹿笑いすることも、のべつ幕なしあらゆることを喋り倒すことも、おかしな、マークからすれば意味不明ないたずらを仕掛けてくることも、どれもひどく回数が減っていた。進級し、マークが受験勉強に本格的に取り組み始めてからも、以前より頻度が落ちたとは言え、ドンヒョクはこの部屋をたびたび訪れては時間を過ごしていたが、想像していたよりもずっと邪魔をしては来なかった。これは内心意外だったが、ありがたいと思うだけで、特に注意しなかった。そうなるともうだいぶ長いこと、本調子ではなかったのだ、そのことを意識しないほど、自分はドンヒョクのことを気にかけてはいなかったのだとマークは自覚し、密かに、だがその真面目さから深く、己を恥じた。
 高い声をなるたけ低く、落ち着いたものにして、マークは聞いた。
「お前、大丈夫か?悩みでもあるのか?」
 ドンヒョクのすぐ斜め後ろで、前のめりになって背もたれの上に両肘を掛けると、振り向いた彼の窪んだ双眼が、マークを映した。
「誰にも、言わないでほしいんだけど」
 薄墨の混ざった青を背景に、ドンヒョクはマークに体ごと向き直った。この色はとても好きだなと頭の片隅で思いながら、マークは切羽詰まった表情の年下の男の眼差しを、まっすぐに受け止めた。
「言わねえよ」
「ほんとに?」
「うん」
「絶対に?誓ってくれる?」
「うん。誰にも、絶対言わない」
 眉をへの字にしたドンヒョクを見るのは初めてかもしれない、そうマークは思った。それにやたら心が騒ぎ、マークは焦って、「なんだよ」と続きを急かした。
 目を伏せたドンヒョクは、唇を噛んでしばし黙っていた。その間も青は深まり、ただ藍に似た色に染まるだけの日の入りは進んだ。
 俯いたまま、ドンヒョクは声を発した。睫毛が記憶より長く、唇はさくらんぼのようだなと、マークが思ったときだった。
「ド・ギョンス先生って、知ってる?」
 
        


つづく






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trackback (0) | comment (1) | 短編(パラレル・グループミックス)
秘密の伝言、東方神起の声、料理上手って最高 | 純粋で、優しい

comment

額縁と恥とドギョンス先生 : ツグ @hlhM8mZI
檸檬さん、こんばんは。
このたびは私の思い付きリクエストに快く応えてくださり、また誕生日のお祝いでもあるという、至福の連載をありがとうございました。
さあ、うまく書けるかどうかはさておき、ぜひ感想をお伝えしたい!とやって参りました。
まずタイトルが好きで…何度も口の端でつぶやいてしまいまして、これは私にとってはどうしても読まずにいられないタイトルです。
しかもリクエストした本人である私は登場人物を知っているわけですから、このタイトルからどんな物語が始まるのか、胸が高鳴りました。

冒頭、暮れていく窓にもたれるブルートーンのヘチャンが美しいです。私もそこに額縁を見まして、これはフェルメールのまだ発見されない一枚なのでは?と思ったりしました。だって色が…そして艶が。彼の独特な肌の色、巻き毛、二重の瞳、丸い唇などの美しさが檸檬さんの描写でくっきりとイメージされました。

マークはその額縁の絵を観察しながら、ヘチャンの変化に疎かった自分を恥ずかしく思う。とてもマークらしい一文だな、と感じました。彼の人柄が伝わってくるようです。
二人のやり取りや時間の過ごし方に十代の少年らしさが表れていて、あーいいなぁこういう二人、とニヤニヤ楽しんでいるところに、ドギョンス先生登場ですよ。
檸檬さんの筆によるドギョンス先生を読める日が来るとは!!
私の鼓動はマックスレベルに!!!

ということで感想もまさかの中編につづく!←
睡魔夢子さんを(コメントで)お挟みすることができて喜んでおります、わたくし蟹座だけに。←
2019/07/23 Tue 22:39:33 URL

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