海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20161227

たゆたう境界と染まる男(リアル短編・年末企画・グループミックス)
鏡の中の自分と相対することは義務だと、ベッキョンは思っていた。
当然だ、と彼は己を見つめていつも自分に言い聞かせた。人から見られること、それが仕事なのだから。
メイクを済ませたあとにそうしてあちこち念入りにチェックしていると、なんだかおかしな気持ちにもなった。この世界に身を置くようになって(おふざけで化粧をしたことはないではなかったが、きちんと、社会に受け入れられようとする気概を持って)初めて、いかに魅力的に、短所も長所も活かして顔を作り上げるかということに苦心し始めると、女性の気持ちが少しだけ分かるような、ステージ上での振舞いや在り方もあいまって、自分の性別がふわふわとするような、妙な心地が彼を襲った。
目の周りはぼうっと灰と紫がにじんでいた。
その中身はごく小さい瞳が乗った、平凡なものだった。目の尻は、心持ち下を向いている。
はっきり言ってみずからをハンサムだと思ったことはなかった。昔番組でギョンスに最下位にされたときも、ほんとうのほんとうは確かにそうだ、と心の隅でひとりごちていた。自分の顔が嫌いだということではなかった。ただ、ベッキョンはひどく冷静に自己を客観視できた。自身のどこが秀でていて、どこが劣っているかを誰よりも自覚していた。
柔らかく、目頭に入った粉のかすを指で押さえる。
すると先の尖った、白く長く、美しい指が彼の顔を半ば隠した。
こういうふうに手を置けば、こういうふうな効果が出るのか、とベッキョンは微妙に顔と手の角度を変えながら、今日のステージに思いを馳せた。
年の瀬の大々的な音楽祭が、もうすぐ始まろうとしていた。


控え室を出、大型のテレビとソファが置かれた開けたスペースにベッキョンが来てみると、談笑している出演者たちがちらほらと目に付いた。
長椅子型の白いソファーのうちのひとつに、まぶたを下ろしたヒチョルが仰向けに横たわり、胸の上に拳銃を乗せ、ほのかに開いた唇の端から赤い液を垂らしていた。
一瞬、ほんの一瞬だけどきりとしたベッキョンは、目を見張り、上からヒチョルを見下ろしたまま立ち尽くした。
ぼこりと浮いた眼球の上の皮膚はただ白く、薄く、肉感的に膨れ上がった唇は桃色で、歯の白と血に似た赤が互いの色を強調していた。
「兄さん」
 言いながらベッキョンはヒチョルの拳銃を握った手の上にみずからのそれを置いた。
ヒチョルの今日の衣装は、おそらくソロパフォーマンス用のもので、なんと全身虹色のスーツだった。馬鹿げた代物だ、とベッキョンは思いながら、それでもソファに横たわったこの男の姿は、若手監督が撮ったキッチュな映画の中のひとコマに見えなくもない、と同時に感じていた。もう一度呼ぶ。兄さん。呼ぶと共に置いた手で軽く相手を揺らした。
ぱちりと大きな目が現れた。
ぎょろ、と自分をそれが捉えると、思わず後ずさりしそうな心境にベッキョンはなった。実はいつも、少しだけそうだった。ヒチョルの目は何か心をざわめかせるものがある。
「何やってんですか」
 苦笑してソファに回り込み、肘掛に浅く尻を置いた。
「やっと反応示してくれるやつが来た」
 よいせと起き上がり、たぶん三十分くらいずっとこうしてた、とヒチョルは呟いた。
俯いたため見えたうなじに視線を這わせ、まじで、と笑うと、半分くらい、いや大部分うとうとしてたけど、と返って来た。
「それどうしたんですか」
 ベッキョンはみずからの誇る手指に負けない、いやそれ以上かもしれないヒチョルのそれがいじくっている、真っ黒い銃を見下ろし尋ねた。ヒチョルは両手でかしゃかしゃとひっきりなしに人殺し道具もどきを触っていた。
「今日のステージの小道具。結構重い。効果的かどうかは微妙なとこだな」
 ほら、と掲げて007ばりにポージングするヒチョルを俯瞰すると、ベッキョンは率直に格好いいなと思った。誰がしたって間抜けになるだろう服装で、ギャグにしかならないかっこつけなのに、ヒチョルにはそれをスタイリッシュに見せるだけのルックスと魅力があった。長い髪を横分けにして片目で流し目を作るヒチョルは、ベッキョンにないものの塊だった。
「どうだ?」
「だっさい」
 本音を隠してくははははとベッキョンが笑うと、ヒチョルはベッキョンの腹めがけて銃口で突いてきた。うそ、うそ、とベッキョンが謝っても、ヒチョルは長い腕でベッキョンを絡め取り、自分の脚の間に抱え込んだ。
そのままヒチョルの体に後ろから抱きかかえられるようにして、ベッキョンはソファに座ると、再びほら、と声がした。
「持ってみるか?」
 すうっと長い指から零れるようにベッキョンの手に黒く光る偽物の銃が置かれた。ずしりとした重みに、両の手で水をすくうように持ちながら、まじまじと見つめていると、視線を感じた。ヒチョルがあの目で自分を見ている、そう思うと、ベッキョンはなんだかいたたまれない気持ちになった。そう、自分を自分で眺めているときのように、自分がいったいなんなのかが判別できなくなっていくような感覚だった。それこそ両性具有的な美しさと妖しさを併せ持つあらゆる意味で稀有な先輩は、後輩の中でもベッキョンにとりわけ優しく、さまざまなかたちで可愛がってくれた。彼といると---特に化粧などしていると---いったい俺たちはなんなんだろう、という疑問が湧いてきた。ヒチョルはほんとうに綺麗だ、とベッキョンは思っていた。ずっと昔から、今に至るまで。背の高い、ほとんどモデルのような体型に、小さな頭、長い髪、はっきりとした顔立ち。ヒチョルに見下ろされ、射すくめられ、マネキンのような手で触れられると、笑いながら、泣きたいような心持ちになった。そんな思いを抱くのはヒチョルに対してのみであった。
瞬きをしつつ、なんでもないようにヒチョルの視線を受け止めにこにこしながら銃を返すと、口元の血糊に改めて目が留まった。それに気付いたヒチョルがああこれ、と言う。
「新発売の液体状の口紅。結構いい赤だよな」
 中指の先でヒチョルは口の端を拭った。唇に色が付く。
きっとこの色もよく似合うだろう、とベッキョンは想像した。数限りなく行われたヒチョルの女装は、当然ベッキョンも見たことがあった。画面越しでも、直にでも。そのたびやはり驚いてはしまうのだが、しかしベッキョンはそういう、いわゆる女装というものよりも、こうした、ちょっとした彼の曰くいいがたい揺れのようなものを目にする方が動揺した。耳にかかった髪の毛の感じであるとか、横から見た唇の膨らみであるとか、目の端でこちらを見るときのまつげとまぶたの伏せ方であるとか。今、唇を一部彩った赤は、ベッキョンの目を釘付けにさせた。
「似合うか?」
 にやりと笑みを作るとヒチョルは紅を指で伸ばし、唇を赤く染めた。ベッキョンは図らずも息を呑んだ、頭の中の画がそのまま眼前に現れたためだった。はみ出しながらも赤く塗られた唇は、笑みのかたちのままだった。
目線を上げてヒチョルのそれと合わせると、なんとか唇の両端を上げて似合うよ、と答えた。
「あ」
 襟元を見たヒチョルが声を出すと、ベッキョンは体が跳ねた。
「な、何?」
「動くな」
 自分を振り向かせたまま、ヒチョルはベッキョンの首に顔を寄せた。ヒチョルの髪が顎をかすめ、香りが鼻を通った。何が何やらわけが分からず、体は強張ったまま、時が過ぎるのを待った。
「おっし」
 嬉しそうなヒチョルの声が間近で響く。
顔の前に顔が戻ってくると、それは満面の笑顔で、その横には繊細な指先でつままれた糸くずが垂れていた。白い糸はところどころ赤く汚れている。
「だいじょーぶ。シャツには付けなかった。俺、やるな」
 ぱしぱしと襟元を擦られながら、ベッキョンは呆気に取られていた。
「…ありがとございます」
「かたことかよ」
 唇の片端で笑うヒチョルは、やべ、もう行かなきゃだな、と言い立ち上がった。
「それ」
「あ?」
 振り向き見下ろしてくるヒチョルに対し、自分が真顔になっているのがベッキョンは分かった。だが構わないと、何故か思った。
「捨てとくんで」
 ヒチョルが手に持ったままだった糸くずを受け取るため、ベッキョンは自分の手を差し出した。
ああ、と漏らしたヒチョルが指を開くと、それぞれの造形の美を主張してやまない手と手の間で、白と赤に彩られた繊維の絡まりがふにふにと動いた。
じゃな、がんばれよ、と言って後輩の頬を優しく二度ほど叩くと、ヒチョルは大儀そうにぺたぺたと足音を鳴らして去っていった。一度向こうを向いたまま再び銃を持ったポーズを決めながら。
虹色の男の後ろ姿を見送りつつ、かっこいい兄さん!と声を掛けると、ひらひらと手を振られた。
ヒチョルが見えなくなると、手の上に置かれた糸にベッキョンは目を落とした。赤がくっきりと目に飛び込んでくる。先程あんなに近くにあったあの目。鼻。髪。指。---唇。
 付くわけもないと分かっていたが、ベッキョンはその糸の紅を、みずからの唇に押し付けずにはいられなかった。



おわり




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20170102

きれいな人(リアル短編・お正月企画2・グループミックス)
 年明けから続く忙しい日々の中、ようやくマンションに辿り着いた頃、突然ジュンミョンは先輩から呼び出された。深夜だった。
へとへとだったが、翌朝は比較的ゆっくりとした出になることと、呼び出された相手がキュヒョンだったことで、ジュンミョンは脱いだばかりのコートをまたしっかりと着込み、家を後にした。背後から届いたセフンの「お疲れ様」という言葉が実に身に染みた。
何度かいっしょに来たことのある個室居酒屋が指定された場所だった。タクシーを使ってあっという間に到着すると、事情をよく飲み込んだ店員が何も言わずとも待ち合わせ相手のいる部屋へと案内してくれた。
「来たなー」
 防寒とファン対策に厳重に自分を包んでいたあらゆる衣類を取り去りながら、ジュンミョンは目の前でもうすでにほとんど出来上がっているキュヒョンを口と目を開けて見つめた。こんなに酔っているとは思わなかった。
「お疲れ様です…飲んでますねえ」
 向かいの席に腰を下ろすと、テーブルの上は雑然としていた。食べかけの料理、飲みかけの酒。キュヒョンはほぼ顔に出ないたちの上、姿勢もある程度しゃんとし、きちんきちんときれいに杯を干すため、喋り出さないと酔っていることは傍からは分からなかった。しかし飲みの席を共にしたことが複数回あるジュンミョンは、さっきのひとことで彼が泥酔状態に近いことに気付いていた。
「うん、酔ってる」
 真顔でまっすぐジュンミョンを見、キュヒョンは答えた。逆に冗談のようで、ジュンミョンは思わず笑みを零した。
「そうですねえ」
「お前も飲め。注文しろ」
 そう言ってメニューを荒い動きでジュンミョンに渡す。
店員に要望を伝え、目当てのものが来ると、乾杯しながら改めて新年の祝いの言葉を述べ合った。
「ひとりで飲んでるなんて、どうしたんですか」
 温めた酒が喉と胃を焼いていくのを感じつつ、ジュンミョンは不思議そうに尋ねた。
「誰も捕まんなかったんだよ。思ったより早く体空いたのに」
 タイミング悪いよな、と言ってまた勢いよくグラスを空けるキュヒョンを見ていると、なんだか可愛らしいなとジュンミョンは思った。相当さびしかったのだろうと推察できた、そういう表情をキュヒョンはしていた。少しいつもとようすが違うような気がするとも、なんとなく感じた。
「残念でしたね、俺でよかったら付き合いますよ、朝までとかは無理ですけど」
「俺だって無理だよ。安心しろよ、そんなに長く引き止めねえよ」
 唇の端を上げて微笑むキュヒョンはひどく意地悪げに見え、ジュンミョンはこれまでと同様、また、この先輩に対するとりとめのない印象をいっそうもやもやとした掴みがたいものへと深めた。自分とまったく違うタイプの人間であり、自分のことを好いてくれるのかどうか、はっきり言ってあまり自信が持てなかった。どちらかと言えば苦手と言ってしまってもよかった。だが時間を共有していると、何故かそれが苦でないことをいつの間にか感じている、といった相手でもあった。だから今日も、こうしてここにやって来た。どうなるか皆目見当もつかなかったが、どこか楽しみに思う自分も、ジュンミョンの中にはいたのだった。
 仕事のことやメンバーのことを中心に話していると、視線がキュヒョンの隣の席に留まった。プレゼント包装のリボンらしきものが見え、ジュンミョンは口からコップを離すと問うた。
「兄さん」
「あ?」
「それ、なんですか?」
 目で白いリボンを指すと、キュヒョンは顔を横向けた。
「ああ」手で一度取り、すぐ元に戻すと続けた。「マニキュア」
「…プレゼント?ですか?」
「そう」
「…へえー」
 にやにやと笑うジュンミョンに、キュヒョンは目を向けなかった。まぶたを伏せ、自分の持つグラスをただ見下ろしている。
「来る前、露店で売っててさ。買ってみた」
「優しいんですねえ、喜びますよ」
 本心から言った。ジュンミョンは感動に近いものすら覚えていた。キュヒョンにそんな思わぬプレゼントをもらったら、俺がその立場だったら驚くやら嬉しいやらでどういうリアクションを取ればいいのか分からない、と思った。
「いや、どうかな」
 そんな思いを尻目に、さもおかしそうにくくくとキュヒョンが笑うものだから、ジュンミョンは軽く呆気に取られた。化粧品類に興味のない女性なのか?キュヒョンの趣味からいってそんな気はしないなと、ジュンミョンは彼に対する謎を弄びながら顔をまじまじと眺めた。
「…付き合って、長いんですか?」
 今までキュヒョンからそういった類の話を聞いたことはなかった。彼絡みでの集まりでそういうことを比較的話すのはむしろチャンミンやミノの方で、だからよりジュンミョンはこの話題にひどく興味をそそられた。
「長くは…ないなあ。最近」
「そうなんですか、一般の人ですか?」
「いや、仕事仲間」
「ほんとですか?大変ですね」
 目を丸くすると、印象的な唇がまたちょっと皮肉っぽく笑みを作った。
「まあなあ」
「どんな…人ですか?」
「年上」
「ほんとに!?」
「うん」
「…へえー」
「意外?」
「うーん…言われてみればそんなに違和感ないかも…」
 ふは、と顔を崩して笑うと、途端に甘い顔になる。うちのメンバーにない種類のそれだなあと、酔いの回ってきた頭でジュンミョンはぼんやり思う。
「…可愛いんですか」
 とろりとした目で問いかけると、キュヒョンは一瞥し、テーブルに視線を落として口を開いた。
「…うん。可愛いよ」瞬きもせず、黒い瞳をひとつところに置いて言った。「とても、きれいな人だよ」
 そんな言葉が返ってくると思わず、ジュンミョンは動きを止め、続く言葉を失った。色の白い、背筋の伸びた、恋人をそう語るキュヒョンこそ、ジュンミョンの目には非常にきれいなものとして映った。酔っ払いののろけだなどとからかうことはとてもできない清い姿だった。
「…今日、会う予定だったんだよ」
「え?」
「でも、仕事押したらしくてさ」
「ああ…」
 ちらとキュヒョンはばつが悪そうにジュンミョンを見た。
「悪い。おまえを代わりにしたってわけじゃないんだけど」
 その気遣いと優しさにジュンミョンは一瞬反応できなかった。そういうふうな思いやり深さが、キュヒョンにはあった。不意を突かれてそれは突然現れる。ジュンミョンはキュヒョンのこういうところがとても好きだとこのときはっきり自覚した。
「いえいえ、そんな。兄さんに会えて嬉しいですよ」
「お前はいつもそんな感じだなあ」
 もっと崩れろよ、と苦笑してキュヒョンは告げる。ジュンミョンは酒とキュヒョンへの親愛で体が火照り、冬だということを忘れた。
まぶたがくっつきそうな気配をキュヒョンが見せ始めたとき、静かにドアが開く音がし、ジュンミョンははっとした。
高い靴音が響き、すぐ横に背の高い、サングラスをかけた、隙のない格好をした美しい男が立っていた。
「……イトゥク兄さん」
 ジュンミョンはふらふらと立ち上がった。心から驚き、理性でしゃんとしなくてはと思ってはいたが、体がついていかなかった。テーブルに手を付いて見上げるジュンミョンに、イトゥクはサングラスを外しにっこり笑った。えくぼができる。
「ジュンミョン。ごめんな、うちのキュヒョンが」
 あと、あけましておめでとう、と甘く告げられ、ジュンミョンはどもりながら同じように返した。
「おい、キュヒョン」
 呼ばれ、顔を上げ、目を薄く開けたキュヒョンが、黒目を泳がせて「兄さん」と呟いた。
「そうだよ」
「…なんで?」
「約束してただろ」
「だって…」
「仕事なんとか終わったよ」
 ほら、帰るぞ、と言い、イトゥクはジュンミョンを向いた。ジュンミョンは立ったままふたりを見ていた。
「ほんとごめんな。明日も仕事なんだろ?早く帰って寝な、ほら、タクシー代」
 札をジュンミョンの手を掴んで渡す。
「もう支払い済んでるから。さ、帰ろう」
 イトゥクはひとりでどうにか立ち上がったキュヒョンが上着を身につけるのを手伝い、ジュンミョンの用意が整うのを確認すると、ふたりの背を押すようにして部屋を出た。
タクシーを捕まえ、キュヒョンを押し込んで自分も乗り込むと、くるりとジュンミョンを振り向き、再度言った。
「じゃあ、今日はほんとに悪かった。あとできつく言っとくから。付き合ってくれてありがとな」
「そんな、全然」
「じゃあな、仕事がんばれよ」
 ありがとうございます、ごちそうさまですと答えるジュンミョンに、目を溶かすような笑みを浮かべ、ん、と応じると、イトゥクは運転手に行き先を告げ走り去った。
ぼうっとその車を見送りながら、手袋を部屋に忘れてきたことに気付き、慌てて店に取って返した。
部屋は片付けをしようと店員が入ったところで、完璧な笑顔を向けられ、お忘れ物ですね、と、手袋とビニールをリボンで結わえたマニキュアの包みをそっと渡された。
 あ、はい、と自動的に返事をしていたが、かさかさと手の中で音を立てる片方は、自分のものでは当然なかった。
手袋をはめ、ジュンミョンはなるたけ包みに皺をつけぬよう、優しく手の中にそれを抱えながら店を出た。


マンションの一室に到着すると、イトゥクはキュヒョンをソファの上に転がした。
暖房を強くかけ、キュヒョンが自分のアウターを暴れるようにして脱ごうとしているのを手伝おうと手を伸ばした。
その手を、冷たい手が捕えた。
キュヒョンの目がアルコール以外のもので潤んでいるのをイトゥクは見た。唇の力は抜け、逆に手には力が強く込められていく。
「…脱ぐんじゃないのか」
「脱ぐよ」
「じゃあ離せよ」
「その前に確認させて」
 中腰になっていたイトゥクをキュヒョンが引いた。ソファに寝そべっているキュヒョンの上に、イトゥクが落ちる。キュヒョンのコートやセーターが、柔らかくイトゥクを受けた。しかしキュヒョンは優しくなどしなかった。ありったけの力でイトゥクを抱きしめた。きゅうきゅうと痛いほどに体に巻きつかれ、イトゥクは手でキュヒョンを叩いた。
「いてーって、やめろ」
「やだ」
「やだじゃない」
 ふと力が弱まった。意表を突かれたイトゥクが顔を上げると前髪の先にキュヒョンの顔があった。丸い、黒いまなこに、自分が映っている。
「…会えないかと思った」
 眉を垂らしてそんなことをキュヒョンは言った。泣きそうなのかと訝ってしまうほど、そのさまは子供のような寄る辺なさがあり、イトゥクは胸の中がくくと痛んだ。
「…ごめん」
「謝ってほしいんじゃない」
「…そうか」
 髪に指を絡ませる。するすると指の間を滑る感触。高い頬骨。鼻の先。唇の端と端。
「お前だってジュンミョンとふたりでいたろ」
 ぽろりと言葉が転がり出ていた。イトゥクは言ったそばから赤面した。黒目をさまよわせ、別にいいけどさ、と付け足した。
「…あいつにやきもち焼いてんの」
 声には笑いが篭っている、イトゥクは唇を噛む。
「焼いてない」
「うっそつけ」
「焼いてねーって」
「あっははははは、ジュンミョンに」
 腹を抱えて笑い出したキュヒョンにまたがるかたちでイトゥクは起き上がった。心底おかしそうに笑うキュヒョンを見下ろし、無表情を決め込む。
と、
「ほら、来いって」
 腕を再び引かれた。
倒れるようにしてキュヒョンに抱きとめられると、にこにこ顔に迎えられた。
 手を握られ、中指の先に唇を付けられる。びくりと、イトゥクの体は揺れた。
爪を撫でるように手をさすられ、口角の上向きを強めたようすを見ていると、腰から下がしびれる感覚に襲われた。
 首の後ろに手が置かれ、キュヒョンの方へと引き寄せられる。
キスをした。
薄目を開けたまま、ふたりとも、唇の味を楽しむようについばんだ。握られた手から汗が染み出し、それを擦りこむようにずっとキュヒョンは撫でていた。
 合間合間に、キュヒョンは言った。
 きっと、兄さんに、似合う。
「何?」
 眉間に皺の跡を刻むのを防ぐため、どんなに切なく、苦しくなってもイトゥクは顔に力を入れなかった。つまりどんどん呆けた顔になり、その表情をキュヒョンはこっそり愛でていた。
 は、は、と荒い息のイトゥクを見つめ、あ、とキュヒョンは思い至る。
「忘れてきた」
「何を?」
「まあ、いいか」
 にっこり微笑む。まるで悪魔だ。
天使のように哀れみを浮かべた顔のイトゥクは、目尻がどんどん下へと下がる。
唇で、手で、他のあらゆる部位で、キュヒョンはイトゥクに、その夜堕天をそそのかし続けた。いつものように。


 朝、ベッドの上はふたりの描いた砂浜のような模様で埋め尽くされている。
イトゥクが起き出し、シャワーを浴びて戻ってくると、キュヒョンが意味ありげな笑みを浮かべてスマートフォンから目を上げた。
「おはよう」
「…おはよう。…なんだよ」
 恋人は朝から光を放つように笑う。昨夜とは別人に見えるが、どちらも間違いなくイトゥクのキュヒョンだ。甘いような苦いような、カフェオレみたいな男。キッチンのコーヒーメーカーから、深く芳しい香りが流れてくる。
「…ジュンミョンに会ったら、受け取っといて」
「え?何を?」
「プレゼント」
 きょとんとして立ち尽くすイトゥクに、キュヒョンはけたけたと笑った。そのどこまでも豊かな声は、太陽の混じる空気の中で踊るように消えていった。



おわり




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20170202

ステップ・バイ・ステップ(リアル・グループミックス短編・バレンタイン企画2)
会議室の大きな白いテーブルに腕を伸ばして突っ伏すと、頬や掌がひやりとし、一瞬体が強張った。
ミーティングを終え、もう帰ってもいいというのに何をしているんだかと思いながら、俺はその体勢のまま目と口を開けじっとしていた。丸い、シルバーフレームの伊達眼鏡が邪魔だったが、放っておいた。歪んだガラス越しの世界は、今の気分に合っている気もしたのだ。
背後の窓からは、まだ明るい空が覗いていることを知っていた。薄い青に、筆で擦ったようにかすれた雲が乗っているのも。
たとえそんな快い天気が外に出たら俺を迎えてくれると分かっていても、このあとの約束を思うとまったく気は晴れなかった。
会いたい。
会いたくない。
会いたい。
会いたくない。
会いた。
花びらで行う占いのような文言を、頭の中でくるくると繰り返した。
乙女か!と自分に突っ込みを入れつつも、それをやめることはなかった。まっさらな本音であったから、ハムスターの運動よろしく車輪がひたすら回転するさまに似た言葉の弄びを、ただ続けた。味気ないテーブルの冷えた感触が、俺の鈍った思考を少しだけ冴えさせる役目を果たした。
立て。
行くんだ。
そして、言え。
前髪が眼鏡のレンズにかかり、歪んでいるどころか視界は遮られた。腹の底から息を吐き出す。無意識のうちになじみの曲のステップを爪先だけで踏んでいた。踊りたいなと漠然と、しかし強く思う。踊って踊って汗を流し、何もかも忘れて眠ってしまいたい。
ぴーぴー、と、鳥の鳴く声がかすかに部屋の中まで届いた。まるで俺のステップに合わせたかのようなタイミングに、ふふ、と軽く笑いが漏れた。
ごっ、がちゃ、と、頭の上から派手な音が降って来て、俺は慌てて体を起こした。
ドアを開けた格好の、後輩グループのセンターを務める若い男が、そこに立っていた。
「ジョンイン」
 あれー、兄さん、こんにちは!とその独特のたわんだ声で言いながら、無邪気な笑顔を浮かべてぺこっと頭を下げ、後輩は近付いてきた。
「どうしたんですか?ここ、もしかしてまだ使ってます?」
 背の高い、スタイルのいいジョンインが立った姿で俺を見下ろす。相変わらず飾り気のない服装をしているが、ほんとうに何を着ても似合う男だと、改めて俺は嘆息した。心の中だけで。
「いや、終わってんだよ。俺が勝手に居残ってるだけ」
「あ、そうなんですか。打ち合わせここだって言われてたんで、来たんですけど。俺ちょっと早く来すぎちゃって」
 被っていた帽子を取り、くしゃくしゃと髪をかき混ぜるさますらひどく見惚れるものがあった。俺は見上げて、さぞ呆けた表情だろうと自分でも推測できる顔をこしらえ、そっか、と応じた。
「座れよ。俺もう、すぐ行くから」
 椅子の背に手を置き、ジョンインを促す。
照れたような顔つきで、その言葉に素直に従い、長い脚を折りたたむようにして俺の隣に座った。
「久しぶりですね」
 決して社交的とは言いがたいジョンインは、やはりシャイな印象を拭えない視線やしぐさで俺に向かった。こんなに体が大きく、セクシーで、ステージではあんなであるのに、話し出すと世慣れない高校生のようだった。そこが俺は気に入っていた。いっしょにいると、ひどく自分が大人になったような気になった。実際もう、若いとは言えない年齢になってきているのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、年というのは重ねても、簡単にそれに追いつける感じがしないのはいったいどうしてなのだろう。
「おう、会ってなかったなあ」
「…ダンス教えて欲しいのに」
へへ、と唇の端で笑ってジョンインは横目で俺を見る。広い肩をすくめ、鼻を指先で掻く。ほんとうに、高校の部活の後輩に接しているような心地に、俺はいっとき酔った。
「教えることなんてねーだろ」
「そんなことないですよ。ほんとに、教えて欲しいんです」
 俯いて唇をきゅっと結ぶと、かかとと爪先でとんとんとステップらしきものをジョンインは踏んだ。そう、こういうタイプだ。じっとしていられない。気付くと音を追っている。
 リュックサックの中を漁り、ペットボトルを取り出すと、スポーツドリンクらしきものを含み、口を締め、ジョンインは俺をまたちらりと見た。
「兄さんとか、…イーシン兄さんとかのダンス見てると、焦ること多くって」
 そのすばらしい肉体をそっけない服で隠し、それどころか体を縮こまらせるようにして俺の前に腰を下ろしている後輩は、俺の求めてやまないものをすべて持っていた。初めて会ったときから、そうだった。
「何言ってんだよ」
 つやつやとオリーヴ色に光る、線の入ったまぶた、鼻の頭、閉じた唇に俺は目を走らせた。
視線が俺のそれと絡む。
上目になると若干三白眼の気味があり、それがこいつの持ち味だなと俺はよく思っていた。おれ自身は斜め横、左から映したときが一番映えると自覚している。そういうふうに、自分の見せ方を心得るのはこの仕事において欠かせないことのひとつだ。どれだけ同様の試行錯誤を行ってきたか、もうすべては思い出せないほど、長い年月、心血を注ぎ続けた。
「どれだけお前が恵まれてるか、分かってんのか?」
 ふっと微笑み、ジョンインの肩を掴んで軽く揺らした。
そんな、と零す相手をまっすぐ見つめると、同じようにさまざまな恵みを一身に授けられた、約束の場所でもう待っているかもしれない仕事仲間が思い出された。
整った目鼻立ち。特に笑うと目尻の垂れる、誰もが憧れてやまない双眼。犬のような、愛嬌の溢れる口元。均整の取れた全身、それは何かに操られているかのようによく動く。声だって。甘く、女に囁くには完璧だ。
そういう男であるのに、時折、女でなく、俺に囁く。何を囁くって、愛をだ。あの、顔と体と、声で。
女と別れては、思い出したように俺の元へやってくる。ふざけて、しかし五回のうち一回は本気で、俺に告げる。近寄る。触れる。くちづける。
もちろん俺は拒む。なんだと思っているのだと。俺は男だ。俺は女が好きだし、お前に構うわけがないと。絡んだりなんだりはすべて仕事で、本気にするなんて馬鹿じゃないかと。
よく俺たちは含みを持ったパフォーマンスを舞台で行う。それは客へのサービスだ。そういう、倒錯した、セックスアピール。
だが何度も何度も、大勢の前で、スポットライトを浴びて、子供のようなときから共に過ごす、家族より濃密な関係の俺に対しそういう行為を行うことで、あいつの何かが狂ったらしい。女と寝るくせに、いつだって、俺のことを好きだと言う。しかたないからさ、などと。お前がうんって言わないからと。
何も考えていないようなぼんやりした顔をして、なのにいつの間にかしなやかな体で俺と張るダンスを踊り、そうしながら豊かな声で歌い、光るまなこで流し目を見る者に送る。信じられない、なんなんだこいつ。練習に練習を重ねた、研究し尽くした動きを行いながら、俺はそいつと密着する。嫉妬と焦燥が体を焦がすようになる。けれどそれが得も言われぬ快感だ。溶けるかもとすら危ぶむ。
 戸惑ったジョンインが、ペットボトルの蓋を開けようと、ひねった瞬間手からボトルを滑らせた。
俺が思わず手を出すと、受け止めたはいいがジョンインの手に中身が少しかかった。
「あっ、わりい」
 慌てて謝ると、ジョンインこそ焦って返す。
「いや、そんな、ごめんなさい、取ってくれて助かりました」
 きれいな指から緩くにごった液体が滴る。中指の、シルバーのリングが濡れて光った。
 ポケットを探り、ハンカチを取り出し、ジョンインの手を取った。さっさっ、とぬぐい、水分を吸う。
「汚れちゃいます、いいです」
「いいって。とりあえずふかないとあちこち零れるから。あとで手、洗えよ。これべとつくぞ多分」
「…すみません…」
 おとなしくされるがままになったジョンインは、しょんぼりと自分の手と俺の手を俯瞰した。
「…珍しいな、指輪なんかして」
 笑みを含んだ声で俺は言った。汚れたそれも丁寧に布で拭きながら。
「…そ、ですね」
 詰まったような声で答えてくるものだから、俺は下げていた視線を上げた。ぱちぱちと目をしばたかせるジョンインは、口角を下げて押し黙った。
これは。
そういうことかと勘付くと、からかいたい衝動が俺を襲った。が、複雑な表情を浮かべるジョンインを目にするとまるで自分自身のようで、顔に笑みを溢れさせるにとどめ、十分きれいにした手から手を離した。
「ほら、おわり」
「ありがとうございます、…ほんとにごめんなさい」
 かたちのいい頭を下げるとなめらかなうなじが見えた。はらりと落ちる前髪の流れも、まるで踊りの一部のようだ。そういうふうに感じさせられる人間など、この世にどれだけいることか。
「大丈夫だって。このブランドのハンカチ山ほど持ってんだよ。まじで気にすんな」
「え、洗って返しますよ、もしくは弁償…」
「いーから!へーきなの。こんくらいなんてことない」
 困った子犬のような風情をたたえ、ジョンインは俺を見てくる。また、あいつが頭に浮かぶ。
眼鏡を外し、目を擦る。
あいつのまなざし。声の高さ。唇の温度。舌の味。
好きだ。
ねえ、どうしたらいい。
こっち見ろって。
手首を掴む力の強さ。皮膚の感触。香水のかおり。吐息の色。
逃げていた。振り向きながら、まだ付いてきていることを確かめながら、ずっと、逃げて、逃げて、逃げ続けていた。いつかきっと足を止める、そう予測し、期待し、願い、恐れて、ここまで来た。
今日、俺は、再び逃げるのか。
視界にジョンインを入れると、不思議そうなようすでこちらを覗いていた。
「…どうか、しました?」
「ジョンイン」
「はい」
「それ、おそろい?」
 目で指にはまった先刻の銀の輪を指す。
視線を落としたジョンインは、数秒してから俺を向いた。
「……はい」
 頬の上にほうっと赤味を乗せて、ジョンインは笑った。どこか子供っぽい笑顔。幸福の露見。
そのようすになぜか心打たれた俺は、また脳内の回る車の音が、からから、からからと響いてくるのを、黙したまま感じていた。
会いたい。
会いたくない。
会いたい。
会いたくない。
会いたい。
会いた。
「い」
「い?」
 ぽかんとしたジョンインの目前で、俺は勢いよく立ち上がった。
「俺、行くわ」
 鞄を引っつかみ、ドアへと向かう。
まだ陽は白い。葉のない木が、枝を存分に頭上へ向け、あちこちに鳥を乗せている。
取っ手を掴むと、声が追ってきた。
「ヒョクチェ兄さん」
 振り向くと、長い腕が俺の方に伸び、手の中で眼鏡と指輪が銀に輝いていた。
「さんきゅ」
 受け取ると、きっちり、曲がらないよう、耳にかけた。
立ったジョンインに笑いかけ、
「今度ドンヘと、お前踊るとこ、見てやる」
と告げると、ぴい!と鳴いた鳥が、さっと枝から飛び立つのが、ジョンインの背後の空の中、俺の目に映った。



おわり




 


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20170704

真昼の誤算 1(グループミックス/SHINee&EXO・リアル短編)
鉄の味がする。
何かを食べてや飲んでということではない。
生きていると、常に舌の上にそういう味覚を得ている気がする。血の滲んだときのような、しかしまったく自身から出たものではないような、妙な味わいが口腔を侵す。
この世界に入ろうとした瞬間から、それは始まったかもしれない。
そう考えると、ますます味は濃くなり、知らぬうちに眉間が寄った。
まったくそれを感じなくなるのは、あの舌に絡め取られ、自身を侵略されているときだけだ。
やめたいと思う。心底から。
なのにそうできないのはくちづけて安堵し、再生している自覚があるからだ。
分けられた前髪の下の、美しいと言われ続ける目をテミンは向ける。ふたりの使う小さな練習室はもう専用のように、鍵を掛けてあったなら誰もがすぐに諦める。音楽が漏れ聞こえ、それが小窓からかのように上に視線を投げ、ノブに手を掛けた。開くと鏡の中で目が出会う。後ろ手で施錠をすると、ジョンインはその動きすべてを目で追いながら、絶え間ない音楽の中体を止めた。

大判の、厚いスポーツタオルを敷く。床に着く場所から徐々に激しくなってしまう痛みを緩和するために。
練習をとりあえずしようと思っていた。はずだった。
ジョンインの顔を、姿を見るともう駄目だった。鞄の中からさっさとタオルを出し、常のごとく広げると、名前を呼んだ。
「もうすんの」
 汗をかいたジョンインは、自身のタオルをリュックサックの上から取り上げ、額や首を押さえた。次いでペットボトルをあおる。南国の木の肌のような首が水を中に通しているのを、テミンは口を開けて眺めた。
「来いって」
 苛立った声が出た。抑制が効かず、そうなっていること自体に更に苛立つ。拳をいつの間にか握り締めている。意識して手を開き、上に来ていたTシャツを脱いだ。白く、筋肉の全体に張った体が現れ、それをみずからの目で鏡に見た。貧相だ。まったく満足などできようはずもない。そこに映っているもう一方の体と比べてみればいい。脳内で囁くように、嘲るように誰かが言う。じんわりと唾液が鉄に浸っていく。早く。早くしなければ。


つづく


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20170705

真昼の誤算 2(グループミックス/SHINee&EXO・リアル短編)
テミンは大股でジョンインに向かって歩いた。突っ立ったままタオルでなおも体を拭いていたジョンインは、目をかすかに見開いた。手首を取られ、強く引かれる。下からあの、上手くこしらえられた人形のようなふたつの目で射られていた。
「聞いてんのかよ」
 瞳には怒りとも焦りとも付かぬおかしなきらめきがあった。ジョンインは知っていた。テミンが彼を求めるとき、必ずこうした様相を呈することを。その感情の意味が彼にはさっぱり分からなかった。ただもう条件反射のように、それにさらされると体が否応なく反応をした。掴まれたところが熱い。誘うような湿り気もある。
首の後ろを手で引き寄せられ、強引にキスをされた。
目を閉じたテミンは漂白されたような薄いまぶたをジョンインに見せていた。細めた目の中、小振りの黒目をジョンインは揺らす。テミンの唇は、この世のあらゆる性的なものを髣髴とさせる代物だった。乱暴な接吻であるのにもかかわらず、誘惑は果てしなかった。女とするそれとは違う。もっと無鉄砲で、はちゃめちゃで、汚らしくもある。剃っていても生えてきてしまう髭が互いをけん制する。なのに止めることができない。
キスをしたまま世界でいちばん簡易なベッドにふたりで向かった。
テミンはジョンインを座らせる。その膝の上に己が乗る。既に裸のテミンの上半身が、赤く斑点の浮くようになる。
緩いパンツと下着を、双方が雑に脱ぐ。立ち上がったものを目にするのにはもう慣れた。ジョンインは汗を吸ったシャツをばさと床に放る。濡れた髪から水滴が散った。
決して綺麗な状態ではないのにまったく気にならないのが不思議であったが、テミンはジョンインの髪の毛に指を入れ、両手で頭をきつく抱えた。しつこく唇と歯と舌を捕らえる。たまにこふ、こふとジョンインが涎や吐息を口の端から落としてしまう。桃色の舌で垂れた液を舐め、出した呼吸まで飲み込むように、テミンは無言でキスを続けた。
シャワー後に使うローションを鞄から抜き取ると、それを自身の指で穴に塗りたくった。間の抜けた顔でジョンインは膝立ちをするテミンを見上げる。目を伏せてその視線をテミンは避ける。羞恥ではない。単にうっとうしいと思うためだ。
上を向いたジョンインの大きなペニスに、テミンは腰を下ろしていった。


つづく


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20170706

真昼の誤算 3(グループミックス/SHINee&EXO・リアル短編)
自身のそれは小さく、色が何か唇に似て、春に咲く儚げな花の花弁を思い出させた。それがテミンは面白くない。だがジョンインは愛していた。すればするほど、見れば見るほど、なんと愛らしいものだろうかと思っていた。けれど決して口にはしなかった。テミンは可愛いと言われるのが何を指してであれ死ぬほど大嫌いであると、どこまでも知っていた。
ぬめったアナルは、これまでの経験でなんとか膨らんだ性器をその中に埋めた。ジョンインは目を瞑って苦しげに息を吐く。肩が上下に揺れるのをテミンは俯瞰し、そこに手を置いてリズミカルに腰を落とし、上げた。
滑るほどに汗を噴いた皮膚をほとんど握るように掴んでテミンはひたすら運動を繰り返した。髪が頬を叩く。薄目をこちらに捧げるジョンインを、冷たいまなこを作って迎える。こらえられない何かが頭にも体にも満ち、しかたなくまた唇を襲った。その刺激が両方に作用し、どちらの陰部もより腫れ、体内でうごめくその感触にテミンはジョンインの口の中であっ、と言った。
その声を出した途端にジョンインはテミンを抱えて彼を自分の下に下ろした。手と膝を付かせると、背後から入り直す。そのショックに奥歯を噛んでテミンは耐えた。さっきの声は失敗だった。ああしたことがジョンインを発奮させることを知っていた。それに快感を得ているのを体でなく伝えてしまうことの嫌悪に吐き気がしそうだった。これはそういうことではないとテミンは思う。これは俺の癒しで、救いで、命綱で、楽しみや喜びの何かじゃない。そうしたものと誤解されてはたまらない。
ジョンインが動くたびに膝が擦れた。この体位が体に訴えるらしく、拍を取るようにジョンインはテミンを休むことなく穿ち続けた。テミンの下を向いたペニスの先からタオルを汚すものが落ちた。相手の興奮をあおりたいなどとこれっぽっちも思っていないというのに、体は意に反して快楽の道具にされることを悦んでいた。むしろこれこそを望んでいるのかもしれないという考えに、テミンは背を反らせて肘を突き、片手でみずからを扱きながら唖然とした。それと同時に安堵もした。まだそれくらいの矜持はあるのかと脚の間と手をぬちゃぬちゃにしつつ自分に告げた。
汗が額に浮いているのが分かる。鼻から息をし、自分もジョンインも達しそうになっていることを身内で感じてテミンは体を引いた。ずるっと抜けた感覚に自由を得、だがまたジョンインに向き直ると無理矢理に彼を倒した。横になった上にテミンが乗る。片方の光る性器は隠れ、より小さいそれだけが目に映るかたちでふたりの間にあった。蔑むような目の色をジョンインに投げてテミンは腰を振った。細く敏捷なそこは角度や緩急に変化を少しずつ付けながら、主と下にいる者のポイントを探った。あるところに行き着くと、テミンは踊るようにそこだけを弄んだ。より早く、より強く。眉間に皺を刻んだ双方は、息を熱くし、汗を流した。突如テミンは、ペニスから白いものを押し出すように吐いた。肩が痙攣しているのを、出たものが自分の腹に広がるのを、ジョンインはガラス玉のような目で凝視した。


つづく


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20170707

真昼の誤算 4・終(グループミックス/SHINee&EXO・リアル短編)
なんの苦労もなく一瞬で起き上がると、ジョンインはテミンを仰向かせ、両足を掲げさせメトロノームのごとく動いた。テミンの閉じたまぶたの隙間から、白目がかすかに覗く。ぴくぴくと睫毛が震え、開いた唇はなんらかの言葉を発しているかのように刻々と変形していた。体内で集約し、それが外へと促される。急いで抜いたジョンインは、テミンの体の上に精液を撒いた。胸と、顎と、唇と、鼻の頭に、絵の具を筆で振ったようにそれは飛んだ。はっとしてテミンは目を開けた。
「ごめん」
 眉と目を垂らしてジョンインは言う。全身が茶色く輝いている。なんと完璧な体だろうとテミンは半身を起こしつつ思う。それを自分が汚し、また汚された。
立ったジョンインがラジカセを止め、鞄を持って戻って来た。
水を渡し、テミンがそれを何も言わずに受け取り、飲んでいる間、タオルで体の汚れを拭い、パンツを履いた。そして鞄をまた漁ると、ふたりがそのとき出しているものよりずっと小さな、白く、ところどころ薄赤く見えるタオル地の布を手に持って、それを座ってテミンの顔に寄せた。
既に唇を手の甲で拭っていたテミンに対し、顔や胸に飛んだ己の一部を、ジョンインはごく丁寧に彼に似合わぬ慎重さを持って取り去ろうとした。どこもかしこも緩やかな曲線を描く顔の中は、柔らかなハンカチで押され、弾んだ。
横目でテミンはジョンインを盗み見るようにした。気の抜けた、だが真面目腐った顔をした友人は絵を描くような一心さがあり、テミンは不貞腐れたような顔を作った。
胸まで拭くとジョンインはだいたい取れた、と呟いた。
そう言われてもテミンは返事をしなかった。もらった水をあらかた飲み、もう、ジョンインを向かなかった。
「テミン」
 口も開かずにテミンはん、とだけ言った。
「あいつ覚えてる?」
「あいつ?」
「海の近くが地元って言ってた、一年だけ練習生一緒だったやつ」
「ああ、いたな」
「このハンカチ、そいつの」
 手に持ったそれを両の親指で押しているのを、見下ろすジョンインを振り向いた。
「これ、お前が練習中こけて鼻血出したとき、貸してって言ってあいつがしょうがなく渡してやってお前が顔拭いたやつ」
 瞬くこともせずテミンは、座り込み、唇の端を上げて語るジョンインをただ見つめた。
「お前が練習戻ったあと、あいつがこれどうしようって言うから、俺が洗っとくって言って持って帰って、洗って、そのままになってた」
 血。
鉄。
テミンは心の内を読まれたかのように思い、白目の範囲を大きくした。そんなはずはない。この味について、誰にも言ったことはない。もしや、キスをして、俺からジョンインもそうした味覚を得ているのか?まさか。
こんなことを考えていたら。
さあ、また戻ってくるぞとテミンは危ぶむ。心拍が速まっていく。
なのに。
「…忘れてたわけじゃなくて、………返したくなくて、忘れた、振りしてた」
 あいつもなんにも言わないし。続けたジョンインはテミンの目線をようやく受ける。
何故。何故。
鉄の味がしない。ただ舌にあるのは今飲んだ、ジョンインのくれた水の味だけ。
 混乱がテミンを襲う。しかしまなざしから逃れられない。いたずらを詫びるようなジョンインを見ているだけなのに、さっき中身を空けた部分が、また溜めようと全身に働きかけている。
唾液がテミンの喉から口に溢れていく。ジョンインを迎えることを欲し、ただの救済でない何かを得ようと必死に訴える。
かすかに、日が落ち始めていた。窓から射す色が、ジョンインを常態より黄色く浮かび上がらせる。目の中心の透けたさまにテミンは背筋がぞくりとし、再び激しく勃起した。
ジョンインもさすがに気付いた。下りた視線から、テミンは体を捻って逃げる。
残ったペットボトルの水を口に空けた。
さあどうする。
これを唇から離したとき、ジョンインに何を言う。



おわり



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  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
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