海の底、森の奥

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20180805

人魚の夢(誕生日企画・リアル短編)
指という指が濡れている。足の話だ。
正直ジョンデはこういうことが苦手だ。今すぐにも足全体をタオルでしっかりと拭き取り、乾かしたいというかなり強い欲求が身の内にあった。ビーチサンダルも気に入りのものである。そもそも海辺で使うものなのだからと自分に言い聞かせても、感情が理屈をさっさと蹴散らし、ずぶ濡れになって水をたっぷり含んだ足元に対し、苛立ちは募る一方だった。
 掲げた傘と傘の縁が触れ合い、ぽんと軽い音がした。
キャップを被った横顔を目の端で捉えると、相手は俯き加減で前を向いたままであった。と、おもむろにその唇に薄い隙間ができた。何か言うかと顔自体を心持ち向けると、言葉でなくかすれた歌声が訪れた。青い木の葉を、古びたビニール傘を、浅い川のようになったアスファルトを打つ雨粒の合間を滑る低音のビブラートが、ジョンデの耳から全身へと行き渡る。雨の一部になったように、体が形を成さない何かになったように、歩き続けているにもかかわらずジョンデはその感覚がなくなった。冷えた空気とベッキョンの歌だけが世界にはあった。
何も映していないようであるのに、黒目の膨らんだ目を常よりも開き、顎を上げてジョンデは緩やかな坂をベッキョンと上った。それぞれ手から下げたコンビニの袋が、メトロノームのように前後ろと規則的に揺れていた。
 変わらず流れる鼻歌は、特にどの歌というわけでもないもので、音の高低を脈絡なく行ったり来たりするのを繰り返している。ほとんど無意識に、ジョンデはみずからも開けたか開けていないか分からないほどのささやかな口の間から、隣の青年の歌を追いかけて声を発していた。より高い音を取って、歌はハーモニーを奏でた。
踏むたびに溢れ出る雨水の音が、拍を取るようにおかしな響きをふたりにもたらし、ついに片方が笑いを零した。
「子供の履く鳴る靴かよ」
 ジョンデも笑った。
「しかたないだろ」
「だいたい勝手にハモんなよ」
「いいだろー別に」
 坂は終わっていた。
だが雨の勢いは変わらない。空は雲の向こうから光が透けるようであるのに、雷が遠く聴こえ、ジョンデとベッキョンの、そしてそれ以外のすべてを洗うように降りしきる。
「パンツの裾濡れてんだけど」
「覚悟の上だろ」
「してねえよ覚悟なんか」
「じゃんけんで負けるってこういうことだろ」
「しかも重いんだよ。頼みすぎだよあいつら」
 コーラ、二リットル!!と大声で要求した輩がいたのだ。それ以外も大概が水物のリクエストで、はち切れそうになった袋はどちらの手の指もさくらんぼのような赤に染めてしまっていた。
持ち手を変えたベッキョンの左腕の肘が、ジョンデの右腕をささやきかけるように打った。
「もうすぐじゃん」
 皆の待つ場所がそびえるのが、顔を上げなくとも目の表に映っている。ジョンデはサンダルが水を吸い上げていることへの不快感をにわかに思い出しながら、鈍い足の進みを見つめた。
「あー重い!」
 突然そう叫んだかと思うと、ベッキョンは立ち止まり、濡れた地面に袋を置いた。
「あーあーあー」
 先を行っていたジョンデが振り向いて呆れ声を出しながら近寄ると、手をぶんぶん振りつつベッキョンは言った。
「ちょっとこれ減らそうぜ」
「は?」
「手伝えよ」
 袋を手に取ると、ベッキョンはすぐ横のマンションの自転車置き場に入っていった。
「不法侵入だろ」
「雨宿りだよ」
 ジュースやらアイスやらが詰まった袋から、コーヒーのように黒く中身のたゆたうひときわ大きいペットボトルを早速取り出すと、ベッキョンはぶしゅとその口を捻って片手で煽った。
傘を閉じたジョンデは、キャップを被り直しながらベッキョンの喉の鳴る音を聴いた。案の定口の端からコーラは垂れたが、それは直視しなかった。長い目の隅で捉え、ただ笑って「垂れてるって」と告げた。
げふ、と音を立てて唇を離すと、口元を拭うベッキョンがジョンデに減ったボトルを差し出した。
「チャニョル怒るぞ」
「知るか」
 ん、とボトルを振るようにするベッキョンからそれを受け取り、ジョンデは嘆息して飲み口に口を寄せた。泡の弾ける音が雨音よりもその鼓膜を震わせる。目をつぶって顎を上向けた。
「げ、Tシャツ汚れた」
 そう、遠くからのように声は届いた。舌を刺す甘み、喉を転がり落ちていく空気の玉。雨との境がなくなった挙句、自身が泡沫と消えていくかのように、コーラは体じゅうにみちみちた。
顔を戻すとベッキョンが苦い表情を浮かべジョンデを見ていた。
「なんだよ」
「お前も零してるよ」
「え?」
「ここ」
 発達した首筋にベッキョンの華奢な手が伸びた。親指で皮膚の上を数度擦られ、ジョンデはただ立っていた。その指を食うようにベッキョンは咥えた。
「シャツも汚れてるし」
 そう言われてもジョンデは確かめることをしなかった。サンダルもシャツも、泡と消えるならばどうでもいいことだ。



おわり


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あとがき「人魚の夢」 | お返事&この夏、私を踊らせる歌

comment

ありがとうございます! : みむ子 @-
檸檬様!

こんな嬉しい気持ちで誕生日の朝を迎えれらたのは、子供の時以来?いや、初めてかもしれません><

昨年の誕生日もとっても素敵なお祝いをいただきました。
そして今年もなんて!

本当にありがとうございます<m(__)m>

私も泡と消えてもいいからベッキョンの指先を感じたい!←若干変態(笑)
でもきっとその前に、彼を目の前にしたら倒れるだろうな…。
いや、そもそもこんな姿を彼の前に晒す事なんて出来ないだろうな…。
いっそ、ジョンデになりたい!
そうなった私ならベッキョンの口の端を垂れるコーラをガン見だろうな。
などなどいろいろ思いながら拝読させていただきました。

そしてベッキョンの「知るか」というセリフ、彼らしさ満点ですよね。
実際の彼はきっと、凄く男らしいのだと私は想像してます。
そんな様が表現されているように感じました。

なんだか朝早くから暑苦しいコメントですね(笑)
こんな私のコメントに負けないくらい、今日も暑くなるようです(^_^.)
熱中症などお気をつけくださいませ!
そして素敵な日曜日をお過ごしください!

私の今日一日は、もう既に良い日になりました!
何があっても笑って過ごせそうです♪
本当にありがとうございました!
2018/08/05 Sun 06:33:14 URL

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