海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20161104

メタモルフォーゼ(短編)
裸足の爪先が安っぽいサンダルの上に乗っているのをずっと眺めていた、そうしながらどれくらい時間が経ったのか俺には分からなかった。
 爪は短く切り揃えられている―――やりすぎと言っていいくらいかもしれない、俺は爪が伸びきっているこいつの指を見た記憶がない。手も、足も。手の方は噛んでしまっている可能性もあった、歯で、無意識のうちに。悪癖を直そうという努力の甲斐もなく、やはり爪は伸びる間を与えられていないのだろうか。そんなことも分からない。なぜならいっしょにいられる時間が驚くほどない。俺も、こいつも、忙しすぎる。特にこいつは。
にこにこと上機嫌な顔を向け、天気がいいからと言いながらやつは俺の手を引き、共にベランダに出てバニラアイスクリームを食べていた。真っ昼間。天気がいいどころではない。真夏の日差しは全身を容赦なく焼いた、日焼け止めをものともせず。持ち出してきたクリームを何度も重ね塗り、帽子とサングラスを身に付け、まるでどこかに出掛けているようなさまで俺たちはどんどんかたちを成さなくなる氷菓と格闘した。席を外したと思ったら、手にはちみつの瓶を持って戻ると、「なんか味、ものたりないから」と言い、どろりとスプーンで中身を小さな雪山のようなアイスの上にあけた。ますますガラスの器の中身は絡み合うようにしてほどけていった。透けたうす黄色とチープな白がお互いを飲み込んでいくようすを、こめかみから汗を滑らせながら俺は眺めた。
自分の分を口に運びながら、満足げな、喉を鳴らす猫のような顔をする男を斜に見て、俺はいったい何をしているんだろうという気になった。俺が今食べたいものはこれか?この、もとの状態をまるでとどめていない、冷たいとはもういいがたいとろとろの甘い食べ物?いや。
「中、入るぞ」
 頬のいちばん高いところをほんのりと桃色に染め、こちらに顔を向けるのを確認すると、何か言葉を発せられる前に俺は立ち上がり、手を取って窓を開け、冷房の効いた室内に足を踏み入れた。逆の手にははちみつの瓶を持って。
 振り向くとキャップと真っ黒いサングラスをしたままの青年が俺を見返し、ぽっかりと分厚い唇を開けていた。そこは俺を待っているとしか思えなかった、そういう、穴だった。
そんなわけで俺はベッドの上にサングラスと帽子とはちみつを放り、手を引いてほんとうに舌の欲するものを求めた。俺の少しゆがんだ小さな唇と、その豊満な唇は反発を示しながらも溶け合った、ベランダに置かれたあの皿の中のように。とにかく甘い、あらゆる意味で、甘い。唾液を口の周りにまで撒き散らしてくちづけながら、サングラスとキャップをむしり取った。
 視線の高さの同じ俺たちは、立ったまま目を開けたり閉じたりしながら口の中をむさぼった、息つく暇もなく。久しぶりだった。手を互いの背や尻に這わせる間も、必死に舌で相手の味を堪能した。次がいつになるかなんて、分かったものじゃない。
ぴたりと張り付いた正面の中心がぶつかり、すれると、どちらからも声が漏れた。あ、とか、ん、とかいった。細く開けた目には太く、濃い眉がしかめられ、まぶたがきつく下ろされているところが映った。まつげが細かく震えている。俺は回した腕に力が入り、立ち上がった先からぬるぬるとこぼれるものがあるのを感じ、腰をよじる。それを受け、相手の体ももぞもぞと虫のような動きをする。
はちみつはそれこそ効果的に使われた。アイスクリームといっしょくたに腹に収められるよりもずっと有効に、意味と、情熱を持って。
「そんな困ったみたいな顔しないでよ」
 言われた意味が分からず、俺が首を傾げると、ふふふと口の中で笑われた。そのとき俺ははちみつをやつの股に垂らしていた、たっぷり、気の済むまで。太陽を混ぜた色のシロップは白い体の上で輝いた。硬い毛も、海草のように柔らかく見えた。
 困っている?その言葉を額のあたりで弄びつつ俺は大口を開け、上を向いたペニスにむしゃぶりついた。ああっという声が頭上から届く。ベッドの上は何もかもが散乱している。溝に沿って滴り落ちるはちみつは、すぼまった部分にまで達し相手は体をひねった、逃げたいとでもいうように。甘い。そこに少しだけ塩辛さが侵入する。俺は脳のどこかが鋭敏になり、どこか別の箇所は遮断されたようになる。夢中というのはそういうことを言う。何も考えず指は動き、ずるずると中に押し入っていく。
「くうううう」
 普段なら絶対聞けぬような声が、部屋の中でひそやかに響く。びくびくと全身―――出っ張った部分と奥まった部分も含め―――が振動する、間断なく、まだまだ足りぬとでも言うように、貪欲に。俺は口と手を駆使し、快楽にただ仕える。零れる声が俺への褒美だ。
ほんとうに、その小さな喘ぎを聴くだけで、俺はなんでも、どこまでもやれる気がする。
 いろんなもので照った棒は、鉛筆でふちをなぞったようにくっきりとし、俺を向いていた。これ以上成長はできないと無言で俺に訴えた。
入れる前に、俺は膝を持ち上げ、足の指を口に含んだ。さっき見ているだけだったそこ―――おしゃぶりを与えられた赤子のように無心で舐めた。ふん、ふん、と鼻から息を抜く音が聴こえ、そのまま俺は腰を進めた。
半分も開いていないまなこは、それでもその白目の白さと多さを俺に伝えてきた、緩く涙の膜が張っていることも。思わず俺は頬に手を添えた、腰を振るのはやめず。
「兄さ」
 すべてを言うこともできず、大きく開いた小鼻から激しく呼吸するのを見下ろし、体じゅうに汗を迸らせて俺はそこかしこの筋肉を使った。肩や、腕や、腰や、太ももや、ふくらはぎが、それぞれの役割を果たしていた。ベッドは際限なく揺れた。
いくときはいつも腹の上に出す、どちらもが。俺は先端の穴から精液が飛び出すさま、その最中腰を浮かす相手のさまを見るのがたまらなく好きだ。それを何かで遮られたくない。そしてふたりの精液が混ざるのを見るのも好きだった。俺たちのはちみつとアイス。馬鹿馬鹿しい考えに思わず乾いた笑いが漏れた。
きょとんとした表情を浮かべた相手から、何?と問われても、ううん、とただ首を振った。
「きれいな歯茎」
 汚されたのにもかかわらず相変わらず美しい男が、目の前で力尽きたように横たわった俺に言う。
「きれいな目」
 はあはあと乱れた呼吸で、俺は言葉をただ受ける、目を相手の目に預けて。
「きれいな顎」
 夢を見ているような、うつろな瞳で俺の顔をくまなく見渡す。
「こんなにきれいなのに、俺にこんなことして」
 それはそっくりそのまま、俺の台詞だ。
意味もなく、ふたりでくくくと笑う。
こんなことをしたくなるのは、お前だけだと俺は言う、心のうちだけで。見つめ、見つめ返されると、自分が自分でなくなってしまう、どうしたらいいか分からない。途方に暮れながら一心に体を交わらせる、まるでそのやり方だけはもとから知っていたかのように。そうだ、確かに困っている。投げ掛けられた言葉を反芻する。いつも、お前といると困る。そう思いながら、俺はきっと口にせずともまた顔にそれを表しているだろうと想像しながら、しかたなくわずかな抵抗として唇の両端を上げた。



おわり



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20161116

狙われたのち(ミックス短編)
部屋に来たときから窓が開いているのに気が付いていた。
時期的に寒いということはないが不用心にもほどがあると思い、それを言おうとしたらまず今日最初のキスをされた。
「何すんだよ」
 唇を離した相手に向かって声を放つと、その一瞬前までくっついていたそこに息がかかるのがこちらにも分かった。
「キスだよ」
 決まってんだろ、とは言われなかった。が、その声音は先程まで共に働いてるとき、連れ立って家路を歩いているときとはまったく違う響きと湿度の、有無を言わさぬしろもので、見事に場の空気は一変した。片手にはビールと缶チューハイの入ったビニール袋、もう片手にはスナック菓子や乾物の入ったビニール袋を持ったままだった。両手をふさがれ、押し返すこともできず、二の腕をどちらも掴まれ、再び口を口で覆われた。目は双方閉じることをしなかった。つまりあちらには横に長い、目尻の上がった目元、こちらには奥ゆかしい二重の、目尻の下がった目元が見えていた。向こうの瞳は面白いくらい輝いていた。蛍光灯の白っぽい光のせいだけではないようだった。
唇の上だけを動くのをやめ、舌の侵入が始まった。少し以前から、唇のみのキスでは済まなくなっていた。初めの頃はもちろん抵抗した。けれどそのしつこさに負け、今では好きにさせていた。とにかくキスがうまいことはいやというほど教えられた。
しばらくして解放されると、少しだけ開いていた窓を全開にするのをぼんやり眺めながら腰を下ろした、いつもの座布団の上に。薄いカーテンが風を受けひらひらと踊る。音楽がかかる。ボリウムを絞ったweekndが室内を舞う中、酒を飲み、つまみを頬張った。
夜の色はたとえカーテン越しであってもどこにでも入り込む。安いアパートの灯りなどものともしない。リズムを刻む高音と、甘ったるいアルコールに酔わされ、早々に現実と夢の境があいまいになった。時折指輪と缶が触れ合い、かつん、とかすかな音がする。そのたび手元を見下ろされているのに毎回神経がいった。このアクセサリーの送り主のことをどちらもが思い出した。感情が音符の合間を縫いあらゆる模様を描くのを黙って放っておく。そうしてすべてのことを棚上げした。差し向かいにいる男とは違い、逃げ続けていた、ずっと。
 どこからか、CDのものでない、高いキイの音が聴こえた。笛の音のようだった。
「なんの音だ?」
 溶けた目を窓の向こうにやりながら尋ねると、同じように顔を振り向けて窓を見やり、相手は答えた。
「ああ、何日か前からするな。多分近くの部屋の洗濯機が壊れたっぽい。洗濯機回ってる音といっしょにするからなあ」
 耳を済ませると、確かにごう、ごう、という、あの洗濯機特有の音も小さく聴こえた。
「なんか不気味だな」
 思わずそう言うと、意地悪げに笑い、
「まーな。なんだっけ、あれ思い出す。ハーメルンの笛吹き?だっけ?」
と返って来た。
 ああ、と応じながら、ますますこの混沌とした部屋の中がそら恐ろしいものに感じられた。笛が吹かれ、どこかに連れ去られてしまう、その恐怖がひどく現実的なものとして目の前に迫っているように思えた。唇の片端を上げて見つめてくる男は、その美しい手指で酒をあおり、どんどんと目の中の色を欲望のそれに染め上げている。手を引き、絡めとり、後戻りをできなくさせようと画策している。
笛の音は絶えず鳴り続けていた。
「子供じゃないんだから」
 ふと、そう零していた。
「何?」
 かすれながらも通りのいい声で聞き返され、かすみがかった頭を絞るようにして言葉をひねり出した。
「いや、たとえ魅力的でも、理性的な判断ができる歳だから、ついてっちゃったりはもうしないなって話」
 なんの話題なのかを突っ込まれたら困ってしまうような言い方をしてしまい、言い終えてから密かに焦った。
「何」明らかにトーンが変わった声で、言葉が襲ってくる。「俺のこと牽制してんの」
 顔を上げられなかった。見なくとも、小さなまなこが刺すようにこちらを向いているのが分かった。洗濯機の振動が激しくなった。へたなフルートに似た音はますます高くなり、警戒音のごとくふたりの人間の鼓膜を揺らした。
「そんな話じゃない」
「嘘つけ」
「ほんとだって」
「じゃあなんでこっち見ないんだよ」
「別に理由なんかない」
「だったら向けよ」
 しかし向かなかった。
洗濯機は脱水を始めているのだろう、今まででいちばんその身を震わせ、声を上げていた。 
そう、男は笛を吹く、たぶらかそうと、執拗に。
目の端に、膝小僧が映った。
シルバーリングの光る手をはっとするような作りを誇る手が取り、その体温の高さを伝えてきた。冷たい指輪までも溶かしそうに思えた。
「おい」
 斜め上に顔があるのを知っていた。それでも仰向かず、心拍を速めながらただ、床を見ていた。汗をかいた缶を、広げた菓子類を。
「こっち見ろよ」
そう言われたのと、洗濯が終わったのはほぼ同時だった。weekndと夜だけがあたりに満ち、吹き込んできた風が少し冷たく感じられた。
憑かれたように顎を上げ、再度開いた窓を見た。
「…なんで、窓、開けといたんだよ」
 外の黒に体が吸い込まれていきそうな気になった。なんでそんなことを問うているのか、自己防衛本能か、と頭の中で自問しつつ手を握られて夜の街を見続けた。
「え?」
「窓。…開けて出掛けただろ」
 少し間があって、ああ、と言うと、言葉を続けた。
「朝、蜂が入って来てたんだよ。出てかないからしかたなく窓開けといた」
 蜂、と呟くと、そう、と言われた。
「自分で入ってきたくせに出たい出たいっつって、でも出て行き方分かんなくなってんだもんなあ」
 まただ。
ゆっくり視線をずらし、ごく近くにある相手の顔を見上げた。
「…なんの話」
「蜂だろ」
「そうか?」
「…なんだと思ったんだよ」
 握られた手を包む力が強まる。全体が湿り、それがどちらのせいなのか分からない。
目の中に燃え上がるものに囚われ、じっと、待つしかない。振り払えない。立ち上がれない。どうして、来てしまうのか。何度も何度も唇を吸われ、舌をなぶられ、それでもなぜ訪れるのか。
「…もしかして、ずっとキスしかしないと思ってんの?」
 膝立ちをやめ、腰を落とし、隙間をなくして男は言う。口には残忍な笑みを浮かべて。
「だから、のこのこここまで来てんの?」
 追われるために体を後ろに傾けるしかなく、ふたりで床へと近付いていく。
 両腕の間に頭を付いたこちらを見下ろし、ふふっと笑う。
「馬鹿だな」
 揺れる前髪を、垂れて優しげに映る目の周りを、薄い唇が動くさまを、何も言わずに眺め、首に触れるフローリングの低い温度を感じていた。
 お前、俺がどんだけお前の喉仏が好きだと思ってんの、という言葉が脳を揺さぶるさなか、指にはまった愛の証が、繊細な指で丁寧に抜き取られた。



おわり


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20161202

反射(ミックス短編)
遮光性の高い、分厚いカーテンは締め切られていた、それはもう隙間なく。柄はこの部屋の主の趣味を表しカラフルな幾何学模様だった。陽光は外が晴天であることを、なんとか窓の上下左右の縁から伝えようと努めていた。その甲斐あって、部屋の中のふたりはお互いの何も身に付けていない体をある程度はっきり目にすることができた。そして、ほんとうは何も身に付けていないわけではないことも。一方の両耳にはピアスが、一方の片足首にはアンクレットが光っていた。
ひとつベッドに横たわったふたりは、軽く汗をかきながら、ペットボトルの水を回し飲んだ。ごくり、と喉で音を立てると、ヘッドボードと枕に上半身を預けるようにして、垂れた小さな目の男が、尖った顎を隣の男に向けた。
「…金髪も、いいねえ」
 首と肩を枕に乗せ、つむじあたりをヘッドボードにくっつけているだけの相手は、自分が見下ろされる格好なのに気付き、垂れ落ちた長い、陽に透けるようなハニーゴールドの前髪の間から上目で己への視線を捉えた。しわのないまぶたの、上を向いた目尻の、黒より白の割合の多いまなこをみずからのそれで迎えると、満足そうに薄い唇の両端を上げて青年はその色の抜けた、若干湿った髪の中に長い指を入れた。つるつるとした感触を、長く、整ったすべての指は味わい、そのまま耳まで下った。
くすぐったそうに肩をそびやかすさまを見て男はたまらない気持ちになった。本来しっかりと濃く黒い眉も色を髪と同じように染められ、色白の肌と溶け合って、恋人を目と脚の間の硬い毛以外、脱色した、そして絶え間なく発光している、人間でないようなものに変容させていた。薄暗い中、筋肉の付いた、しかしどちらかと言えば小柄な青年は、ぼんやりと蛍のように輝いた。耳たぶの黒い石が白の中で浮き上がっていた。美しい指先がそこに到達し、爪で引っ掻くように動いた。
「おい」それを察して相手は声を発した。「気を付けろよ」
 くすりと笑って、親指で石を肌に押し付けるようにしながら、大丈夫だよ、と男は答えた、ごく低い声で、ささやくように。
一方の男はその、魅惑的な、空気を含んだ実に男らしい、変幻自在な声を大変好きだった。そう口にしたこともあるが、そんなことでは表現しきれないくらい、すばらしいものだと思っていたし、同時に心底うらやましくも感じていた。歌っているときがもちろんいちばんその複雑な感情を喚起されたが、今のように、ふたりきりでいるときも、同様か、ときによってはそれ以上に、体のうちを掻き回されるような心地になった。全身が熱くなり、それはそのまま中心に収束していった。今も例に漏れず、耳をいじられながら鼓膜を揺するように唇を近付けられ、笑われたり呟かれたりすることで、放り出された一部が、再びかたちを整え、かさを増していることを意識するほかなかった。羞恥から、さりげなく腰をひねり、脚を交差させた。
 男は体を相手に寄せ、のしかかるように腕や脚を絡ませ始めた。
「…もう、したじゃん」
 すねたように、柔らかな拒絶をとりあえず口にする。本心でないことは体が既に語っていたが、どうしてもそう言わずにはおれなかった。
 反発を耳にすると、苦笑して膝で膨らんだ部分を青年は弄んだ。細い足首の鎖がしゃりしゃりと動き、淡い金色の髪を零して触れたところのひやりとした感触に相手は身をよじった。
「嘘つきだなーこの兄さんは」
 ぷるぷる、と上を向いた棒は揺れた、無情な膝小僧の攻撃によって。
腕を顔の上に置いて隠そうとするのをにやにやと笑って止められ、ほのかに色付いた頬や耳、肩をさらすしかなくなかったことで、改めてどちらもが目を目で受け止めるに落ち着いた。
「…青いカラコンとか似合いそう」
 再び作り物めいた指先でピアスのはまった耳に髪をかけながら、唇の前で男は言った。
「……そういう、コンセプトだからな」目を逸らして口に笑いを含んで、続けた。「ベスト着て蝶ネクタイとかして、ロンドンっ子っぽくするんだって」
 くはは、と笑いを漏らし、顔を溶かして男は応じた。
「似合いそー。つーか似合うよね、絶対。前も似たようなかっこしてたもんね」
 可愛かったもんねー、と言うと、うるせー、と返すと共に、軽く蹴られた。
「…ピアス、ずっと付けてはらんないよね」
 親指でいじくるようにまた、みずからが与えた小さな石に触れ、耳に唇を寄せた。
 目を泳がせつつ、先程胸に沸き起こったゆるやかな激情が全身を浸食するに任せていると、ささやきが、甘く、吹き込まれた。
「……俺は、ずっと、付けてるから」
 脚に擦り付けるようにされた金属が、冷たい虫のように肌の上を這った。
「…靴下、履いてるからね」
 ばれないもん、という言葉と共に、キスがもたらされた。目を強くつむり、被せられた唇を食べるように口を開いた。美味だった。何度味わってもそう思った。枯れぬ豊かな井戸のように、あくまで男を潤した。細胞のひとつひとつ、血管のすみずみまで。決して肉感的なものではないのに、果実や何かを思わせるほど、みずみずしさは常にかどわかしてきた。
 色のない体全体を手はまんべんなく撫ぜた。もちろん、髪の間も。耳の中も。そしてその中で色を発する、目の中、耳たぶの上、下腹の到達点をそれ以上に愛でた。広い、角ばった肩の、内側の鎖骨、外側の肩甲骨に目と指をまとわせて、愛撫を受ける方はひたすらに身を震わせ、熱い息を吐いた。
ごく、ごく弱い光を受け、黒いピアスは石としての本領を発揮し、可能な限りその身を輝かせ、くるぶしをずり上がったアンクレットは、火照った体を気まぐれに冷やすことに専念する間、ふたつの体はただ、お互いを補給することに余念がなかった。



おわり



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20161205

蝉の声、太鼓の楽、くちづけの音(ミックス短編)
やめろって、という言葉を、眉の下がった男は聴こえなかったように振舞った。ただ、ますます眉を八の字にした。目は細めた。それで余計、瞳が濡れたようになっているのを眉のしっかり上がった男は目の端で認めた。祭囃子があたりに響くのは相変わらずだった。提灯の灯りがそこここで赤い光を放ち、人影のまばらな公園内をほのかに浮かび上がらせていた。どうやらカップルがあちこちに潜んでいるらしく、かすれた甘い声や衣擦れの音がふたりの男の耳にも入ってきた。垂れ眉の男が、大きな、幹の太い、年のいった木にもたれかかった吊り眉の男に全身で擦り寄っている間、すっかりうまくことを進めた恋人たちは、この公共の場で、それぞれのモラルが許す限りの交歓を続けていた。人間たちだけでなく、虫たちもみずからの生を全力で叫んでいた。ためらっているのは目の前のこのいとしい男ただひとりだ。そう、垂れ眉の男は思い、呼吸を速め、血流の勢いを増していた。少し下にある赤い、小さめの唇から目が離せなかった。かすかに曲がったその隙間から、歯が、その白を黒の中で訴えていた。自分も相手も震えていることを、どちらもが知っていた。それはそれぞれをいたたまれなくさせた。垂れ眉の男は欲望と恋情の激しさの、吊り眉の男は恐怖と困惑の深さの現れであった。双方がしっかりとそのすべてを認識していた。己が、友が、どういう状態であるのかを。分かっているからと言ってどうにもならなかった。逃げれば追われるだろう。逃げられれば追うだろう。それだけだった。それほどもう、のっぴきならない羽目に陥っていた。後回し後回しにしてきたつけが、今ここで払われようとしているのだった。
 高い頬骨を持つ、白い肌の顔に、指先が触れた。
びくりと体を揺らすのを目にし、垂れ眉の男はなお、相手にぴったりと自分を押し付けた。股間はすっかり硬くなっている、それをどこまでも教えてやる気だった。気温は夜をものともせず、恒温動物の汗腺から皮膚を冷やすための水分を溢れさせていた。つまりふたりの人間は、触れているところ全体が湿っていた。熱く、まるで少しずつ蒸発している湯のようだった。じりじりと吊り眉の男は体を動かした。しかし無駄だった。そうとはそんなに意識されないが、垂れ眉の男はしっかりとした肩と太い腕を持っていた、そして全体重を木の方へかけていた。体を若干そり返らせ、脚もまともに立たせられていない吊り眉の男は相手を突き飛ばすことが叶わなかった。唇を噛み、絶対友人を見るものかと可能な限り横を向いた。その唇に当てられた歯の先が男を更に誘っているなどと、当の本人に分かるはずもなかった。そうしてことはどんどん吊り眉の願わぬ方へと転んだ。見て見ぬ振りをしていたことを悔やんだ、実際こうなってしまった今、最善の策はいったいなんなのか、皆目見当もつかなかった。先程まで見ていた垂れ眉の男の表情が、脳の中でくっきりと像を結んでいた。あんな顔を自分に向かってしている人間を見たのは生まれて初めてだと気付いていた。そしてそれに対する感情は、自分でもはっきりとつかめない類のものであることも。確かに吊り眉の男はこの年下の友人を非常に愛していた。それはだが性愛ではなかった。こうしてそれを求められてもなお、しかし吊り眉の男は彼を愛することをやめられなかったし、彼を失いたくないと思っていた。どんなに自分が欲せられているか、痛いほどに、ほんとうに、体に痛みを覚えるほどに、実感していた。認めたくはなかったが、そのことにどこか高揚する自分がいた。太い首から、喉仏を上下させて、声を響き渡らせる年の下のこの男を、小柄な男は買っていた。いっしょにいるのが好きだった。目と眉を菱のかたちのようにして、顔を溶かすのを見ると、胸の周囲が大変温かくなった。相手の中に、自分への恋慕があり、共に時間を過ごすことでより彼を幸福感のヴェールに包ませ、その内に吊り眉の男を取り込んでしまっていただなどと、どうして気付くことができただろう。
銀の指輪のはまった指は、尖った顎の先をなぞった。
そのまま親指が下唇を押した。ずらりとなんだ歯。奥にちらつく赤い舌。ここまでの道のりで目にした金魚を、垂れ眉の男は想起した。真紅の大きな金魚であった。水の中でゆらゆらと尾を動かし、自分の美しさを気付かぬままに誇示していた。まさしく現在、そこにあるのはそういった美であった。唾液をまとわせ、今か今かとこちらを待っている、そうとしか思えなかった。指の腹で押した部分の柔らかさを確かめるたび、びくんびくんと脚の間のものが揺れた。すると相手はもどかしそうに腰を動かす。そのさまと摩擦に、吊り眉の男は霧のように消えかけた理性が完全に夜へと吸い込まれそうになるのが分かった。
好きだ。
公園に入り、木に押し付けられるなり、言われた言葉がまた繰り返し耳に注ぎ込まれ、吊り眉の男は硬直した。頬にその声の濡れた息がかかり、上がった体温が再び上昇したのを恥じた。下腹に当たる硬い部分に、自分のそれが対抗しようとするかのように同じ反応をしているのに気付いて愕然とした。勘付くな。そう祈りながら、そっと黒目だけを相手に向けた。そこにあるのは知らぬ男の双眸だった。自分が待ち構えられていたことを、この瞬間を逃すまいとただ見つめられていたことを、男は知った。指の代わりに唇が押し当てられた。口の中の赤い金魚が踊った。



おわり



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  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

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