海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20170424

ごちそうと待ち合わせ(東方神起・兵役終了企画・リアル短編)
唇の表面の水分はどこかに消えていた。
季節柄しかたのないことである。冬はもう、恐ろしく深まりつつある。
だがそれだけではないのだ。空気の中から湿ったものが抜けたことだけで、チャンミンの膨らんだ、並んだ虫のような部位の皮膚が割れそうなわけではなかった。
風呂に入ろうかと考えた。湯を浴槽に張り、長い手足をなるたけ伸ばしてその中で時間を過ごそうかと。干からびた肌も再生を果たすことだろう。
ほわりほわりと自分を包む温かく白い湯気を思い浮かべて、チャンミンはいっときただ立ち尽くした。自分の部屋の、リビングの、フローリングの上で。暖房をつけず、靴下も履かずに。とても冷えた床に裸足の足の裏を貼り付け、ローテーブルを見つめていた。
暑がりのチャンミンは本来シャワーで十分だった。風呂につかる想像をしながらぼうっとするなど、らしくないことこの上ない。
チャンミンは電話を待っていた。
かかってくるのを。
 あるいは、自分がかける決意が固まるのを。
テーブルの上には大鉢に盛られた、濃い黄色の山があった。それは出来上がってからだいぶ時間が経っており、もうもうとにおいと共に立ち上っていた温度を表す靄もとうに姿を消していた。
もう一度温めればいい。そしたらまたあの甘い香りと快い高温が、簡単に戻る。
それでもそうなってしまうほどに逡巡した自分をチャンミンは恥じた。
ずっと、スマートフォンを握り締めたままだった。
チャンミンの手の中ですっかりそれは湿っていた。熱も持っている。電話をしないなら、今は置いておけばいい。それなのに置いていない。手から離せない。
視線を上げ、壁にかかった時計を見た。十一時四十七分。もう、昼になってしまう。
だいたい、この時期に昼間、オフだなんて(もっとも、夕刻から仕事だが)奇跡のようなことなのだ。こんなときを、こんなふうに無駄に使うだなんてありえないとチャンミンは苛立つ気持ちがあんなに冷えた木の板に触れた足の先から頭の方に沸き立ってくる。馬鹿なんじゃないか。だけどすべてはおのれのせいだ。手にその通信手段を持った状態で、ただ無為に時計の針が時を進めるのを放置してきたせいなのだ。
閉めたままのカーテンは、間からどんどんと光の強さが増しているのを伝えていた。今日の太陽は冬をものともしていないようだった。白い壁は皿の中の野菜のようにひどく濃い黄色に染まった。
甘いものでつるだなんて、女相手だったらそんなこと絶対にしないとチャンミンは再び自分の行動の不恰好さに吐き気をも覚えた。甘いものと言ったって、これはお菓子ですらないのだ。れっきとしたご飯のおかず。日本に来てから初めて食べたけれど、チャンミン自身はそこそことしか思わない。もっと辛く、酒に合うように味付ればいいのにと口に入れるたび不満が募る。
だけど彼には好評だ。最初、どこで食べたのかは忘れてしまった。何せまだ十代だった。ほんの、子供だった。
しかしひとくち口に含んだリーダーが、これおいしい、と満面の笑みを浮かべた記憶は鮮明だ。きっと定食屋だろう。何かの打ち上げに違いない。地方を回ったとき、個人経営の店に入って、日本のスタッフが頼んだのだ。
これはいちばん日の短い日に食べるものだとそのとき店の、白髪の奥さんが教えてくれた。チャンミンたちの姿のよさに、顔が赤らんでいるのがよく分かった。日本の年配の女性は自分たちの顔や体が大変好きだ。そういうとき、心からの実感として彼らは知った。歌うような高い声で彼女は言った。
あまくておいしいから、たくさんたべて。
そう、言えばいいのだ。
チャンミンはてっぺんを過ぎた長針に再度視線を投げて、掌を上にして腕を上げた。
親指を動かす。
通話のマークに触れる瞬間、指の先が震えた。それが分かった。だが気付かなかった振りをし、自分をだました。耳に電話を持っていく。
呼び出し音は繰り返す。とぅるるるる。とぅるるるる。待たされるということはなんと辛いことなのだろう。切って電話を放り投げたい。あの山をすべて自分の腹に収めて、なかったことにしてしまいたい。
何回コールはされたのか。
チャンミンは安堵と落胆が同量ずつ胸を占めていくのを感じた。諦めという言葉の甘美さにめまいがしそうだった。
ブツッ。
「はい」
 耳慣れた声が穴の中からチャンミンの鼓膜を揺らした。
勢いよくチャンミンは口を開いた。乾いたところがぴっと切れたのを放って。けれど何も言えなかった。たっぷり二秒。金魚のように口をぱくぱくさせ、大きな瞳を右左と動かした。
「…チャンミン?」
 かすれた、囁き声だった。
「はい」
 出た。よかった。チャンミンは喉を押さえる。飛び出た部分をおまじないのように撫で擦る。
「…兄さん、あの」
「…どうした?」
 寝起きなのかもしれない。そうだ、きっとそうだろう。それにしたってひどく甘やかな響きがあるように感じるのは、自分の期待のせいだろうか。
 けほ、と小さな咳をひとつして、チャンミンは言葉を発した。
「あの、…今日、うち、来れませんか」
 音楽やテレビやラジオで数え切れぬほど聞いた自身の声が、こんな声だったろうかとチャンミンは訝った。もっとましな声だと思っていたが。こんなんじゃ売り物にならない。
 肺と肺の間で、ばっ、ばっ、ばっ、という大きな音が鳴っていた。スタッカートがすさまじい。
「…これから?」
「…はい」
「チャンミン…ひとり?」
「はい」
「今日…完全オフだっけ?」
「いえ、夕方にはまた出ます」
「俺は夜からある」
「知ってる」
 口がわななきそうなのを無理矢理に、あ、とチャンミンは言った。
「甘い南瓜があるんです」
 遠くで鳥が鳴いたように思った。気のせいかもしれない。だが確かに、部屋の中はほのかに明るさが強まった。
そのときふたり共が、あの味わいに全身で浸ったようになっているのがチャンミンに分かった。
沈黙が破られた。
「…分かった。行くよ」
 喉からせり出そうとする心臓をチャンミンは唾を飲み込むことで押しとどめた。
「…ほんとに」
「うん」
「…分かった」
「待ってて」
「はい」
 いつの間にか電話を切っていた。
ぶらりと腕を下に下ろし、また、時計に目をやった。
準備の早い兄だから、一時間も経たぬうちにおそらくやってくるだろう。
テーブルに視線を送る。
邪魔するものを押しのけて侵入してきた陽光が、てんこもりの南瓜の断面を驚くほどに光らせていた。
スマートフォンを置き、皿を両手ですくうように持った。
キッチンに向かいながら、ユノに温かなごちそうと、この間のいいわけを準備しなければと、チャンミンは舌で唇を舐めた。



おわり




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20170425

夜の下(東方神起・兵役終了企画2・リアル短編)
紫を流したような夜である。
顔を上向けるとちらちらと光る点があった。
日本の夏はどれだけ汗をかいてもまたかいてしまうというくらい、蒸す。チャンミンは額に汗の粒が浮いていた。対してユノはそれほどでもない。ただ浅黒い肌がやたらと輝いていた。
並んで道を歩きながら、アイスキャンデーを頬張っていた。
蜜柑味のそれはふたりの気に入りだった。夏、日本のコンビニに行けば必ずと言っていいほど買い求める。
ほんとうに夜は深く、道に人はほとんどいない。たまに車が行き過ぎる。
サングラスも帽子も被らずこうして連れ立って歩くことなどまれだった。薄いビニールサンダルの裏からアスファルトに溜まった熱が上ってくる。それすらも変に嬉しくチャンミンには感じられた。
ユノが氷菓に歯を立てているのをチャンミンはその大きな、大きすぎるくらいな黒目をスライドさせてさりげなく捉えた。ずらりとならんだユノの歯はとても白い。闇の中で浮いている。
高い塀がずっと続くところまでいつの間にかやって来ていた。
「寺だ」
「そうだな」
 大きな、育った木々が影絵のようにそびえていた。
背の高い双方は、塀の上から中が覗けた。
「誰もいませんね」
「そりゃそうだろ」
「肝試しするじゃないですか。夏の夜のお墓って。子供たちとか」
「ああ、映画で見たな」
「してないですね」
 今は夏休み真っ最中のはずだ。でもそれが行われるのは今日ではないようだ。それかもしかするともう終わったあとなのかも。チャンミンは何故か少しがっかりした。子供たちがきゃあきゃあ言いながら墓の間をすり抜けているさまを、是非見てみたいと一瞬にして強く思った。
「肝試ししたいな」
 はは、とユノは歯を見せて笑った。
「そうだな」
「ほんとに」
 チャンミンの視線をユノはようやく受けた。まだその顔には笑みが残っていたが、チャンミンのまなざしの色を見て呟いた。
「本気か?」
「うん」
 ちょうど塀が途切れ、木が植わってはいるが人ひとりが通れる隙間があるところにふたりは来ていた。
「ほら、入れる」
「やばいだろ」
「行こうよ」
 手首にかけたコンビニの袋をがさがさ鳴らしてチャンミンはユノの手を取った。先に立って寺の中へと滑り込む。強く手を取られたユノは、引きずり込まれるように自身も体をより濃い闇の中へと入れた。
日本の墓地に夜中来るのはどちらも初めてだった。こちらでできた友人といっしょに訪れたことはチャンミンもユノもある。だが真っ暗な中、四角い石が人のように立ち並ぶのが陰影のみで確認できるその場所は、異界のように見慣れぬところで、ふたりは足を進める速度がひどく遅くなっていった。
手を繋いだままでいた。チャンミンの掌は熱い、とユノは思う。少し汗もかいている。男の手というのは自分のものと似て、作りが大変しっかりしている感じがする。女の手は違う。ぐっと握ったら、ばらばらになりそうだ。手をこんなふうに長い間繋ぐ男は、チャンミンしかいなかった。チャンミン以外とこうするなど、違和感しかなく胃がせり上がる気すらする。
街灯と星あかりのみを頼りに、チャンミンはユノの手を引いていた。
漢字が並ぶつやつやした石は自分たちに迫ってくるようだとチャンミンは感じた。ユノの骨張った長い指を強く握る。親指でかすかに皮膚をなぞった。チャンミンはユノの手を美しいと思っていた。だからとても好きだった。
ぐるぐるとゆったりとした足取りで迷路のような道を辿った。卒塔婆を、花を、供え物を見、わずかに残った好奇心を満たしながら。
真ん中に生えたいちばん大きな木の下で、ひととおり探索したふたりは足を止めた。夜の色はいよいよ濃い。酔っ払いの笑い声も、おおかたしなくなっていた。
「アイスは?」
 チャンミンはユノの繋いでいない方の手に視線を落とした。
少ししょんぼりしたふうにユノは答えた。
「溶けて落ちた」
「まじで」
「うん。足にかかった」
「へ」
「親指の爪のとこ」
「なんで言わなかったんですか」
「あ、って言ったよ」
「ほんとに?」
「うん」
 やはり恐怖に囚われていたのかもしれない。いつもならチャンミンは誰かの発した声に気付かないことはない。気付いて無視することはあれど。確かに一心不乱であったと、チャンミンは己を省みた。
「べたべたする?」
 ビーチサンダルの上のユノの親指は光が足りずによく見えなかった。なんとなくうごめいているらしい、とだけしか分からない。
「ちょっと」
「まあ、帰ったら洗えばいいよ」
「そこらへんの水道で流そうかな」
「それもありですね」
 ぷらぷらとアイスの棒をユノはチャンミンに差し出した。
「袋入れといてよ」
「ああ、うん」
 自分の分もそこに放り込んでおいたチャンミンは、小さな袋を開いてユノに棒を入れるよう促した。
「帰る?」
 大木に背をもたせ掛けたチャンミンを見て、ユノは尋ねた。相変わらず手と手は繋がれている。上目にしていた瞳をチャンミンは唇に隙間を作って声の方へと向けた。白い部分も黒い部分も、弱い彼方の星の光だけなのに、よく照った。ユノはうらやましいと思った。こんなにきらきらしているものはそんなにはないと、ずっと、常に、考えていた。
 長い腕をチャンミンが引いた。
「来て」
 引かれるままユノは一歩、二歩と距離を縮める。
「もっと」
 とうとうふたりの間に何も空間はなくなった。チャンミンは手首に袋をぶら下げたまま、ユノの肩に両腕を置いた。
 わずかに背の高いチャンミンを、ユノが見上げる格好で、ごく近い場所で視線は絡んだ。
 おかしそうにチャンミンは笑みを作った。
「何笑ってんだよ」
 ユノも白い歯を見せて言いながら笑った。
「外でこんなことするなんてと思って」
 言葉すべてに笑いを含めてチャンミンは言う。
「こんなことってなんだよ」
「こんなことですよ」
 そうしてチャンミンは鼻のすぐ下にある横長の唇を大きく開いた。
小振りのユノの唇はあっけなく奪われる。音を立ててチャンミンはそれを吸う。蜜柑の味がほのかに分かる。舌の甘みを残さず奪う。
「やば…いって…」
 きれぎれにユノはその気もないのに拒絶を口にした。チャンミンは熱い。どこもかしこも、それこそ舌も。
「しっ」
 目を開けたチャンミンはユノの薄く開いた細い目を見た。ユノは胸が高鳴った。この目が自分だけを見ている。そう思うとただ、苦しくなった。
「足、洗ってあげるから」
 そして唇をにい、と横に伸ばしてチャンミンは笑った。ユノは背後、Tシャツの下の黒い肌にチャンミンの体温をじかに感じ、びっと跳ねた。骨を擦るように肌を撫でられる。
「こ、んなとこで」
「ちょっとだけ」
 背中を指が上る。はあ、とユノが息を零す。それを掬うように、チャンミンはまた小さな口を自分のそれで覆った。



おわり



 
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20170426

不本意な本意(東方神起・兵役終了企画3・リアル短編)
空の色と木々の色が溶け合う季節が訪れるのにこのところ気付くことが難しい、と車窓から外を仰いで考えていた。それでも駐車場に入るのにウィンカーを出すのをチャンミンは忘れなかった。管理人が帽子を軽く上げるのに対し、唇の端を上げてサングラスをかけたチャンミンは首肯した。
まだ寒くはない、とドアを強く閉めて思う。厚着をするのはだいたい苦手だ。気温は確かに下がったが、夏の暑さが完全に消え、むしろ心地いいとすら感じていた。長い首には何も巻かず、風が吹くたびそこを撫でていくのが密かな楽しみであった。
目当ての部屋に着き、チャイムを鳴らす。ややあって主が鍵を開ける音が響いた。
「よっ」
「どーも」
 並んだ歯を見せてユノは笑った。少し顔色が悪い。ほんとうにこの人は素直な、そのままの人だなとチャンミンは感じ入る。特に自分に対しては。この笑顔は彼の中での最高クラスだ。そして予想通り疲れている。長い付き合いでそれが分かる。
そのことすべてにまんざらでもない想いを抱く自分がチャンミンはほんとうはいやだった。ずっと、そうだった。
スリッパを出したりなどユノはしない。靴を脱いだチャンミンはしかたなく靴下のまま部屋に上がった。
「掃除の人、まだ来ないんですか」
 リビングは雑然としていた。あちこちに服が落ち、ペットボトルが転がり、奥のキッチンの電球がひとつ、ぱかぱかと点滅している。
「明日来る予定なんだよ。今いちばん汚いとき」
「あっそう」
「怒んなよ。まあ、平気だろ、これくらいなら」
 大きな溜め息をこれ見よがしにチャンミンは吐いた。こういうとき、何故自分はこんな男と公私共に付き合っているのだろうと心底、不思議になった。うんざりした顔を作り、とりあえずペットボトルをすべて拾った。
「いいのに」
「これだけだよ」
 空なのと空でないのが混じっていた。中身を開け、ゆすぎ、乾かすために食器置きに置く。あらかた終えると薄い上着を脱ぎ、持ってきたビニール袋を携えまたキッチンへとチャンミンは向かった。
「何すんの」
「料理」
 背の高いチャンミンの頭のすぐ上で、瞬く電灯があった。大変に気になった。こんなところでは何もできない。
「なんでこれ換えてないの」
「え」
「やじゃん」
「そ?あんま気になんない」
 ソファに長くなったユノは、伸びをしてテレビを点けた。大きな窓からは薄暗くなり始めた広がる空が目に入る。濃紺から橙へと変化する下で、マンションの周りの木が燃えるような赤や黄に自身で変色しているのもよく分かった。満足そうにユノはその光景を眺めながら、ニュースを聞いている。
また、本望でない満足がチャンミンの胸を侵食し始めた。ユノの小さな後ろ頭と、あでやかな色彩の展開を同時に視界に入れ、灯りの点いたり消えたりするキッチンに立つことが幸せであるなどと思いたくはなかった。上下の厚みが同じくらいの唇をへの字にし、チャンミンは手を伸ばして切れかけた電球をさっさと取り外した。


「はー、おいしかった」
 食事を終えた頃には、開いたカーテンの向こうは完全な夜だった。反射したふたりの姿がくっきりと窓に映る。街の光がとりどりの色で闇を彩っていた。
「よかったですね」
「うん。しかし大量だった」
「全部食べましたね」
「お前の方が食っただろ」
 大鉢には薄黄色のとろとろとしたものがたっぷりと盛られていた。今はもうそこに何もなく、鉢の模様が青く浮かび上がっているだけだ。
「ご飯好きですよね」
「うん。そりゃ山芋あったらかけちゃうだろ」 
チャンミンは酒を飲んでいた。スタッフからもらった高い地酒。ふたりに贈られたものだが、ユノの部屋に置いてあった。
「旬って感じだった」
「食べ物の季節ですからね」
 スーパーで野菜をしこたまチャンミンは買い込んだ。凝った料理ではない。ちぎったり切ったりすったりかけたり。適当にいつも作る。だがユノはたいていすべておいしいと平らげる。それがチャンミンには面白くない。張り合いがないと、贅沢な不満を毎回覚えた。
「眠くなってきた」
 あくびをしてユノはソファの足元にもたれた。部屋着を着たユノの手足は生地が足りず、その首まで丸見えだった。ごつごつとした骨が露出し、それをチャンミンは酒を舐めながらじっと眺めた。
「兄さん」
「ん?」
「インド式マッサージ、ってのをやったげるよ」
「は?」
「こないだ教えてもらったんだよ、森さんに」
「森さん?森さんてメイクの?」
「うん」
 言いながらチャンミンはユノの体を自分に向かせた。上、下。服を剥ぎ取る。ユノはぽかんとした顔でチャンミンをただ、見つめた。
 全裸にされたユノは肌寒さに身震いした。
「ああ」
 チャンミンはエアコンのリモコンを取った。弱く暖房をかける。そして自分の鞄を引っ張り、中を漁った。
 可愛いと言っていい顔をした弟分が、外国製のあやしげなオイルを手にしているのを見、ユノは目を丸くした。
「どしたんだそれ」
「もらったんです、森さんに」
「お前森さんと何やってんだよ」
「だから、マッサージ伝授」
「それセクハラになんないか」
「どっちにとっての?」
 その質問にユノは混乱した。あのふくふくとした女性がチャンミンの体をまさぐる。そのようすを思い浮かべてなんとも言えない複雑な気持ちになった。
「なんか、やだな」
「大丈夫、気持ちいいですよ」
 そういう意味じゃなかったんだけど、と心のうちでユノは言う。チャンミンは分かった上で、あえてずれた返事を返した。
蓋を開けたチャンミンはたっぷりと手に中身を空け、両手を長いこと擦り合わせた。ぬちゃぬちゃという、ふたりの時間によく聞くような音を耳にしてユノは知らず体が火照った。さらされた体の一部が反応を示しているのを知られることを恥じ、顔を横に向けた。
ユノの肉厚な色の濃い体にチャンミンは手を置いた。
「あったかいでしょ」
「うん」
 気持ちがよかった。
満腹で膨れたお腹を撫で擦られるのは少々気恥ずかしいものがあったが、チャンミンの体温と手触りがその感覚を押しやった。
耳の下から首の後ろ、肩、胸、へその周り、足の裏、すね、太もも。一箇所を避けてチャンミンはくまなくユノの体を揉んでいった。琥珀色のユノの肌は美味しそうに輝いた。
 どんどんとユノの性器は反応していた。息も浅くなっている。頬の高いところを染め、やはり首を横向けていた。
「気持ちいいんですね」
 チャンミンは意地の悪そうな笑みを浮かべた。目尻を垂らして口の中でくふふふふ、と笑っている。
「やめろ笑うの」
 視線を横に投げたまま、ユノはぶっきらぼうにそう言った。
「だっておかしいから」
「お前な」
「兄さん」
 下腹のいちばんやわらかな、敏感なところをチャンミンは両手で輪を作るようにして攻めていった。
 光を溜める漫画の中の青年のような目を大きく見開き、それでユノだけを指した。
 硬い毛を、泡立てるように揉みこむと、鋭く立ったペニスを人差し指で上に向かってなぞった。
「く」
「兄さん」
 流し目を送ったチャンミンは言った。
「俺はさ、全然兄さんなんかタイプじゃないんだよ」
 赤くなった顔をユノはその目に向けた。眉の間に線が縦に入っている。
「知って、るよ」
 語尾が抜けた。チャンミンが指の先でユノの尖ったところの穴をくっと押したからだった。そこにはオイルでないぬめりがあった。
「男なんか全然好きじゃないし」
 傘の下を親指でなぶる。うわ、とユノは顔を仰け反らせた。
「でもしょうがないよ」
 ぐっと棒の真ん中を掴むと、チャンミンはユノが自分を見るのを待った。きつく瞑った目をそろそろとユノが開く。黒目がちなそれはふるふると濡れていた。
 眉をまっすぐにして、どこまでも真顔でチャンミンは言い放った。
「こうせずにはいられないんだから」
 そうして指を滑らせるとその下の穴にずるりと入れた。チャンミンの指はもう蜜に漬けておいた肉の棒であった。なんの抵抗もなくユノを犯す。ああ、うあ、と動く指を受けてユノはよだれを垂らした。
「みっともないなあ」
 より大きさを増したユノ自身は、自分の中から出たものとオイルでこれ以上ないほど照り返っていた。
「ちゃん、みん」
 荒い吐息を吐いてユノはとろりとした目をチャンミンに捧げる。
「なんですか」 
 先刻からチャンミンは自分の下着が濡れていることに気付いていた。下手したらパンツも。だがいい。ここには替えが山程ある。
「俺ばっか、やだよ」
 その間もチャンミンは指を止めない。くるくるとユノの中を弄ぶ。
「脱げよ」
「まだです」
「なんで」
「気が済むまでやってからなんで」
 山芋が効いたみたいですね、と言いながらチャンミンは顔を膨らんだ性器に寄せた。オイルの香ばしい香りと、嗅ぎ慣れたユノのペニスのにおいがした。


ベッドで目を覚ますと、珍しくユノが向こうを向いてタバコを吸っていた。衣擦れでチャンミンの目覚めに気付き、あ、ごめんと言って灰皿で火をもみ消す。
「…おはようございます」
「はよー」
 まだ早朝だ。光が白い。すずめの声が軽やかに部屋に届いた。
「…今日、掃除の人が来るからさ」
「…あ、そうだった」
 その前に家を空けるつもりということだった。
 背中を見せたままユノは言った。
「朝飯食おーぜ」
 腕や肩を回すユノの背後から、チャンミンはその筋肉の動きをぼんやり見つめる。
「…あの電球、入れてもらわないと」
 一拍置いて、ようやっとユノはその言葉の意味に思い至った。
「ああ…、そうだな」
「もし気付かないようだったら」
 べたべたの体をシーツから引き剥がすようにチャンミンは起き上がった。
「俺が次来るとき、LED買ってきます」
 振り向いたユノは無精ひげが生えていた。
眉を八にし、片頬で笑ったチャンミンは、ほんとになんで、とまた、思った。
「それで付けてあげますよ」
 こんなことが嬉しいだなんて、俺はほんとにどうかしてる。



おわり


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20170427

日食(東方神起・兵役終了企画4・リアル短編)
部屋の扉を開けるとそこに立っている男が手にしているものが視界に入り、黒目がちの小さな目の男はなんだそれ、と思わず言った。
部屋に足を進めながら大きな目の男は答えた。
梅ですよ。
墨で描いたような枝に、ぽつぽつと色付き始めたつぼみが付いている。ひとつふたつ、ぷっくりと大きく膨らんでいた。
訪れた男は手にビニールの袋をふたつ持っていた。
ごろごろと入ったビールの缶を、ベッド脇のテーブルに置く。ホテルの部屋は間接照明があちこち点き、部屋の主も、その他の何もかも、オレンジ色に照らし、また、濃い影を作り出していた。一方の袋の中の小さな箱を、見つめてくる相手に手渡し、1リットルのペットボトルをビールの横にぼこりと置いた。
「お腹は空いてないんでしょ」
「うん、なんとか食べた」
 受け取った胃薬の箱を不器用なさまで細面の男は開けようと試みた。あまり手間取るので再び買ってきた男がその箱を細長い指から奪い取り、あっという間に封を破ると粉薬を放った。
「さんきゅー」
 受け取った男が洗面所に向かうと、ベッドの上に訪問者は腰を下ろした。早速缶をひとつ開ける。喉を鳴らして半分程も飲んでしまった。
眉をしかめて男は上着を脱ぎ、椅子に放った。服の下にもう、薄く汗をかいている。台の上に置いた梅の枝に視線を送る。水につけなければと思う。
戻ってきた男に尋ねた。
「何か大きめなグラスみたいなのないですかね」
 え、という口のかたちをこしらえて胃を痛めた男は立ち止まる。
「ないですよね」
「そうだなあ。ホテルだし」
 頼めば持ってきてくれるかも、という言葉に、気のないふうに返事をすると、横長の唇を引き結んで男はホテルのアメニティのカップを取り出した。
危ういバランスで、水を入れたグラスに梅は生けられた。テレビの横、白い壁の前。絵のようにまるで見えた。少しの衝撃で、すぐに倒れてしまうだろう。
「どうしたんだそれ」
「拾ったんです」
「きれいだな」
「はい。腹、どう」
「まだちょっと痛い」
「歯磨き粉飲んだって?」
「少しだけな」
「馬鹿ですね」
「うるさいな」
 テーブルに乗ったビールを再び男は口に運んだ。残った半分を一気に干す。長い首がうねうねと動くのを、小さな黒目で男は眺めた。
「腹下してないってことでしたけど、一応スポーツドリンク買っといたんで」
 独特なかたちをした唇を解放して男がそう言うと、目を奪われていた男は我に返って応じた。
「うん、分かってる」
「お礼は」
「ありがとう」
 目尻を更に上げるように男は笑った。それを目の端に入れて空き缶を持ったままの男は口角を落とし、瞳の色を変えた。
もうひとつ、缶を手に取る。
ベッドに座った胃を押さえた男は、壁に頭をもたせかけた。
立ったまま、より背の高い男は中身をすべていちどきに空けた。食い入るようにまた、そのようすを相手は見つめた。
は、と息をついた男は首を横向けパートナーと目を合わせた。先刻以上にその中は濁ったようにうごめいている。
「あちい」
 そう言ってトップスを脱いだ。タンクトップも剥ぐように取り去る。
彫られたように筋肉の浮き上がった色の付いた素肌を目に映し、小さな唇をわずかに男は開けた。
上半身をさらした男は、力の抜けた眉、だが据わったまなこでベッドに上がる。唇は漢字の一のようである。
「ちゃ、」
 言い終わらぬうちに男は強引に組み敷かれた。その拍子に、空いた缶がからからと床に落ちた。

脂肪と筋肉のよく付いた尻をまた、突きながら男は張った。
「あっ」
 枕に顔を埋めた男から、くぐもった声が漏れる。
 かすかに赤くなっているそこを、唇を湿しながら男は見下ろす。すぐ横の繋がった部分は、まるで日食のようだった。いつも、体に塗るクリームを使い中に入れた。だから白く、穴の入り口が動くごとに泡立った。それを見ると吐き気を催し、同時にまた、血が腰に集中するのを男は強く実感した。
「ほら」
 ひざまずき、尻を突き出す男にざっくばらんに男は言った。
「自分で擦って」
 そしてもう一度叩く。ああっ、と高めの声が部屋に響いた。
「女みたいな声出して」
 男は笑った。汗を飛ばして、揺れる大きな背中と小さな頭を俯瞰しながら。
 震えた相手が片手を自身のペニスに言われたとおり触れさせるのを見、強烈な嗜虐心が男を捕らえた。
「やっぱ駄目」
 そう言い、その手を取ってえ、え、と零す男を無視して被さるように背中に乗った。体が張り付く。汗が滑る。
「ああ、ああ、ちゃ、み」
 腰を振りながら男は下の男の性器の穴に指の先を入れた。ひい、と食いしばった歯の隙間から悲鳴のような声が上がる。指を透明な粘りのある液がたらたらと伝った。
「好きものだなあ」
 耳元で囁く。赤い耳を更に赤くし、男は枕に顔を隠す。強く綿を握り締める。
ぐっと体を起こすと、男は動きを速めながら、人差し指を広い背中に置いた。
 ゆっくりと、揺れる体の上で、写経のように丁寧に、手を動かした。
「なんて書いた?」
 笑いを込めた声で男は問うた。細かい振動で執拗に中を犯しつつ。
「そ、それ、…日本語か?」
「よく分かりましたね、で?」
「わ、わか、んね」
「駄目だなー」
 お仕置きだな、そう言って乱暴に男は男をひっくり返した。
反り返った男性器をいやそうに男は見やった。
「どんだけ感じてんの」
 ぱしんと叩く。
「やめ」
「好きでしょこうされんの」
 メトロノームのように揺れるそこは、勢いの悪い噴水のようにひっきりなしによだれを零した。
「真っ赤になってるよ」
 ははは、と声に出して笑う弟分に、兄は両腕を交差させて顔を隠した。
 その光景が男には至福だった。足を大きく開脚させ、好きなだけ激しく突く。
「あっあっあっあっ」
 上品な口元からあられもない声が断続的に漏れ続けた。
強い力で男がぶらぶら風を受ける木のようなペニスを掴んだ。すさまじい勢いで上下に擦る。
「ひあっ、あああっ」
 何もつけてなどいないのに滑りは抜群で、しごく手が時折外れた。
「こんな汚してまあ」
 呆れたように言うと、下になった男は唇を噛んだ。
「泣いてんですか?」
 ふるふると横に顔は振られる。だが知っていた。いつもこうなると兄は泣く。それがたまらなく弟は嬉しい。
「も、だ、めだ」
 分かっていた。もちろん。ぱんぱんになったそこはとっくに限界を迎えていた。
「くううう」
 ぱっと手を離して男は達した男が腹に大量の精液を撒くのを見ながら、中にたっぷりと自身も出した。眉間を寄せ、死んでも声など出さないと思いつつ、頭がいっしゅん真っ白になる。
 息を抜いて根元まで入れ込んだ自分のものをゆっくりと引いた。先から白濁した液が粘りを帯びて付いてくる。穴は白く染まってひくひくと大きく口を開けていた。
それを目にするとまたむらむらとその気が起きそうになるのに嫌気が差し、男は視線を逸らした。
ぐったりと脱力した横たわった男は、はー、はーと呼吸していた。厚い胸が膨らみ、しぼむ。
「…は、」
「は?」
「腹…壊しちまうだろ」
 相好を崩し男は答える。
「大丈夫ですよ」眉で縁起のいい漢字を描く。「正露丸買っときましたから」
 黙った相手に男は準備いいでしょ、と言ってまた笑った。

シャワーを浴び終えた男が、もう既に髪を乾かした光る大きな瞳の男の元に戻ってきた。
「なんて書いたんだよ」
 ほのかに微笑を浮かべて男は聞いた。
「ああ、あれですか」
「そうだよ、教えろよ」
 タオルで髪をかき混ぜながら男は目を男に置いたままである。
 再度ビールの蓋を開けて男は答えた。
「ばか、って書いたんですよ」
 刹那、動きを止めて互いの目を双方が見つめた。
まだ唇の端に笑いを含めて目尻の上向いた男は言った。
「なんだよ」
 コップに刺さった梅は、やはり美しく壁に線を描き、ところどころが薄赤かった。



おわり



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20170429

赤と青(東方神起・リアル短編)
汗を浮かべたチャンミンは、海のようなにおいがする。
その日チャンミンは、俺の家までシティサイクルでやってきていた。そうするとすぐ分かった。部屋に入ってきたやつの肌には、汗が流れて光っていた。
持参したタオルでごしごしと体を拭うさまを、俺はソファに長くなったまま仰ぎ見た。チャンミンはリュックサックを床に置き、キッチンの冷蔵庫を勝手に開けた。
 取り出したミネラルウォーターを大きなグラスにどぼりどぼりと注いでいく。細く長い喉が水を速やかに流し続けるようすを、やはり俺は飽かず眺めた。
 そしてすぐに服を脱ぐ。体に吸着したようになったそれらを、ぽいぽいとこちらに放る。顔にはなんの表情もない。俺の目をただ、瞬くことなく捉えている。
 全裸になるとこう告げた。
「ほら、早く」
 大きなソファ―――これはお気に入りだ―――に横たわった俺に、顎をしゃくるようにする。
「ここで?」
「あっち」
 うんざりしたような顔でチャンミンは言う。俺からしたら巨大と言っていいその目は、開けるのが面倒だとでも言うように半ば閉じているように見えた。
ベッドの上で―――これも大きくて、すごく気に入っている―――俺はチャンミンの股の間に顔を埋めていた。
鼻から息をしながら、全身くまなくかいた汗の香が、脳を浸していくのを感じた。
チャンミンの香水と、体臭と、汗が混じるにおいを得ると、海岸に立っているような心地がした。
特に、ここ、今、俺が精一杯頬張っている箇所は、強いにおいに満ちている。鼻を鋭くついてくる。不思議なことにこれを嗅ぐと、俺は勃起してしまう。それはひどく恥ずかしく、俺は体を小さく折りたたみ、腹と太ももでしっかりと隠していた。
 はー、とあてつけるような溜め息を耳が捉えた。
「へったくそだなあ」
 俺はぬるぬると口の中からペニスを抜く。ほんとうにチャンミンのそれは大きい。俺よりもずっと。
 上目で見た俺に、まぶたの被さったような目でチャンミンは視線を下ろした。
「どうしたらうまくなんの」
「…そんな駄目か」
「駄目だよ。こんなんでいけるわけない」
「…わりい」
 もう一度、盛大な嘆息がチャンミンの口から漏れる。
「もういい」
 体をずらすチャンミンを見ながら、俺は上半身を起こした。
「も、っかい、やってみるって」
 チャンミンは今日、いつも以上に不機嫌だった。それはなんとなく分かっていた。こういうことをするとき、必ずこいつはそうなった。だが、さすがにここまでではない。
食い下がる俺に、軽蔑したようなまなざしを向けてチャンミンは言った。
「いい」
 太ももに置いた俺の手を乱暴に払う。
「でも」
「いいっつってんだろ」
 再度置いた俺の右手をチャンミンはまた、強く払った。その拍子に、俺の顎にチャンミンの爪がきっと滑った。
「って」
 さっとチャンミンは俺を振り返る。
指先で痛みを感じたところに触れる。人差し指の先、見るとそこには色が付いていた。
「…血、出た?」
 俺の傷跡と指を交互に見てチャンミンは問うた。
「…そうだな」
 人差し指を口に入れた。鉄の味。
「…こっち、向いてみて」
 瞳がすべて、俺に向かって姿を現していた。薄暗い、カーテンを閉め切った部屋の中、それなのにその星のような目は光を取り込みらんらんとしている。
 チャンミンは俺の顎に手を添えてまじまじと傷を見た。きっと横にぴい、と入ったかすかな跡だ。唇のすぐ下。髭剃りのミスだと、きっと人は思うだろう。
唇が弧を描いた。濃い眉は、眉頭が柔らかく上を向いた。
「もっと出ないかな」
「え?」
「いい色だから」
 そう言ってチャンミンは親指で俺の傷の横を押した。
「いてっ」
 だがチャンミンは黙っている。爪を立て、きゅううと俺の肌を押す。
「…あんま出ないな」
「も、やめろ、って」
 顔をしかめる俺に、力を込めるのをやめたチャンミンは、輝く目を合わせた。
「しょーがないな」
 光は失われなかった。それに微笑みも。俺はただ混乱する。チャンミンとこうしていると常に、何をし、何を思ったらいいのか、皆目見当がつかなくなった。だがそれが好きだった。ふたりでいるのにひとりきりになったかのような、おかしな感覚がこのときだけに訪れた。
 チャンミンの顔が迫った。と思ったときには唇がふさがれていた。すぐさま舌が入ってくる。だが急に引っ込み、下唇に噛み付かれる。強く吸われる。
「あ、ちゃんみ、いた」
 無視されるに決まっていた。チャンミンは俺にキスをあまりしない。こんなことは珍しい。口の中を翻弄され、その久方ぶりの快楽に、俺は軽くめまいを起こした。
 音のするほど激しくチャンミンはくちづけてきた。痛いのと気持ちよいのが混ざり合い、俺は眉間に皺を寄せた。
 ぢゅば、という音と共に唇が離れ、おそるおそる目を開けるとチャンミンの顔が数センチ先にあった。満足そうな笑顔。子供の頃を思い出す。
「いいねえ」
 じんじんとする唇を凝視しているのは俺にも分かった。そうしながら相変わらずにこにこと破顔している。
呆気に取られているとチャンミンが急に俺を倒した。ベッドに仰向けになった裸の俺を見下ろし、唇から歯を覗かせて笑いながらチャンミンは顔を下げた。
体じゅうのあちこちを執拗に吸われた。
強い痛みの走るくちづけを服に隠れるところすべてにまんべんなく受けた。乳首など、その上噛まれた。千切れるのではとぞっとした。
どれくらい時間が経ったのだろう。
チャンミンはようやく俺を吸引するのをやめた。鈍い痛みがそこらじゅうからする俺は、それで少しだけ安堵した。
気を抜いたところに、体の中心に、いちばん強い刺激が訪れた。
「うああっ」
 ふにゃりと横に折れていたそこを、チャンミンは強力に吸い上げた。でろでろの舌が俺の下腹を犯す。食うようになぶられる。
「チャンミン、やめ」
 あまりの悦びに、思わずそんなことを口走る。恐ろしくなる。血が巡る。ふつふつと、体が煮えるようになる。
 風船を膨らませたように俺のペニスは充血した。
 口を離したチャンミンは、あーははーと抑揚をつけて笑いを零した。
「すごいなあ」
 その充足感に満ちた声。あざけったような口ぶり。俺はたまらなくなる。恍惚となり、熱い頬に手をやった。
俺の先走りを手に取ると、チャンミンはなんのためらいもなくずっとアナルに指を入れた。声を上げる俺に何も言わず、また、口に立ち上がった部分を含んだ。
 薄いグレーのシーツの上、俺は投げ出された流木のようになっていた。おそらく全身、斑点が浮いている。血の浮かび上がった、赤いしみが、いくつもいくつもついている。唇と性器を腫らし、チャンミンが染色するのに俺はただ、任せていた。
上を擦るように中をまさぐられ、唇と舌でしつこくしごかれ、俺はもう、射精をしかけた。
それに気付いたチャンミンは、すべての動きをぴたりと止めた。
 目をきつく閉じていた俺は、薄くまぶたを開き、視界の中にチャンミンを探した。
体を起こしたチャンミンが、俺の脚を抱えている。
「いけると思ったの?」
 また、嘲笑を口に乗せる。
チャンミンの太い、太いペニスの先が、俺の穴にくちづける。その感触に、全身が泡立った。
 ぬ、ぬぬ、と入ってくる。
俺は口をぱくぱくさせて、足の指を強張らせた。
「ああ、いいね」
 チャンミンの声が降る。
「舌もちゃんと、赤くなってる」
 顔の真上に、チャンミンの顔がある。
そのにおい。
 潮が満ちる。
 栓をされた体を揺すられながら、俺は呼吸を繰り返す。
ただひとり、繰り返す。



おわり



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20170501

死んでもいい(東方神起・リアル短編)
いつもべろべろに酔うようにしている。
目も閉じてキスをする。ほんとうはしたくないから。
酒の味しかしないくちづけはそれでもやはり快感だ。ただ体の熱を高めるだけ、渦を巻く血を速く巡らせるためだけに、集中してその舌を吸う。
髭の痛みに内心舌打ちし、俺はいよいよいらだちが募る。
 破れるかと思うほど性急に服を脱ぎ、相手のそれも痛みを伴うくらいの力で剥ぐように取る。立ち上がってパンツを下ろせば、窮屈さを訴えていたであろうペニスが、ぶるりと俺の目の前に顔を出した。特有のにおいが鼻を抜け、酒を戻しそうになる。
ローションは使わない。その都度何かで代用する。このことに備えていたということが堪えられないのは、相変わらずだ。今日はサラダ油だった。
俺は最中、ずっと顔をしかめている。ここのところ、眉間の皺が深くなりすぎ、取ることも真剣に考え出していた。
「チャンミン」
 息の荒くなったユノが、呆けた顔で俺を呼ぶ。間抜けな顔だなと毎回思う。欲情している男は悲惨だ。隙だらけのようすをして、なんとか獲物を獲ようとしている。
ベッドの上でするのも好きじゃない。まるで恋人同士のようだから。
ソファで、床で、風呂で。
どこでだってよかったが、安らかな眠りに就く温かなベッドでふたりで横になる気はなかった。
硬く締まった俺の体を兄が細長い指でそっと触れる。それはもう、おずおずといったさまで。
怖いのだ。俺が。
恐怖が彼から伝わってくる。表情から、仕草から、声音から。何もかもから。
 全身の汗腺が、耐え切れぬように俺を濡らす。心臓が、小動物のそれのように、くるくるくるくる打っている。
壁に体の前を付け、俺は尻をユノに向けた。首にユノの掌が来る。熱いそれは俺の汗を蒸発させる。
必ず、ためらいがある。
きっと不器用なせいもある。しかしおそらくそれだけではない。繰り返し、穴を軽く啄ばむように、入るまでに間を作る。
それから、進める。
声など上げない。そう決めている。か、と喉の奥からぎりぎり許せる範囲の音を漏らすだけだ。歯を食いしばり、爆発しそうなユノの性器が俺を開いていくのを待つ。
その間、俺は自分で自分のものを擦り上げる。痛みで腑抜けたそれを、またみずからで高めていく。すっかり濡れていたことなど、無視して俺は自慰に耽る。
大きな溜め息が俺の髪にかかる。生温かいその感触。再度訪れるアルコール。肌が泡立ち、逃げ出したいと強く思う。
「チャンミン、入った」
 知ってるよ。
だが何も俺は言わない。
囁く声がどのような色を帯びていても、それはただの邪魔者だ。
唇を引き結んでいるだろう顔で、ユノは腰を振り始める。俺は思わず手が止まる。顔に力を込め、その衝撃に一刻も早く慣れるのをひたすら願う。
両手を壁についていた。粘ついた先がひどく擦れる。白い壁紙が汚れていく。荒い刺激の快さに、俺は後頭部がふわりとしびれた。
体の内を無理矢理広げられながら、体の外に飛び出た部分をひっきりなしに擦り付けた。
このときが、俺をおかしくしてしまう。こんな快楽、他にはなかった。
ユノの揺れる腹肉が俺の腰に当たる。筋肉の上についたたっぷりの脂肪。水分を帯びたその表面は、餅をつくような音を立てて俺の肌に吸い付いてくる。
すべてが嫌でしょうがなかった。だが変わらず体じゅうが沸き立つようになっている。拳を作って壁を叩くようにしながら、俺は相克する感覚と感情をしかたなく放っておいた。
肩に柔らかいものが触れる。ユノの唇。その中の舌。俺の腰に手を回し、自分にきゅうと引き寄せる。
燃えるような互いの体がひとつになることで、まるで溶鉱炉になったかのような錯覚に陥った。溶ける。いやだ。
「いや、だ」
 知らず言葉が口から出ていた。
 吐息と共にユノが呟く。
「痛い?」
 砂糖をたっぷり混ぜたような声の味。
いやだ。聞きたくない。
更にユノは両腕に力を込めた。腰と腰をくっつけ、かくかくとそのまま動く。
奥まで穿たれ、先から垂れたもので染まった俺のペニスはやはり壁と愛撫をし続け、ユノに抱きしめられながら気付くと俺は果てていた。白い色に白い色。ぬるぬると滑りのよさはいや増した。
「あ、いった、いった、から」
 きれぎれに俺は告げた。
「いったの?」
「うん」
「俺、まだ」
 分かってるよ。
だが結局また、何も言わない。
ユノは俺の肩に顔を埋め、ふうふう言いながら腰を速めた。
「チャンミン…」
 俺の名などと、認めたくないような言葉だった。
達した俺はこの永遠のように思える運動の奔流に圧倒された。濡れそぼった性器は壁と密着し、穴の奥も、ユノの中から出たものとサラダ油で、どろどろになっている。
つううと脚を液が伝った。
膨れ上がったユノのペニスが、俺を裂こうと奮っている。
いったばかりだと言うのに、俺は高波のようなものが背筋を襲うのが分かる。
「あ、出る、出る」
「出すなよ、中、出すなよ」
 慌てた俺はなんとか言った。毎度、するたびきつく注意をする事柄。なのに。
「出したらころ、」
 それなのにユノは引き抜くどころかより奥まで自分を入れ込み、びくびくとたくさん己を放った。俺の両の乳首を同時につまんで。 その衝撃で俺は再度射精した。ふるふる、ふるると、白い液は壁と床に飛んでいった。 
がくがくと膝が震えた。体力には自信がある。その俺が、立つこともままならない。脚を広げ、ふたり分の精液をだらだらと零し、肩で息をついている。
ずるずると体から侵入者は出て行った。その拍子に更に液は下る。不快感に目を瞑る。
「チャンミン」
 呼吸の合間に俺を呼ぶ。目の端で振り返る。俺を覗き込むようにして、ユノはこちらを見つめていた。
博愛主義者のような微笑みをたたえ、幸せそうに俺だけを目に映す。
「ごめん、出しちゃって」
 気付いたようにそう告げる。
 頭の横を壁に付け、俺は視線を泳がせた。脚を交差させ、股の間のひどいぬめりにぞっとする。
「…出したら殺すっつった」
「ごめんって」
 だって、とユノは続ける。
「中にいたくなっちゃうから」
 黒目をまた、兄に向けた。
なんの思惑もないその顔。思ったことをただ言っただけ。いつでも、どこでも、そうだった。
殺してやりたい。
そう思う。
そしてそのあと、自分も死にたい。



おわり



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  • ミス・レモン
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