海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160715

心中の道連れ 4
こもった、玄関の扉が閉じる音が聞こえ、俺は嘆息する。
「おかえりー」
チョコレートをつまみながら、ミンソク兄さんがダイニングルームに現れた俺に言う。ぽり、ぽり、と軽快な音が膨らんだ頬から鳴っている。湯気の立つコーヒーが、ローテーブルに置いてある。
人気のドラマにチャンネルが合わせられており、兄さんは俺を一瞥すると、すぐにテレビに目を戻した。
勉強熱心だな。
俺は、兄さんがただ好んで観賞しているのでないことを、彼の性格からよく分かっている。
その心根のまっとうさに、拗ねたいような、ただひれ伏したいような気持ちに、いつもと同様、なってしまう。
「ただいまー」
結局俺のそんな胸の内など、皆の前では子供の如きいたずらに姿を変える。
重い足取りで兄さんの視界を遮る。
おい、邪魔だーという声とジェスチャーを尻目に、俺はわざと歩くスピードを遅くする。
ようやく画面の前を通り過ぎると、まったく、と言いながら兄さんはクッションを抱え直した。
キッチンの前に立ち、風呂に入るか、飯を食べるか、どちらから先にしようか俺は迷う。
「にいさーん」
コンロの上の鍋に目を留めたまま、俺は声を掛ける。
「んー」
「鍋ん中身まじで残ってんの?」
「鍋?ああ、チゲ?うん、残ってるよ。ギョンスお前の分取っとけってしつこく2回は言ってたから、ひとり分は残ってるはずだよ」
きゃああ、という悲鳴と、男の怒号と罵声が、キッチンの奥を向いた俺の、耳に届く。
なんなんだ、この話。
怯えたようにうわー、と小さく呟くと、その声のボリュームを上げ、兄さんが語り掛けてくる。
「美味かったよ。腹減ってんだろ?食べろよ」
すげー話だな、と言いながら、かり、という歯とチョコレートが会う音を立てるのを背後に、俺は鍋から目をそらさず、口を動かす。
「…先、風呂入る」
「ん?うん。わあった」
ふー、ずー、と、コーヒーをすする音を聞き、よく夜中に飲むなと思いつつ、俺は鞄をずりそうになりながらドアへと向かう。
俺自身、あんなに腹が減って疲れて眠かったのに、シャワーを浴びる前から、体はともかく、頭はくっきりと冴えていた。
コーヒー飲んだみたいだな。
ドアノブに手を掛け、きい、と引くと、後ろからいやあああああ、という絶叫が響いた。
諦めろ、という、はっきりしたひとことが、俺を追ってくる。
それを締め出すように、俺は扉を後ろ手で閉じた。




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