海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20170930

MARRY ME!(EXOTICA5日目)
こんばんは。
まったくもって。
フェリシティ檸檬です。

いやはや、洗濯でちょっと失敗してしまいまして。
ものすごくくたびれました。

それはともかくEXOTICA5日目でございます。
もうここまで来てしまったのですね。
何か今日は全体的に切なくなるような回でございましたね、皆様。
すごくいいなと思った次第でございました。

今私はひとりで飲んでおりまして、映画を数本、見ようとつけては止めを繰り返し、結局ドラマをつけっぱなしにしております。
いい魚の干物が土産になるといいなと思いながら、いろいろ考えたり考えなかったり。

どうでもいい、ここ最近思ったことでございます。

特に結婚願望のない私でございますが、結婚したいなと思う男性をたまにテレビの中などで見かけることがあります。
その中のひとりが今「世界猫歩き」で大人気の写真家の岩合光昭さんです。
あの番組はあの方の魅力があらゆる意味ですべてだと私は思っております。
ほんとうに素晴らしいお声をされてらっしゃいますよね。
あの方が猫といるのを見るととんでもなく胸キュンします。

7

お顔の感じなどは、私の亡くなった祖父を髣髴とさせ、むしろ好みではないのですけれども。
この方以外だと「刑事コロンボ」のコロンボや、「ミディアム」というドラマの主人公アリソンの夫が私の花婿にしたい欲を刺激してくれます。
私は彼らを見るとどうしても「あー、結婚したい」と呟かずにいられません。
別に結婚自体はしたくないのに←

ちなみに「猫歩き」は、猫が食いつくことで有名ですが、ほんとうに食いつきます。
うちの大きい方の猫はこれをつけておりますと夢中です。
小さい方は大きい方よりも賢くないので、どこ吹く風といった感じですが。

今さっきharuyuki2様の記事を読ませていただきましたが、お話もその中にありまして、特にレイファンの方にとっては胸の締め付けられる、温かさに満ちた素敵なものでございました。
是非遊びに行かれてみてください。

それでは最後に写真など。

猫たちは元気です。
3

1

最後の夏祭り。
2

同居人の人に作った誕生日ケーキ。
4

昨日毎月のセールで買った服と靴と指輪(カーディガンの上の四角い白いのが指輪です)。
5

6

これは古着屋での戦利品なのですが、そもそもはこのセールに合わせ、ニナリッチのスカーフを買おうと目論んでおりましたのに、既に売れた後だったのです。
心底悲しくなりました・・・。
もう今後このようなことはないようにしようと心に決めました。

皆様もこうしたヴィンテージやアンティークなどは逃すと二度と手に入れられなくなる可能性が高いですので、本気で気に入られたら即決でございますよ!(泣)


それではいよいよ明日あたりからEXOTICA、どれも佳境に入るかと思いますので、どうぞお見逃しなく!
皆様のお越しを、心からお待ちしております。



同居人の人が寒い寒いと言いながら買ってきました
フェリシティ檸檬


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20170930

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 5」
企画2

企画概要(↓クリックすると記事に飛びます)
ブログ『夢の続き』EXO小説企画「EXOTICA」

参加者記事一覧(本日更新分↓クリックすると記事に飛びます)
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・5」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 5」
「緑黄色野菜」EXOTICA:青の洞窟 「cruel spiral arousal 《3》」


道中ミンソクは気になり続けていた女性について紳士に問うた。
「それについては」前方を向いたまま紳士は言った。「後にしよう。もう、すぐに署には着いてしまうから。ただ彼女と私の関係だけ先に言っておくと、私はあの子の後見人という立場なんだ」
 後見人、という単語のとき、ミンソクに一瞥を紳士は投げた。それ以外、そしてその後ずっと、車が止まるまで視線が前に向けられた状態なのは変わらなかった。
紳士と別れると署内に足を踏み入れ、ミンソクは用向きを受付で語った。
椅子に腰掛け待つ間、この建物はどうやらとても古そうだと首をあちこちに向けながらミンソクは印象をまとめた。この世界全体がそういう傾向があるが、古いものの中に先鋭的なものが実は縦横無尽に潜んでおり、つまりそれはなんとかして元のその文化的な遺産を壊さないようにという努力を一致してしているためらしいのだった。
数分ののちに若い刑事がひとりミンソクを訪れ、部屋に案内した。
そこにはミンソクの世界で言うパソコンにあたる精密機器が大量に備えられ、その中に収められた膨大な資料の中から彼の証言に該当する犯罪者情報とその写真を抜き出した状態にしてあるのでそれを検めて欲しいと説明された。
 使用方法を解説しながら、刑事はこの文書管理システムには髭の紳士が関わっているとミンソクに話した。作成は主に彼の手によるものと聞き、病院で刑事らに影響力を持っているらしいと感じたことをそう言えばと思い出した。
そして言われた通りに操作しながら、ミンソクは記憶と画面の内容とを照合していった。
本来備えた生真面目さとこの件への義務感から、周りで見守る者も驚くほどの集中力を持って休むことなくミンソクは作業を進めた。途中出されたコーヒーを飲み、コーヒーがあるのだなと感動したり(それになかなか美味であった)、ほんの少しだけ菓子を摘んだりしながら(脳の栄養補給にと頑張って飲み込んだ)、せっせと目と手を動かした。
日も暮れ、宵闇が近付き出した時分、ミンソクはこれと思う情報に行き当たった。
目と、耳の形が相当近く、何よりも三六〇度回転する映像を部分拡大してみると、耳の裏に黒い点が縦にふたつ並んでいるのが確認できた。
 そのことを待機していた刑事に教えると、少し待たされたあと、協力に対する謝礼と、もう帰ってもいい旨を伝えられ、ミンソクは入り口付近の待合所に戻った。
ほんとうは、捜査についてや起訴され有罪判決を受けた際の犯人の処罰についてなど、聞きたいことは山のようにあったが、ミンソクはその質問を喉の奥で押し留めていた。それはぎりぎりのところで押さえ込んでいるさまざまなものが決壊してしまうのを恐れていたためだと言えた。先刻見つけた犯人と確信するに足るあの男の顔や体、その名前がもう既にミンソクの網膜に焼き付いたようになっており、血の生臭さすら匂った。それに侵食されるのを食い止めるので精一杯であった。
渡された通信機を開き、ぷくりと突き出たボタンを押した。
コール音が小さく鳴ると、疲れの皮膚に現れた、血管の浮いた目をした紳士が現れた。
「終わりました」
「お疲れ様。さぞくたびれただろう。今から行くから待っていてくれ」
「分かりました、ありがとうございます」
 来たときにも座った椅子に陣取り、眼精疲労から目を閉じた。と、肩を掴まれた。仰向くとそこには紳士がいた。
「お待たせ。さあ、行こう」
 彼は常に時空を飛び越えているようだと思いながらミンソクがその後ろに続くと、もう外は色の減じた世界であった。
夕食を摂ろうと提案され、応じると紳士は車に情報を入れ込み、前部に座った彼とミンソクは無言のまま車が連れて行くところまで過ごした。
レストランに到着すると、ふたりは恭しく店の者に出迎えられた。紳士の行き着けなのだとそれで知れた。
おすすめを紳士から聞き、それに従って注文すると、警察での進捗をミンソクは語った。
犯人と思しき人間について言及すると、紳士の目の紫色が水底にあるかのようにゆらめいた。
しかし言葉としてはただ相槌を打った程度で、予想したよりも紳士が反応を示さないことをミンソクは怪訝に思ったが、彼も紳士も疲労の色が濃いのは明らかだったため、あれこれ考えるのをひとまずやめ、料理に手を付け始めるとほとんどまた言葉を交わすことはなくなった。
食事を終えようというとき、やっと紳士は口を開いた。
「このあと病院に行こうと思うが、きみも来るかい?」
 複雑な感情の入り混じった表情を顔に乗せた紳士を見ると、ミンソクの胸はきりきりと痛んだ。はい、是非、と答えると、髭に隠れた頬が軽く上がった。
まるで宙に浮いて走っているかのような経験のない心地と、この街の夜の、絹のような豊かな質感をきっと忘れることはないだろうとミンソクは病院への道々思った。隣に座る紳士のどこか野生的な体臭と、重いコロンの香りも同様だった。帰ることができるできないに関係なく、こうして過ごした夜が一生ミンソクの体に染み付くことはもう疑いようもなかった。
病院に入るとすぐ、担当医を呼び出して紳士は状態の説明を求めた。昼間ここを出るときと容態の変化はないということと、まだ面会を許可することは出来ないということを告げられ、かすかに肩を落とした紳士はそのまましかたなく引き下がった。
焦燥に駆られる彼を見てミンソクはどう声を掛けたものかと惑ったが、紳士はしっかりした口調で言った。
「きみを家まで送ろう。そして先に寝ててくれ。私はまた病院に戻るからね」
 家までの道のりはあっという間であった。
踵を返して車に再度乗り込む紳士の背後を迎えた従僕と共に送った。つややかな闇の中、風を受けて庭にある何本もの大木が声を上げていた。車の照明は精霊の影のように夜の底で溶けていった。
従僕のさりげないいざないでミンソクは歯磨きと入浴を済ませ(どこもかしこもこの屋敷は広いのだが、浴室は特別面積を取って贅沢にしつらえられており、ホテルの大浴場のような湯船もあった)、用意された着心地のいい下着とワンピース型の寝巻きを着込むと、来客用の寝室に連れて行かれた。
従僕の手際が見事としか言いようのないことを証明しているかのような部屋の清潔さであった。ふっくらと膨らんだ枕や香りのよいネンは、ミンソクを眠りへと急速に引き込んだ。記憶が曖昧なほどいつの間にか、彼はベッドに潜り込むと気を失ったように眠ってしまった。
カーテンが厚いために、ミンソクは目を覚ましたときまだ夜明け前なのだと思い込んだ。しかし違った。時計の作りはほぼここでも同じなのだが、ミンソクがそれを見遣るとすっかり日が昇っている時間であることが分かった。
その体には大きすぎるベッドからミンソクは這い出ると、重たいカーテンを引いた。途端強い光が部屋に満ちた。昨日同様晴天だった。どこかしらここに来てから夜に生きているような感じがするミンソクにとって、温かな日の光はこの世界にそぐわない気がして、なんとなく逆に薄ら寒さを覚えもした。
おはようございますという声が聞こえて振り向くと、数歩後ろに従僕が立っていた。仰天したミンソクがうわっと言うと、ひとこと謝り、だがすぐ何事もなかったかのように着替えを出して下に食事を準備しますと告げ、しずしずと彼は出て行った。
昨夜教えられた隣室の洗面所を使って顔を洗い、伸びた髭をこれはきっと髭剃り機だろうという機具を用いて剃ると、寝室に戻った。出されたものを見るとまた別の衣服を調達してくれたらしく、紳士の瞳の色を深く濃くしたようなそのスーツ一式に感嘆しながら身を包むと、鏡でさっとみずからを確かめ、髪を撫で付けて部屋を後にした。
一階の食堂に入ると、紳士が食卓についていた。静かに朝の挨拶を交わす。何も包み隠さぬ太陽光は紳士の目の落ちくぼみや髭の合間から除く皮膚の色の悪さを教えた。
憔悴の度合いの激しさにミンソクは衝撃を受け、言葉を探していると、先に紳士が声を発した。
「まだ彼女は起きないよ」
 感情を極力抑えた声音でそう言うと、パンとナンの中間のような小麦で出来た主食を紳士は口に入れた。
さんさんと降り注ぐ日は眩しいほどで、それを受けながらの朝食はしかし切ないものだった。強い悲しみと苦しみが足元を漂っているかのようで、紳士に劣らずミンソクも顔を青ざめさせていたが、いつもの如くほとんど丸呑みのようにして出されたものを食べ切った。
「コーヒーを飲まないか」
 食事を終え立ち上がった紳士がそう言うと、座っているミンソクは彼を見上げた。
「好きです、コーヒー」
「よかった」
 彼が食堂を出るあとにミンソクも続いた。
書斎の肘掛け椅子にそれぞれ座っていっとき待つと、従僕がやって来てコーヒーをふたりに手渡し、辞して行った。
芳しさに目を細めたミンソクの斜め横で、紳士はあらぬ方を見ていた。湯気の渦を前にして一点を見つめる紳士に何故か恐怖をミンソクは感じ、大丈夫ですか、と声を掛けた。
「ああ」
 顔を素早くミンソクに向け、表情を和らげると、カップを口に寄せて紳士は言った。
「あとでまた病院に行くよ」
「僕も、よければ僕も行きたいです」
 勢い込んで言うミンソクに、今度ははっきり笑顔を見せて紳士は黙った。
数秒ののち、茂みのような口元が分かれた。
「―――彼女のことを、話していなかったね」
 白目を広げたミンソクに、微笑みを絶やさぬまま紳士は続けた。
「あの子は私の弟の娘なんだよ。私の父の再婚相手―――要するに私の継母には男の連れ子がいて、それがあの子の親なんだ。つまり血の繋がりはないんだが、私にとっては姪に当たるんだよ。あの子の母親が遠い国の出でね―――出産の際に帰郷したのに夫である弟も付いて行って、あの子が産まれてからもしばらくそこにいたんだが、そこで内戦が始まってしまって、その際弟夫婦は爆撃で死に、あの子もひどい怪我を負ってしまった。―――体を、見ただろう?あの機械部分は、私が作ったんだよ。一命を取り留めたという連絡を受けた私は、かの国に飛んで行って容態が落ち着いてから連れて帰った。それから私はあの子の親代わりとなって、成長に合わせて何度も何度もあの子の体の一部を作った。あの子はこの家で育ったんだよ。数年前まで、きみの寝室の近くの部屋で寝起きし、私と生活を共にしていた。成年に達して遺産を継ぐと、ここを出てあの、―――事件の起きた家に越した。幼少時とんでもない災難に見舞われ、際限のない辛い快復運動に堪えてきたことなどおくびにも出さない、朗らかなおおらかな子で、人付き合いべたというわけではないのだがひとりを好んでよく家でひっそりと過ごしていた。きみも知っての通り、とても綺麗な若い娘だから、社交の場に出れば男が寄ってくるんだが、ほとんど相手にしていなかった。そんな中、あの子が少し前から誰かに付きまとわれているような気がすると教えてきた。具体的なことは何も起きていないのだが何かしらの気配を感じるとのことだった。私はここに来るか、防犯の設備を私自身に整えさせるかだと強く言ったんだが、あの子は少し考えると言って帰ってしまった。ただあの子が持っている携帯電話の他に、私に対してのみ緊急連絡手段として使用できるきみが使ってくれたあの機器を無理矢理渡しておいた。私はその受信機を肌身離さず持っているからと。それが数日前のことだ。私はあの子の家に設置する探知機や録画機や通報機を準備していて、事件のあった次の日、つまり昨日、ほんとうは押し掛けて行って有無を言わさず取り付けるつもりだった。それが―――その前に、ことは起きてしまったんだよ」
 気を抜くと脳裏に浮かぶあの夜の、あの部屋の光景がミンソクにまた襲い掛かった。実際の視界の中にいる紳士の生気のないさまも相まって、濃厚な死の匂いが立ち上り、コーヒーの香を退けると共にミンソクの手を冷やし、湯気がぱたと消え去った。
 紳士はもう、何も言えなくなってしまったようすで、大きな溜め息を吐くと、口を閉じ、また沈黙した。
穏やかな陽気の屋外から、鳥の鳴き声が時折届いた。巨木ばかりの庭の木に集まり鳥たちが会話を交わしているのを、ミンソクは目をすがめてなんとか見れぬものかと苦心した。知らぬうち、生を感じることを渇望していた。
おもむろに紳士が口調を変えて話し出し、ミンソクはそちらを向いた。
「前に話した装置だけどね」
 少しだけ目に力を込め、紫色を輝かせながら紳士はミンソクを見た。
「これから少しいじってみる。以前は仮定の話だったものが今では事実なのだから、きみの話に沿って改良しよう。それから一緒に病院に行こう。それまで好きに過ごしていてくれ」
 席を立った紳士は足早に部屋を出て行き、ミンソクは窓いっぱいに見える木々と再び相対していた。手に持ったカップの中身は完全に凍り付いており、ローテーブルにそっとミンソクはそれを置いた。



つづく



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20170929

進め転に向けて(EXOTICA4日目)
おはようございます!
いい天気です。
フェリシティ檸檬です。

EXOTICA、4日目でございますね!
皆様お楽しみになられていますでしょうか。

haruyuki2様もみむ子様もおっしゃっていた通り、折り返し地点まで到達いたしましたね。

昨日つれづれで推敲が終わったことをお伝えしておったのですが、常のことながら、何かしつつや寝起きや眠る前などに、内容を思い出し、あれじゃいかんな、などと考え、手を加えたりなんだりし、もうしようのないことなのですがやっぱりああだったかな、などと思ったりもし、もやもやしている私でございます。
今回のお話は特にそういう側面が強いのでありまして。
皆様がそうした部分をそこまで気にすることなくお読みいただけているのならいいのだがなあ、と思っております。

そして、haruyuki2様から昨日素敵なお言葉をいただき、感激したのでございました。
わざわざお越しいただきコメントをくださり、まことにありがとうございます。
身に余るお言葉の数々に恐縮してしまいましたが、拙作の「砂糖壺」や「グレーゾーン」を楽しんでくださったということをお聴きでき、幸せでございました。
haruyuki2様はブログを拝見させていただきましてもそう感じていたのでございますが、ふんわりしたお優しい方を読んだり書いたりされるのがお好きなのかなと勝手ながら思いました。
その相手にちょっと強気だったりツンデレだったりする方を配されるのがお好みなのでしょうか。
人様の萌えをお伺いするといつも大変興味深く、お人柄が伝わってくるものだなあと改めて思いました。素敵なご趣味でございますよね。
今回のシウミンは大変可哀相な目に遭っておりまして、そんなharuyuki2様のお心を傷付けたりしていないといいのだがなあとちょっと心配しております。
もしも辛くて読みたくない、というようなことがあれば、どうぞご無理はなさらぬようお願い申し上げます。
けれどお楽しみいただけることがあるのならば、是非最後までお付き合いくださいませ。
私も毎日うきうきと遊びに行かせていただいております。
今日もとても素晴らしかったです。わたくし、お話の展開の中でこの4話目が一番好きでございました。
明日からもまた楽しみです。
何卒今後とも、よろしくお願いいたします。

さてさて、そんなわけで、明日以降、お休みとなるわけですがお話はもちろん続くのでございます。
四つのお話が、そろそろ起承転結の転あたりに差し掛かるでしょうか?もう差し掛かっているお話も見受けられるような。
ますます目が離せないEXOTICAでございます。
どうぞ皆様、休日の楽しみとして、私どものお話をお使いくださいませ。
お待ちしております。


9月がもうすぐ終わる…!
フェリシティ檸檬




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20170929

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 4」
企画2

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ブログ『夢の続き』EXO小説企画「EXOTICA」

企画参加者記事一覧(本日更新分↓クリックすると記事に飛びます)
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・4」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 4」



まぶたの上の明るさで、ミンソクは目を開ける前からもう既に日が高いだろうと思っていた。
果たして窓から降りそそぐ陽光がミンソクの顔に落ちていた。まぶたを上げた彼は、やばい、今日仕事何時からだったっけ、と反射的に思った。体を起こしながら、目に映る光景が慣れ親しんだものでないと気付き、噴き出すように脳の底から眠る前の記憶が蘇ってきた。
「あの人は」
 布団を掛けられ、ソファに横になっていたミンソクはそこが茶を飲み、事情を聞かれた例の休憩室であること、そして周囲に誰もいないことを認識すると、立ち上がり、誰かに彼女の容態を聞こうと傍に置かれた手提げ袋ふたつを持って部屋を出た。
受付まで行く前に、看護師を見付け昨晩の事件の目撃者である旨伝えると、その看護師はミンソクの容姿の珍しさと事件の概要と伝達されていた昨夜の情報とを照らし合わせ、すぐ事態を飲み込み、髭の紳士が医師から説明を受けたところであるからと、紳士と話をすることを勧めた。
その前にとミンソクは手洗いに行き、使い勝手が分からなかったらという一抹の不安があった用足しの方法がそれ程知ったものと大差ないのに安堵して用を済ませると、紳士の呼ばれた診察室の一室に向かった。すると階段を降りようとする彼と鉢合わせた。
 開口一番ミンソクは言った。
「女性はどうですか」
 彼の表情からは状況がしかとは読み取れなかった。そのためミンソクは相手の髭が声の入り口を作るまでのほんの短い間も、やたらに長く感じられ、じれったさから体がしびれた。
「なんとか小康状態を保っているとのことだよ」
 目尻と頬の動きで淡い笑みを彼が浮かべたのが分かった。
「だが意識が戻る気配は、今のところないらしい」
 階段の上と中途で会話を交わしていたふたりは、紳士が足を再び下ろし始めて、揃って階下に向かって行った。
「でも」
 紳士を振り向き振り向きしながら、ミンソクは言った。
「でも、きっと」
「ああ、そうだね。私も希望は持っているよ」
 昼間に彼を見るのは初めてであったが、ミンソクは彼が昨日よりずっと老けて見えることに軽くショックを受けていた。心労とはこのように人から命を搾取していくのだと改めて思い知った。
「いつの間にか眠ってしまってすみませんでした」
 元いた階に戻ると、足を止めてふたりは互いを見合った。
「そんなふうに謝ることはないよ。むしろ眠った時間はかなり短いんだ、体は平気かい?」
「はい、実はいつもより長く寝たぐらいなんです」
「きつい暮らしをしているんだな」
 苦笑いを浮かべると、魅力ある、しかし淋しげな笑みを紳士も作った。
「家の人間に着替えを持ってくるよう連絡しておいたから、きみもそれに着替えて、一緒に一旦帰ることとしよう」
「僕の分もあるんですか?」
「ああ、そのままでは外に出づらいだろうからね」
「すみません、ほんとうにお世話になってしまって」
「きみは謝りすぎだよ。こんなのは当然のことなんだから、気にしなくていいのだよ」
「お宅にお邪魔して、いいんですか?」
「もちろんだよ。きみはここのことを何も知らないんだから。遠慮せず、いいから私を頼りなさい」
 ありがとうございます、と言いながらミンソクははにかんだ。
そんなミンソクを見て紳士は頬を無意識のうちに、もっと自然なかたちに緩めた。
その表情を消すように紳士が先に立って前を行き、休憩室に向かう後ろ姿を、ミンソクは持ち前の脚力で歩幅を補い、追った。
紳士の話した通り、間もなく彼の従僕が鞄を携え姿を現した。
鞄を受け取ると紳士は代わりに自身の汚れた服とミンソクのそれを従僕に渡し、洗濯するよう命じて更衣室にミンソクを連れて向かった。
「見たところのきみのサイズで既製品を買ってくるよう言ったんだ。大きかったり小さかったりするかと思うが、少し我慢して欲しい」
 いわゆるシャツ、ジャケット、パンツといったアイテムは、ほとんどミンソクの知っているものと基本の形は変わらなかったが、デザインがところどころやはりかなり独特で、ミンソクはそれらを順に身に付けながらじっくり見入ってしまうのだった。
「靴はまた後で準備しよう」
 昨夜シャワーを浴びる際に底や側面に付着した血液をあらかた拭っていたのだが、紳士はミンソクの足を見下ろしながらそう告げた。確かに黒ずんだ赤は取り切れておらず、服装ともちぐはぐであった。
「少し大きいかな?だがとても似合っているよ」
 鏡の前に立ったミンソクは、それがお世辞ではないと思えた。今の色の濃い髪と、白い肌に、インクブルーの衣装は映えた。
「きみが元の世界でステージに立っているというのは、よく分かるよ」
 ふくいくたる声でそう言われると、ミンソクはほのかに耳と頬を染め照れくさそうに笑った。
笑みを返す紳士を見て、きっと色も指定してくれたのだろうとミンソクは思った。久しぶりに顔に血の流れを感じ、それは紳士の心遣いのおかげであることを静かに悟り、俯きながら唇の端を上げていた。
双方がマントを巻いて病院を出ると、従僕が車の前で待機していた。
明るい中で見る車、それにまたその背景である病院の周囲は、曲線を多用しながら重厚さをたたえた意匠を示し、色調は抑えられ、都会の只中であることは分かったが、ミンソクの思うモダンなそれとはかけ離れていた。
皆が乗り込むと、車は発進した。
中は前部と後部に分かれており、運転席位置に従僕が座り、後ろにミンソクと紳士が並んだ。
物珍しさからミンソクは車内や車外を観察した。しばらくして従僕の両手が操縦する動きを何もせずに腿の上に置かれていることに気付き、足のみで操作するようになっているのかと考えていると、視線を追った紳士が「何か気になるかい」と尋ねた。
「あ、僕のところでは車は手も運転に使うので」
「ん?ああ、人が車を操るということかい?そうか、いや、ここではね、車は自動運転が基本なんだよ」
「え?」
「彼はこの車に今何もしていない状態ということだよ。行き先を入力すると、そこまで車が勝手に運んで行くだけなんだ」
「…あ…、そういう研究もされてます、確かに」
「そうだろうね。ずっと事故が少なくなるはずだよ。人為的な操縦ミスの方が車の故障による事故よりも圧倒的に確率が高いからね」
 ミンソクは行き交う車を窓から見つめ、他の車中の人々も紳士の言通り運転をしていないらしいことを確かめた。それどころかフラットシート式なのか、家族数人が輪になって談笑している姿も見られた。
「もちろん自身で運転する人もいるし、何かしらの故障が起きたときに人の手で運転することが可能になってはいるが、それは希少な事例だね」
 救急車に乗り込んだとき、ひどく滑らかに進むなと感じていたのは錯覚ではなく、おそらく構造から加速しやすくなっていることと、機械自身で運転していることで無駄のない前進が可能になっていることがその理由だろうとミンソクは思った。
思考は漂い、晴れ渡った空を見上げるうち、ミンソクは仕事はどうなっているだろうかと案じ始めた。
スケジュールは平気だろうか、事務所やあらゆる方面に、多大な損害を与えてはいないだろうか。
自分がいなくなってから、皆どうしているのだろうか、あの洞窟は、他のものはどうなっていたのだろうか、入って行った弟たちは無事なのだろうか。
セフン。
背の高い、色の白い、眉と目の印象的な、肩の張った細長い末弟の姿が目に浮かんだ。ミンソクの中で、彼はいつも笑っていた。このような状況でも、やはりそれは変わらなかった。
クリームの上を滑るように走り続けた車がその優雅さを失わぬまま失速し、停車した。
大邸宅の玄関口まで乗りつけた車から降り、一同は邸内に入った。
従僕に食事の用意を言いつけると、紳士はミンソクに向かって詫びながら、これからちょっとした仕事を済ますために席を外す、供される昼食を食べていて欲しいと告げた。
了解したミンソクは室内履きを出されそれに履き変えると、まず応接室に通され、そこにある多くの珍奇な品に見惚れた。間もなく従僕がやって来ると食堂に案内され、その広い部屋の大きなテーブルについて、今度は次々出される料理を黙々と食べた。見た目も味も、殊更戸惑いや躊躇いを訴えたくなるような自分が食してきたものとの違和感はなく、また食器も病院で食事をしたときにそう感じた通り、スプーンとフォークのようなものが基本で、それ程自身にとっての食事のあり方と遠くなく、使い方に困りはせず、安心したミンソクはここに来てからどうしても湧かない食に対する欲求を奮い立たせ、時間を掛けてではあるが出されたものを残さず胃に納めることができた。
日が真上に昇り、緩やかに下り始める頃合に、書斎に移ったミンソクが肘掛け椅子に腰を下ろし、窓から木の揺れるのを眺めていると、扉が開いて紳士が顔を出した。
「連絡があったよ」
 ミンソクの近くに寄りながら彼は言った。
「病院と警察からだ。病院からは検査結果は問題なしという報告で、警察からはきみに捜査協力して欲しいという依頼だ」
 立ち上がりかけながらミンソクは大きな声を出した。
「もしかして捕まったんですか」
 中腰の姿勢のミンソクを見下ろした紳士は答えた。
「いや、きみに犯罪者情報の記録を見てもらい容疑者を絞り込みたいらしい。行けるかい?」
「はい、お役に立てるかは分かりませんが」
「そうか、では私も所用があるから送らせてもらうよ」ポケットを漁って手に何かを握り、それをミンソクに差し出して言った。「これを持って行きなさい。警察での用事が済んだら、私に連絡をくれれば迎えに行くから」
 受け取ったそれは、女性が紳士を呼ぶためにミンソクに開かせた大きなロケットペンダントといったあの通信機に似た金属製の品だった。同じように蓋が開き、しかしこちらには数字のボタンが並んでおり、携帯電話らしいと知れた。
「私にかける場合はこの一番下のボタンを押すだけでいいからね」
「分かりました」
 連れ立って玄関に向かうと、従僕が新品の靴を準備して立っていた。
「もしかして」
「ああ、きみのだよ。さっき大きさが分かったから、買いに行かせたよ」
 ブーツタイプの靴は、光沢があり美しかった。足を入れるとちょうどぴったりで、歩くたび靴音が軽やかに鳴った。
主人にも従僕にも心からの感謝を述べると、どちらも顔をほころばせた。
見送る従僕を背にし、紳士とミンソクは車で目的地へと出発した。




つづく




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20170928

投稿失敗、推敲終了(EXOTICA3日目)
こんにちは。
失敗しました。
フェリシティ檸檬です。

タイムラインにね、上がってしまっておりましたね。
そう、お察しの通り、予約投稿に失敗したのでございます←

多分、中をご覧になった方は幸いなことにいらっしゃらないのではないかなと思うのですが、6という数字を見てびっくりされた方には心からお詫び申し上げます。
と言いますか見た友人が慌てて連絡をくれ、心苦しいことでありました。
迷惑を掛けてごめんなさい、そしてありがとう。

とうとう推敲が終わったのでございます。
ここ最近このことが頭を離れませんで、眼精疲労もかなりなものになって来ておりましたので、肩の荷が下り、ほんとうに嬉しく思います。
あとがきなどはまだ手を付けておりませんので、これから取り掛からなければならないのでございますが。

お話を終えられていないとお教えくださったみむ子様は如何かな?と思っていたりもいたします。お忙しくしてらっしゃるので、お体も心配になったり。
陰ながら応援するしかできない私でありますので、もう終わられたかしら?ひと息つかれたりされているかしら?と勝手に想像し、労う具体的で効果的な行動の取れない我が身を憂えております。お茶など出して差し上げたい…。
みむ子様、頑張ってください!(泣)

本日分のお話でございますが、私は既に楽しみました!
皆様は如何でしょうか?
いろいろな感想を抱きましたけれども、これは全部が済んだ後にまとめて書かせていただければなと思います!大したものではありませんけれども、こうしたことも企画の楽しみでございますね。

それではひとまずここらへんで、失礼いたします。


これから友人の要約記事が出るのが嬉しいです!
フェリシティ檸檬


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20170928

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 3」
企画2

企画概要(↓クリックすると記事に飛びます)
ブログ『夢の続き』EXO小説企画「EXOTICA」

参加者様記事一覧(本日更新分↓クリックすると記事に飛びます)
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・3」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 3」
「緑黄色野菜」EXOTICA:青の洞窟 「cruel spiral arousal 《2》」


少しの間黙したままだった紳士は、毛を分けるように口を開くと、またいっとき間を置き、次のように言った。
「きみが」一拍あった。「きみが来てくれて、ほんとうに嬉しく思います」
 目玉が落ちそうなほど、ミンソクはくぼんだ眼窩の皮膚の切れ目を大きく広げた。そして紳士と見つめ合うと、信じてくれるんですか、と囁くように聞いた。
「信じますよ。何故信じないと思うんです」
 眉を寄せて怪訝な表情をする男性に、慌てて手を振りつつミンソクは許しを乞うた。
「いえ、いえ、あなたは信じてくださるかもしれないとは思っていたんですけれど、やはり内容が内容ですので、とんだ嘘つきと思われる可能性もあるだろうなと…」
「何故?ありえることですよ。あなたの話に突拍子もないところなどまったくないではないですか」
「あ、そう、そうですか?僕、僕はもう、頭が変になったか夢を見ているかといったくらい、もう大混乱で…」
 きょときょとと目を揺らすミンソクの、また冷え切ってしまった手を取り、握ると、じっとそのさまを観察した紳士は、何かを解したようすをしながら落ち着いた声音で顔を寄せるようにしてまた語り掛けた。
「きみのいた世界では、こうしたことはまるで起きないんだろうね?」
「はい、はい、そうです。あの洞窟を通ってこんなところに出るなんてこと、ありえません」
「そうか。それではきみ、きみの手がとても冷たいことは気付いているね?」
「え?あ、…はい。すみません、冷えますよね」
 引こうとした手を両手で掴まれたまま引かれ、ゆっくりと紳士の片手の掌を見せられた。
「ごらんなさい」
 太い、ミルクチョコレートのような色をした指の先が、白くぼけたようになっていた。
視線をぶつからせると、つぶらな紫が射るようにミンソクのくっきりとした両の目を指した。
「これは、霜だよ」
 唇に隙間を作ったままミンソクは目で問うた。
「きみ、きみは、元いた世界で、握った相手の手を凍らせることができたかい?」
 鼓膜を通した言葉が脳の中でわんわんと舞った。
仕事上の人物設定。
ふざけて仲間内で持ち出したり、テレビなどでもネタとして話題にすることはあれど、特殊能力など本来持っているわけはない。そんなもの、売り出す際考えられたただの特徴付けに過ぎない。
―――凍らせる?
ミンソクは紳士の手を取り、白い部分に触れた。そして注意深く見た。確かにそれは紳士の言う通り、冬の朝植物の上に降りていたり、冷凍庫に張り付いたりしているあの霜に相違なかった。
え、え、と意味のない言葉を発するミンソクの肩を優しく掴み、紳士は言った。
「いいかい、この世界では、こうした能力を持った人間が稀にいるんだよ」
 怯えた獣をなんとかなだめようとするかのようにひとことひとことはっきり、そして柔らかく彼は告げた。
「そしてそれは皆知っている。知能指数や運動神経や音楽センスが飛び抜けて優秀だというのと同じことなんだ。そういう人たちならきみの世界にもいたろう?そもそも、きみの仕事の話からすると、きみ自身そういう能力も高い人間のようだしね。そうしたきみの突出した能力の中に、温度を極端に低下させられるというものも含まれていて、ここではそれも使えるようになったということだと思う。それはきっと、ここがそうした能力を開花できる世界であるからということなんだよ」
 手を自分の膝の上に戻すと、覗き込むように、首を落として視線を下げたミンソクに尚も言った。
「だから、私はきみの話が事実であると疑わないよ。それに誰が聞いても、そうしたことは起こりうると思うだろう。つまりそういう意味で、きみが居心地の悪さを感じることはないんだ。いろいろな要因が重なり、きみは自分の世界からこちらの世界に来てしまった。きみが驚きと恐れから混乱し、絶望しても当然だ。しかも来た途端」言葉を切った紳士は苦しげに唇を噛んだ。「―――あんな事態に、巻き込まれたわけだから。だがきみがいてくれたから、彼女はまだ生きてるんだ。ほんとうにありがとう。きみの悲劇が、私たちを救ってくれた」
「いえ、そんな」
「いや、きみがいなかったら彼女は―――。うん、間違いなくね。こんな思いをさせてしまい申し訳ない。だが私たちが感謝してもし切れないほどきみの存在は私たちを助けたということだけは分かって欲しい」
 息が苦しいとミンソクは思った。女性の裸体、肉と機械の混じった肢体から零れ出る血、血、血、傷口から垣間見えた内臓の照り。彼女と自分の、潤んだ瞳同士が世界でただそれだけしか存在しないかのように寄り添っていた。甘く低めの声で、慈愛に満ちたそれで、何よりもまず自分に感謝の言葉を投げ掛けてくれたことで、女性の、その顔から伝わってくる人柄の印象をいよいよ決定付けてくれていた。
あの人が誰かの手により死に至らしめられるかもしれない―――痛めつけられ、陵辱されて。
助けた?自分が彼女を?いや、もっと何かすべきことがあったのではないか、彼女をよりよい状態で病院に連れて行く方法が、何かしらあったのではないか。心のどこかで絶えずあったその自身への疑念が、紳士がこう言ってくれたことでかえってミンソクの眼前に浮かび上がるようになった。自分の今後ばかりを憂えていたように感じられ、羞恥と自己嫌悪から震えが起きた。確かに、知らぬところ、それも存在すら認知していなかったところに来てしまったらしいこと、それも覚えのなかった能力とやらまで携えて、このことは気が狂いそうな事態ではあったが、それでも彼女を襲った惨劇に比べたら一体なんだと言うのだろう。怪我ひとつ負わず、命の危険にさらされてもいない。帰ることができなかったらという恐怖は当然あるが、しかし生きてさえいれば、何かしらの希望は持てる。おそらく想像を絶するような目に遭い、ああした体で生きていた彼女に、更にあんな悪意が降り掛かる―――ミンソクは、とにかく彼女に申し訳がなかった。あの女性に対し、もう、自分が男性という性で、五体満足で生きているというだけで申し訳がなかった。叫び出したいような、走り回りながらめちゃくちゃに暴れ出したいような強烈な衝動がミンソクを覆った。
だがミンソクはそんなことはしなかった。ただ沈黙し、冷気から手の周りが白く紗が掛かったようになっているのをじっと見下ろしていた。
紳士はミンソクを見つめていた。虚ろな目に能力を発動させている両手をただ映しているだけというようすを、唇を引き結び―――髭のせいでそれを人が確かめることは叶わなかったが―――憂えていた。
「きみ」
 先程よりも力強く、紳士は言った。
「あまり案ずるな。まだ伝えていなかったが、私は研究と発明を生業としていてね」
 呆けた顔のミンソクが振り仰いだのを確認してから、紳士は話した。
「きみの語ってくれたような事象についても、長く考え続けてきたんだ。研究しながらそれに関する装置も多く作ってきた。だから、私はきみが帰る手助けをできるかもしれない」
 青白い頬と黒い目周りと充血した白目を向けながら、ミンソクは言われたことを反芻した。絶望と希望が渾然一体となって彼の体を巡り、何と答えていいのか分からなかった。
ミンソクは紳士を見据え、彼が情熱と意欲を内で沸き立たせているらしいことを知った。それがミンソクの心を多分に和ませた。
「私は、彼女の容態次第ともなるが、以前作った装置を可能な限り早く見直してみるからね。使えそうなら、試そう。そして、それと並行してなんだが―――」
 紫が白の中で浮いた。ぎらぎらと燃えるようになったそれは、紳士の中の抑えがたい、先述した欲求とまったく異質な望みを激しく訴えていた。
「きみはさっき、犯人を見たと言ったね」
「はい」
「どんな容貌だったか、詳しく教えてくれないか」
 肯定の返事を繰り返し、ミンソクは頭の中で窓辺に立った男を描き出しつつ、話した。
目の前にいるこの紳士もそうであるが、その男もスーツに似た服装をし、マントを身に着けていたこと(ここの男性の普段着なのだろう)。
頭頂部が丸く、つばが斜め横に張り出し、しかもその先が反り上がっている妙な形の帽子を被っていたこと。
薄暗い部屋で、街灯の方が明るかったため、逆光になって服も帽子も色は黒っぽいとしか言いようがなかったこと(だがグレーなどの明るい色ではないはずだとミンソクは付け足した)。
手袋をしており、逃げる際手を付いた窓枠にその手形がくっきりと残るほど血が付いていたことから、犯行時ずっとはめていたと思われること。
マントやスーツから浮き出ていた骨格や肉の付き方から、かなりの痩せ型と分かったこと。
目の色は多分、黒か茶であろうということ。
肌は紳士や女性よりは白いが、ミンソクよりはずっと黒いということ。
左耳の後ろに並んだほくろがあったこと。
「これくらいしか、分からないんです」
 すみません、と呟くと、顔中に憎悪を漲らせていた紳士は、はっとして、微笑をこしらえた。
「いや、きっと恐ろしく短い間だったろうに、ずいぶんたくさん覚えていてくれたんだね」
「そんなことないんですが…まるで映画を観ているようで(こちらに映画というものはあるのだろうかとミンソクは思いながら、しかしどうやら言語が変換できているから大丈夫だろうと判断した)…、印象がものすごく強かったんです」
「そうか、きみには珍しい装束や装飾ばかりなのだものな」
「はい。それに、これはきっとあとから警察の方たちに話さなければならないだろうっていう頭もあって…」
「そうだな。だいぶ遅れているが、そろそろそういった連中もここにやって来るだろう、彼女の家に向かいながら通報もしておいたから。来たら彼らに話せるかい?」
「はい」
 年若の可哀相な旅行者の気を和らげようと意識して微笑みを作ったままの紳士の顔は、彼がもともと持っている愛嬌を目立たせており、その優しい目の際の皺を見たことと、これから起きることに対しての心構えが多少できたことで、ミンソクはさっき全身を回って自身を殺そうとした毒素が極めて弱まってくるのを感じた。ほおー、と腹の底から息を抜き、手を握ったり開いたりすると、元の体温が戻ってきていることが分かった。
 手術室からは相変わらず誰も出てこない。
何か食べた方がいいな、とひとりごとのように言うと、紳士はのっそり立ち上がった。
と、靴音が廊下に鳴り響き、速足でこちらに向かってくる複数の人間がいることが知れた。
顔を上げたミンソクと、来訪者と相対するように体を向けた紳士の前に、スーツの変形のような服装に身を包んだ男性ふたりと、警察官と思われる制服を着込んだ男性と女性合わせて三人が、彼らを囲むように立っていた。
職業柄なのか、彼らの視線は一様に油断ならないもので、ミンソクは自動的に背筋が伸び、鼓動が高鳴るのを感じた。それに反して掌から指先は冷えていった。
 刑事らしきふたりが両掌を上にして差し出し、それを受けて紳士もそうした。
その雰囲気から察してこれはおそらく挨拶の仕草なのだろうとミンソクが考えていると、刑事の片方がこの事件に関する話を聞きたいと切り出した。
思った通り揃った全員がミンソクよりずっと色黒で、異様に白い彼は大変目を引き、紳士と話を始めてからほどなく声が掛けられた。
つまびらかに話してもいいかと目顔で問うと、こくりと紳士は頷いた。
署での聴取を求められたが、紳士がミンソク共々病院内に留まりたい意向を示すと、驚くべきことにそれが了承された。ミンソクは紳士と刑事たちのようすから、どうやら紳士は人々から深い畏敬の念を抱かれている、名の通った人物らしいことを見て取った。
休憩所に移動し、話すことで一致した。
容態に変化のあった場合すぐに知らせるよう紳士がきつく警官に言いつけ、第一発見者であるミンソクから聴取は始まった。
席を外した紳士がしばらくすると温かい食事を持って部屋に現れた。それに伴いミンソクの話は中断された。
卵の落とされたおじやのようなものと玉葱のスープをミンソクたちが食べ終えるまで待ってもらいたい旨紳士が申し出ると受け入れられ、どちらも食欲からではなく今後のために無理矢理料理を口に押し込むと、紳士が部屋を退出し、ミンソクのみの聞き取りが再度始められた。
 紳士に一度話していたため、二度目のこのときはもっと筋道立てて成り行きを説明でき、また紳士の言った通り荒唐無稽な絵空事とは感じられていないことも彼らの表情や態度から伝わり、なんとしても捜査の助けになりたいという思いだけが募ったミンソクは、年齢相応の振る舞いと口調を貫き、すべてを終えた。
第一発見者という理由からミンソク自身が疑われる可能性も考えないではなかったが、現場検証において明らかに第三者が逃げた痕跡が残っていたことと、「彼ではない」という発言を被害者がしたのを紳士も、また救急隊員も耳にしていたことから、容疑者リストから早々に完全に外されていたことを翌日に知った。
紳士の番になり、ミンソクが廊下のソファに腰を据えると、すぐ脇に警官がひとり付いた。もう明け方近くになっていた。疲れが頂点に達したミンソクは、下りて来るまぶたを持ち上げる力を、いつの間にか逸した。座ったまま、上半身が傾いた。特有の美しく歪んだ唇の下が力なく落ちたとき、彼は眠りの世界に沈んだ。




つづく




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20170927

企画をしながら企画を思う(EXOTICA二日目)
こんばんは。
とても風の強い日です。
フェリシティ檸檬です。

さてさて、企画二日目でございます。
皆様、お話の数々、お読みになってらっしゃいますでしょうか?
私は読んでおりますよ。そして存分に楽しんでおります。

昨夜roiniy(ooba)様からコメントをいただきました。
ほんとうに、どうもありがとうございました。お手数をお掛けいたしました。
はじめましてでございまして、お声掛けいただきまことに嬉しく思いました。
そして私の以前書いたものを読んでくださっていたのですね、わざわざどうもすみません!
「シング~」は、私がこのブログで初めて書いたお話でして、愛着のあるお話のひとつでございます。
私は身長が同じくらいのカップルというのがとても好きで、また、基本ディオが攻めになるのですが(受けであっても誘い受けっぽい感じです)、そうした私の嗜好がよく出ております。
おっしゃってくださったような、絵本のような感じ、ということや、思春期のような関係、ということを、あまり感想としていただいたことがないので、新鮮でございました。
確かにそういうふうに感じる方もいらっしゃるのかもしれないな、と気付かされた次第です。
今回の企画のお話も読んでくださり、ありがとうございます。
展開が読めないというふうに思っていただけたこと、とても嬉しいです。最後までそんなふうにお感じいただければいいなあと思っております。自信はありませんけれども(汗)
まだまだ終わりは先ですが、気長にお付き合いいただければ幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。

また、本日、私が今回の企画に合わせ、お声掛けさせていただいていた書き手の方がいらっしゃったのですが、その方からご連絡がありまして、大変嬉しく思いました。
その方とは数ヶ月前から少しずつやり取りをさせていただいていたのですが、そうした流れの中で友人の企画の話が持ち上がりましたので、そうだ、出ていただけるかしらと勝手に考えまして、雑談の中に企画の話題を入れさせていただいたのですが、今回はタイミングが合わず、不参加ということになりまして、そのことからも、今まだ絶賛企画開催中でありますが、またこうしたものを私自身でもしたいかもしれないなあというふうに思いました。
まだまったく固まった話ではありませんが、しかも今私自身EXOTICA「闇を駆ける罪」の推敲がまだ終えられていないのですが←、そんな妄想を少しだけ繰り広げたりしております。「海に沈む森の夢」、第二段でございますね。
もちろんEXO企画、もしくはSHINee企画、もしかしたらスーパージュニア企画、ごちゃまぜ、どうなるかは分かりませんけれども、もしほんとうに着手することとなりましたら皆様、よろしければお考えになってみてくださいませ。気の早い話にも程があるのですが。

友人が企画のお話の要約を含めた記事を毎日上げてくれていて、すごく嬉しいです。
きっと書き手様皆様そうなのではないでしょうか。
あれを読むと、書いたものを誰かがきちんと読んでくれているのだなと(友人なんですけれども)ものすごく実感いたしまして、なんだかとても幸せです。
ありがたやありがたやと思いながら記事のページを開いております。

さて、明日も企画は続きますね。
こうした、曰く言いがたい高揚した気持ちは久しぶりな感じがします。
どうぞ皆様も、少しでもそうした体験をされてらっしゃいますように。


あとがきも楽しみだなあ
フェリシティ檸檬






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20170927

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 2」
企画2

企画概要(↓クリックすると記事に飛びます)
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参加者様記事一覧(本日更新分↓クリックすると記事に飛びます)
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・2」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 2」



疾走する車はやたらに速いようにミンソクには感じられた。ものの数分で病院に到着し、可能な限り急いで女性は中へと運ばれた。
真白な空間で構成された、ミンソクの知るような典型的な病院といった佇まいはそこにはまるでなく、深緑色を内装の基調とした、木と、金属に似た材質で組み立てられた何風とも言えぬそれは建築物であった。これが病院なのかとミンソクが戸惑いながらも走って担架を追い、処置室の扉が目の前で閉まるとそこで髭の紳士共々手や衣服を血に染めてしばらく棒立ちになった。
看護師らしき人々が彼らに声を掛けた。聞き覚えのないはずのそれをやはりミンソクは理解できた。血を洗い落とすように言われ、体中に飛んでいるからと入浴を求められた。
言われるままふたりはシャワールームに向かった。
それはドアを閉めるときっちり密室になる作りの小部屋で、更衣室の中にいくつも並んで設置されており、それぞれそのうちのひとつに入った。入り口付近にあるスイッチを押すと穴の開いた天井と四方の壁の中の一つの面からお湯が飛び出してくるという仕掛けにおののきながら、くるくると回転してミンソクは体の汚れを洗い流した。渡された洗浄力の高い医療専用の石鹸を体中に塗りたくり、またシャワーでそれを流した。
さし当たって、患者用の衣服を着替えとして準備してもらっていたため、それを身に着けようと体を拭いていると、髭の紳士がすべてを済ませてミンソクの前に現れた。
ワンピースのような形状の服は踝まで丈があり、濃紺であった。背が高く、恰幅のいい男性はそびえるようにミンソクの手前に立ち、ミンソクが汚れなかったみずからの下着を再び身に付け、その後借りた服に腕を通し、濡れた髪の毛をタオルで擦るのを見守っていた。
 髭が割れるようにして声が響いた。
「彼女は今も治療中です。失血がひどいので、大量に輸血している最中です。まだまだ掛かるでしょう」
 なんの前置きもなく歌うような低い声でそう教えられ、ミンソクは目を伏せた彼の暗い顔を仰いで猫に似たまなこを見開いた。
 紳士は脱衣籠に脱いでおいたミンソクの衣類の中から、看護師が汚れたものだけ別に詰めた袋を差し出した。
「きみを私の部下か何かだと勘違いして私に渡してきました」
 手を伸ばすミンソクに紳士は続けた。
「見慣れぬ衣装をお召しでしたね」
 目を泳がせたミンソクは手提げ袋の紐部分を握り締めてから、また瞳を上に上げた。相手の、横に長く細い目の中で、紫色の小さな中心が光って待っていた。
「―――鞄も洗った方がいいから、中身をこれに移し替えてお持ちなさい」
 つぶやく如くそう言ってもうひとつ手提げ袋を差し出し、食い入るようにミンソクを見つめた。
アメジストのような光彩にさらされ、その中に知性と剛毅を見て取ると、張っていた気が溶けるように彼の中で散らばった。
目の涙と喉の渇きがミンソクを再度訪れ、みっともないからやめろという脳の指示を無視して体は口をぱくつかせて涙を落としながら鞄の中身を―――財布や音楽機器などごくわずかな手回り品で、そのうちのスマートフォンを少しいじったがやはりまったく通信は出来ず、喉の奥の塩辛い液を飲み下した―――移し、リュックサックを折り畳んで鞄に突っ込むと、やっと言葉を出した。
「何か、飲むものをもらいませんか」
 情けなかった。だが目からはあとからあとから水分が溢れ、それを追うように手で頬を擦るしかなかった。
「そうしましょう」
 掠れた穏やかな思いやり深い声が降り、それだけでミンソクは礼を言いたかったが、嗚咽が漏れそうで唇を引き結んだ。背中に大きな温かい手が触れ、それに押されて休憩所に向かった。
そこは大きな盆のような、しかしよく見ると細かな細工の施されているらしいガラスの照明が天井に据えられた、温かな雰囲気の比較的広い部屋だった。ここも青の落とされた深い緑の壁紙が貼られ、かすかに金色の鳥の模様が巡るように配されていた。濃いブラウンのソファに、向かい合わせに彼らは座った。手には端に設置されたティーセット一式から淹れた茶を持っていた。
髭の紳士が準備し、受け取ったその表面を眺めながら、なんのお茶だろうかとミンソクは訝しんだが、香りはレモンのようなそれで、こびりついたような気がしていた血の匂いを若干遠ざけてくれた。おそらくハーブの一種だろうと思いつつ、熱いカップの中身を口にした。ポットもカップも、アールヌーボー調とかろうじて言えただろうが、それにしても曲線を描き過ぎている感があり、しかし茶そのものはきっとミンソクの元いた国にもあるものだろうと思うと、不思議な安心感が湧いた。茶の効能もあるかもしれなかったが、とにかくミンソクは少しだけ体の強張りが解け、熱いシャワーを浴びてもあまり治らなかった手の冷えが改善されてくるのを感じた。
 しばらく黙って茶を飲んでいたが、ミンソクは落ち着いてくると共にやはりどんどん気になり始め、顔を上げて斜に座った紳士に言った。
「あの」
 紫の目と、うん?という唸りのような声で応じた男性に、ミンソクは尋ねた。
「女性の手術室の近くに、僕も行っていいですか」
 照らしてくる灯りのせいだけでなく、紳士の瞳が一瞬鮮やかに輝いた。
「もちろんですよ」
「ありがとうございます」
「何言ってるんですか。でもその前に、検査を受けなければなりませんよ。体液が体に掛かりましたからね。先にそれを済ませましょう」
「はい、…ですが…」
「なんですか?」
「僕、多分今、その検査費用をお支払いできないと思うんです」
 不安を隠さずミンソクが告げると、紳士は腹の底から出すような低音で、だが安心させるような声音で言った。
「大丈夫ですよ。こういった検査は無償です。さあ、行きましょう」
 ふたり揃って立ち上がり、茶器を置いて部屋を出た。
深夜に差し掛かった院内は、急患が運ばれて来た際は騒がしくなるが、今は静かだった。
 看護師に声を掛け、用を告げるとすぐ採血がなされ、検査結果は明日だと言われ、その場を双方共に離れた。
 それから女性の手術室に連れ立って向かっていると、ミンソクはずっと感じていたことをまた感じずにはいられなかった。ついさっき血を採ってくれた女性も、すれ違う他の医師や看護師も、彼が目にする人々全員、程度の差こそあれ肌の色が黒味がかっていた。ミンソクのような色白が珍しいらしく、出会う人の多くから、あからさまな視線とまではいかないが軽い好奇心を含んだ一瞥を投げ掛けられた。襲われた女性や横にいる紳士と同じく、ミンソクが出身地をある程度特定できる容姿では誰もなかった。顔立ちや髪質や髪色がそれを拒否していた。あらゆる民族を混ぜ込んだような外見を目に入った者すべてがしていた。
背も性別に関わらず、ミンソクよりほとんどの人間が高かった。この世界で自分は完全に異物だという確信が彼の中で固まっていた。しかしそのことでの恐怖は実のところあまりなかった。それは彼が差別的な扱いを受けたりなどはまったくしていないからだった。多少異質である、という反応はされるが、ただそれだけで、おそらくかなり特異な存在であろうという自分が難なく受け入れられていることがミンソクには心底ありがたかった。
そんなふうに考えながら通路を渡って手術室の前まで行くと、その近くに置かれたソファに並んで座った。
「―――ここまで一緒に来てくれて、ありがとう」
 ぽつりと紳士は前を向いたまま言った。
「きみは―――きっと旅行者なんでしょう?」
 そうして目の中で瞳を下ろすようにしてミンソクを見た。
それを受けながらミンソクは奥にある手術室のドアを視界に入れ、答える内容を逡巡した。
「僕―――僕は―――」
 歯や舌や唇を用いて紡ぐ言葉が自国のそれでないことに、だんだんミンソクは慣れてきていた。どうやって話しているのか自分でもまったく分からない。だがやはり、何を言われているのか、どう言えばいいのか瞬時に解し得たし、更には書かれているものを読むこともできた。同時通訳と字幕の付いている映像を見ているときのような感覚があった。こうした事象をどう説明すれば作り話でないと信じてもらえるのだろうかと、ミンソクはほとほと困り果てた。
けれども目の前にいる紳士が非常に信頼に足る、優しい男性であるという実感は強く、そしてとにもかくにもこの状況を誰かに話してしまいたいという欲求もあり、ミンソクは順序立ててというわけにはいかなかったが、できるだけ率直に、自分のこと、起きたこと、それ以外の細かなことを目を瞬きつつつっかえつっかえ語り出した。そうしながら、相手が驚いたり惑ったり、ときに興味から強く目を光らせたりすることはあっても、呆れや怒りを見せることはないことを確認していた。
話し終える頃には疲れ切り、己の顔から血の気が失せていること、胃が空腹を訴えていることを痛切に感じた。
ここに来る前から仕事で疲労は蓄積しており、それがもっと顔や姿に出ているだろうとミンソクは思った。隈やげっそりした頬などをすぐ傍で相手に見つめられ、心許ない風情や自身の体型や顔の作りも含め、きっと無力で可哀相な子供のように自分のことを捉えられるだろうということが、悲しさや恥ずかしさを湧かせたが、それを大きな諦めがくるみ込み、ミンソクの矜持を静かに打ち負かした。



つづく



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20170926

始まりましたEXOTICA、5色の洞窟+黒い浜辺!(記事修正済み)
こんばんは。
始まってしまいましたね。
フェリシティ檸檬です。

EXOTICA参加者様のお話一覧(↓クリックすると記事に飛びます)

「夢の続き」EXOTICA:洞窟の外「LA SIESTA」
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・1」
「大帝男子」EXOTICA:緑の洞窟 「触手」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 1」
「緑黄色野菜」EXOTICA:青の洞窟 「cruel spiral arousal 《1》」

私は今朝わくわくどきどきしながら9時を待ったわけでありましたが、皆様は如何でしたでしょうか?
少しでもその気持ちが共有できていたらいいなあと思っておりますが、どうでしょう、気になります。

まずブログ村のタイムラインが圧巻でございましたね。
統一されたタイトルがずらりと並び、色が五色。新着画像欄にあの美しく魅惑的な友人の写真が何枚もアップされ、EXOTICAー!!!と叫びたくなったものでございました。ホエ!!ホエ!!といった感じでございましたね。←

EXOの二次小説のブログをされている方は、特に東方神起などと比べると大変少なく、そんな状況の中でこうして皆が一致して何かに取り組めるというのは稀有な経験でありまして、そんな大変だけれども楽しい、という部活動のような感覚をまた年を重ねてから得られたことを、私はほんとうに嬉しく思っております。
至らない私ではございますが、書き手の皆様、どうぞこの企画の仲間として、最後までお付き合いいただけたらと思います。
そして読者の皆様にも、そんな私の四苦八苦(でも幸せ)を、お楽しみいただけたらと切に願っております。

友人はずっと、この企画についていろいろと考え、悩み、行動しており、私は彼女の話を聞くたび、その責任感のありように、そんなふうにまで思わなくていいよと思ってまいりました。気持ちはよく分かるのでございますが。
きっと他の書き手様もそうなのではないかなと思うのですが、私は上に書きました通り、こうしたイベントそのものを楽しんでおりますし、新しくお近付きになれたりするきっかけになったりもいたしておりますし、まだ終わってはおりませんがこの企画大成功だなと勝手に思っている今でございます。
この企画を立ち上げてくれて、ほんとうにありがとう!!!
いつもいつも、感謝しております。

それでは皆様、明日以降もどうぞこの祭、お楽しみくださいませ。


そしてまだ私は直しが終わっていないのです
フェリシティ檸檬





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20170926

EXOTICA:黄の洞窟 「闇を駆ける罪 1」
企画2

企画概要(↓クリックすると記事に飛びます)
ブログ『夢の続き』EXO小説企画「EXOTICA」

参加者様のお話一覧(↓クリックすると記事に飛びます)
「夢の続き」EXOTICA:洞窟の外「LA SIESTA」
「虹を求めて」EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・1」
「大帝男子」EXOTICA:緑の洞窟 「触手」
「ソラノムコウ」EXOTICA:赤の洞窟 「They Never Know 1」
「緑黄色野菜」EXOTICA:青の洞窟 「cruel spiral arousal 《1》」



蜜柑のような色合いの灯りが体をそっと包んだ。
蛍光色に近い黄色を予想していたミンソクは柔らかなその色調に少々虚を突かれ、頭上や四方に目をさっと走らせた。するとそれどころではない驚きが更に彼を襲った。
橙に近い色味で岩肌の照らされたかまぼこ型の穴ではなく、目に映ったのは四隅のある、完璧な四角を成す奥に行き止まりらしきものの見える、ベージュ地に茶色で花模様の描かれた壁紙の貼られた、建物内の廊下と思しき空間だった。
間接照明が薔薇のつぼみを模した琥珀色のガラスの中で光っている。それによって通路は落日を受けたような淡い風情をたたえていた。
ミンソクは一瞬、ものすごく手を掛けてこうした装飾を洞窟内に業者が施したのかと思い、口を半開きにしながら足を止めぬまま、ぐるりとまた周囲を見渡した。背後までそれをすると、そこには先刻足を踏み入れたはずの入り口がなかった。縦に長いぼこぼことした半円が口を開けてはおらず、進行方向と同様に繊細でありながら豪奢な作りの、家屋の廊下にしか見えぬ光景がミンソクの双眸に、幻や何かではなく現実として迫った。
「え?」
 思わず声が漏れた。足が止まる。
前を向き、再び振り返る。
前方を見れば、もう少し進むと側面にドアのある、正面奥は絵の飾れた美しい壁の続く通路である。後方を見れば、少し戻ると横に折れているらしい、同様の通路である。
とりあえずミンソクは、道を引き返してみようと進行方向を変えかけた。もしかしたらあの道を曲がれば、そもそもの洞窟に、そして皆の元に戻れるかもしれない。そう、きっと知らぬうちに道を曲がっていたのかもしれない。やっぱりどこかの企業が、余興のためにこうした凝った演出をしているのかもしれないじゃないかと、ミンソクは半ば震えながら自身に言って聞かせた。
頭のどこかでは、完全に何かがおかしいと分かっていた。その恐怖が全身を貫き、わななく体をどうにか押さえて走り出そうと身構えた。
そのとき、女性の、悲鳴にしか聞こえない高い声が耳に入った。
既に恐ろしい予感に捉われていたミンソクは、びくりと激しく肩を揺らし、背後のドアにおずおずと顔を向けた。じっと耳をそばたてていると、再度ひゃあ、とも、きゃあ、ともつかぬ声が分厚そうな木材を貫くように響いた。
誠実で優しい性分のミンソクは、明らかに誰かが切迫した状況に陥っているらしいことに、見て見ぬ振りをできなかった。しかも届く声の中に悪寒の走る何かがあった。
咄嗟に武器になるようなものはなかろうかと辺りを見回したが、ない。しかたなく、意を決してミンソクはドアまで素早く近寄り、大きな声で「すみません!大丈夫ですか!」と言いながらドアを拳でどんどんと叩いた。
するとがたがたと大きな音が室内で轟くのがこの危険を前にして全身の神経が鋭敏になったミンソクに伝わった。彼は考えうる最悪のシナリオが頭に描かれた。先程聞こえた女性の声音は、そうしたことを想像するのに十分な悲劇性を帯びていた。
ミンソクは覚悟した。刹那が永遠になるかのようなそれだった。
ノブを捻って勢いよく扉を開くと、壁に据えられたいくつかの小さな照明が灯る中、浮かび上がるようにふたりの人間の姿が見えた。
 夜であった。
墨色の窓の向こうから激しく風が吹きつけ、揺らめくカーテンに包まれるようにして中背だが、痩身の男が独特の形状の帽子を被り、マントを肩から下げ、ミンソクを振り返った。陰になった顔はほぼ見えず、ただ双眼が表の街灯を受けてきらりと光った。
そして男の横、ベッドの上では、女性が服を裂かれ、体から血を流して倒れていた。音もなく顔を傾け、ミンソクと目を合わせた。
危惧したことが、それ以上の惨状となって眼前で繰り広げられており、危うく彼は発狂しかけた。こうした悪行が行われているという現実を知ってはいたが、今実際に見せつけられるとにわかには信じられないというのがミンソクという青年だった。がくがくと膝が揺れ、開いた口の奥、喉がひりつくように渇き、めまいによって上半身が傾いだ。
ミンソクがよろけたの同時に男は窓から身を乗り出した。
我に返ったミンソクは、逃がしてはなるまいということだけが頭に閃き、俊敏な体を活かして素早く駆け寄ると男のマントを掴みかけた。
だが絡め取るように男はマントを自身に引き寄せ、一足早く、窓の下に体を落とした。落下していく男の後頭部をミンソクは凝視した。見えたのは黒く短い髪、そして耳の裏。窓枠に手を付け見下ろすと、着地の際倒れはしたが怪我はなかったようですぐさま立ち上がると、一目散に走って逃げた。
追い掛けることも頭をよぎったが、それよりもとミンソクは振り返りながらベッドに近付き、背負っていたリュックサックを放った。
よりはっきり見ると、ドレスの残骸の中、女性はほぼ裸であった。ミンソクは彼女が部分的に服を着たままであると思い込んでいたため、少なからず驚いた。それは彼女の体に人工物が嵌め込まれていることによる錯覚であった。
金属のような、プラスチックのような、見たこともない質感を備えた精巧な機具により、彼女の片側の肩から胸、腕、手までが構成されていた。反対側の脇腹も同様だった。それは褐色で、女性の濃い肌色と合わせたような色を示していた。血は残った肉の部分を奪い取るかのように傷付けられた、豊かな柔らかい肌から噴き出していた。脚の間、陰毛の中からも血は滴った。
傷が見えぬほど真っ赤に濡れた体と、こちらを見つめる彼女の顔をミンソクは目で行ったり来たりした。女性はどこの国の出身か皆目見当の付かない、小麦色の肌と黒く大きな瞳と焦げ茶の毛をした髪の長い、若く美しい人だった。機械仕掛けの体もその美貌もまったく未知のものであり、ミンソクは状況も相まって恐慌をきたしかけた。
「電話」
 混乱しながらミンソクは言った。
「電話はどこですか」
 口にした瞬間、その言葉は普段使っている言語ではないことがミンソクに分かった。聞いたこともない、まったく知らない国の言葉を自動的に話していた。卒倒寸前になりながらもベッド脇に目をやってミンソクは電話を探した。だがそれらしきものはない。揺れるまなざしを女性に注ぐと、がくがくしながら彼女は指をナイトテーブルに向けた。灯されていないランプの下に、懐中時計のような、鎖の付いた丸い黄金色の何かがあった。指差す彼女の指示通り、それを取って蓋を開けてみると、下部にボタンらしき出っ張りがあり、その上にはするするとした材質の透明な薄い板が貼ってあった。
「押せばいいんですね?」
 またもや言おうとした韓国語が耳慣れない言葉に変化して口から出て行くのを聞きながら、ミンソクが問うと、女性はかすかに頷いた。急いで力強く押すと、ツツー、ツツー、と音が鳴り、ぱっと上部に人の顔が映った。
「どうした!?無事か!?」
 顔中髭といった態の五〇がらみの男性がこちらに向かって叫んでいた。自分の口から飛び出るのと同じ、知らぬ言語で喋られているのに一言一句理解できることに尻込みしながら、それでも一刻の猶予もないミンソクは叫び返した。
「無事ではありません!!すごい怪我をされています、男に襲われたんです、早く救急車を呼んでください!」
 彼女以上に黒い肌をした男性であったが、それでも彼の血の気が引いたのをミンソクは見て取った。思い立ち、彼女にその通信機をかざしてその姿を映してから、再び画面と向かい合った。
「すぐに医者に見せる。待っててくれ」
 男性がそう言うと通信は途絶えた。
画面から姿が消えると女性は機械ではない方の手でミンソクの手を掴んだ。涙の滲んだ、光を受けた海の面のような目をミンソクに捧げ、唇を動かした。
「ありがとう」
 思いがけない言葉にミンソクは衝撃を受けた。
 己も急激に涙が目の上に膨らみ、ミンソクはぼたぼたとそれを落とした。もう一方の手でも彼女の手を包み、首を横に激しく振った。
「…あなたはどなたなのかしら」
 言いながら瞳を隠しかけ、涙の筋がこめかみに向けて作られた。そのさまを見たミンソクは声を張り上げた。
「駄目です、目を開けてください」
 まぶたが小刻みに震えると、泉の湧くように女性の目から緩やかに涙が流れ、
「…とても、痛くて、熱いの…」
と零すように彼女は言った。
「助けが来ます、大丈夫です、お願いです」
 子供のように喘いでミンソクは懇願した。
「……とっても、色が白いのね……」
 肉感的だが何故かひそやかさもある桜色の唇から、そんな言葉が吐かれ、涙と鼻水で顔を光らせたミンソクは瞬いた。
「…手が、冷たくて気持ちいい…」
 唇の両端を儚げに上げる彼女にそう言われ、ミンソクはようやくそのとき気付いた。女性の手を握った両手が、文字通り氷のようだった。
とにかくこれ以上彼女の体を冷やしてはいけないと手を離し、訝しげにふたつの掌を見下ろしたとき、足音が聞こえた。
地鳴りのような音を立てて画面を通して会話した髭の男性が部屋に現れ、その後ろから医療関係者と思しき人々が担架を押して続いた。
 女性が弱弱しい声で、
「この人じゃ…ないの…。あいつよ……」
と告げると、髭面の男性はミンソクと彼女を交互に見ながら苦渋から眉を傾斜させてうんうんと頷いた。
 その光景を前に呆然と立ち尽くしながら、建物の内装も、逃げた犯人も、横たわる女性も、男性を呼んだ道具も、登場した当の男性も、今女性を担ぎ出そうとしている救急隊員たちも、どれもこれも自分の生きる時代、知る事物とまるで違うことに張り手を食らわされたようにミンソクはなった。その差異に困惑を深めながらも、ただ女性の身を案じるあまり彼女の容態にだけ意識を集中しており、奇異な道具を人々が用いているのに気付きはするがそれは放って、起きてください、や、しっかりしてください、と声をしゃにむに掛け続けるのみであった。その横で、大男であることが分かった通信機の向こうにいた髭の男性も、女性の生身の方の手を取って、顔を寄せて小さくなり、必死に彼女に語り掛けていた。
つい先刻、ミンソクが向かおうとしていた廊下の曲がり角を皆で行くと、玄関ホールに出た。頭の片隅で、静かにミンソクは絶望した。しかしそれを更に奥に押しやって、ぞろぞろと救急車と思しき、しかしまるで見たことのない設計の大きな車に乗り込んだ。深まった夜の中、おぼろな灯りの下で、街はミンソクにここは異国、それも世界中のどの街とも微妙に印象の違う家々の立ち並ぶ、完全に見知らぬ国であることを教えた。車内では白っぽい照明が多種多様な医療器具を輝かせていたが、ミンソクの多少の知識の中のそれらとはまただいぶ様相を異にしていた。保身の意識からすべてに対し注意を怠らないながらも、自分に出来ることなど何もないと認識もしていたので、てきぱきと処置をする隊員たちにすがるように女性を任せた。
ミンソクはとにかく女性が心配であったし、あそこにひとり取り残されてもどうしたらよいか途方に暮れるだろうことが予想されたこともあり、鞄を背負うと流れに混じって車に乗っていた。これからどうしたものだろうかと案じる気持ちは、まだ大きく膨らみこそしなかったが拭い去れるはずもない。これは刑事事件であり、ミンソクは重要な目撃者だ。しかしここは明らかにミンソクの生きていた場所とは違う。何が起きたのかさっぱり理解できず、ただでさえ八方塞がりだというのに、万一女性が死んでしまったら―――そのことを考えるだけでミンソクは意識が遠のく感じがした―――、殺人事件に関わりを持つこととなる。あらゆる理由からどうかそうならずに済んで欲しいと目が眩みそうなほどミンソクは願った。と同時に、とにかくあの逃げた男を捕まえるために尽力したいとも欲した。果たして己にどこまでできるのか不安でしかたがなかったが、彼女の無事と、男の逮捕をなんとかして叶えたいというのが彼の偽らざる本心であった。
車が動き出したさなか、ふと、自分は夢を見ているのかもしれないと思い至った。こんなふうな、所謂悪夢をミンソクは見たことがなかった。それに彼女の体温や、血の感触の生々しさは彼の実感として現実以外の何物でもなかった。これが夢?そんな馬鹿なことがあるか。自分の手が恐ろしく冷たいことも、意味不明な現実味を持ってミンソクを襲った。夢だと思いたいのに、どうしてもそう信じさせてはくれぬ生の手触りがそこには溢れるようにあった。
髭の男性はミンソクに目もくれず、一心に女性に話し掛け続けていた。止血に努める隊員たちがみるみるうちに赤く染まる。椅子に腰掛けたミンソクは、役に立ちたいと思いながらも、冷えた手で彼女に触れることをためらい、ただ青ざめながら時折しっかり、しっかり、と声掛けをするだけであった。


つづく


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