海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 1(東方神起・リアル長編)
こんがり焼けたトーストにバターを塗りながら、チャンミンは今日ジャムを塗るのはやめよう、と思った。ユノからもらったストロベリージャムを、今朝使い切るつもりだった。だが冷蔵庫を覗いているとき鳴った携帯電話の音に動作を中断させられた。その場を離れ、音の方に向かう際、手に持っていたものをテーブルに置いた。バターだけだった。
電話の相手はマネージャーだった。今日の予定の変更を告げられた。昼過ぎに迎えに行く、と言われ、返事を返すか返さないかのうちにもう通話は切られていた。こういうせっかちさと雑さをチャンミンは好まなかった。だが、自分でも不思議だが、マネージャーの彼を大変好きだった。終話ボタンを押すたびに、自分の中のアンビバレンツな気持ちをチャンミンはもてあそんだ。舌打ちしながら微笑む、といった風に。
インスタントコーヒーとボイルドエッグ、焼いたベーコンを、バターを塗ったパンとともにテーブルに置いた。
すべての料理から温かな湯気が絵を描くように天に向かって消えていった。
エッグスタンドに立てた卵のてっぺんをスプーンの背でコンコン叩きながら、こんなに早く起きなければよかった、とチャンミンは後悔した。
開いたカーテンの向こうは気持ちよさそうに晴れ渡った空が拡がり、チャンミンのそんな思惑をあざ笑うかのようだった。
まあ、いいか。穴を開けた卵の中の、濃い黄色をすくい上げ、分厚い唇の隙間に滑り込ませる。上唇がその色に染まり、舌で舐め取る。がさり、と音を立ててパンに歯を入れる。舌には香ばしいバターの味しかなく、昨日までの甘味と酸味を覚えた体は、一瞬こんなはずじゃ、という驚きで満ちる。しかしすぐに思い直す。まだ、一回分だけ、残っている。あれは明日のお楽しみだ。
濃く淹れたコーヒーの苦味を喉へと落としながら、シャワーを浴びてからどうしようかとチャンミンは逡巡する。
窓の外の光に目を向けるたび、手招きをされているような感覚がチャンミンを包む。諦めのようにチャンミンは思う。着替えたら少し出よう。どこに行くかは外で決めてもいい。光合成の必要をチャンミンは感じた。もちろん植物ではないチャンミンだが、日光を浴び、自分の中の葉緑体が全身を勢いよく流れていくのを感じたい、と願う気持ちを植物のように持つことは、動物だってできるのだ。それは想像力のなせる技だ。
チャンミンは朝食を食べ終えると、鼻歌を歌いながら食器を片付けた。最近のお気に入りはサム・スミスだ。自分の声に合っていると思うし、単純に好きだった。鼻にかかった声質はかなり似ているところがある、とチャンミンは冷静に考えながら、食器の泡を優しく流し、かなり本気でろうろうと、マイ・フェイバリットを歌い上げた。
iPodの充電が満足なものだったか、ふと、気にかかる。
水を止め、入浴の前に充電しておこう、とチャンミンは思った。
充電のセットを済ませ、浴室に向かいながら、今朝、ユノは何をして昼まで過ごすのだろう、とぼんやり考えた。着ていたパジャマと部屋着兼用のスウェットを脱ぎ、カゴに放り込むと、上着の胸に赤いシミがあるのを目の端が捉えた。手に取って匂いを嗅ぐと、思った通りの苺の香りだ。ああ、明日で食べ切ってしまうんだ。チャンミンは先程と打って変わってその事実が哀しいものとして自分の中に拡がるのを迎えた。そうだ、ジャムを買いに行くか。チャンミンはシミ取り用洗剤をスウェットのジャムの箇所に付け、浴室のドアを勢いよく開いた。


つづく

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20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 2(東方神起・リアル長編)
「ジャム?」
メイクをされながら、ユノは鏡越しに聞き返した。チャンミンはメイクを既に終え、椅子に座ってテーブルの上にあった雑誌をぱらぱらめくっている。
「うん。前、くれたでしょ」
視線を宙に浮かせて記憶を辿り、ユノは「ああ」と呟く。
「苺のか?」
「そう」
「あれなー、ファンからもらったのだったよな。なんか有名な高いやつ」
「うん、確かに高そうでした」
「俺食べ過ぎると悪いと思ってさ。それでみんなに配ったんだよな」
「美味しかったですよ、高いだけあってか」
「そうだったなあ。俺数回で食べ切ったもん」
「早すぎですよそれ」
「だから配ったんだろ」
ふたりで軽く笑うと、メイク担当の女性が「おとと」と言って手を浮かせたのを見、ユノは「ごめん」と口を閉じた。目と口の端でまだ笑っているユノをチャンミンは鏡の中で見る。自分もまた同じようにさりげなく笑っていた。
「はい、できましたー」
女性が去り、ユノはぱっと立ち上がって自分を覗き込んだ。エラのあたりにできた吹き出物をその細長い人差し指で触ってみている。チャンミンからの位置ではほぼ完璧に隠されているように見えた。顔や髪をさまざまな角度から確認し終え、ユノはチャンミンの方にやって来た。
「もう着替えたんだな」チャンミンを見下ろしてユノは言う「それ似合ってんじゃん」。
雑誌から目を離さずチャンミンは答える。
「僕なんでも似合うから」
「お前なー」
ユノはチャンミンの肩を軽く小突いた。抵抗せず体を揺らし、視線はそのままチャンミンはにやりと笑う。
準備された衣装に着替えに、ユノは服が並ぶラックに向かった。スタイリストと話しながら、コンセプトと本人の着こなしの擦り合わせを行っている。今日は春がテーマだ。日本ならグレーがかった淡い色味が主体になるだろう、チャンミンは考える。韓国の春は、もっとぱきっとしたビビッドカラーを取り入れる。チャンミンは今日黄色いパンツだ。はっきり言ってこの黄色はあまり好きじゃなかった。上に着たシャツの派手な柄も。でも、確かに、似合ってはいた。チャンミンは似合わない髪型やファッションがあまりなかった。自分のそういうところを気に入っていたし、仕事上とても助かった。そこまで着飾ることに夢中になれない性質の自分には、見た目に頭を悩ませ過ぎることがないのはありがたかった。
ユノは逆に似合う髪型やファッションが多岐に渡るとは言い難かった。体型が若い頃と変わってきてからは、服のシルエットを特に気にした。だが、ユノのそういったこだわりは悪くない、とチャンミンは思っていた。プロフェッショナルだなと感心すらした。自分の無頓着さがこの仕事には有効でないと自覚するだけの賢さをチャンミンはもちろん持っていた。だが、それも自分なのだ。手元の雑誌の中のあらゆる格好のモデルたちも、特別チャンミンの気を引かなかった。
「チャンミン」
呼び掛けられ、振り向く。
衣装に身を包んだ声の主は、にっこり笑ってマネキンのようなポーズを取って立っている。まあ、なかなかいいんじゃない、とチャンミンは心中呟きながら、「僕の方がかっこいい」と実際には言った。雑誌を閉じて、テーブルに置く。
俺だって悪くないだろー?と鏡に向かってぶつぶつ零すユノに向かい、いたずらっぽく笑って、言う。
「痩せて見えるよ」
「マジ?」
「ほんとほんと」
本当に嬉しそうな鏡の中のユノの顔に吹き出してしまいそうになるのを、チャンミンはなんとかこらえ、ペットボトルの茶を飲んだ。


つづく


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20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 3(東方神起・リアル長編)
撮影とインタビューを終え、移動車の中、前後に並んで座ったふたりは、言葉を交わさなかったり、交わしたりしていた。いつものように。
夕方に差し掛かり、窓の外はその日の天気の良さを表し、美しい暖色に染まり始めていた。
その色を眺めながら、チャンミンは思い出した。はめたイヤホンを片耳だけ外す。
「そうそう、それでなんですよ」
こちらも音楽を聴くため両耳に栓をしているのに近いユノ相手に、若干大きな声を出す。
「んー?」
サングラスを掛けたユノは、心持ち振り向きながらチャンミンと同様片耳だけ解放する。
「今朝、ジャムを買ったんです」
「今朝?」
「今朝」
「ネットでってことか?」
「ううん、買いに出た」
「よくそんな時間あったな」
「だって今日予定早かったじゃん、もともとは」
「ああ、そういやそうだったな。俺電話来たとき一瞬起きて、また寝たんだったわ」
「そんなこったろうと思った」
はは、と笑いユノは言う。
「昨日飲み会だったんだよー」
「あ、そうなの」
「飲み会って言うか……合コン?」
「マジで?」
「マジで」
「地元の友達関係?」
「いや、後輩のひとりが集めた」
「三三?」
「四四」
「どうだったんです」
「全員と連絡先は交換したよ」
「全員と?」
「うん、とりあえず」
「なんだかなあ、それ。八方美人発揮されただけじゃないの」
「言うなあ、お前は」
ユノは言いながらまた笑う。
「いい子いなかった?特別」
「うーん、なあ」
「兄さんを気に入った子は?」
「俺はモテモテだよ」
「そういうのいいから」
「ほんとだって」
「いや、ほんとに」
「そんなにぐいぐい来た子はいなかったなあ」
「ぐいぐい来てほしいわけでもないでしょ」
「まーな」
「それとなく来る子もいなかった?」
「…うん、そーだな」
車がかすかに揺れ、ふたりの体も同時に傾いだ。
「で?どこに買いに行ったんだよ」
「ジャム?」
「うん」
「ほら、僕のマンションの近くに新しくショッピング施設できたじゃないですか。あそこにでっかい輸入食料品店が入ってるんだよ」
「…ああー。そうだな、ずっと工事してたとこな」
「オープンしたんだよ。初めて行った」
「どうだったー?」
「なかなかよかったですよ。いろいろ考えられてました」
「俺も今度行ってみよ。デートに使うかもだし」
「じゃあ合コン今度は成功させないとね」
「昨日のがこれから成功に向かうかもしんねーだろ」
「いや、駄目でしょうね」
「わっかんねーだろー?」
「ともかく、僕は今日はジャムしか買いませんでしたけど。また行きたいですよ」
「また、苺のにしたのか?」
「ええ、…フランスの」
「いいじゃん〜」
チャンミンは大瓶をふたつ、買った。ピンクがかった赤はチャンミンに自らの美味しさを主張し、ユノへのお返しにと両手ひとつずつ持ち、そのままレジに向かった。そのうちひとつは鞄の中に入っている。
メイクルームでのユノの人差し指の先や、チャンミンの言葉に心底嬉しそうに微笑む顔が、チャンミンの脳裏に浮かんだ。そしてユノが昨夜四人並んだ若く美しいだろう娘といまいち上手くは行かなかったという事実も。
「………美味しかったら、今度はブルーベリーにしてみます」
「おー」
しばらくしてユノはイヤホンを耳に戻す。
それを見つめながら、チャンミンもしゃかしゃかと音の漏れる玉を耳の穴へと押し込んだ。


つづく


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20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 4(東方神起・リアル長編)
コン!
と音を立てて、テーブルの上に透明なビニールに包まれ、フューシャピンクのリボンが結わえられたストロベリージャムの瓶が置かれた。
「これ、やるよ」
夜。
居酒屋の個室に、チャンミンはミノといた。
もともと今日は約束をしていた。だいぶ夜も深くなってから、ふたりで食事をしにいつも来るこの店に腰を落ち着けた。
居酒屋だが、時間的にも明日以降の仕事的にもアルコールを控えているふたりは、それぞれジンジャーエールとウーロン茶を飲んでいた。
なので完全に素面でミノは、サラダや白飯や漬物やスープなんかが並んだ中に、ものすごい存在感を発揮するスウィートなルックスの、そして文字通りの甘味を、大きな黒い目でじっと見つめた。
「なんですか、これ」
「見りゃ分かんだろ、ジャムだよ」
「…なんかホワイトデーのお返しみたいになってますけど。僕バレンタインにあげてないですよね、何も」
「なんでお前からバレンタインもらうんだよ。そういうネタもういいから」
「ファンからもらったとか?」ミノは瓶を手に取った「あ、フランス製じゃないですか」。
ぱりぱり、とビニールの音を鳴らして、ミノは瓶を回しながらまじまじ観察している。常に瞳孔が開いているような独特な眼差しと、何故だか口元に浮かぶ微妙な笑みを見て、チャンミンはスープをすすった。
「あんまり食べないか?そういうの」
まだじっくりジャムに目を注ぐミノに、チャンミンは問う。
「そうですねえ。でももらいます。嬉しいですよ」
そう言って自分の鞄にがさりがさりと大きな音を出しながらしまい込む。
「ありがとうございます」
言いながらぺこ、と頭を下げ、目尻を垂らして微笑むミノは、チャンミンにとっては確かに一番心和む相手かも知れなかった。彼はいつも穏やかで鷹揚で、ものごとをフラットな目で捉え、ひねくれたところがなかった。こういうものをたとえ贈ったところで変な邪推もからかいもしなかった。ジャムをふたつ買ってよかったとすらチャンミンは思った。
「うまいかは分かんないよ」
「そうなんですか?」
「俺も食べたことはないから」
「でも、こういうのってそんなにまずいとかないんじゃないですか」
「まあ、そうだな。フランス産だし」
「フランス産ですしね」
そしてしばらく黙々と箸とスプーンを進める。
「ユノ兄さんが合コンしたってさ、昨日」
ジンジャーエールで喉を潤し、ひと息ついてチャンミンは言う。
「あ、そうなんですか?」
ミノが立体的に膨らんだ唇を光らせ、口の中のものを飲み込み、答える。
「うん、全然うまくいかなかったっぽいけど」
軽く笑って、チャンミンは言う。
「あー。まあ簡単にはねえ。それは残念でしたねえ」
「んー。なあ。そろそろ彼女できてもいいんじゃないかと思うんだけどな。かなり真面目に」
漬物のカスを皿から拾い、口に運びながら、チャンミンは零す。
「自分だってでしょ」
ミノは笑いながら言う。
「お前もな」
チャンミンは肘でミノを軽く小突く。
へへ、と笑って、ミノは言う。
「なかなか僕たちの仕事はするっと話が進みにくいですからねえ」
「そんなの言い訳だろ」
「まあそうですけど。チャンミン兄さんの場合は人見知りっていうかかっこつけの方がネックですよね」
ごくあっさりと正直さを発揮してミノはチャンミンをやり込める。
「お前な。殴られたいのか」
「殴られたくはないです。でも、さっきのジャムだってちょっといいなって思ってる子とかにあげればよかったのに、僕なんかに回しちゃって」
「じゃあ返せ。あれ」
「もうもらったんで。僕のものです」
あははーと顔を溶かすように甘い笑顔を浮かべるミノの顔を眺めて、あービール飲みたい、と思いながら、チャンミンはジンジャーエールを飲み干した。


つづく


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20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 5(東方神起・リアル長編)
昼下がりからの仕事の日。
チャンミンはベッドに横たわっていた。
隣では濃いブラウンの流れる髪が、カーテンの隙間から零れる光を受けて光っていた。手入れの行き届いたその髪に、指先で軽く、チャンミンは触れた。ぷるん、と押し返す感触に満足を覚えながら、チャンミンはうつ伏せていた体を仰向け、ふー、と嘆息した。
ベッドサイドの携帯に手を伸ばす。
まだ昼前だ。
久しぶりに朝をゆっくり家で過ごせる。
チャンミンは下着のパンツだけを履いていた。隣に寝ている方は何も身に付けていない。だいぶ暖かくなってきたこの季節、部屋の中は、暖房を付けずとも布団の中にくるまれていれば寒さを感じることはなかった。向こうを向いた肩の先が陽光を反射するのをチャンミンは見ながら、もう一回しようか、起きて朝ご飯を作ろうか思案した。この肩を掴んでこちらに向かせ、その唇に口を付ければ、相手はすぐに舌で自分を迎えるだろう。
あ。ジャムがある。
動物的な舌の甘さより、苺に砂糖と熱を加えた、喉を優しく焦がして落ちていく、あの、甘さ。
買って以来、早朝からの仕事が続き、まだ封を開けていなかった。
思い付いたら、淡い性欲はふわふわと霧のように宙に消えていった。
起き上がり、チャンミンはその肩を色気のかけらもないようすで掴み、揺らす。
「ほら、もう起きた方がいいよ」
うーん、と声が上がる。
早くパンを焼きたい、チャンミンはそのまま相手を放って、ベッドを出た。


「チャンミン、そこどーした?」
ユノが斜め後ろから、声を掛ける。
打ち合わせのためにテーブルをスタッフと囲むふたりは、並んで座っていた。
スタッフだけが事実確認の必要から話し合いを始めたさなか、椅子に背をもたせかけたユノは、チャンミンの首に目を留めた。
チャンミンは振り向き、ユノがチャンミンを見つめながら、自分の首の後ろに手を回し、指の先でつんつん、と触る仕草を見る。自分の首の後ろに手をやると、小さなミミズ腫れのようなものがあるのを指が見付けた。
「引っ掻いたか?」
ユノがにや、といやらしい笑みを浮かべて、言う。
「自分でじゃなさそうだなあ」
チャンミンは眉で八を描き、唇の片方を上げて答える。
「気持ち悪い想像しないでください」
「してないよ、別に」
「してる顔ですよ」
「だいたい気持ち悪くないだろ」
「兄さんがしてると気持ち悪い」
「彼女できたのかよ」
「できてませんよ」
「…ああー。あの、モデルの子?」
「…そーです」
ユノは手元の資料に目を落として、口元の微笑はそのまま、言う。
「……まだ続いてたんだー。付き合ってんじゃないのー」
「付き合ってませんて」
「そーなの?」
「自分だって、そういう子いるでしょ」
「最近めっきりご無沙汰だよ」
「…マジで?…まだ、若いのに、枯れたの?兄さん」
声を落とし、スタッフを気にしながら、チャンミンはわずかに目をむいてユノに問う。
「…枯れちゃったのかなー」
はあー、と大げさなため息を漏らし、ユノは首を振った。
「…なに馬鹿げた芝居してんの。やばくないですか、ほんとになんもないんですか」
んー、と上目遣いをし、記憶を辿るような風を見せ、ユノは答える。
「…ないな」
「…じゃあ、もう、映像ばっか…そして自分で…」
「まあなー」
「………せつねー」
チャンミンは呆れたようにユノを眺める。
「そういうときもあるんじゃん?」
「若さを楽しみなよ」
「もう若いって感じしねーよ、正直」
ぺらりぺらりと紙をめくりながら、まったく普通に零したその言葉が、ユノの本心であるとチャンミンには分かった。でも、そんなこと言ってほしくない、とチャンミンは思いながら、口にはしなかった。
「まったく、おじさんはしょーがないな」
チャンミンはそう言った。
ユノは笑っている。
スタッフがふたりに話し掛けた。
揃って、東方神起は顔を上げた。



つづく


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20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 6(東方神起・リアル長編)
練習室に朝、やって来たときから、その日ユノは変だった。
元気にドアを開け、スタッフやダンサー仲間に親しみを込めて挨拶していくのは確かに同じだ。チャンミンに対しても。
だがチャンミンは気付いたし、付き合いの長いそこにいたメンバーたちも気付いていた。
ユノは元気と言えば元気だった。だが、それは“振り”だった。
体調がすぐれないときや、仕事がある種の危機に陥ったとき。そういったときのユノの空元気のさまを、皆の目の前でまた、ユノは演じていた。
こういう場合、チャンミンが何があったのかを尋ねる役であることは暗黙の了解であった。チャンミンは嫌だったが、もともとそういうことに気を使い続けるのが性に合わない性格が、その役目を担う後押しをした。
サングラスとマスクを取り、ユノはストレッチを始めようとしていた。チャンミンは床に座り込んで開脚したユノに近寄った。こちらに背を向けたユノのそばに行き、そっと上から覗き込むと、その顔は常と同じく顔のラインのそこここにニキビができ、髭剃りの荒さによって口の周りは若干青みがかっている。そして常と違うのは、顔色が悪く、目の輝きは失せ、具合が悪そうと言っていいようすであることだった。
「兄さん?」
チャンミンはもう既に風邪か何かだろうと決めてかかっていた。しかもかなり悪性かもしれないと踏んでいた。
ほぼ真上と言っていい位置にいたにも関わらず、それまでユノはまったく気付かなかったという態度で、驚いてチャンミンを見上げた。
「びっくりした。何?」
「具合、悪いの?」
チャンミンは膝に手を着き、ユノの顔に顔をなるたけ近付けた。その目はやはりとろんと焦点を結ぶ強さを欠き、チャンミンを見ながらまったく違うものを見ているかのようだった。
「悪くないよー」
力なく微笑み、ユノは言う。
「いや、悪いでしょ」
反論しながらチャンミンは腰を下ろした。
「顔色悪いよ。みんな気付いてる」
「そう?」壁一面に貼られた鏡を振り向き、頬に手を添え自分をまじまじと眺める。「そんなことないんじゃね?」
「あるよ」
チャンミンは呆れて食い下がる。
「そう?」
ユノはチャンミンに向き直り、また、微笑む。
「でも、大丈夫だよ。俺、全然平気。元気だもん」
「……どしたんですか」
何か引っかかるものを感じ、チャンミンは先刻までの自分の考えを改める気になった。これは、おそらく、突っ込んで話を聞かないと分からない原因がある、 と長く密接な関係をもとにしたかなり真実に近い予想をチャンミンは立てた。こういう顔をし、こういう返答をするユノを見るのは覚えているだけでも数回しかなかった。
「なんもないよー」
へらへらと笑い、演じきれていると思い込んでいる兄貴分と顔を突き合わせながら、チャンミンは思案した。
「今日、昼休憩、一緒に外食べに行こう。ふたりだけで」
断固とした口調でチャンミンは言う。
ユノはなんでもないことのように、「うん、いいよ」とまだ笑みは消さぬまま答え、床に上半身をぺたり、とくっつけた。


つづく


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20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 7(東方神起・リアル長編)
「で?何があったんですか?」
向かいに座ったユノに、注文を終えた途端チャンミンは尋ねた。
ユノは汗をかいたグラスに手を伸ばし、長い指を周りにまとわせて、ただ掴んでいる。注がれた水の表面に目を落とし、口元には何故か笑みのようなものが浮かんでいるのが、チャンミンには不可解だった。
「兄さん?」
ふたりは少し長めに休憩を取り、落ち着いて話せる場所、と考えたチャンミンが決めた、ときどき食べに来る個室風の間取りを備えた定食屋に、わざわざチャンミンの運転する車でやって来た。
チャンミンはことによったら今日はこれで仕事には戻らないことになるかもしれないと予想していた。少なくとも、ユノは帰した方がいい、と決めていた。
ようやくグラスを口に運んだユノは、していたマスクを下げて水を含んだ。その姿は風邪っぴきかインフルエンザ患者にしか、チャンミンには見えなかった。
「言いたくないの?」
優しく、チャンミンは追及した。
弱ったユノはチャンミンの哀れを誘った。仕事に疲れたお父さんといった風情があった。
グラスをトッ、とテーブルに置き、ユノはチャンミンと目を合わせた。
マスクを顎に引っ掛けたその顔は、滑稽さと切実さが混ざり合い、チャンミンの眉を漢字の八にいざなった。
「そんな顔すんなよ」
ふっと、弱く微笑んでユノはチャンミンに言う。
チャンミンは胸のあたりがわずかにざわざわする感じを退けようと、脚を組んで上半身を乗り出した。
「心配してんですよ」
「…ごめん」
「謝んなくてもいーです。ただ、もし、僕に言えることなら。特に、僕に関係することなら、教えて欲しいと思ってるだけだよ」
「ほんとになー…」ユノは自分の首をぼりぼりと掻いた。「こんなつもりじゃなかったんだよー…」
そのままユノは手を首に置いた格好で、俯いてしまった。
チャンミンはかなり本気で憂慮し始めた。何かの病気にかかったか、もしくは。さまざまな想像がチャンミンの回転の速い頭に浮かんでは消えをとんでもない数繰り返した。 おもむろに、視線をテーブルの水滴が落ちたところに置きながら、ユノは口を開いた。少しだけまた、微笑を浮かべて。
「……………………付き合ってる人が、いるんだよ」
言葉の意味を飲み込むのに、数秒、チャンミンにしては相当長い時間が、かかった。
次の瞬間、ユノはチャンミンにお手拭きを投げ付けられていた。
「………何、そんな、病人みたいに………」
朝から今までの自分を殴りたい思いでチャンミンはユノを見た。ユノはでへへ、と言わんばかりの顔で上目でチャンミンを見返し、「ごめん」と言う。
チャンミンは呆れ返って大きな目を更に見開き、ぱちぱちと瞬きを繰り返しながらユノに食ってかかった。
「なんなんですか。みんなかなり心配してますよ。僕だってそうだし。それくらいようす変だったんですよ、兄さんは。なんですかそれで、彼女できたって。馬鹿言わないでくださいよ」
口角泡を飛ばす勢いでチャンミンはひと息に言葉を浴びせた。「まったく…」とぶつぶつまだ零すチャンミンに対し、しょんぼりしつつどこかひとごとのような態でユノは視線をそらし、肩をすくめた。
「ごめん、みんなには後で謝っとくよ」横目でチャンミンを見、再び謝る。「ごめんな、チャンミン」
目の前のユノのさまと、特に大事ではなかったということで、チャンミンは一気に気が抜け、ものすごい空腹が襲ってきた。早くビビンバ定食が来ないかなと思った。
「…だけど、なんで、そんな、体調悪そうな感じなんです」
チャンミンは嘆息しつつユノに問い掛けた。
「幸せいっぱいって感じじゃありませんよ」
注文したものが今にも運ばれて来ないかチャンミンはちらりと振り向き、確認しながら言葉を続けた。
目を戻すと、ユノは確かに笑っていた。だが、それはチャンミンには自嘲だと分かる笑みだった。
「…なんなんですか」
「……いやー、なあ」
ユノは言いにくそうに言葉を区切る。片方の唇の端を上げ、また、水滴の描く模様を目に映している。
「…付き合い始めてちょっと経つんだけど。……………結婚してるんだって。彼女」
ユノが、チャンミンを見る。
チャンミンも、ユノを見ていた。
「……昨日、知ったんだ」
はい、ビビンバ定食とサムゲタン定食おまちどおさまでーす、という店員の高い声が、ふたりの頭の上で響き渡った。
女性店員は器用に両手に盆をひとつずつ持ち、微笑んで立っていた。
チャンミンとユノは同時に、彼女の顔と盆から上る湯気を見た。


つづく


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20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 8(東方神起・リアル長編)
ふたりの前には美味しそうな料理が並んでいた。
誘うように湯気を立て、つやつや光るそれらを見つめて、チャンミンもユノも、ただ黙ってじっと座っていた。
「…食べよ」
やっと、チャンミンは口を開いた。
そしてスプーンを手にし、ユノを見た。
「…ん」
ユノもスプーンを手に取る。
チャンミンはビビンバをかき混ぜ、ユノはスープを啜った。
「…うまいなあ、ここ」
「…個室が取れて、昼からやってて、味もいいのは、ここと、あともう一箇所くらいです」
「そっかあ。…いいとこ知ってんな、チャンミン」
「…デートに使いますか?」
意識的に軽く、チャンミンは言ってみた。
ユノはスープの中をスプーンでゆっくりかき回しながら、曖昧な微笑を浮かべて、視線は落として、答える。
「…昼間ふたりで出歩くのは、ちょっと無理かなあ」
「て言うか別れないの?」
堪えられず、根本的な質問をぶつける。
チャンミンの丸い大きな目を、ユノは上に跳ねるように目尻の上がったつぶらな目で見返した。どちらの目も、ゆらゆらと蜃気楼のように揺れていた。
「……昨日言われて、考えてたんだ」
視線を手元にまた置いて、スプーンで掬っては戻し、掬っては戻しを繰り返し、ユノはとつとつと語る。
「別れなきゃな、って……。なんだけど」
カツン、と器の縁にスプーンが当たる。
「朝、起きたらさ………なんか、別れる気が全然ないって自分で分かったの」
チャンミンはユノの伏せた目を眺めながら、ユノは何故ずっと、笑みを絶やさないのだろう、と今日これまで抱えてきた疑問がなんとなく解けるのを感じた。
ユノは、自分を笑っているのだった。
確かに先刻もチャンミンには自嘲だと分かるときがあった。しかし、これは自分を馬鹿だと見下して笑っているというより−自分を面白がっているのだ。
ユノは不倫などと縁のないタイプだ。誰に聞いてもそう言うだろうし、本人自身そう思っていただろうし、チャンミンもまあまずしないだろうと思っていた。それが。今、目の前に座っている男は、事実に打ちのめされ憔悴しているが、失恋し荒れて落ち込んでいるのではなく、ただ淡々とそれを受け入れようとする姿勢を見せているのだ。つまりこれはディフェンスのための沈静化だった。動きを最小限にし、あらゆるものから身を守ろうとしているせいでひどく弱って見えた。嵐の中じっとうずくまる小動物のようだった。
そんな風になった自分を、ユノは自分でも驚きとともに迎えたはずだ。それできっと、自然と笑ってしまうのだろう。純粋におかしみから。
「……本気?」
「………うん」
「こんなこと、言いたくないけど………でも言わないといけないから言うけど、…ばれたら、やばいよ」
「うん。そうだよな。…別れなくちゃいけないのは分かってるんだ」
「…だけど、今すぐは、別れられない?」
「………チャンミンが別れろって言うなら、別れる」
ユノは既にスープをかき混ぜることをやめていた。
もう口には笑みなど1ミリも残っていなかった。
まっすぐにチャンミンを見て、本気でチャンミンに託していた。
チャンミンは口を薄く開き、眉を困った風に歪め、ユノの視線と希望を受け止めた。
ずるかった。
東方神起を、ユノはチャンミンに任せた。
チャンミンは頭の中にさまざまな考えが去来した。
別れた方がいいに決まっている。
それはもう、決定事項のようなものだ。
だが。
チャンミンの中で何かが叫んでいる。
ユノを今のようにただ仕事のみで年を取らせていいのか?
もちろんこれから、また色んな女性に出会うだろう。
しかしこれ程の執着を恋人に見せたことが、かつてユノにあっただろうか。
記憶を辿っても、チャンミンには思い出せなかった。
もしも今のような状態が続き、ユノから覇気というものが消え失せてしまったら、仕事に影響が出る。
もしもマスコミに漏れたら、下手したら東方神起は終わりを迎える。
いいことなんかない。
でも、とチャンミンは思う。
人生、こんなことで大事な人間をただ好きな女と別れさせて、なんになるっていうんだ?
俺はその選択をし、ユノに仕事と俺を残して、本当に満足なのか?
確かにその女性がユノと最終的に結ばれる可能性は、ほぼないだろう。
だけどそういう問題じゃない。
−歌うたいが恋をしないでどうするんだ。
チャンミンは瞬きをして唇を動かす。
「………仕事は、きちんとしなきゃ駄目ですよ」
どうしてか囁くように言葉が出た。
「やれるとこまでやってみたらいいんじゃないですか」
小さな目を可能な限り広げ、ユノはチャンミンを見つめた。
「……チャンミン」
「あと、ご飯もちゃんと食べないと駄目です」
チャンミンは石焼きにも関わらず、ほとんど冷めたビビンバを勢いよくまたかき混ぜる。
視線を動かさず、ユノがチャンミンを見続けているのを、チャンミンはビビンバを見下ろしながら感じていた。
「ほら、食べて。…残したら今の言葉、撤回します」
手を懸命に動かしながら、チャンミンはこのビビンバのような心中がばれぬよう、決して顔は、上げなかった。


つづく


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20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 9(東方神起・リアル長編)
やはり今日、ユノはもう帰った方がいいだろうということになり、チャンミンはユノの家まで彼を送り届け、今、仕事に戻る途中であった。
今日おかしかったのは、体調が悪かったことにしますから。
そう言って、仕事に戻ると言ってかなり粘ったユノを、チャンミンは説き伏せた。
兄さんが戻ったら、みんな、じゃあ今朝はなんだったんだって思いますから。
ユノはうなだれて承諾した。
マンションの前で、マスクとサングラスをしたユノがチャンミンに向かって手を挙げるようすは、芸能人というより不審者に近かった。吹き出しそうになるのを笑顔に転化し、チャンミンも車の中から手を挙げて、その場を去った。
「どんな人なんですか」
ユノに問うと、困惑したような顔で、曖昧模糊とした返事が返ってきた。
「…どんな…?どんな………。…髪が、短い」
「へえ。意外だな。兄さん長い方が好きでしょ」
「うん。そうだな。でも、短いんだ」
「背は?」
「…低い。かなり低い」
「ほんと。色は?」
「…ちょっと地黒?」
「へえー!顔は?」
「…………なんか、パーツが全部、小さい。顔も、小さい」
「……バストがすごいあるとか?」
「ううん」
「手足が背と比べてすっごい長くて綺麗とか?」
「ううん」
「おしゃれなの?」
「……えーと、普通。パンツスタイルかな。ほぼ」
「仕事何?」
「会社勤め。なんだったかな、営業のはずだけど」
「どうやって知り合ったの、だいたい」
「仕事関係だよ。事務所の人に、なんかの仕事で、関係する会社の方たちがばーっと来てるのに挨拶させられたんだよ。その中にいた」
「なんでそれでそうなったの」
「……俺、手、怪我しててさ。練習で」
「はあ」
「挨拶したとき、彼女それに気付いて絆創膏くれたんだよ」
「はあ」
「名刺もらうじゃん。そんで、電話かけた」
「……すごい行動力だね」
「自分でもびっくりした」
「絆創膏もらって、惚れるって……高校生みたいな……」
「…うーん。絆創膏もらったというのもあるけど、それよりも、そのときの彼女の感じが…」
「…何?」
「さっき言ったけど、彼女すごく小さくて、俺のこと本当に、見上げてるわけ。…髪が黒くて、短くて…肌がつるっとしてて、浅黒くて…目が丸くて、黒目が黒いんだ。…パンツのスーツ着て…男みたいだった。うん。少年だった。だけど、口紅はボルドーなんだ」
チャンミンは思わず黙って、ユノがぼそぼそと、だが夢中で語るのを、ひとことも漏らすまいと耳を傾けた。こんなユノは初めてだった。別人と話しているようだった。
「怪我してますよ、って言ったんだ。声が高くて。一瞬何を言われたか分かんなかった。鞄から絆創膏出して、なんにも表情変えずに、どうぞ、って差し出してきた。俺、驚いて、慌ててお礼言って受け取ったら、いいえ、って言って、そのまままた仕事の話になったんだ」
「………それで?」
「…なんか、忘れらんなくて。あの顔が。あの声とか。あの雰囲気がさ」
「…そう…」
「うん。…すげー迷ったけど、思い切ってかけた。で、なんか適当に嘘言って、会った」
「……すごいな」
「なあ。すごいよな」
「彼女、…いくつ?」
「…えっと、……38」
「………さっ」
んじゅうはち、とチャンミンは繰り返す。
「ほんと驚いたよ。全然見えないんだ」
ユノはまた笑う。ははははーと。
「……そんなこと、全然気になんないんだよ」
信号待ちをしながら、チャンミンは昔の自分たちの曲を思い出していた。
まだユノとふたりになる前に、日本で出したアルバムに、入っていた。
日本ではたまにこういう曲が出されることがあるらしいことを、そのとき初めて、誰かから聞いた。ごく普通にメジャーなものとして、出回っていると。変わってるな、とチャンミンは思った。日本ぽいな、とも。
まだ、ごく、若く、チャンミンはただ、その曲調が気に入った。ライブで歌うのも、好きだった。
歌詞の意味をこんなに噛みしめることになるとは、数年前の自分は、全く予想もしていなかった。
信号が変わる。
アクセルを踏みながらチャンミンはその歌の出だしを口ずさむ。その高いキーが、車中を流れる。
Nobody knows…
誰も知らない。俺以外。


つづく

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20170424

食べよ 歌えよ 恋せよ 10(東方神起・リアル長編)
ユノは変わった。
次の日から仕事に普通に復帰した。
調子が悪そうなようすもなく、チャンミン以外は皆、1日で治ったんだなとしか思わなかった。
顔色がすこぶるいいとは言えなかったが、振る舞いに変化はなく、仲間と談笑を交わし、ミーティングを行い、ダンスで汗を流した。
大声を上げて笑うユノは、いつもと同じ、ユノだった。
だが、着実にユノは変わって行った。
チャンミンはそのようすを、興味深く観察した。
まず、煙草をやめた。
どんなに周りが言っても、チャンミンが小言の多い小姑のようにちくちくいじめても、絶対にやめなかった煙草を、やめた。
健康管理。尋ねられればユノはにこやかにそう答えた。
もちろん違った。
チャンミンに、ユノは悲しそうに教えた。
「ダンサーでシンガーなのに煙草吸ってるなんて馬鹿だって言うんだ」
その通りだよ、とチャンミンは思い、実際、その通りだね、と口にした。
禁煙に関して特段苦しんでいる印象も受けなかった。
理由を尋ねると、首を傾げてユノは言った。
「なんでだろうな。ほんとはもっと吸いたくなってもおかしくないと思うんだけど」
そう言いながらユノは笑った。
「彼女と会うとき、匂いを嫌がられるのが何より嫌なんだ」
次に、間食をしなくなった。
ユノは甘いものを含めた菓子を、ぱくぱく食べる習慣があった。
それはチャンミンもしないではなかったが、ユノは度が過ぎた。
年齢を重ねるにつれ、消費できないものが蓄積されていき、ユノは常に体型を気にした。
常時箱で冷凍庫にストックされていたアイスクリームが、ひとつもなくても平気だと、ある日ユノはチャンミンに打ち明けた。重大事項のように。
「平常心でいられるんだよ、なくても」
眉間を寄せ、考え込むように言葉を続ける。
「こんなこと初めてだな」
チャンミンは控え室に置いてある、さまざまな種類の菓子がまったく減っていないのを、東方神起を始めて、初めて、目にすることになる。
そして、気遣い。
ユノははっきり言って鈍感で粗雑だった。
男らしいと言えば聞こえはいいが、チャンミンやその他長時間一緒にいる者は、そのだらしなさに時折怒りを覚えたものだった。
しかし、交際を始めてこっち、徐々に改善の兆しが見えた。
あちこちに自分のものを置きっぱなしにしない。
相手、特に女性の変化や態度にかなりの確率で気付く。
言葉を口にするまで少し思案の時間を取る。
チャンミンは驚いた。
昼食からふたりで戻り、目の前でユノがペットボトルを飲み出し、蓋を閉め、きちんと鞄にしまいこみ、そのまま鞄に前もって入れておいたらしいガムを取り出して、焼肉の後のチャンミンに勧めた。自分の口にひとつ放りながら。
この振る舞いは大多数の人間がごく自然に行うことだろうが、練習室の鏡の前に立つ我らがスター様は、すんなりとできたことがなかったのだ。
目を丸くしてガムを受け取るチャンミンに対し、ユノの顔には「?」が浮かんでいた。もぐもぐしながら微笑みを浮かべて。
ユノは見違えるようになった。
肌の肌理が細かくなり、ニキビは消え、いつも髭は綺麗に剃られ、体型が締まった。煙草の匂いは失せ、代わりにほのかな香水しか香らなくなった。服装も、訳の分からない色味や柄物をあまり着なくなり、こざっぱりとした。そして穏やかで、気配り上手と言えなくもなかった。
こんなことってあるものなのか。
チャンミンは隣に立つ、そして向かい合って座る、長年のパートナーを、心底不思議な気持ちで眺めた。
そして心配した。
これは、女ができたと、ばれてしまう。いや、きっと、ばれている。


つづく


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  • ミス・レモン
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