海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160716

人さらいの条件 1
初めはふたりきりでの食事だった。
誕生日当日に皆に盛大に祝われる前に、ふたりでどこかに食べに行きたいとカイは言った。
心持ち前屈みになり、覗き込むように自分に尋ねるカイのようすがいつもよりずっと殊勝げで、ギョンスは思わず微笑んだ。
いいよ。どこ行きたい?
そう言われたカイは本当に嬉しそうな、照れ臭そうな顔をした。ギョンスはそんな弟分を見、自分も思いの外心が温まるのを感じた。
じゃあ、前、兄さんがうまいって言ってたチゲの店。
約束は交わされた。
ギョンスはなぜカイがそんなことを言い出したのかにほとんど疑問を感じなかった。たまたま近くにいた自分に思いつきで甘えてみただけだろうと考えた。それに、そんな甘え方もたまには悪くない、と、そのときギョンスは思ったのだ。承諾したときのカイの表情は、そう思わせるに充分だった。
向かい合ってチゲをすすりながら、ふたりは無言だった。
個室の中、濃厚で芳醇な食事の匂いを吸い込み、心身ともに温まる誕生会のはずが、カイは暗いと言ってもいいほど言葉数は少なく、表情も乏しかった。よそよそしいというのが一番ぴったりくるようすだった。キャップを被ったままであるため、俯いて食事を続けるカイの目元はほぼ完全に見えなかった。ギョンスは当然ながら当惑した。具合が悪いのかとすら思った。
「……ジョンイン?」
キャップの下から目の一部が見えた。返事をせず、ギョンスの言葉の続きを待っている。
「誕生日、おめでとう」
カイの目のかけらは揺れたように見えた。視線を外さず、ギョンスは反応を期待した。
「…………ありがと」
消え入るような声で呟くと、箸の先の白米に目線を落とす。
おかしな箸使いで白飯をつつくカイを見て、ギョンスは嘆息する。
ギョンスは箸を置き、真っ黒なリュックサックを引き寄せ、中を漁った。大きな包みが現れた。がさ、がさ、という音に、カイがこちらを向いたのがギョンスは見ずとも分かった。もう少し後で渡そうと思っていたのだが、話のきっかけを求めてギョンスはカイにそのきれいな包みを差し出した。ギョンスらしいさり気ない包装のプレゼント。カイは片手で受け取る。
「大したもんじゃないけど」
カイが指で紙を挟む、がさ、という音が鳴る。
「……ありがと……」
両手で大きな直方体を持ち、カイはじっと手元を見つめている。キャップに隠れ、ギョンスからはその表情は伺えなかった。
「…開けてみれば?」
「……ここで開けると……汚すと悪いから、帰ってから、開ける」
そう言って自分の隣の椅子の上に箱を置く。ギョンスは拍子抜けする思いだった。
「………どうした?」
「…何?」
「なんか……あったのか?」
スプーンでチゲの中身を掻き回していたカイが、手を止めた。
「具合悪いわけじゃないんだろ?」
ギョンスにキャップのツバを向けたまま、首を横に振るカイを見て、ギョンスは動悸が高まり始めるのを感じる。
「……悩みでもあるのか?」
さまざまな考えが脳内に浮かんでは消え、ギョンスは不安が足から登ってくるのを底冷えとともに迎えた。辛く、熱いチゲが助けてはくれなかった。
「俺に……何か……できることあるか?」
カイはようやく顔を上げた。その目は心持ち睨んでいるようだとギョンスは思った。困惑は深まるばかりで、ギョンスは続ける言葉を失った。
「できること?」
今日、初めてはっきりとした発音でカイは言った。
「……ああ……」
ぼんやりした表情で開いた口からそのまま肯定を伝える。
カイは再び視線を外し、置いてある紙の包みの折り目を、人差し指で弾いた。
「…………じゃあ………俺の………頼みを、…聞いてほしい」
ぱし、ぱし、と弾く指。
「この………プレゼント……返すから………代わりに」
ギョンスはカイの人差し指とプレゼントの喧嘩を見ていた。言葉が勝手に耳に流れ込んでくる。
「代わりに………」
わずかに黒い肌の上の肉感的な唇が一度閉じ、唾を飲み込む音がする。斜になったカイの顔をギョンスは見た。
「代わりに、兄さんの、………兄さんの、体に、触っても、いい?」
途切れ途切れの言葉はギョンスの頭にセンテンスとしてすぐには刻まれなかった。ただかすかに震えているように見えるカイの輪郭を凝視して黙していた。笑いやサプライズを待ってしまった。
だが、そんな類のことではないと、ギョンスには本当は分かっていた。
こんなようすのカイを見た覚えはなかった。ステージ上で体のすべてを用いセックスをアピールしているダンサーは、普段、大きな子供と言ってよかった。そのギャップはメンバーであっても不思議に感じるほどで、踊り始めた彼の姿はまさに豹変という言葉が相応しかった。だが。今目の前に座る彼はそのどちらとも違った。借りてきた猫のようにおとなしく、切れ長の目だけが熱に浮かされたように水分を溜めている。
ギョンスは何か言おうと口を開いた。喉が渇いて掠れた音だけが出た。構わず無理矢理に言った。
「…触る?」
カイは片手で顔を覆うようにした。くぐもった声がその手越しに聞こえる。
「…………触る…だけ。……少しだけで、いいし、変な風には、触んない…から」
先程思案中に少し収まっていた動悸が再び、更に強くなって戻って来た。
長い指と指の間から、充血したカイの目が見える。
ギョンスは唇に隙間を作り、今日言うはずだった言葉を反芻した。
“新しい練習着、気に入るといいんだけど”
“こういうのはいくらあってもいいだろ?”
“怪我はしないようにな”
しかしまだ、銀色の包装紙は美しく箱を包んだままだ。
あんなに熱かったチゲも、だいぶ冷めたに違いない。
どうやったらこの約束の前に戻れるのだろう、とカイのキャップのロゴを見つめギョンスは考える。だが、決して戻れはしないと、よく分かっていた。
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20160716

人さらいの条件 2
帰宅したギョンスはソファに寝そべるスホに誰も使っていないことの確認を歩きながらし、そのままバスルームに直行した。服を体から剥ぎ取るように脱ぎ、シャワーの温度を上げ、その勢いよく出る水の粒の流れを全身に当てた。
指先の感覚がないような気がした。
頭の上からシャワーを浴びながら、ギョンスは店でのことを反芻する。
「触るって、…どこを?」
意を決してギョンスは尋ねた。
カイはギョンスを見られないようだった。ずっと斜め下を向いていた。顔を覆っていた手は今眉間を引っ掻いている。
「………じゃあ………」
じゃあって。
ギョンスはほとんど呆れ返った。本当にカイはこういうところがある、こんなときでもギョンスはカイに説教をしたいという気がむらむら起きた。
「手?」
そっぽを向いたままカイは言った。
「手?」
ギョンスは鸚鵡返しに言う。
「うん」
テーブルに置かれた自らの手に目を落とす。持ち上げ、掌を上にする。何の変哲もない、特に格好がいいというわけでもない、普通の手。大きくも、小さくもない。もっと綺麗なら、ベッキョンのようなら、と思ったこともなくはなかった。
「………触るだけ?」
「ん」
「それで気が済むのか?」
「ん」
赤いつやつやとした顔を下に向け、カイはぶすっとしていると言っていいようすで返事を繰り返す。
なんでこんなことを受け入れなければならないんだ、とギョンスはそんなカイを眺めて理不尽さを感じ始めた。ただカイが本気で困っているということは疑いようもなく、それがギョンスに即座の拒絶を思いとどまらせた。自分でも自分がどうしたいのか、どう振る舞えばいいのか分からないようにギョンスの目には映った。ギョンスはいらいらすると同時にそんなカイを哀れに思った。
考えたくない、しかしおそらくそうであろうという結論はもちろんとっくにギョンスの頭の中にあった。
カイが自分を性的な目で見ている。
そんなようすをカイから感じ取ったことはこれまであっただろうか?
ギョンスは懸命に本人を前にしながら思い出そうとした。
一緒の部屋で寝起きし、仕事をこなし、練習に精を出し、食事を共にする中で、そんなことがあっただろうか?
勘がいいと自覚のあるギョンスだったが、久しぶりに自分のその自分に対する認識を疑った。こんなに近くにいてその欲求にまったく気付かないなんて。しかしひとつ、心当たりはあった。カイに対することではなく、自分自身の状況について。このところ、撮影に自分のほとんどすべてを注力していたこと、そしてそれ以外のすべてをチェンに使っていたことだ。周りがきちんと見えていたかと言えば常よりはできていなかったかもしれない、ギョンスは思った。知らぬうちにカイは自分の手すらもその対象として見ていたのかもしれない。テーブルの上の掌をギョンスはなんとも言えない気持ちで見下ろした。チェンの下腹部を撫でる手を、カイは触れたいと言って不貞腐れている。
ギョンスはカイの小さな望みを叶えてやりたい気持ちがあった。何故ならカイの望みのすべては決して叶わないからだ。チェンとの仲を終わらせるつもりはなかった。チェン以外を抱くつもりも、チェンを含めたすべての男に抱かれるつもりも。つまりカイに希望はなく、ただやるせない行き場のない思いだけを彼にさせるのはギョンス自身も辛かった。手だけなら。そして一度だけなら。手を握り締めてギョンスはカイを見た。すると自分を見ていたらしいカイがまたすぐに視線を逸らした。ぷっくり膨らんだ唇を小さく噛むのをギョンスは見逃さなかった。
「分かった」
ぴく、とカイが動く。
「右手だけだ」
今度はギョンスがカイを見られなかった。
俯いていると、カイが立ち上がった音がした。
気付くとカイはギョンスの隣の椅子に腰を下ろしていた。置いてあったギョンスのリュックサックは、彼の贈った美しい紙で包まれた箱の上に勢いよく乗せられた。
自分の鞄とプレゼントを見ていたギョンスの手に何かが触れた。皮膚だ。何度も触れられた覚えのある、カイの肌。その指がギョンスの手を取っていた。少し、汗ばんでいる。キャップを被ってギョンスの手を見るカイの顔は全くの死角で、ギョンスは再びキャップのツバを見るしかなかった。
指から手の腹を、カイの人差し指と中指の先がくすぐるように通った。ギョンスは思わず目をつむった。まずい。ギョンスは自らが誤った選択をしたかもしれないことを頭の隅で感じた。カイの指は、ギョンスの想像以上に表情豊かに、カイのダンスのように、ギョンスの手の上で踊っている。手を振り払って逃げ出したい衝動に駆られた。目を開いたそのとき、ツバの下のカイの目と出会った。その目はきっと、自分がチェンに触れるときと同じだろうとギョンスは思った。その標的になったとき、それを望んでいないとき。だが相手を心から愛しているとき。どうしたらいい。視線はすぐに外された。まだ手はその手に取られている。愛情を人質にして。
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20160716

人さらいの条件 3
マーヴィン・ゲイのグラマラスな歌声が部屋に満ちている。
ギョンスは自分の腰の上に座っているチェンの乳首に歯を立てた。
「んあ」
ステージ上で歌い上げるとき見せるような煽情的な眉を下げた顔で、チェンが声を漏らす。
そのまま乳首を口に含み舌で舐めあげながら、もう一方のそれを指でつまんだ。
チェンは自ら腰を上下に動かしながら、声を飲み込むようにして喉の奥から音を連続して零す。ペニスの先から液が染み出すのを感じ、また背骨と腰骨の繋がるあたりに熱が集まるのがチェンは分かった。
突起から唇を外し、ギョンスは目をつむったチェンの顔を見上げた。
薄く汗をかいた皮膚、切なげな眉、ほんの少しだけ歯の見える口。
ギョンスはその上がった口角に人差し指を入れた。反射で目と口をわずかに開けるチェンを見て、人差し指をぐっと奥まで差し込む。チェンの舌が指を跳ね返す。だが受け入れもする。いつもの反発と融合。ぺちゃぺちゃと音を立ててチェンはギョンスの指を舐める。それはもう、飴を含むように。ギョンスはカイがこの指を自分の指で愛撫したのを思い出す。消毒だ。ギョンスは瞳孔を開いてにやりと笑う。
長いことシャワーを浴び続け、ようやく指の感覚が戻ったような気がし、ギョンスは浴室を出た。触感は得たが手の皮はふやけていた。縦に皺の寄った指先を見て、ギョンスは眉間にも同じものを作った。
カイはギョンスの手をさまざまにもてあそんだ。片方で持ち、もう片方でさわさわと触れたり、両手で包んでぎゅっと握ったり、掌を見つめて手相を指でなぞったりと。カイの吐息が速く、甘くなっていることにギョンスは目ざとく気付いていた。押さえているつもりだろうが隠しきれていなかった。カイの手はどんどん熱く、湿っていった。きっとカイは激しく勃起しているだろうとギョンスは思った。あえてそこは見ないようにしていた。今日履いているのが緩めのパンツであったことをカイのためにかすかに喜ぶ自分を自分で殴りたい思いだった。そんなギョンスだったが、実際、想像以上にセンシュアルな動きをするカイの手に、自身のものも反応しそうな気配があり、早く終われ、終われ、と心底願っていた。だが、終わったあと。俺たちはどうなるんだ?ギョンスは自分も息が少し荒くなりそうなのを注意深く隠蔽しながらカイのキャップのロゴを見つめ続けた。こんなことがあって、何もないように振る舞うのか。チェンとの関係を隠し続けながら、こんな秘密も抱えるなんてまったく望んでいない。これっぽっちも。ギョンスはカイを恋愛の相手として選ぶことは絶対ないと、自分でよく分かっていた。もうこれは自分自身の性質と性格から来るもので、カイのような男を自分が好きになどなるはずがなかった。ただ家族と同じように、弟として大切なカイであった。しかし彼に失恋をさせ、このようなふたりだけの隠しごとを作り、今後も一緒に暮らしていかなければならない。なんの罰なのだろうとギョンスは唇を噛んだ。もういっさい、これに関してはおくびにも出さない、これっきりだ、と見え隠れするカイの唇を睨みつけ、ギョンスは誓った。
しばらくして手を解放されると、ギョンスはそのままの言葉をカイに伝えた。
反応のないカイに、帰るけど、お前どうすると尋ねると、先帰って、という呟きが返って来た。最後までカイはその目をキャップの影に潜め続けた。
急いで会計を済ませ、ギョンスは半ば走るようにして家へと向かった。
風を切る頬が痛かった。握り締めた手は自分のものでないようだった。
掌から視線を上げたギョンスは、バスタオルだけを巻きつけ、脱いだ服を持ち、あたりを伺いながらこっそりとチェンの部屋に向かった。
チェンはいた。今日は約束の日だった。
ギョンスの格好に目を丸くし、「どうし」とまで言ったチェンに大股で近付き、ベッドの上に胡座をかいていた彼の服の下に手を突っ込んで唇を塞いだ。
すぐに舌を絡ませ、そのままチェンを押し倒した。バスタオルと服は道程に放り出されている。湿った両腕を手で優しく押し返しながら、チェンは求められる恍惚が自身を襲うのを受け止めた。
しばらくチェンの体を食したあと、彼のiPodからマーヴィン・ゲイを選んだ。
“let‘s get it on”を背景に恋人の中に入る行為にギョンスは阿呆かと自嘲した。 だがしかたない。チェンを抱くとき、ギョンスは何もかもがどうでもよくなった。あるのは音楽とチェンだけ。俺の楽器。いい声で歌え。
ギョンスはチェンにむしゃぶりついた。「わわわ」とチェンが声を漏らすほど性急に、激しく、彼を抱いた。
今日の記憶をなるべく遠くへ追いやりたかった。
弟に手だけで感じかけたことをないことにしたかった。
チェンがいっても、止める言葉など構わずまたペニスを擦り上げた。
全身をがくがく震わせ、美しい声を出す恋人と、マーヴィン・ゲイに、耽溺した。
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20160716

人さらいの条件 4
「なんかあった?」
ベッドに並んで横たわり、お互い天井を仰ぎながら、チェンはギョンスにぽつりと尋ねた。
ふたりの胸は、先程までの余韻を残し、短いサイクルで上下していた。
チェンの胸の方のみ、そこここが赤く染まり、その色は自らの体温によるものだけでない濃さを示し、少しの紫が混じってもいた。横に寝そべる男の仕業だった。その、吸う、強さときたら。チェンは痛痒いような胸のあたりを手で軽く引っ掻いた。 返事のないギョンスを首を横に向けチェンは見た。枕に頭を預けたギョンスは、首を傾け、チェンの視線を受け止めた。まだ濡れている髪が額に掛かり、肌の上の汗を含んで先に雫ができている。ごく近くにあるその眉と黒目の濃さに、チェンはうっとりしてしまわないよう心の中で自分を律した。
「何もないよ」
ざらりとした質感を伴った囁きをギョンスはチェンの瞳を覗きながら発する。
「そう?」
「うん」
言いながら、ギョンスは両腕を自分の頭の下に差し込み、チェンに体ごと向いた。チェンも同じようにする。鼻が触れ合いそうな距離で見つめ合い、チェンは無意識に眉が八を描く。ギョンスを見ると今だに、ただ、切なくなった。恋というほかない感情がチェンの胸を締め付け、歌どころか声も出せなくさせる。
「ジョンデ」
子供が懸命に丸を描こうとしたような唇から自分の名が呼ばれる。
今度はチェンの声が枯れていた。
「うん?」
笑顔だけは作ろうと唇の両端は常以上に上げた。
「好きだよ」
その全身に響かせるように発声された言葉は、こんな至近距離にも関わらずチェンに正確に届くのに時間を要した。
作った笑顔は消えていた。下げた眉尻は残っていた。
固まったチェンを見つめながらギョンスは、ふたりの間の隙間を埋め、相手の唇にそっと、触れるだけのキスをした。目は閉じぬまま。
目と目だけが相互に見えた。
「…どして、いきなり」
それだけが口をついて出た。
何も準備されていなかった。こういったことに対して。
自分が少し、震えていることにチェンは気付いていた。怖かった。度がすぎたものは恐怖だった。たとえそれが幸福でも。
「言ってなかったなと思って」
なんてことないようにギョンスは言う。いつもこうだ。チェンはギョンスに翻弄される。当然のこととして。
「お前は?」
素朴な質問をギョンスは投げ掛ける。
目しか見えない相手のその視線のまっすぐさに逃げ場はない。
「………好き、だよ」
今更。
一点に留まるギョンスの瞳に対して、チェンのそれは揺らめいていた。心の揺れがそのまま出ていた。言葉に、してしまった。
突然ギョンスがぱあっと笑った。
「知ってる」
そう言うと、チェンの耳の上に手を置いた。
チェンは言いようのない感情が湧き上がって途端に自分を占拠するのを感じた。
耳に触れたギョンスの手の温かみと、その笑顔、声。
自分は死ぬのかもしれない、とチェンは本気で思った。
「…………死にそう」
口に出してみた。
「ああ、このままでいて風邪引いてこじらせたら死ぬかもな。また風呂入んなきゃ」
言いながらむっくり起き上がり、拍子抜けしたチェンが目を見開いているのをギョンスは振り向き、言う。
「一緒に入るか?こっそり」
片方の口角だけ上げて笑うギョンスを、チェンは枕で殴った。胸まで赤くして。
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20160716

人さらいの条件 5
浴槽にふたりは狭い。特に大の男ふたりでは。
ギョンスとチェンは向き合って、脚を折り曲げバスタブに浸かっていた。
蒸気があたりを満たす中、チェンは膝の上に両腕を乗せ、火照った顔をそこに隠すように背を丸めている。濡れた黒髪をオールバックにし、そこから漏れた毛束が額に垂れ、水分が内側から押しているような皮膚を耳まで赤く染め、腕を浴槽の外にだらんと落としたギョンスは、そんなチェンを口元を緩め、見ていた。チェンはギョンスを見返せなかった。こうなってから、一緒に入浴するのは初めてだった。ベッドでの言葉と、前髪を上げた、濡れて上気したギョンスのさまは、気を抜くとチェンの股間をまた反応させそうであった。脇毛から滴る水滴からすらチェンは視線を逸らした。興奮しそうだと悟られるのが、何故だかとても恥ずかしかった。先刻の情事で、あんなに悶えながら数回いかされたにも関わらず、10代の若者の如く、疲れを知らぬようにペニスを充血させているのを、ギョンスに知られたくはなかった。自分の気持ちの強さを、見つめ合ったとき交わした言葉なんかでは表現しきれるものでないことを、体で示しているようだった。だが温かさも相まって、チェンはすぐとろんとした目であの言葉を反芻してしまう。全身で蜜の中に浸っているようだった。そのたび性器がじんじんし、我に帰った。
チェンはギョンスを見て、問うた。
「…プレゼント、カイ、喜んだ?」
心持ち開いていた唇の隙間をなくし、ギョンスは瞬きもせず、言う。
「うん」
チェンは甘い笑顔を返す。
「よかったじゃん」
「うん」
「チゲは?気に入ってた?」
「うん」
「俺もまた行きたいな。結構行ってないもんな」
ギョンスはチェンの太ももと腹の間に両手を差し込んだ。そして自分の方に可能な限りぐっと引き寄せる。ばしゃ、とお湯が跳ねる。
「一緒に行こうって誘ってんの?」
顔と顔を間近で真正面から見合わせ、ギョンスはからかうようにチェンに言う。
「…そういうわけじゃなかったけど」
ぼそぼそと言う赤い顔のチェンに、口を曲げてギョンスは不服を述べる。
「ああそう。ひとりで行くの」
「ひとりでって言うか」
「俺以外の誰かとってこと?」
「いや」
「お前は俺を誘ったりしないよな」
「そ、れは」
「俺からばっかだもんな」
「…ごめ」
見るたび立派な漢字の八だな、と思う眉と、ひどく左右対称な印象を持つ目尻の上がった目、眉間で引っ込んだ鼻梁、困ったときでも上を向いている口角を眺め、ギョンスは嗜虐的な喜びを楽しんだ。
「言ってみろよ」
「え」
「一緒に行こう、って」
「…一緒に行こう?」
小首を傾げながら言うチェンをじっと見て、ギョンスは答える。
「やだ」
「え」
意地悪い非対称な笑みを作り、ギョンスは言う。
「嘘。いいよ。しかたねーなー」
芝居掛かった調子を見せ、耳の先を真っ赤にしたチェンに向かってあははと笑う。
ひでーな、と呟いて口をぱくぱくさせるチェンを見、そのしっかりとした肩が若干そびやかされているのに目を留める。チェンの肩のラインがギョンスは好きだった。自分にはないもので、裸のそれを見るたびギョンスはむらむらとした。
バスタブの縁に手を付き、ギョンスはチェンに向かって体を起こした。そのままチェンの左肩をがぶりと噛む。「うわっ」という声が耳元で聞こえる。湯の中で手を動かし、チェンの股間で揺れるものを掴む。
「…ちょっと大きくなってんじゃん」
嘲笑の色に言葉を染め、チェンの茹でた海老のような耳に囁いた。
「ちが」
「違わない」
顔を相手の顔の上で滑らせ、唇は自分の仲間を見つけた。湿った表面は恋人を待っていた。ギョンスは手の中のものがどんどん体積を増やすのを感じる。もちろん自分のそれも同じだった。チェンの脛にその先が当たっているのを、チェンも気付いているだろう。舌と舌が溶け合う中、ギョンスは自分たちの体も、このバスタブに溶けていくように思った。それはチェンと同じ幻想だった。
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20160716

人さらいの条件 6
1月14日。
カイの誕生日がやって来た。
夜、メンバーやスタッフなど、大勢で創作イタリアンへ行き、カイには特別に店にオーダーした、鶏肉を揚げたものを特製のタレで和えた新作が大量に供された。それがいたく気に入ったカイは、ほとんどすべてを自分の胃に納め、いつまでもべとつく指をひっきりなしにしゃぶっていた。社長からかなりいいワインが皆で飲むようにと数本贈られていた。日頃メンバーは揃ってあまり飲まないようにしていた。体型や喉、肌や体力に影響するからだ。しかし今日は特別な日だ。社長から直々にお許しが出たも同然の今、飲まないわけがなかった。ビール、ウイスキー、もちろんワイン。それぞれが好きなものをかなりしこたま飲んだ。最後に上で花火が散りながらケーキが出てきたときは、皆べろべろだった。うおーというほとんど男性で占められたひと部屋は地鳴りのような歓声が轟き、次いでハッピーバースデイの大合唱が始まった。
顔を真っ赤にした面々に負けず劣らず真っ赤な顔のカイは、幸せそうにケーキの火を吹き消した。
拍手に包まれる中、ギョンスも手を叩きながら、複雑な気持ちがアルコールの力も借りて霧散していくのを嬉しく感じていた。
満面の笑みを浮かべるカイを見つめていても、フラッシュバックとともに顔を背けたくなる衝動は起こらなかった。自然と自分も笑みを漏らしていた。何も知らないチェンは首まで赤くし、カイの首に腕を絡めて「おめれとー!おめれとー!愛してるぞ!」とほぼ叫んでいる。きっとあれは乳首の下まで染まっているぞ、とギョンスはさすがに胸の痛みを感じながら苦笑した。
会がお開きになり、皆数台のタクシーに分かれて帰途に着いた。
マンションに着くなり全員なだれ込むようにして各々のベッドに向かう。仕事の疲れと酔いですぐにあちこちから高いびきが部屋の外まで漏れてきた。
深夜。もうすぐ、朝と呼んでも差し支えない時間になる。
ギョンスは喉が渇いて目が覚めた。
他の者ほど飲んでいなかったため、そこまでの気持ち悪さを覚えず、ただ水が飲みたい、と思いながらギョンスはベッドを出た。
キッチンのみの灯りを灯し、冷蔵庫のミネラルウォーターをグラスに注いで、ごくごくと音を立てて飲み干した。生き返るようだった。もう一度寝よう、と踵を返すと、薄暗い中に、誰かが立っていた。
「わっ」
思わずギョンスは声を上げた。
灯りの届かない薄闇に立っているのは、よく見ると、カイであった。
それはパフォーマンス時の演出のようだった。
灯りの中に一歩、カイは足を進めた。目のあまりよくないギョンスでも、カイのようすがまた、常と違うのを察知できるような、そんな動きであった。ギョンスは背筋が泡立った。ある種の身の危険を感じた。それは幼い頃から今日に至るまで、たまに遭遇する種類の危険だった。たいていの男には関係ない、そしてたいていの女には身に覚えのある、そんな危険。ギョンスは大多数の男とは違い、ときどきそういう目で見られることを感じることがあった。子供の頃は戸惑ったし、恐れもした。だが、成長するにつれその性格から、そういう対象にされ、あまつさえ痴漢行為に発展したときなどは実力行使に出た。本来ぶん殴るだけでは気の済まないことだった。
しかし。
今、目の前に立っているのは知らないどこかの親父ではない。
可愛がってきた弟分だ。
一度、手を愛でるだけは許した。
だがそれっきりと言い渡した。
そんな約束についてのまともな話し合いなど、このカイにはできそうになかった。
顔を赤くしたまま、目も充血していた。唇はおそらくフライの油だろう、メイクをしたようにぬらぬら光っている。その目の座り方と、唇の開き方。今にもよだれを垂らしそうだった。
ギョンスは心拍数がステージ前よりも上がった。しかもこれには悪寒も混じっていた。
「…ジョンイン」
できるだけ冷静な声を出そうと、努めた。
カイは返事もしなかった。ただもう一歩、ギョンスに近付いた。裸足の足の爪が、照明を受けて光った。
ギョンスはシンクを背に立っていた。手をその縁にかけ、少しだけ後ずさった。本当は逃げ出したかった。だが、カイの方に行くのだけでも恐ろしかった。
すると、カイは緩慢な動きから、突如スイッチが入ったように、すたすたとギョンスの方に歩いて来た。ギョンスは虚を突かれ、棒立ちのままだった。
カイはギョンスの真正面に立った。そしてギョンスを見下ろした。ギョンスは、カイを、丸い黒目で、見上げた。
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20160716

人さらいの条件 7
カイはかすかに揺れていた。
開いた口からはアルコールと油の匂いが漂い、至近距離で嗅いだギョンスは、鼻につくそれらに顔をしかめそうになる。
その目はぼうっとしてはいるがギョンスの目からは動かなかった。
また、名前を呼ぼうとしたそのとき、カイが、動いた。
長い腕をギョンスの背に回し、力を込め、自分に密着させる。
ギョンスは顎をなんとか相手の首の上に乗せ、起きた事象をまず、受け止めた。
頬にカイの首が当たる。その熱が、背中の両腕からも、伝わってくる。
ぐうっと、より、強く抱き締められ、ギョンスは胸苦しさを感じ、息を荒くした。
「………………い」
耳元で、何かが聞こえた。
ギョンスは驚き、聞き返す。
「な、に?」
「……………みず、のみたい」
全身から力が抜けた。本当に、ギョンスは安堵した。なんだ。ただ、甘えているだけか。
「分かった、分かったから、離せ」
おとなしく、カイはギョンスを解放した。
ギョンスは急いで冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、先程自分が使ったグラスに勢いよく水を注いだ。
シンクに寄り掛かったカイに、その冷えたグラスを差し出すと、ゆっくりと受け取り、そのまま口に運んだ。美しいラインを描いて上下する喉仏を眺めながら、自分の浅はかさをギョンスは恥じた。
少しだけ底に残し、カイはグラスを置く。
「ほら、もう、寝よう」
微笑んで、手で招きながら、ギョンスは言った。
カイがもたれたままギョンスを横目で見た。上気した頬と目元が、うつろなその目を取り囲み、ギョンスの言ったことを理解しているかどうか分からないことをギョンスに伝えた。
ギョンスはカイに近寄り、その手を取った。
「ほら、まだ寝てる時間だ。眠いだろ。気持ちは悪くないか?」
首を振るカイに、苦笑してギョンスは続ける。
「じゃあ、ベッド行こう。な?」
見上げて覗き込むギョンスの顔を見返しながら、カイは口を開いた。
「………いっしょに、ねたい」
目を擦り、赤ん坊のように、むにゃむにゃと言う。
ギョンスは、先刻の恐怖と疑念、その後のカイの甘えという結論が頭の中でくるくると回り始めた。
「…なに、甘えてんだ。子供みたいに。また、ひとつ年取ったんだぞ」
話を軽くしようと、笑いさえ交えてギョンスは言った。
「…………だって、ジョンデ兄さんとはねてるでしょ」
カイの手を取った手の先から、魔法にかけられたように一瞬で全身が固まったのがギョンスは分かった。
血の気が引いた。
「………………俺、知ってるもん」
何か、言わなければ。否定しなければ。だが、視線を落としてただ自分を追い詰めてくるカイを前に、目を見開いて立ち尽くすことしかできない。
「……………………俺とごはん行った日、いっしょにお風呂入ってたのも」
どくん。
ギョンスは動悸が自分を中から壊すのではないかと思った。
カイから手を離し、ギョンスは体が震えるのを抑えようと片手でもう片方の腕を掴んだ。なるべくしっかりと、ギョンスはやっと、声を出した。
「…なに、言ってんだよ。何言ってるんだか、分かんないよ」
けふ、と漏らして、カイは言う。
「ごまかしたって、だめだよ……。俺、ずっと、知ってたんだもん」
俯いて、カイは自分の足を見る。
ずっと?
ギョンスは思いもかけない言葉の連続に本気で気が遠くなった。
カメラが寄りながらズームアウトする画面のように、まわりのいっさいから切り離されていく感覚を、ギョンスは初めて味わった。
「…お前の、勘違いだよ」
「………音楽かけながら、やってんでしょ」
血が、顔に登る。耳の先まで赤くなる。ギョンスは羞恥と屈辱を感じ、喉がまた、渇いた。
「…………知ってるんだ」
そう言い、カイは顔を上げ、ギョンスを見る。
その顔と同様に、今は、ギョンスの顔もまた、染まっている。
ふたりは睨み合うように、お互いを見た。
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20160716

人さらいの条件 8
目と目を合わせる苦痛に、ギョンスは先に屈した。
「…音楽聴いてるだけだよ」
斜め下に目を伏せて、自分でも説得力を欠いたようすだろうなと想像しながら、ギョンスは否定を続けた。こんなとき、自分でも驚くほど仕事で行う演技というものができなくなるのだなとギョンスは深く絶望と自己嫌悪をどこか別に感じてもいた。
「そんな嘘いらないよ……」
カイは額をぼりぼり掻き、ため息をつく。
そんなカイに向かって、はっきりとした声が飛んできた。
「とにかく、お前の今言ったことは全部間違ってる。お前の思い込みだよ。このことは忘れてやるから、もう二度と言うな」
その声にカイは虚を突かれた表情を浮かべ、口を閉じる。
カイの余裕ぶった態度にギョンスは怒りに駆られ、彼を説得し、誤解だと了解させ、話を丸く収めようという気がなくなった。言い捨てて去ってももう構わないと思った。
部屋へ戻ろうと体を振り向けようとすると、
「待ってよ」
と甘えたような拗ねたような声が追ってきた。
ギョンスがほとんど目だけで冷たく振り向くと、カイがわずかに慌てたようなさまで、言う。
「…………みんなに、言うよ?」
その言葉がまさか出てくることを、ギョンスは本当には心配していなかった。そんな自分がかわいそうになるほど、ギョンスはカイが自分を脅したという事実に打ちのめされた。顎が震えそうになるのを拳を握り締め、耐え、答えた。
「……………言えよ。誰も信じない」
ぎらぎらと光る横目で見据えられ、カイはちらちらとギョンスを伺うように見ながら、
「…わかんないじゃん」
と食い下がる。
ギョンスの反撃にカイは予想を裏切られたらしく、その態は完全に蛇ににらまれた蛙だった。
「……お前のどうしようもないたわごとなんか、誰も聞かない。俺だってもし、そのことについて聞かれたら余裕で完璧に否定するし、ジョンデは笑うだろうな。お前は馬鹿扱いされて終わりだよ」
低い声を荒げるでもなく抑揚なく発するギョンスは、しかし全身でカイを攻撃していた。そのジェスチャーにカイは音を上げた。
「………ごめん、お、こんないでよ」
泣きそうですらある声音で、視線を落とし口を尖らせてカイは謝る。
「怒らないわけないだろ、こんなこと言われて。殴られてないだけありがたいと思え」
叱られた幼児のような態度のカイに神経を逆撫でされながら、ギョンスは言い放った。
体の向きに顔を戻して、また、ギョンスは立ち去ろうと足を進めた。
すると、追ってきたカイに腕を後ろから取られた。
びくりと体を跳ねさせ、ギョンスはしかたなく振り仰ぐ。
カイの赤い顔が、眉を寄せて自分を見下ろしていた。
ギョンスはチェンにこういう顔で見られることを愛していた。
だが、この男からのそれは願い下げだった。
「………なんだよ」
なるべく声を抑え、感情を込めずギョンスは目を見つめたまま、問うた。
カイは必死に目を逸らさないよう努め、口をわなわなさせて、言う。
「………おこんないで。……………だれにも、いったり、しないから………」
ギョンスは大きく息をつき、目線を落とす。
「…だから、なんもないっつってんだろ」
吐き捨てるように言うと、カイはそれでも続けた。
「………だれにも………言わないよ………秘密にする。だから」
ギョンスは目を上げ、再びカイを見た。
「また………兄さんに、………触らせてよ……」
ギョンスの目にさらされ続けられず、カイはとうとう下を向いた。ギョンスの腕をぎゅっと、握ったまま。その手に力が込められる。皮膚から湿り気が伝わる。ギョンスは掴まれたところから自分の体が浸食され、何かの病魔に冒されるかのような妄想が頭を支配した。
時計の秒針の音と、冷蔵庫のブーン、という音が、ギョンスの耳をついて、離れない。
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20160716

人さらいの条件 9
繋がった部分の熱さと強さと湿気が、ギョンスの不快感を煽り、カイの要求に対する返答をするのさえギョンスは我慢ならない思いだった。
今、カイの顔を見るのも嫌だった。
その声で更に何かを求められるのも。
ギョンスはカイに向かって体の側面を見せ、視線を落とし、押し殺した声で言う。
「…あれっきりだって、言っただろ」
カイもギョンスを見なかった。お互い、そっぽを向いて、会話した。
「…………俺、そんなの、うんって言ってないもん」
目だけをきょろきょろ動かし、それでもカイを見ることはせず、ギョンスは拳を作って言葉を発する。
「おま…」
「………こないだみたいに、するから。……なんも、変なことしなかったでしょ」
「やだっつってんだよ」
「…………証拠があるんだよ」
さすがに、とうとう、ギョンスはカイを振り向いた。
カイも、反応を伺うように、ギョンスを上目で見た。
「………証拠………?」
「…うん。ふたりが付き合ってるって、証拠だよ」
「なんだよ、それ……」
「……内緒」
「お前っ……」
勢いよくカイに向き直った拍子に、その手がギョンスの腕から離れた。
ギョンスは掴まれ続けたその箇所が、じんじん痺れるようだった。
頭の中が沸騰し、混乱した。チェンの顔が浮かんだ。今後のすべてが真っ暗になった。
切り札を出したカイは今、すっかり落ち着いていた。自分に形勢が向いたことを理解し、更に、ギョンスを仕掛けた罠の中に、完全に取り込もうとした。
「……だから、触らせてくれたら、教えるよ……」
怒りと困惑で目を光らせ、揺らしながらギョンスはカイを見、カイは自らの願望を叶えるために邁進する、欲望を膨らませた目でギョンスを見た。
触らせる?
また?
こんな風に言うことを聞かされて?
前回はプレゼント。
今回は情事の証拠。
一度恐喝を飲んでしまったら、何度も何度も繰り返されるというのは真実なのだ。人間の欲はきりがない。目前に立つこんなにも親しい家族のような存在に、ギョンスは押し潰されるように教えられている。
飲まないわけに行くだろうか?
カイが本当に何か自分たちの関係を示すものを持っていて、それを誰かに見せてしまったら?
皆、以前とはまったく違う目で自分たちを見るだろう。
関係を続けられる可能性も絶望的だ。
チェン。
チェンは、きっと、信じられぬほど苦しむだろう。
ギョンスはチェンが自分のことを大変強く思っていることを知っていた。チェンは恋人をそれなりに好き、ということができない人間だった。見た目から分かる以上に全身全霊で相手を愛した。感受性の強いギョンスはそれが手に取るように分かった。そんなチェンを、そんなチェンだから、ギョンスは愛した。胸の内にある気持ちのほんの少ししか相手に伝えられないチェンの不器用さを、ギョンスは本当に愛しく思っていた。それに足をすくわれるほどに。
「…………触るって、どこをだよ」
カイの爪先を見つめて、ギョンスは呟いた。わずかに、爪が伸びている。切るように、言わないと。
カイもまた、ギョンスの足を見つめていた。その、裸足の、足を。
「…………足…………」
欲望の渦の中に放り込まれ、ギョンスは一寸先、自分の足が、地面から離され、自らで立てなくさせられるのを想像し、体が冷えていくのを感じた。
そうだ、暖房もつけていなかった。
フローリングの冷たさが足から這い上がる以上に、ギョンスは内から温かみというものが失われていく。
カイに、自分がどんどん、さらわれていく。
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20160716

人さらいの条件 10
少しずつ、空が白み始めている。
夜からわずかに抜け出した辺りは、薄墨色に満たされ、ギョンスはようやくベッドに入り、横になっていた。
すぐそばのベッドに、カイがいる。カイも、床に就いていた。
ギョンスは当然ながら、カイの方を見ないよう、背を向けて寝ていた。目を閉じ、眠りへのいざないを待つ。ちょっとした衣擦れや、吐息。そんなものすら立てぬよう、身じろぎもせず、瞼を閉じている。
「ここ、…座って」
カイはキッチンのシンクとコンロの間をそっ、と叩いた。
少し離れたところに立ち尽くしたギョンスは、カイの手の置かれたところのみを見つめ、無表情で、まるで普段通りのことをしているかのように、カイの近くへ歩み寄った。カイが手をずらすと、ギョンスは台に背を向け、両手を後ろ手にしてその上を掴み、ぐっとジャンプして示されたその場所に腰を下ろした。その一連のようすをカイは唇に隙間を作り、いっときも目を離さず見守っていた。ギョンスの足はぶら下がり、部屋着のスウェットから伸びた素足が、飛び乗った名残りで揺れている。
唾を飲み込んだ音を、ギョンスは聴いた。
斜め下に俯いたギョンスは、その横幅のある目の端で、カイの寝巻きのジャージの前が、その素材の柔らかみが既に膨らんでいるものを隠し切れていないのを、認めていた。
まだ、触ってもいないのに。
ギョンスが、冷え切った体の温度が更に下がり始めているのでは、とぼんやり憂う中、カイはキッチンの床にぺたりと腰を下ろした。振り子の止まった、顔のすぐそばにあるふたつの足を、寝ぼけたような顔で見つめる。
そ、と片手で足の甲に触れた。浮き出た骨を指がゆっくりと滑る。
くるぶしのへこみやでっぱりを、人差し指の先で、彫塑を行うかのように、繊細になぞる。
親指、人差し指、中指、薬指、小指。順々に、その先の部分に滑らかに指を走らせ、かかとへ飛ぶ。足の裏をくすぐるように、すべての指で爪先に向かって触れていく。
片手で行われていた足への愛撫に、もう片方の手が加わる。今度は若干力を込め、握るように足を触った。掌の熱が、冷えたギョンスの末端を包む。
カイはギョンスの足しか見ていなかった。
そんなカイを、ギョンスはいつしか目をそらすことなく見下ろしていた。
自分の足をこんなにまで執拗にいじられるのは生まれて初めてだった。チェンとセックスするときも、チェンがこのようにギョンスの体を愛したことはなかった。でも。ギョンスは思った。チェンは今のカイのように、自分の足を気の済むまで弄びたいと願っているかもしれない。チェンは今だに、ギョンスに触れることに緊張した。嫌がられることを極度に恐れているようだった。そんな彼のようすを見ると、ギョンスは肌の毛がすべて電気を帯びるような感じがし、その体を食べ尽くそうとやっきになった。自分に触れられるより、相手に触れたくなった。もしかしたら、チェンももっとギョンスに自ら、触れたいのかもしれない。
見下ろすカイは、つむじをさらして自分の唇をギョンスの足につけかねない状態だった。だが、自分の言ったことをかろうじて覚えているらしく、なんとか寸前でこらえていた。いくらその口元をかすめそうになっても、決して触れることはなかった、色の付いた膨らんだ部分には。
指と指の間に手の指が入り込み、くすぐったさにギョンスは足をびくりと震わせる。
その反応自体が嬉しいのか、カイは唇を歪めて微笑んだ。
カイの胡座をかいた足の付け根の真ん中が、微かに染みているのをギョンスはふいに見てしまう。ああ、誰かに見咎められないといいが。ギョンスは要らぬ心配ばかりする自分がどこまで馬鹿なのかとゆっくりと瞬く。
ただ。
これがチェンなら。
その眉尻を下げ、目を糸のようにし、頬と耳を染め上を向いた口角を緩めて、おそるおそるギョンスの足を思う存分愛で、激しく勃起していたら。
悪くない、とギョンスは思った。
その長い一瞬の瞬きで、ギョンスは今、足にもたらされる刺激が少し、快感に傾いたのが分かった。
手を要求されたとき、それきりと思い、カイへの反発も今ほど強くなく、その愛で方への意外性も込みで、体が反射で反応しかけたのとは違い、今回はギョンスの中にカイとの接触をポジティブに捉える余地などないはずだった。だが、人間は辛いとき、どこかに吐け口や逃げ道を求めるものらしい。ギョンスは目をつむり、この手はチェンの手だと思い込んだ。それこそ、自分の演技スキルを最大限に発揮し、これは恋人との触れ合いだと夢想した。ギョンスにはそれができた。
ジョンデ。
夢の中でギョンスはチェンを見、名を呼んだ。
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  • ミス・レモン
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