海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160718

受容について 11
しばらくうとうとして時間が過ぎた。胸の違和感を拭えないまま、まだ出かけるまで間はあるが、諦めて起きてしまおうとシウミンはベッドを出た。コーヒーを淹れよう。仕事のこととセフンのことでシウミンは押し潰されそうであった。随分と顔色が悪いだろうと、鏡を見なくとも自分で察しがつく。無理矢理何か食べ、コーヒーで流し込もう。確かマネージャーがくれたチョコロールパンが残っているはずだ。考えながら、今、チョコレートの味を感じたくはないな、とシウミンはまた気分が暗くなった。
キッチンへ向かったところ、並んだ部屋のひとつから出て来たチェンと遭遇した。シウミンに気付き、少しだけ慌てたようすを見せ、「お疲れ」と言いながらそっと、しかし素早くドアを閉めた。
「お疲れ。…ギョンス、帰ってきたのか?」
チェンが出て来たのはd.oたちの部屋だった。シウミンは閉まったドアを一瞥し、チェンに向き直った。
「うん、寝てるよ。ちょっと、話しただけ」
彼特有の笑顔を作り、チェンは「すげー疲れてるよギョンス」と言いながらキッチンに入った。シウミンもそれに続く。
「だろうなあ。ギョンスはあんまり愚痴とか言わないけど」
「それは兄さんも同じじゃん」
チェンは笑いながら冷蔵庫を開ける。シウミンは湯を沸かすため薬缶を手に取った。
冷蔵庫の中を覗いて、チェンが言う。
「あ、兄さん。昨日の夜の中華のお土産があるんだよ。それ食べる?」
薬缶に勢いよく水を出しながら、シウミンは自然に笑みが出る。
「まじで?やった。何?」
チェンが冷蔵庫から取り出しながら答える。
「水餃子だよ。ほら。ギョンスのとふたり分」
スープの中に大量に浮いたつやつや光る水餃子を差し出し、チェンは嬉しそうに微笑んだ。
「スホ兄さんが気が付いてね、珍しく」
あはは、とチェンは笑う。シウミンもつられて笑う「それはありがたかったなあ」。
「じゃあこれ全部鍋にあけてあっためるね」
かなり大きな鍋を出し、チェンはざあっと中身を移した。薬缶の隣のコンロに鍋を置く。
「サンキュ。お前、コーヒー飲む?俺とりあえず飲んで目ー覚ますわ」
チチチ、とつまみをひねり、
「あ、飲むー。ありがと」
と答える。
「冷蔵庫の中にパンあるから。食っていいよ」
「あ、ほんと?やったー」
湯が沸くのを待つ間、ふたりはソファに腰掛けた。シウミンはテレビを付けザッピングするが、ひととおり見てすぐ消し、チェンはスマートフォンをいじっていた。
「今日、仕事なかったっけ?」
シウミンが尋ねる。
「打ち合わせがあるよ。あと練習も。でも午前中にひとつスケジュール終わって、結構時間が空いたからいったん帰ったんだよ」
「おーそっか」
「兄さんまじでお疲れ。顔色悪いよ、なんか栄養剤とか飲んだ方がいいよ」
「んーそうだな。そうする」
シウミンは頭の後ろで両手を組む。
「………あー。ギョンスはすごいよなあ」
スマートフォンから目を上げ、チェンがシウミンを見る。
「え?…何が?」
「演技も歌もダンスもできてさー。ほんとすごい」
「あ、ああ。うん。そうだね」
「あいつほんと忙しいと思うけど、プライベートとか確保できてんのかな?」
頭に手を置いたまま、シウミンがチェンを見る。チェンはスマートフォンに再び目を落としていた。
「…どうだろー。あんま時間ないんじゃないかなあ」
微笑んでチェンは言う。
「そうだよなあ。浮いた話なんか聞かないけど、あいつ自分で言いそうもないしなあ」
「…そうだねー」
チェンの指は忙しげに、スマートフォンの画面をスライドし続ける。
「お前は?どうなの?」
「俺?」
チェンが一瞬シウミンと目を合わせる。が、すぐに視線を戻し、
「俺…も、なんもないかなあ。出会いもないしなあ」
と曖昧なことをぶつぶつ呟く。
「さみしいこと言うなあ」
シウミンは苦笑して彼特有の笑顔を作る。左右非対称に開く口元。
「だってそうなんだもん」
えーん、と泣き真似を笑いながらするチェン。
「…俺もなんもないしなー」
シウミンがソファの上で脚を折り曲げ、自分の立てた太ももあたりに目線を落としてぼんやりと言う。
「そうなの?」
チェンがシウミンを見る。
「ねーよ。…ないに決まってんだろー」
ソファの背もたれに仰け反り、天を見上げて口を開け、あうーと変な声を上げるシウミンをチェンは見つめる。
「…いやー、俺、なんかあんのかと思ってたよ」
瞬きをし、口を閉じてシウミンは黙った。目は天井を見上げたまま。
「最近……いつもとようす違ったから。撮影始まるせいかなとも思ったけど…」
「……なあ」
背もたれの上に頭を乗せた状態で、シウミンは言った。
「恋愛感情って、お前どういうときに自覚する?」
「え?」
「…誰かを好きって、どういうとき自分で分かる?」
頬の少しこけた、白い顔の更に白くなった童顔の、落ち着いた長兄にチェンは、逡巡しながら、ゆっくり口を開いた。
「………俺は、…自分にないものを持っていて、それがいいな、とか、素敵だな、とか、なんか、求める気持ちを相手に抱いたら、……それは精神的にも、肉体的にも、だけど……欲する感情が湧いたら……、好きだ、って思う…かな……」
シウミンは一点を見つめて言葉を続けるチェンの方に首を向ける。
「……いい声だな、とか……こっちを見る目がなんか、どきっとするものがあるな、とか……そういう……。あるじゃん?そういうの……」
チェンがシウミンと目が合い、照れくさそうにはにかむ。
「……そうだなあ……」
薬缶のピ、ピ、ピィーという甲高い鳴き声が響く。
眠りから覚めたようにシウミンは目を見開き、ばっと立ち上がった。
「やっぱ兄さん、なんかあったんでしょ」
キッチンに向かうシウミンの背中へ、からかうようにチェンが声を掛ける。
「ないない、ないよ!」
シウミンは振り返らずに、手だけぶんぶん振り、薬缶の呼ぶ声を消しに行く。



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20160718

受容について 12
「じゃあねー今日はありがとう」
「こちらこそーまた連絡するから!」
「仕事頑張ってねー!」
「あははーありがとー!」
「ばいばーい」
手を振り合い、タクシーのドアが閉まる。女性たちの乗った車が走り去り、セフンとスホは次のタクシーに乗り込んだ。行き先を告げると、電飾が瞬く繁華街をゆっくり車体が滑り出し、ふたりはシートに体をもたせかけた。
「…楽しかったか?」
スホは顔をセフンに向けた。
口にマスクをし、キャップを被っているため、ほぼ目元しかスホそのものは見えなかった。それはセフンも似たようなもので、帽子、眼鏡、ネックウォーマーで固められた顔周りは、表情がひどく読みにくかった。
「うん。楽しかったよ」
こちらを見るスホの顔を見返し、セフンは答えた。
「だろ?可愛かっただろ?」
スホはにこにことセフンに笑いかける。
「うん。思ってたよりずっと可愛くてびびった」
「なんだよそれー」
手で軽くセフンを小突く。顔には更に笑顔が広がっている。
「俺可愛いって言っただろーがよ」
「兄さんを信用できなくてさ」
「なんだとー」
再び小突く。セフンも思わず笑いをこぼす。
「また会うだろ?」
視線を前に戻し、セフンは頷く。
「うん。あっちがOKなら」
「OKに決まってんだろ。何弱気になってんだよ」
「…普通の女の人とこういうふうに会うのって久しぶりだからさー。自信ないよ、色々」
「まあなー。だからこそこうやって連れ出したわけだからなあ。あいつお前のこと気に入ってたよ。大丈夫だよ」
「そうかなあ」
「うん。お前可愛かったしな、もじもじしちゃって。お前だってああいう感じの子、好きだろ?」
「可愛いって言うなよー。…うん、なんで兄さんと友達なんだろーって思ったよ」
「こいつ」
セフンの腹に両手でくすぐりを加える。「ごめん、ごめん、嘘」セフンは身を縮めて笑いながら謝る。
はーはー言って体を離し、スホは満足そうに言う。
「…これなら、すぐ付き合えそうだなあ。よかったなあセフン」
ぽんぽん、と末弟の肩を叩く。
「……うん」
ストレートの長い亜麻色の髪。白い肌。中心だけピンクに染められた小さな唇。さりげない二重。目も鼻も程よい大きさで、笑うと目尻に可愛いシワが寄った。
ミニスカートから伸びた長い脚はタイツにくるまれていたが充分かたちの良さを主張していた。セフンたちに合わせてあまり派手な格好をわざと避けたのだろう、セフンに紹介された娘もスホに紹介された娘も、色味のない大人っぽくまとめられた服装に身を包んでいた。髪が揺れると香水ではない香りがかすかに香った。セフンはその感じを懐かしく思った。学校に通っていた頃。ふいの芳香。女性の、男性の声とは違うそのトーン。親しみを特に込めたときの声音。セフンは少しめまいがする思いだった。自分がひどく幼くなったように感じた。仕事のときは何万人をも前にし、どう女性へアピールするかに関してはプロ、その第一線にいるにも関わらず、目の前にいる大人の女性ひとりをどう相手にしていいか、本当に手に余るとはこのことだと、情けなかった。
それに。
セフンはもちろんこの人とセックスしたら、と考えた。
着ている服をすべて剥ぎ取り、胸のかたち、乳首の色、陰毛の濃さ、ヴァギナの味まで想像した。二の腕をつかめば折れてしまいそうな柔らかさだろう。細い腰は、両手ですべて回ってしまうかもしれない。脂肪のみが受け止める尻。長い髪がセフンの体にまとわりつく。
その目に見える実際の可愛さと、香りと声、そして頭の中の性行為で、セフンは半分勃起していた。
何を話しているかは分かっているようでほとんど分かっていなかった。
イタリアンの個室で膝を寄せながら、味も感じられず、相手がどんな人間なのかも把握しきれず、セフンはただただ興奮と焦燥と後悔を一緒くたに感じていた。俺ってただの童貞みたいだな、と自嘲気味、しかし半ば本気で思った。ベッキョン兄さんやチャニョル兄さんならこういうときどうするんだろう。近くに座ってはいるがスホは当てにできなかった。楽しそうにはしていたが。
ミンソク兄さん。
セフンは固く腕組みをしながら、シウミンを思った。
何をしても許し、どんなことをしても平気なシウミン。誠実な精神と肉体を持ち、セフンを裏切ることなどない。今のこの昂りをすべて思うままシウミンにぶつけたいと願った。筋肉の張った全身を好きなだけ強く掴み、腰に腰を力任せに当てたかった。汗の飛び散る短い髪の中に顔を埋めたかった。
我に返って現実の女性を見る。可愛い。どうやら好きな映画の話をしている。セフンは曖昧な表情を浮かべ、どう会話を続けるか、脳の中の引き出しを片っ端から開ける夢想をした。
スホの声が遠くから聞こえてくる。
「俺もすごいよかったなー。あいつ俺の好みどんぴしゃの子連れて来てくれるもんだから…」
街灯しかない道を通り過ぎながら、もうすぐ皆のいる家へ帰る、そう考えて窓の外を見るセフンの心は、これまで感じたことのないもので埋め尽くされていた。




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20160718

受容について 13
それぞれが多忙な日が続いた。
特にシウミンは寝る間もないほどの忙しさで、セフンが忍んでいくことなど物理的に本当に不可能だった。
セフンはデート相手と頻繁に連絡を取った。何かに急き立てられるように。
会う時間はあまり作ることができなかったが、スマートフォンを通してさまざまなことを話した。
好みや趣味などのことを話し合いながら、もともと女性についてファッションやメイクなども含め興味は強い方であったセフンは、交流をひどく楽しく感じた。長年男所帯で暮らしてきたため、新鮮さが彼に強く働きかけた。彼女と気が合うのか、突き詰めると自分でもよく分からなかった。“女の子との会話”そのものを味わっているような感覚であった。
なんとか会えたときは、スムーズでリラックスした会話をすぐ行うというのは難しかったが、時間が経つにつれ舌も滑らかになった。彼女はよく笑った。それを見るとほっとした。積極的な彼女のおかげでキスも、その先も、想像以上に早く関係は進んだ。白い肢体に自らの長い指を這わせ、乳房を掴み、セフンは嘆息した。女とは。硬くなった乳首を口に含みながら、シウミンの言葉がセフンの頭をよぎった。女の子と会うようになれば変わる。セフンは彼女を抱くと、文字通り溺れるような錯覚に襲われた。海の中にずぶずぶと沈み、必死に海面に上がっては息をつき、また波にさらわれる。女と寝るのは初めてではなかったし、ずいぶんと気楽で美味しい思いもしてきた。だが、こんなにも有名になり、忙しくなり、多くの点で同い年の若者とは違う生活を送る人生の只中にいる今、一対一で異性と向き合うということの意味は、過去のそれとは一線を画していた。触れること、入れること、何もかもが重要に感じられた。正式に付き合っていると言える関係であり、セフンは彼女に夢中であったが、心からただ好きなのかはやはりよく認識できなかった。女とセックスすること、女を満足させられることに必死に取り組んでいると言った方が正しかった。一人前の男になったような気がした。シウミンから投げかけられた屈辱的なセリフを思い出すたび、ざまあみろという気持ちが胸に広がった。俺だってこれくらいできる。関係が終わって結局苦しむのは兄さんの方だ、と女の脚を持ち上げ腰を振りながら心中で悪態をつき、口には意地の悪い笑みを浮かべた。

セフンが彼女と順調だということをシウミンも知っていた。
毎日毎日ハードスケジュールの中帰宅すると、それとなく話はそこここから耳に入ってきた。送迎をしてくれるマネージャーからも。シウミンはやつれた顔に笑みを作り、うんうん言いながら内容に耳を傾けた。からかいを挟んだり、喜んだりしながら、シウミンはセフンが女と寝ているところを想像した。その女性がどんな体型で、セフンがどんなセックスをするのか。自分を犯していたときのようにまさかしてはいまいか。シウミンは考えると胸の奥がむず痒くなる感じがした。思わず指で心臓のあたりをひっかいてしまう。セフンが自分の中に入ってくるときの圧迫感。中で擦られて突き上げるように自分の性器が反応する感覚。その記憶がシウミンの体を襲った。朝や夜に疲れて勃起したペニスを収めるため、目を閉じ、その捕獲されたときの心地を脳裏に浮かべることもあった。セフンとの関係が実際あった頃、そんなことはしなかった。シャワーに打たれながら、ベッドに横になりながら、シウミンは恥辱にまみれたように思った。望んだことなど一度もなかったし、今も爪の先ほども望んでいないのに、結果セフンを思って自慰を行うなど、死にたいような心持ちであった。自分こそ出会いが必要なのだ、シウミンは苦笑した。シウミンは簡単に恋愛関係になどなれるわけがなかった。彼は充分に自覚があった。




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20160718

受容について 14
2時を回っていた。玄関とダイニングルーム以外の灯りは点いていないようだった。
シウミンは足音を忍ばせてダイニングルームの扉を開けた。
セフンがいた。
思わずシウミンは息を止めた。
ソファに仰向けに横たわり、穏やかな寝息を立てて眠っているのがすぐ分かる。
大きなため息をつき、シウミンはそっと後ろ手にドアを閉めた。
自分の部屋へ向かい、なるべく音を立てずに着ているものを脱ぎ、荷物を片付け、再びダイニングルームへ行く。
微動だにせずセフンは眠り続けていた。
一瞬足を止めるが、気を取り直してキッチンに入る。冷蔵庫から牛乳を取り出し、カップに注ぐ。半分ほど飲み、ソファに足を向けた。
細長い体を投げ出したセフンが、片脚を立ててかすかに口を開けて熟睡している。長い前髪が目に少しだけかかっている。しっかりとした眉の力は抜けている。
ひとりがけのソファに腰掛け、シウミンはセフンを眺めた。
大きな両手は腹の上に置かれ、手の中にはスマートフォンがあった。守るように添えられた指を見て、シウミンは二の腕のあたりがぞわりとする。その長い指はかつてスマートフォンの液晶の上を滑ることでなく、シウミンの中心あたりをまさぐることを習慣としていた。穴に指を入れ、性器を擦り上げていた。その乱暴さに何度悲鳴をあげるのをこらえたか分からない。へたくそ、と叫びたいこともあった。それを押しとどめたのはただ、シウミンの優しさだった。彼女に言われていないといいが、とシウミンは思い、ふ、と笑みを漏らした。
セフンの口の端からよだれが垂れてきた。
考える前にシウミンは指を伸ばしてその流れを止めた。人差し指で繊細にすくい上げ、離した。瞬間、セフンの瞼が開いた。
目を見開き、シウミンの体も固まった。が、それはほんの一秒程度のことで、目が合ったまま、シウミンは微笑んだ。
「風邪ひくぞ」
手を引こうとしたそのとき、セフンがそれを掴んだ。
「ミンソク兄さん?」
セフンは半目で、シウミンに問いかける。シウミンは久しぶりにセフンの呼ぶ声を聞いた気がした。
「うん。……お前こんなとこで、寝すぎ」
手を掴まれたまま、シウミンはかすれた声で言った。
「あ…うん。…今何時?」
逆の手で目を擦り、セフンが言う。手を繋がれて、シウミンは答える「…2時半になるよ」。
「まじで?あー……そっか」
んー、と言いながらセフンは目を閉じる。
「寝るなって」
笑いを含んでシウミンは繋がった手を揺らす。
「寝てない」
「寝てる」
「寝てないってば」
「寝てるんだよ」
ぱちっと目を開け、セフンは起き上がった。眉間を寄せ、シウミンに顔を向ける。
「なんだよ、俺のことなんかほっとけよ」
驚くほど強い口調でセフンは言った。
「自分がそうしたいって言ったんじゃないかよ」
シウミンは黙ってしまった。手はほどかれていた。指先のよだれが渇いて冷たさだけが残る。
向こう側を向いてソファに座った格好のセフンは、シウミンに斜め横の後ろ姿しか見せていなかった。
シウミンはここのところの疲れでずっと青い顔のままだった。目の下からはクマが取れない。化粧でごまかし続けている。振り払われた手。こちらを向かないとがった顔。慣れない仕事。セフンの言葉。大きな充血した瞳の上に、涙が溢れてきた。シウミンは慌てた。立ち上がり、カップを持ってシンクに向かった。水を流しながら急いで目を拭った。カップを洗う。後ろを通り過ぎる足音が聞こえる。ドアが閉まり、この部屋にはシウミンだけになった。
ゆっくりとダイニングルームを覗くと、ソファの真ん中あたりにスマートフォンが乗っていた。
セフンの両手で包まれていたそれは、今、投げ出されるようにそこにあるだけだった。



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20160718

受容について 15
少し躊躇ったが、アラームをかけていると悪いと思い、シウミンはセフンのスマートフォンを持ち、セフンの部屋へ向かった。
ドアを軽く指で叩く。
小さな声で返事が聞こえた。
来る前に部屋へ足を進めながら、今日セフンは夜部屋にひとりであることを思い出していた。ゆっくり戸を開けると、セフンだけが枕元の灯りのみ点け、ベッドに腰掛けているのが見えた。
「…セフン」
「何」
セフンはシウミンを睨むように見た。心臓がきりきりする感じに苛まれながら、シウミンは言葉を続けた。
「これ、忘れてる」
ドアの間からスマートフォンを差し出す。
シウミンの手に視線を送り、セフンは自分のそれを座ったままシウミンに掌を上にして向けた。
そろそろと、シウミンは部屋の中に入った。お互い視線は合わせなかった。シウミンはセフンの手前に立ち、手の上に忘れ物を置く。
「ありがと」
ごくかすかな声でセフンが呟いた。
「ううん。…おやすみ」
シウミンが踵を返すと、その背に声が掛けられた。
「何も、聞かないんだね」
足を止め、振り返ると、セフンが再びシウミンを見据えていた。先ほどの胸の痛みがぶり返し、無意識に片手を左胸に置き、かり、と掻いた。
「俺が彼女とどうしてるかとか、全然気になんないんだ」
わずかに唇が震えるのを知られたくなかった。シウミンは唇を舐め、視線をセフンと絡めた。
「…みんなから聞いてるよ。…うまくいってよかったな」
はっきり発音できているだろうか。くそ。これじゃあ仕事のときと一緒だ。俺は自分を装うということができない。
「聞いてるって、何を?」
あまり大きくない目を見開いて、セフンはシウミンを凝視した。シウミンは身がすくんだ。以前、最初にセフンに襲われたときと同じだった。セフンのまっすぐさ、単純さ、貪欲さの前に、シウミンはなす術を失った。自分が求めているが得られないものが目の前にかたちを成して存在していた。
「仲良くしてるって……しょっちゅう、スマートフォンいじってるって…」
「それだけ?」
「…ああ…」
「それしか知らなくて、兄さんは平気なんだ?」
ベッドから腰を上げ、セフンはシウミンを見下ろした。その動きをシウミンはすべて目で追った。
「どんなことしてるのか、知りたくないの?」
一歩、シウミンに近付く。
「な…」
「彼女とはどんなふうにやってんのか、考えないの?」
青白いシウミンの顔に、赤味が差す。
また一歩、近付く。
「そん…」
「考えるでしょ?」
セフンの小さな唇が嘲笑のかたちを作る。
もう今、シウミンは傍目に分かるほど小刻みに震えていた。顔は赤く染まり、目は充血の度合いを増している。
「教えてあげようか?」
セフンはシウミンの顔のすぐ上に顔を持ってきた。目には悪戯好きの子供のような微笑を浮かべて。
頭の中が渦を巻くようだった。大部分が羞恥と怒りであった。しかしその周りと中心に違うものがあることにシウミンは気付いていた。最近ずっと、顔に血が昇ることなどなかった。今、脈を打つのさえ感じるこめかみが、シウミンに何かを訴える。
耳に直接、セフンが囁く。
「知りたいんでしょ?」
目と目が、ぶつかりそうなほどの位置にある。
さっき飲んだ牛乳を戻しそうな気がした。
ぱ、とセフンは上半身を起こした。
「なーんて、ねー」
おどけてセフンは言う。
「うっそー。からかっただけだよ」
笑いさえ漏らす。シウミンは呆けた顔で相手の顔を見上げている。真っ赤な顔をして、息を荒くして。
「怒んないでよ。もー、寝よ」
シウミンに背を向け、ベッドの方に向かいながら、セフンは声を掛ける。
「おやすみー」
その手を、掴まれる。
振り返ると、シウミンが、赤い顔をした震えるシウミンが、セフンの目をそらすことなく、上目遣いで見つめていた。
「…何」
初めてのことに、セフンはうろたえた。重ねられた手はしっとりと湿っている。
「なんだよ」
少し大きな声で、自分の狼狽をごまかすようにセフンはまた問い掛けた。
シウミンは取った手を引いた。
顎を上げ、もう片方の手でセフンの後ろ頭を押さえた。
そうして、シウミンはセフンにくちづけた。初めて、自分から。
セフンはこの上ないほど目を大きく開き、唇の上の感触を受け止めた。
すぐに顔を離し、シウミンがセフンの揺れ動く瞳を見据えた。熱に浮かされたようなシウミンの大きな目は、セフンに向かって見開かれている。唇が開いた。
「…教えてみろよ」
震える声は、喉の奥に消えていくようだった。
しかし、セフンは聞こえた。
その両手で、シウミンはセフンの頬を挟んだ。今度は喉の奥まで届くようなキスを、セフンに与えた。
セフンは顔にシウミンの熱を感じ、舌に覚えのある味と感触を得た。
そして、ふたりはベッドに倒れた。



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20160718

受容について 16
「カットー」
監督の声が響き、カチンコの音とスタッフの掛け声が飛び交う。
シウミン付きのスタッフが彼に近寄り、ブランケットを肩に掛け、待機場所へと誘った。
椅子に腰掛け、配られたペットボトルのお茶に口を付ける。
共演者の年上の女優が、シウミンの隣の椅子にやって来た。濃い化粧に彩られた不自然な若さの顔をシウミンに向け、口元だけで微笑んだ。彼のことはたいていの年上の人間が気に入った。正確に言えば同い年でも年下でも、彼に反感を持つ人間は少なかった。だが特に大人たちは、年の功もあってシウミンの人柄をすぐに見抜き、そこに好感を抱いた。見た目の可愛らしさや親しみやすさはもちろんその性格が現れてもいるのだ。
先輩女優はシワを増やさないため、またさまざまなケアの影響のため、撮影以外であまり表情を作らなかったが、表に現れる以上にシウミンのことを気にかけていた。
「今日、いつもと違うみたいね?」
シウミン自身は目の前の大先輩にどう思われているのかはっきりとは自信が持てなかった。ただ優しくしてくれているのは感じていた。もちろんそれで充分であったし、一緒にいると粗相がないかとても緊張した。今も例外ではなかった。
「そ…そうですか?」
非対称な口元の笑顔を作って、どういう意味だろうと頭を巡らせる。
「うん。…少し、力が抜けてるみたい」
特別に準備された温かい中国茶をひとくち含み、シウミンを見てほんの少し微笑んだ。口の端が気持ち、上がる程度に。
「え…あ、そ…う、嬉しいです。い、いいこと…ですよね…?」
どきまぎしながら、シウミンは上目遣いで相手を見返した。
「もちろん。無駄な力は要らないもの」
「あ…ありがとうございます。ほんとに……すみません、力不足で……」
喜びながらも、自分の至らなさを思うと穴があったら入りたい気持ちになり、シウミンは俯いた。
「頑張ってるのは、よく分かってる。…今みたいな気持ちをあまり持ちすぎずに、伸び伸びとした方が、自分の目指すところに近付けるかもしれない」
まっすぐにシウミンを見つめる女優の目を見、彼女の気遣いを痛いほど感じて、シウミンはびっくりした。今までいっぱいいっぱいで、こんなふうに思ってくれている人が周りにいるとは考えもしなかった。
「何か、あった?」
再び湯気の立つお茶を口に運びながら、問い掛ける。
伏せられた黒く長い完璧な睫毛を初めて美しいと感じながら、シウミンは口を開いた。
「……何も……」
「そう?」
セフン。
シウミンは昨夜、セックスしながら初めてセフンの名を何度も呼んだ。
今まで自分から最中に話しかけること自体ほとんどなかった。
しかし、昨夜は。
唇を奪ったあと、セフンが自分の体から服を破るようにして脱がせるときも、シウミンはセフンの服をその体から剥ぎ取った。待てなかった。立ち上がった性器が現れ、相手のそれをシウミンは咥えた。セフンの口から漏れる甘い声を聞いて自分の性器をしごきながら、口の中の先走りを初めて吐き気を覚えず味わった。シウミンの性急さとは逆に、セフンは落ち着いていた。興奮はしていたが、今までにないような優しい触れ方でシウミンを扱った。シウミンがじれったく感じるほど。あざがつきそうなくらい強く握ってもいい、シウミンは思った。指を何本も入れられながらペニスを舐められ、シウミンは一瞬声をあげた。これまでどんなことをされても声を漏らさないよう努めたシウミンが、快楽の悲鳴を口から出した。セフンは夢を見ているような顔で、シウミンの顔をまじまじと見た。シウミンは潤んだ瞳で見返し、セフン、と言った。そしてまた自分からキスをした。噛み付くように。撮影に差し支えてしまうかもしれない、唇が腫れたら。いつものシウミンならそう考えてしまうほど長く激しいキスをした。息が止まってしまいそうだった。あらゆる体位で突かれながら、唇も繋がっていた。ふさがっていないときはセフンを呼んだ。興奮の度合いを増すごとにセフンは動きに余裕が生まれた。体を染めたシウミンを全身で愛撫するように行為に及んだ。シウミンが果てるのを確認して満足そうに自分も果てた。変わったセフンを見て、シウミンは困惑した。とても複雑だった。ことが終わったあと、シウミンは自分がいったいどうなったのか、セフンがいったいどうなったのか、これからどうすればいいのか、本当に分からず何も言えなかった。セフンも何も言わなかった。自分の部屋に戻ってベッドに入ると、信じられないほどぐっすり眠れた。いつも見る悪夢も見なかった。目を覚ますと皆は仕事に出掛けていた。シウミンは昨日の名残りを洗い流しながらシャワーを時間をかけて浴び、ここ最近ないほどたくさんのご飯を食べた。鏡を見ると昨日よりずっと顔色がよかった。照明を浴びながらカメラの前に立ち、俳優の中で俳優の振りをしても、昨日までのように体の強張る具合が弱くなった。
顔の中身すべてに力の入ったメイクを施した本物の女優を前に、シウミンは自然な笑顔を作れた。
「自分でもよく分からないんです」




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20160718

受容について 17
リハーサルの合間、セフンは壁にもたれてスマートフォンの画面を見つめていた。周りの喧騒の只中にいて、セフンは手の中の通信手段とのみ向き合っていた。彼女からの連絡内容を目にするのに躊躇した。
シウミンと過ごした夜からずいぶん時間が経った。
あれからシウミンとはほとんど一緒にいることはない。言葉すら数回必要にかられて交わしただけだ。
シウミンとの交わりを思い出すとセフンは体温が上がり頭の働きが鈍くなった。
夏以降、いくらシウミンと寝てもそんなふうになったことはなかった。シウミンへの欲求はいつも刹那的だった。もともとシウミンのことが好きなのはもちろんだった。メンバー皆をセフンは好きだった。シウミンと初めて寝たとき。かっかと燃えるような欲望を収めるために、目の前にいたシウミンを組み伏した。一緒にいたのがシウミンでなかったら、その相手がセフンの情事の友だったかもしれない。いや、そんなことはない。他のメンバーはセフンのそんな蛮行を許すはずがない。シウミンに許されたのすらもセフンは驚いたものだ。チョコレートアイスを口でシウミンのそれにいきなり流し込んだとき、シウミンの見開かれた目と唇を彩ったチョコレートと舌の柔らかみがセフンの理性を奪った。なんて甘いんだろう。ふざけて奪った唇がセフンを誘った。わずかに開いた唇の深遠が彼を待っていた。エアコンも付けず暑さにくらむセフンの頭を、体の疼きが凌駕した。
そのときの愉しさをセフンは忘れられなかった。知っていたはずのシウミンの包容力の底知れなさに夢中になった。辛いことがあったときも、疲れているときも、シウミンを抱けると思うと気が楽になった。ミンソク兄さんが好きだ。セフンは本気でそう思っていた。
シウミンがセフンを拒絶するのは自分のことを思っての“振り”だろう、とセフンは考えていた。でなければ自分を受け入れ続けるはずがない。何かのプライドとセフンのこれからを考えてつれなくしているだけに過ぎないと、セフンはまったくめげなかった。女をあてがおうと本気でしているらしいと知るまでは。シウミンのその行為はセフンの自尊心を傷付けた。セフンが自認している以上に彼の心に何かを刺した。
見返す気持ちも手伝って、セフンは彼女との付き合いにのめり込んだ。楽しんだのは間違いない。久々の女性の体はやはり筆舌に尽くしがたかった。セフンは自身で、男性と女性どちらとの交流も楽しめるタイプだと再確認した。それは性的指向の話ではない。どちらと話したり遊んだりしても面白みを感じるということだった。悔しいながらもシウミンの言ったことは正しかったのかもしれないと、頭の片隅で思った。女と付き合ったらそれが一番しっくり来るのだと。
なのに、シウミンがキスをした。
唇をただ重ねるだけのそれと、舌の味を感じるそれと。
セフンはシウミンに名を呼ばれるたび、脳が溶けるような、心臓が縮まるような、性器が膨らむような、そんな感覚に浸った。触れるすべての場所に電流を感じるような気がした。
彼女との性交から、シウミンとのそれも動きに違いがあるのが自分でも分かった。あんなに勝手気ままにその体を弄びたいと考えていたのに、そうできなかった。シウミンを追い詰めることに覚えていた快感は変わらなかったが、もっと自分を求めて欲しいと思った。自分の体にシウミンを耽溺させたいと願った。相手に尽くすということがそれに大変有効だとセフンは学んでいた。彼女に対する奉仕はプライドがかかっていたが、シウミンへのそれは違った。なんなのだろう、セフンはぼやけた頭でシウミンの薄桃色の体を見、穴の中を這い回りながら考えようとした。そうするたびシウミンに名を呼ばれ、思考などできなくなった。
それ以降彼女との連絡の頻度がみるみる減った。
もちろん彼女もそれに気が付き、なんとなくセフンのようすを探るようなことを言う。
何もかもが手に余り、セフンは八方塞がりだった。
たまにシウミンを見かけると、すっぴんの幼さもメイク後の妖艶さも、セフンに驚くほど訴えてきた。自分があの顔も体も好きにしていたのだと思うと叫びだしたくなった。俺のものだと言いたかった。スマートフォンを握りながら、返信などいつもどうでもよくなった。
「セフンー」
再開が呼び掛けられた。
また何も行動を起こせぬまま、スマートフォンを残し、セフンは皆の元に向かった。




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20160718

受容について 18
シウミンの撮影がすべて終わった。
生活に平穏が少し、戻った。セフンとの関係は変わらぬまま。
コートの要らない季節になっていた。
今日はロケ撮影だった。晴れ上がった青空のもと、珍しく全員揃ってCMを撮る中、スホが、隣にスタンバイしたセフンに小声で言った。
「お前、あいつとはもうすっかり終わっちゃったのか?」
アングルの固定を待ちながら、強い日差しに皆汗が浮きそうだった。日傘が頭上に掲げられ、それでも眩しさに目を細めてセフンは答えた。
「…んー、ごめん。兄さんには悪いと思うんだけど…」
片足をごそごそ動かして視線を落とすセフンを見て、スホは苦笑する。
「俺のことなんか気にすんなよ。こんなの相性とかいろいろあるからしかたないだろ。いや、お前が落ち込んだりしてないかなと思ってさ」
「いや…大丈夫だよ。むしろ……彼女に悪かったよ。………なんか言ってた?」
スタッフから声が掛かりメンバーの立ち位置が変更される。スホ、セフンのふたりでいた位置にシウミンとベッキョンが加わることになる。
指示に従って動きながら、スホはセフンに言う。
「…お前があいつに飽きたのか、他に好きな奴でもできたんじゃないかって」
ベッキョンが耳ざとく口を挟む。
「え、お前誰か好きな奴いんの」
セフンたちの前に並ぶかたちで立ったベッキョンは、振り向いて弟分を見上げる。そのベッキョンの隣に立たされたシウミンは、肩のあたりが強張るのを感じ振り向くことができない。
しっ、と、スホが指を口の前に立てる。ごめんごめん、ベッキョンは謝り、で?と、セフンに食い下がる。
「い、いないよ」
セフンは視線を泳がせ、額にひさしを作るように手を添える。目が隠れる。
前を向いたままのシウミンは、顔の表面に汗の粒が膨らむのを感じ、無意識に口が開く。
「飽きたとか、そういうことでもない」
口をほとんど開かずぽつぽつ語るセフンを見て、兄たちは同情を感じた。
「そっかー。大丈夫だよ。お前かっこいーんだからまた別の彼女とすぐ出会えるよ!」
「そうだよ。また俺の彼女経由で紹介できる子探してもいーしな」
「それはどうかなあ」
「なんだよそれ。ベッキョン、お前」
「だってねえ」
「なんだとお」
兄たちの軽いじゃれ合いを見て、セフンはつられて笑う。
シウミンも「やめろって」と仲裁に入りながら振り返る。
ふたりの目が、合う。
頬を赤くし、少し汗の浮いたふたりの顔が、お互いを正面から認める。
気候のせいか、それとも。化粧の下からも表に現れた彼らの熱が、それぞれの目に強く焼きつく。
だがそれは時間にすればほんの数秒のことだった。
シウミンから目をそらした。スホとベッキョンの小突き合いに視線を戻す。それを見たセフンは左胸に何かが刺さったと本気で思った。思わず自分の胸に目をやる。何もない。顔に片手を置き、目から下を覆う。熱くなった頬を指に感じ、心臓の鼓動を耳の奥から聞く。
撮影開始が告げられ、日傘やメイクのスタッフが去り、皆プロの顔になる。
少し離れた場所でレイとチェン、もっと向こうにはカイ、チャニョル、d.oがいる。
段取り通りの動き、セリフ。
シウミンは、以前よりこういうことをすることへの強い苦手意識が働きにくくなっていると感じ、不思議な心境だった。
それでも、セフンを含めた四人で顔を合わせる演技になると、もとからのシウミンの素が顔を出した。CM撮影に差し支えるものではない。だがセフンにシウミンの気まずさを感じさせるには充分だった。
例によって遅々として撮影は進まず、終わりが見えない仕事の中、別々の場所で休憩を取るふたりは、背を向けていたとしてもお互いを気にした。
見られていたら。
ふたりともそう思った。
撮影同様、自分たちがどこへ向かいいつ終わるのか、ただ待っているしかなかった。




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20160718

受容について 19
「あ、ミンソク兄さん」
久しぶりの完全オフの日。家に篭り、シウミンはソファの上に脚を折り曲げて縮こまっていた。
ダイニングルームに入ってきたd.oは、仕事帰りだった。
キャップとマスクを身に付け、鞄を肩に掛けて、片手に大きな花束を持っている。黄、赤、オレンジを中心とした花の洪水が手の中から溢れるようだ。がさ、がさ、とd.oが動くたび声を上げた。
「花瓶ってどこだっけ」
くぐもった声で話し掛けられ、シウミンは膝に抱えたクッションの上の顎を上げた。
「キッチンの一番奥の下の棚にあったと思ったな」
かすれた声で答える。
「そっか。ありがと」
カウンターにひとまず花束を置き、d.oは自室へ向かった。背を見せながら、
「風邪引いた?声、調子悪そうだけど」
シウミンに問う。
「ううん、今日あんま喋ってないだけ」
振り向きもせずd.oは小さく笑った。
再びクッションに頬を乗せ、シウミンはカウンターに乗った花束を眺めた。ぷくぷくと膨らんだつぼみや、大きく口を開けた花弁。ちょうど窓から陽の光が柔らかく部屋を照らす時間で、花たちから光が飛ぶようにシウミンの目には映った。
着替えたd.oが戻って来た。花束を持ってキッチンに消える。
ガタ、カタン、コト。ジャー、ワシャワシャワシャワシャ、ガサリ、ガサガサ、パチ、パチパチパチパチ、パッチン。
目を閉じたシウミンの耳にやって来るd.oの立てる音は、控えめなインストゥルメンタルの旋律だった。眠気を誘われ、クッションを抱え小さくなったシウミンは繭のように内に閉じこもりかけた。
ゴトン。
ぱちっと目を開く。
カウンターの壁際の端に、古いものらしい大きな花瓶が乗っている。美しい花をその中にたくさん抱えて。
満足げにその光景を見て、d.oがまたキッチンに引っ込んだ。
「兄さん」
突然大きな声が聞こえる。
ぼんやりしたシウミンは一拍遅れて返事をする。
「何」
「ここに置いてあるこの中国のお茶みたいなの、飲んでもいいのかな」
「あ、ああ。それ俺の。いいよ、俺の分も入れて」
「ありがと、分かった」
電気ポットにお湯が残っていたらしく、d.oはすぐにお盆を持ってやって来た。
ソーサーに乗ったティーカップの中で、花の開くように茶葉が沈んでいる。脚を下ろしシウミンは茶器の中を見つめた。
「綺麗ですね」
「な」
シウミンの前に置かれた花の浮かんだカップと、そこから宙に消えて行く湯気。小さく微笑むd.oは疲れ切ってはいるが、憔悴はしていないようだった。
「これ、どうしたの?」
こちらを見たd.oと視線を合わせ、シウミンは言う。
「共演者の方にもらったんだよ」
「へえ。いいですね」
「この香り嗅ぐと思い出すな、撮影」
シウミンは苦笑する。
ソーサーを持ち、d.oはカップに口を付ける。分厚い上唇が縁を噛むようにして。
「うん、美味しい」
「そりゃよかった」
シウミンも手に取る。顔に近付けるだけで、彼女の香水や濃いアイメイクが浮かぶ。何故だか切ない心持ちになり、ひとくち飲む。
「美味いな」
「ね」
常よりぽうっとしたようすのd.oを見て、シウミンは言う。
「お前、寝なくていいの?寝てないんだろ」
「寝ますよ。ただクランクアップで興奮と安心が入り混じってて、とりあえず何か飲んでからと思って」
「おめでとうな。お疲れ様」
「ありがとうございます。やっと終わりましたねえ」
力の抜けた表情を作る弟を見て、シウミンは自分でもほっとする。
「兄さんこそお疲れ様でした」
「いやいや。お前には及ばないよ」
「何言ってんですか」
「役柄がなあ」
「どんな役だって大変ですよ」
「とりあえず少し休めるな」
「そうですね。ちょっと遊びたいかな」
子供のような笑顔を浮かべるd.oに、シウミンは尋ねる。
「そうだよ。どうなんだよ、なんか友達と遊んだりデートしたりっていう予定入れてないのか?」
「デートって」
あはは、とd.oは笑う。
「そうですね、したいな」
目を伏せて、落ち着いた声で言う。
「しろよ、どこでも行ってこいよ」
「兄さんこそ、どうなんですか。自分も少し時間できたでしょ。前なんか悩んでなかったっけ」
いたずらっぽい笑みに変えて、d.oがシウミンを追及する。
「ごまかしてたけど、本当は誰かいるんでしょ」
「なんだよ、いないよ」
「そうかなあ」
「うん」
ごく、とお茶を飲む。
「兄さんすごく分かりやすいから、隠しても相手にばれてるよ、きっと」
「え」
「え、って」
声を上げてd.oは笑う。
「ほら、すぐ赤くなっちゃうし」
両手で頬を隠すシウミンを見て更に愛しそうに笑い、言葉を続ける。
「もし素直になかなか言えてないなら、もう知られてると思って、伝えた方がいいよ」
「べ、つに俺はいつも素直だよ」
目だけ出してd.oを睨みつけるシウミン。
「そうかもしれないけど」
「だいたい俺は好きじゃないんだって」
「やっぱりいるんだ」
「な、違う」
「なんで好きじゃないって言うんです」
「だ、って、俺は別にこうなりたかったんじゃない。ていうか違うって」
「こうって?」
「だから、仲良くというか、必要以上に、って、なんだよ、今日よくしゃべるな」
「言ったでしょ、ちょっとハイなんですよ。でも結果なったんでしょ」
「成り行きだよ」
「成り行きでも」
「あっちだって俺がいいわけじゃないんだよ。あーもうなんなんだよ」
「なんでそう思うんです」
「そういう奴なんだよ」
「誰にでもってこと?」
「いや、誰にでもってわけじゃないかもしれないけど、相手選んでるかもしれないけど」
「選んでしてて、今兄さんだけっぽいの?」
「いや……どうかな……そうかな……」
「全然相手から好意を感じないの?そういう好意を」
「うーん……感じない…というわけじゃない……変わったし……」
「じゃあ、兄さんのこと好きなんじゃない?」
「そ、れはない」
「そうかなあ」
「そうだよ」
「兄さんは好きだよね、その人が」
「だから、好きじゃないって」
「だって今の完全に恋バナでしょ」
「違う」
「先に寝ちゃったの?」
「…っ、お前そういうこと言うのかよ」
「順番間違えちゃったのか」
「順番も何もないっつーの」
「じゃあ今度会うときは寝ないで話だけしなよ」
「……今度なんてねーよ」
「ほら、素直になりなって」
「お前なー」
くすくす笑ってカップを口に運ぶd.oを憎らしげに見つめ、シウミンはクッションの上に頬杖を付き顔を隠し続けていた。
今度なんてないんだ。
シウミンは決めていた。もうセフンが来ても受け入れないし、この間のように自分から誘ったりも絶対しない。お互いを性欲のはけ口にするのはリスクが高すぎる。恋とかそんなんじゃない。欲求不満の解消にメンバーを使うなんて愚かだ。何度も繰り返す理屈でシウミンは武装した。
しかし、シウミンは今セフンの顔やその姿、表情、話す声を思い浮かべると、昔感じた覚えのある胸の疼きを感じてしまう。錯覚だと思いたかった。寝ていたせいで情が湧いただけだと。セフンが自分を見る目の変化も、錯覚のはずだった。
「じゃあ俺、寝るね」
立ち上がり、盆を持ってキッチンに向かうd.oの背を見送る。シウミンのカップの中はまだ茶が残り、大輪の花がゆらゆらと咲き誇っている。
「意地張らないで」
部屋から出て行き際に、深く響く、笑みを含んだ声で言われ、シウミンは思わず「うるせー!」と閉まるドアに叫んだ。




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20160718

受容について 20
セフンは困惑していた。
今までなんとか避けてきたのに、とうとう移動車の後部座席にシウミンと隣り合わせで座ってしまった。
チャニョル兄さんめ。
助手席に座るチャニョルの後頭部を睨みつけるしか今できることはなかった。ほらほらお前もたまにはそこらへん座れーと言いながら、チャニョルは後部座席の端っこにセフンを押し込んだのだった。一番最後に乗ったシウミンに選択肢はなかった。
窓際に上半身を向けて、なるべく左側に意識を持たないようにする。どうやらシウミンも反対側を向いているようだ。窓にちらりとシウミンの体の一部が映っている。セフンはガラスの中のシウミンに人差し指を触れた。
長い脚の膝がシウミンの脚のすぐそばにある。少し、動いたら。膝と膝が出会うだろう。
シウミンは顔を車窓に向けてはいたが、セフンの膝のことしか頭になかった。ほんとにどうかしてる。シウミンはいらいらと腕組みを深めた。
「このあとの予定ってどうなってんだっけー」
チャニョルが運転するマネージャーに尋ねる。
「シウミンとセフンは済んでる写真撮影だよ」
「え、じゃあふたりは今日もうあがり?」
後部座席のふたりは揃って前を見た。
「そうだよ。だからいったんふたりを下ろして、お前たちだけスタジオ連れてく」
「いいなあ。まだ早いじゃん」
チャニョルは手元のスマートフォンに視線を落とす。窓の外はようやく日が落ち始め、夕空を待っているところだった。
よくない。
シウミンはセフンとふたりきりなど今、想像もしたくなかった。それぞれの部屋に篭ってびくびくお互いのようすを伺って過ごすなんてまっぴらだ。とにかく言葉が口から出た。
「ねえ、俺、そこらへんで降ろしてもらってもいい?」
前の座席の肩に手を置き、身を乗り出して運転席に声を掛ける。
「なんだ?どっか行くのか?珍しいな」
「うん、買い物でも行こうかなって」
作り笑いをしてシウミンは言う。シウミンの顔のすぐそばで前の座席のベッキョンがいいなー、と叫ぶ。
「分かったよ、どこでもいいのか?降ろすとこ」
「うん、もう降りるよ。ちょっと歩きたいし」
横に座ったセフンはそのやり取りを口を開けて見ていた。何も考えていなかった。だがそのまま舌は動いた。
「俺も」
シウミンが振り向く。
「お前も?」
マネージャーが問い掛ける。
「うん。兄さんと一緒に降りる」
「なんだ、一緒に行くのか?買い物」
「うん。約束してた」
こちらを見ないセフンの顔をシウミンは凝視した。何言ってるんだ。
「仲良いな」笑いながらマネージャーは言う「分かったよ、止めるぞ」。
セフンがシウミンを見る。
その顔をなんと表せばよいのか。セフンは決まり悪そうに、しかし懇願するように眉と目を潜めてシウミンを見ていた。シウミンの何かがその眼差しに崩れた。決心や誓いなどがぼろぼろと砂のように無様に零れていくのが分かった。何故。シウミンはセフンと相対するとこうなってしまうのか。顔がしびれ、鼓膜の奥でセミが鳴いている。
車がゆっくりと横付けにされる。
セフンが言う。
「行こ」




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  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

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