海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20161108

誕生日のおとなたち(リアル短編・誕生日企画)
毛布から飛び出た爪先を見て、ギョンスはそっと手を伸ばした。焦げ茶の分厚い掛け布団を引っ張り下ろしながら、靴下を履けばいいのに、と考えていた。真っ白な裸足の足を見るのはほんとうに好きだったが、触れて冷たいと哀しくなった。いつもそうして温めるわけにはいかないのだから。
小さな山が動いた。
んうー…という声と共に、どんどんと小山は崩れ、中から寝ぼけまなこのミンソクが現れた。ワックスを付けたままだったらしい。隣国の有名な漫画の主人公のように、鮮やかな金髪は逆立っていた。
「…あれ、ギョンス」
 目が合うと、ミンソクは吊り目を更に吊り上げ、歪んでいるように見える唇を不思議なかたちに更に歪めた。それはつまり彼の笑みだった。ギョンスはその顔を見ると否応なくぞくぞくした。桃色の歯茎と尖った白い歯が、いつも彼を誘惑した。
「なんかすごい寝ちゃったなー。何時?今」
 ふわあー、と特大のあくびをしながらミンソクはソファから滑り落ち、カーペットに座っているギョンスの横に腰を下ろした。
「…十二時ちょっと前」
 天井の蛍光灯がきらきらとミンソクの尖った髪の毛を照らしていた。光の届かないところは夜を表し薄墨色だ。
 脚を抱え行儀よく座り、自分を向くギョンスを捉え、ミンソクは半分まだ眠っているような心地ながらも胸がおかしなふうに締め付けられた。ギョンスといるとよくそうなった。しぐさや動作のひとつひとつ、その眉の反り具合、唇の開き加減で、ミンソクは翻弄された。今は小首をかしげるようにして体育座りをしつつ自分を上目でギョンスが見ている、それがミンソクには辛かった。辛いとしか言いようがなかったが、もちろんいやなわけではなかった。ただどうしたらいいか分からなくなったし、実際どうにもしようがなかった。
「ずっと、ここにいたのか?」
 同じようにミンソクも膝を立て、その上に両手を置いた。ギョンスが、背後のソファに投げ出された毛布を引きながら言う、ずっとってわけじゃないけど。
「帰ってきたらここで寝てるから。ジョンデもさっきまでいましたよ。風呂入りに行きました」
 そしてそれをほんとうにありがたいとギョンスは思ったのだった。もぞもぞと自分とミンソクの体に布団をまとわせる。
「キャンプしてるみたい」
 突然顔をくしゃくしゃにしてギョンスは微笑んだ。毛布の中で体を動かしながらその顔を受けたミンソクは、また不整脈のように心臓がいきなり縮んだ。ふたりはためらいがちに、体をぴたりとくっつけた。同じ高さの肩と肩が熱を分け合う。
「…そういや、夢見たよ、さっき」
 あらゆる意味で温かく、満ち足りて、たまらなくなったミンソクは顔を俯け、ふと思い出したことを口にした。
「どんな?」
 ギョンスはミンソクを向いている。熱い息が頬をかすめた。やはりギョンスを見られず、そのままミンソクは言う。
「ディズニーランドにいた」
 言いながら、くすくすと自分で笑ってしまった。
「ディズニーランド?」
 ギョンスも笑い声が言葉に混じった。
「うん。お前といっしょだったよ」
 横目で一瞬だけ、ギョンスを映した。その顔は不意を突かれた表情で、膨れてめくれ上がった唇はほのかに開いていた。
「ミッキーとかプーさんとかのぬいぐるみをお前じっと見てた」
 その横顔の白目を俺はじっと見てた。
とは言わなかった。
「ほしいのか?って聞いたら、うん、少し、って言ってたよ」
 なぜかは自分でも分からなかったが、ミンソクはまた笑いがこみ上げた。抑えられずふふふふ、ふふふふ、と喉の奥のほうで小さく笑った。
「…確かに、ちょっと、欲しいかも」
 ふざけたニュアンスのない声に、思わずミンソクが横を向くと、真面目な顔をして、よくよく考えてみたら、といった表情でギョンスがひとりうなずいていた。ミンソクはたまらず、今度はきっちり声に出し、あはははと笑った。
「あ」
 突然ギョンスが声を上げた。
そして振り向き、時計を仰いだ。十二時ジャスト。
 驚いたミンソクはギョンスの動きを呆けて見つめ、何事かと尋ねようとしていた。と。
くるりとこちらに向き直ったギョンスは目を光らせ、口を心臓の英語名のように整えはっきりと動かした。
「誕生日、おめでとうございます」
 そう言うと、耳の上部分を染めてつ、と目を逸らした。
ふたりの間に隙間などほとんどなかった。
それにもかかわらず、額を寄せ合うようにしながら、お互いを見ないでいた。
サンキュー。
しばらくしてから呟くようにミンソクは言った。とても、びっくりしていた。
誕生日のことは、寝て起きたら忘れていた。だいたい、ミンソクはギョンスといるとギョンスのことしか考えられなくなった。
だからお祝いを告げられたことを理解するより先に、ギョンスのその顔のさまにまず気を取られ、すぐに反応できなかった。嬉しさはもとより、何か強い恥ずかしさも襲っていた。嬉しいよ、と取ってつけたように言った。もっと気の利いたことが言えればいいのに、と思いながら。
「…プレゼントは、またあとで渡しますね」
 足の指を動かしているらしいギョンスは、やはり下を向いていた。もごもごともぐらが這うように、濃い茶色の毛布は弱く波打った。
目の端でミンソクはギョンスの伏せたまぶたを縁取る濃い、黒いまつげを見た。そして唐突に、ぬいぐるみに心奪われる夢の中のギョンスが浮かんだ。
「ギョンスってさ」
 妙にくっきりした声色でミンソクは言葉を発した。ぱっと、ギョンスは目を上げた。
「結構、可愛いもの、好きなの?」
 瞬きしつつなんとかギョンスの視線を受け止めると、ミンソクは答えを待った。
 魅入られたように黒目をふるふるさせながら、ギョンスは答えた。「はい」唇が、それそのものが生き物であるかのようにうにうにと目の前で動く。「好きですよ」
「…そうなんだ」
「はい」
 だから、とギョンスは言葉を続けた。
「兄さんだって、好きなんです」
 まっすぐな目で、ミンソクを離さず、愛を告げた。
体じゅうがその声に反応を示しながらも、俺はねずみや熊のぬいぐるみか?ミンソクがそう思った瞬間、囁きに近い声がした。
「…俺、結局何か買えたんですか?夢の中で」
 空気を震わせる、濃いホットチョコレートのようなギョンスの声がミンソクの耳に流れ込んだ。ほとんど無意識に、ううん、とミンソクは応じた。
「…じゃあ、夢の続きに」
 もう、ふたりとも互いしか見ていなかった。
濡れた瞳はそれぞれの胸のうちを如実にものがたり、何も隠せていなかった。ミンソクは高い頬骨を中心に自分が白から赤に変容するのを、ギョンスのまなこを覗き込みながら感じ続けた。
「俺に、代わりにいちばん可愛いもの」
 を、と言いかけたギョンスの唇をミンソクは覆った。みずからのそれで。
もう、こんな照れくさいことを聞いてやるわけにはいかない、なんと言っても、俺の誕生日なんだから。
如何ともしがたいくすぐったさと腹立たしさを心中押さえ込みながら、こうしてミンソクは、もっとも自分の望むプレゼントを誕生日の始まりに受け取ることができたのだった。



おわり



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20161223

春を待つ(リアル短編・クリスマス企画)
薄く開いたドアの隙間から、ふたりが唇を合わせるのを見たのは昨夜のことだ。
ふたりというのはギョンス兄さんとジョンイン兄さんのことで、俺は別段覗き見するつもりがあったわけではなかった。
仕事を終え、なんとかイヴ中にマンションへ全員で戻ったあと、軽いパーティーのようになったリビングに、いつの間にか彼らの姿がなかった。
トイレに立った俺は、トイレにも洗面所にも、どちらもがいないことを認めると、寝てしまったのかと思い、ふたりの部屋の扉をそっと開けた。
リビングからはかなりの大音量で、チャニョル兄さん選曲のラップが鳴り響いており、相当静かにノブをひねったが、おそらくそんなことをせずとも、ベッドに向こうを向いて座ったふたりには、俺が背後から視線を投げていることを気付かれることはなかっただろう。
明かりはこうこうと点いていた。
ベッドの上、ジョンイン兄さんの周りに、プレゼントの包装と思われるものが散らばっていた。鈍い銀色の紙、リボン、細長い箱。
ジョンイン兄さん、なんかもらったんだ、と思い至った俺は、ずりーな、と反射的に思った。そう言えばベッドに付いた手の首に、見慣れぬ皮のバンドが覗いている。
身長差のあるふたりが並んで座ると、頭の高さはそれを表し、また、背中の大きさもかたやメンバーの中でも随一、かたやびりっけつという彼らであるため、まるで兄と弟、下手をすると親と子のような佇まいがあった。
ふたりとも俯いているようだった。
さびしそうに、まるで仲たがいをしているかのようにすらこちらには感じられた。
何してるの、と声を掛けようとかすかに口を開けたとき、ギョンス兄さんがジョンイン兄さんを向き、上目で相手を見た。その顔。俺は動きかけた舌が麻痺した。裸足の足の裏から(飲んでいたら暑くていつの間にか靴下を脱いでいた)、刈り込まれたうなじまで、よく分からない電気のようなものが駆け抜けていった。ほんとうに、ぴりぴりぴりりと、肌の上に何かが弱くうごめいた。瞬きも忘れた。がっしりとした、ジョンイン兄さんの男らしい肩の上に、ギョンス兄さんの手が音もなく置かれた。そんな触れ方を誰かにしている兄さんを、俺は見たことがなかった。撫でているような、掴んで離さないとでもいうような、ただ触っているだけとはとても言えない指と掌の道筋だった。特段ギョンス兄さんをきれいな手だとか、仕草が魅力的だとか、そんなことを思ったことはなかったのに、このとき、俺は自分の背と肩にそれが這ったかのような錯覚に陥り、それがまったく不快でないことを自覚した。顔が高潮しているということも、同時に悟った。
触られた瞬間、跳ねるように上に動いたジョンイン兄さんが、観念したように横を、つまり己を見つめるギョンス兄さんを振り向いた。
ギョンス兄さんの目は、眠たげな、それでいて完全に覚醒している、おかしなそれだった。白目と黒目がそれぞれ別の生き物のようにちらちら動きながららんらんとしていた。梅の花に似てるな、とつねづね思っていたその唇は、いち早く春を迎えたかのごとくほころんでいた。頬は薔薇色だ。俺はごくりと唾を飲んだ。その音が聞こえてしまうのではと危ぶんだが、もちろんそんなことはなかった。
視線を絡み合わせている間中、ひとこともふたりは口をきかなかった。
ただ柔らかく、気のせいかと思うほど儚く、ギョンス兄さんは微笑んだ。優しげとは言いがたいものだった。悪巧みをしているように俺の目には映った。
少しだけあったふたりの隙間を、ギョンス兄さんがなくした。
寄り添うようにして座り直すと、首をのけぞらせ、ギョンス兄さんは目を半ば閉じ、顔をジョンイン兄さんに寄せた。ジョンイン兄さんはまるでダンスなんかまったく踊れない人間みたいに、ぎくしゃくとみずからもギョンス兄さんに自分の顔を近付けた。
ひゅっ、と、俺は吸った息が喉を通る音を聴いた。
咲きかけた花の上に、よく太った虫が乗るように、唇と唇は出会った。
重ねられたそれらは、うごうごと、冬眠から目覚めた生き物さながら、切なく、喜びに震えている。
金縛りにあったかのごとく、全身が硬直していた俺であったが、濡れたギョンス兄さんの舌が一瞬見えた刹那、さっと体が後退した。そのまま、ドアを可能な限り音を立てず閉めた。
心臓のすさまじい鼓動が俺を圧倒していた。
そそくさとリビングに戻った俺は、そのあと、何を飲み、何を食べ、何を話したのか、さっぱり覚えていない。ただふたりが時間差で部屋に入ってきたとき、また狂ったように心臓が鳴ったことだけが鮮明な記憶だ。
今朝、クリスマスの朝を迎えたわけだが、当然ぎっしり仕事が詰まっていた。
すっかり集中力を欠いた俺が、のそのそと出掛ける支度をし、玄関に向かっていると、後ろから肩に腕が回った。
「元気ねえな」
 顔の横に、ジョンイン兄さんの顔があった。逆側の頬に何か冷たいものが当たる。視線を向けると、そこには輝く新品の腕時計だ。シンプルで、オーソドックスで、誰の贈り物かをあっという間に思い出させた。思わず目を逸らす。
「…眠くて」
「あー、俺も」
「…兄さんはいつもでしょ」
 よかった、軽口が言える。俺は自分の大人らしい対応に気をよくする。うるせえなあ、という言葉を残し、さっさと靴を履いた兄さんが先にドアの向こうに消えた。
俺が靴べらで靴に足を納めようとしていると、今度は膝の裏に何かが当たり、かくんと体が落ちた。
「うわっ」
 振り返ると、ギョンス兄さんだった。心からおかしそうな顔で、俺をまっすぐ見つめていた。
しかたなく俺も笑いながら目を合わせると、兄さんは笑うのをやめ、手を俺の顔に伸ばしてきた。
冷えた肌の上に、親指が乗った。
すぐ、目の下。
こするように、二度、動いた。
「隈、できてるぞ」
 そして手は離れた。
俺はバランスの悪い体勢のまま、イヴからクリスマスになったそのときと同様、再び毛穴という毛穴が開き、動けなくなった。
小首を傾げて兄さんは俺を眺めた。
梅の花はしっかりとしたつぼみのままだった。



おわり




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20161230

呪文のように囁いて(リアル短編・年末企画2)
暗雲の中で稲光が幾何学的な模様を描いているのを見ている人間は多くなかった。
今年分の暦がもうすぐ終わりを迎える。
雨だと思ったら雪に変わり、やんだと思ったら雷が厳かに鳴り出した頃、ジョンインは移動車の中でゆっくりと目を覚ました。
きちんと雪対応のタイヤに変えた車を、マネージャーは疲れから憔悴しきって無表情のままひとことも言葉を発さないながらも、彼と同じかそれ以上に疲労の蓄積したメンバーのほとんどが熟睡するのを邪魔しないよう、その運転技術を遺憾なく発揮し音を立てずに疾走させていた。
すっかり辺りは薄墨から漆黒に染まり、時折遠くに雷が落ちた。
目を半分ほど開け、もこもこの真っ黒いダウンコートに顔を埋めたジョンインは、窓の外にちらりと視線を走らせると、すぐ逆横にも同じようにした。そこにはギョンスがおり、ポータブルのゲーム機の灯りを顔に受け、緑の混じった白に顔を光らせていた。
ジョンインが見つめているのに気付き、ギョンスは目だけで彼を受け止めた。
おおかたが闇の中で、ギョンスの白い顔の上、白目が異様に浮き上がり、ジョンインはいっきに覚醒した。
マネージャーとふたり以外、起きている者はいないようだった。寝息が規則的にいくつも聞こえ、中には軽いいびきも混じる。
追い越していく外の灯りや、かすかな稲妻が、互いの顔を一瞬強く照らし出し、そのたびにどちらもが初対面かのようにはっとする、というのを少しの間繰り返した。くっきりとかたち作られたそれぞれの唇は力が抜かれ、隙間ができていた。ジョンインのそれはわずかにかさついてもいた。
先に口を開いたのはギョンスだった。
「起きたんだな」
 ゲーム機を止めたらしく、もうその顔は下からの光を浴びていなかった。歯と目だけが白くジョンインを射した。
「…うん。……起きてたの?」
 もぞもぞと座り直し、腕組みを深めてジョンインは答え、そして問うた。目は逸らしていた。ギョンスがまだ自分を見ているのは分かっていたが、見返すのが苦しかった。小さな飼い犬たちの胸に耳を当てたときのような音が身内からしていた。掌が湿る。
「ちょっと寝たけど。…うん、でも、起きてた」
 先程踊ったダンスが想像以上に堪えたらしく、腰を下ろしてからの記憶がなかった。隣り合って座れていたんだ。そう思いジョンインは唇を噛んだ。雷が強く鳴ればよかったのに。そしたらもっと早くに目が覚めていたかもしれない。そんな浅はかな考えを本気で抱くのがジョンインだった。
「起きるかなと思ったけど、ほんとに起きるとは思わなかったな」
 ギョンスが笑っただろうことをジョンインは見ずとも感じた。その言葉と表情のようすで、ジョンインはかっと顔に血が上った。自分を待ってくれていたのかも、この考えは自意識過剰ではないはずだ、耳の奥がじんじんしながら頭の中で思考が膨らみ続けるまま、ジョンインはむっつりと黙っていた。
窓際に座っているジョンインの横に、静かにギョンスは近付いた。
車が擦れ違うと、さーっ、さーっ、と、溶けた雪を弾く音がやけに響く、そんなことを思っているうちにギョンスがどんどんと接近していた。俯いて、自分の太ももをじっと見つめるだけしかジョンインにはできなかった。いつもそうだった。待っているだけ。そしてひたすらに怖くなった。歓喜と恐怖に我を忘れそうになり、押し黙り、熱を体内にこもらせた。
 肩と肩が触れた。
背の高さにずいぶんと差があるため、とは言っても顔の横に顔が来るという感じではなかった。膨らみを持ったコートがギョンスを弾いていた。なんでこんなものを着てきたんだろう、と毎日着ている、早朝着込んだ、ひどく気に入っている、ギョンスに似合うと言われたこともあるこのダウンコートを心の底から忌々しくジョンインは思った。ギョンスも厚手の黒いピーコートを着たままだった。もちろん車内は暖房が効いているが、今日の冷え込みは格別だ。何層もの衣類に邪魔をされ、ギョンスが遠い、とジョンインは悲しく、苛立った。みずからは何も行動を起こしていないのに、心の中ではとにかく暴れ回っていた。それを見透かしたかのように、ギョンスは言った。
「お前っておっかしいなあ」
 空気と笑いがこもったその言葉は囁きで、ジョンインは吐かれた息の熱さまで感じ、もう少しでうめくところだった。
 こっち向けよ、と続けられた。
ぎぎぎぎ、と油を差さなければならない機械が立てる音がするような動きで、ジョンインは首を回した。まぶたを伏せ、きょろきょろと黒目でギョンスを捉えると、十数センチの距離しかなかった。
思わずため息を漏らすと、ギョンスは柔らかく顔をほころばせた。
たまらなくなったジョンインは、心臓がきゅうきゅうと締め付けられるのをもじもじしながら我慢しつつ、兄さん、とだけ呟いた。
それは好きだ、と言うときとまったく同じ声色だった。
 ん?という返事のしかたまで、ジョンインを否応なく反応させた。
眉間に皺を刻み、唇を舐めていると、ギョンスがもっと距離を縮め、頬のすぐそばにその鼻と口を持ってきた。耳の穴に言葉を注ぎ込む。
「手、出せよ」
体が軽く震えている自覚がジョンインにはあった。それを恥ずかしく感じるため、なるべく隠そうと変に大きく動き、結果非常に不恰好な動作となってしまう。だがギョンスは何も言わない、からかいもしない。ただ微笑み、出された手を自分のそれできゅっと握った。
ああ、とジョンインは思う。
ひどく汗をかいた手に、乾いたギョンスの手は心地よかった。申し訳なさも同時に当然滲むが、圧倒的な幸福感に抵抗できるはずもない。決して優しくはない、その掴む強さ。それがほんとうに、痺れるほど嬉しかった。
体を交わらせているとき。そのときも、ギョンスはこうした強さでもってジョンインにしがみついてきた。さらさらとした皮膚が汗を軽く噴き、筋肉という筋肉が触って確かめられる。抱かれる際、ギョンスは生理的反応で薄く泣き続ける、それは性器も同様だった。塗れそぼるそこにジョンインはどうしても触れずにおれない。手で、口で。彼の中に入る頃には、もうこれが現実なのかなんなのか定かでなくなるほど、見境がなくなっている。全身の躍動と、締め付けてくる肉壁と、ギョンスの顔、体、声、息。ジョンインは後ろから突きながらギョンスの肩甲骨の盛り上がりを見つめていると、そのまま彼がどこかに飛んでいってしまうのではないかという妄想が頭で繰り広げられた。毎回だった。それはそれは優美な動きで、彼の背は鳥の翼にしか思えなくなるのだった。そう、ギョンスは力強い大きな鳥だった。今握られている手から伝わってくるようなすべてが、彼とのセックスを思い出させ、ジョンインは完全に勃起していた。
繋いだ手の首に、ギョンスのもう一方の手が触れた。
袖をめくり、そこにはめられた腕時計を指先がなぞる。
「…つけてんだな」
 ギョンスを見下ろすと、彼のまぶたとまつげが自分たちの手の方を向いているのが分かった。手首の骨や時計と肌の隙間をいじられ、くすぐったくて肩をすくめる。
「お前包装びりびり破くよなあ」
 思い出したようにギョンスはくすくすと笑いながら言い、やはり手を握ったまま、ジョンインの腕と時計を弄び続けた。
「…開かなかったから」
「鋏使うとかさあ」
「……ごめんなさい」
「怒ってないよ別に。お前らしいと思っただけ」
 空が光った。
光線が木の枝のように雲の上を這うとき、ジョンインとギョンスは双方の目を見合っていた。雷鳴が轟く。
「…兄さん、ゲーム何やってたの」
「…野球の」
「野球のって、なんの…」
「……黙れって」
 ドアにぐっとジョンインは押し付けられた。
そして襟首を掴み、ギョンスはジョンインの顔だけを自分に引き寄せた。マネージャーの完全な死角で、ギョンスはジョンインの唇を己のそれで捕らえた。
 キスしたいキスしたいキスしたい。
そう思っていたのがばれたのだろうかとジョンインは訝る。
眠りから覚め、緑の垂らされた白光の中のギョンスを目にした瞬間から、おまじないのようにそう唱えていたのだった。
 いろいろあったけど、と上唇と下唇で唇をつままれながらジョンインは考える。
こんなふうに終われるなら万事OKだ、と彼には一年のすべてが突如薔薇色に見えた。



おわり



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20170101

サンクチュアリ(リアル短編・お正月企画)
は、とイーシンが息をついた先にいるのはジョンデで、ジョンデは彼特有の眉を歪めてイーシンの肩に腕を回していた。
スタジオのトイレの、一番奥。
ふたりは個室に入って年末の寝不足と欲求不満のうち、後者を共に解消していた。年が明けてから初めてのセックスだった。
芳香剤と汗と精液のにおいでイーシンは頭がくらくらした。疲れもあった。
しかしそれは立ったまま自分に絡みつくようになっているジョンデの皮膚と中の、温かみと悦びで、快感へと昇華された。眼前にあるジョンデの眉の傾斜がイーシンの心身を更に加速させた。
「に、さ」
 途切れ途切れに漏らす声に、イーシンは小首を傾げた。みずからの眉も相手に劣らぬほど困惑したように曲線を描いていた。目は常と同じくまぶたが重いものの、瞳は黒々と濡れており、そうした彼のそれを見たことがあるのは彼に抱かれた者だけだった。
 首を浮かし、ジョンデはイーシンの鼻に己のそれを擦り付けた。
求めているのは唇だろうと、イーシンには察せられた。
口角の切れ上がった誰にも好感を与える口元はしかし、今そのいつもの役目を果たさず、ただ卑猥にぱくぱくと欲を訴えていた。白い蛍光灯のもとで、頬が色を持っているのもきちんとイーシンの目に映る。
壁に押し付けたジョンデの顔の両頬を手で挟み、目と目を合わせた。
体の動きは止まらない、ずっと、間断なく、イーシンはジョンデの中を行きつ戻りつし続けている。
唇に唇を触れさせる。いっそどこまでも優しく。
きつく目を閉じたジョンデは、眉を寄せて身をくねらせる。あらかじめ先にあてがわれたペーパーをもっと湿らせているだろうことがイーシンにも分かる。
額に手を置き、眉を親指でなぞるようにしながら、舌で上唇を舐めた。歯も一緒にぞろりと触る。ふるふるとジョンデは体を振動させ、首に掛けた腕の力を強めた。
上が終わると、今度は下だ。
決してジョンデはこういう際に焦って急かしたりはしない、そうしたらいけないことを知っている。自分の舌をイーシンに差し出すのは求められたそのときだ、そう、本能で察知していた。
だからジョンデは震えながら自身が固く、大きくなり、溢れ出たもので衣服を汚さないかという心配だけをし、完全にイーシンに身を任せた。
イーシンは夢中だった。
この時間も、もうすぐ終わりだ。
それを目いっぱい堪能するつもりで、実際そうしていた、セックスはいつでも、イーシンにとって栄養剤のようなものだった。
男を抱いたのはジョンデが初めてだったし、ジョンデ以外の男を今後抱くことがないだろうとも思っていた。ジョンデとこうした交歓を持つのは---ひとことでは表現し得ない感覚だった。ふたりはただの仕事仲間ではない、寝起きを共にし、食事から何からすべて一緒で、互いが互いにとっての異国で身を粉にして働き、何もかもを分かち合った。その延長線上での、関係だった。そうでなければ男となど寝ないことを、イーシンは深く自覚していた。ジョンデも、本来女性と関係を持つ、男性に対しどうこうなるタイプでないことは言われずとも明白だった。そんなふたりがこうなったのは、環境のなせる業---そうとしか言いようがなかった。しかもふたりは愛し合っていた。イーシンはジョンデを見ると、いつまでもいじめていたいような、構ってほしいような、アンビバレンツな思いに支配され、ジョンデはイーシンといると、どうしようもなく彼のすべてを許し、何もかもをしてあげたく、求めることを叶えてやりたくなってしまった。
とうとう唇は唇を吸った。
さんざん待たされたそこはひくつきながら相手を受け入れた。ジョンデは無意識に、あ、あ、あ、と小さな声を漏らしていた。膨らんだ性器がよだれを垂らして自身の毛を濡らし、穴がイーシンをぎゅうっと締め付けた。
頭の中が沸騰しながら、心が澄んでいるのをイーシンは感じた。ジョンデを自分のものにしていると思うと、彼はそういう幸福を得た。
夢を思い出す。
仕事の合間のうたたねで、イーシンはジョンデの運転する車でどこか知らぬところ、ただ緑の広がる誰もいない地にやってきていた。森が現れ、ふたりはその中へと車を降りて入っていった。
ジョンデはしっかりとした足取りで、イーシンの手を握って横を歩いている。ちらちらと横目でイーシンはそんなジョンデを見、どこへ向かっているのだろうと怪しむ。どこかわくわくしているが、実は不安が渦巻いている。
小道を辿っていくと、突然開けたところに出た。
湖だ。
陽光を遮る樹木がずらりと並ぶ、濃い青と緑が充満する世界に、水鏡が迫っていた。木々すべてをその身に映し、ちらともさざめきはない。完全に凪いだ、大きな潤いの溜まりであった。
ふたりは立ち止まり、手を繋いだまま、呆然と目の前の光景を見つめた。こんなに静かな場所は生まれて初めてだ、イーシンは思った。
粘膜の中に、粘膜を差し入れた。
唾液が広がる、息が混じる。腰をみずからも動かしそうになるのをジョンデは渾身の力で我慢していた。そうしたらすぐにでも達してしまうのが分かっていた。
すぼまるアナルはイーシンの運動を妨げようとするかのようだった。だが当然だがイーシンはそんなことには負けず、ジョンデを犯すのをやめなかった。
舌は舌と離れなかった。イーシンは全身をジョンデに密着させ、体全部でジョンデを食った。
ジョンデは限界を迎えていた。
イーシンに抱かれると、彼が踊るときのような情熱のほとばしりに翻弄され、ほとんど正気を失いそうになった。今もそうだった。彼には彼にだけしかない何かがその身の内にあった。時折、それが垣間見えることがある。性交はその発露のひとつだった。
「…っあっ」
 口の中で声を発せられ、ジョンデは気が遠くなりながら射精した。精液を吐き出しながら、イーシンが紙がずれないようにときゅっと握ったものだから、涙を零して腰を揺らした。
そのさまをもうほぼ閉じんとしているまなこで捉えたイーシンは、そのときあの湖にいた。
鳥が飛んだ。
隣を向くとジョンデが自分を見ていた。
笑うでも、悲しむでもなく、ひたすらまっすぐイーシンを。
達しながら、イーシンは瞬きもせずにジョンデを、細くまぶたを開けた、まんまんと水をたたえた瞳のジョンデを見つめた。
あそこがどこなのか。
ほんとうは、イーシンにはとっくに分かっていたのだった。



おわり




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20170104

Eat me(リアル短編・お正月&リクエスト企画)
指を。
一本一本、口の中に入れていた。
これで四本目だった。
カーテンの引かれた窓の前、セフンとイーシンは差し向かいになって座り込んでいた、膝と膝をくっつけて。
セフンはイーシンの小指を唇、舌、口蓋、頬の内側、すべてを使って愛撫した、それはもう丁寧に。
ふたりとも、イーシンの指先、セフンの口元しか見ていなかった。そこ一点にあらゆる力が集約されていくようだった。
おやつ食べたい。
そう、セフンは言ったのだった。
口にしている言葉とは裏腹に、真摯としか言いようのないまなざしで、イーシンを射しながら。
それを聴いた瞬間に、イーシンは全身が反応した、しようがなかった、何故ならセフンのふたつの眼が言おうとしていることは明白すぎるほどであった。
寝る間も惜しんで仕事をし、ひと息ついたほんの数時間。もう少ししたら、また出掛けなければならない。
そんな中、イーシンはセフンの部屋に連れ込まれ、鍵を掛けられ、閉じ込められた、逃げられないように、彼に供されるために、彼を捧げられるために。悦びから真に身が震えた。恥ずかしく思うほど、ふたりきりになって扉に鍵を閉められたと分かったとき、性器は上を向き、鼓動は速まっていた。ごまかすように照れ笑いを作ると、頬のくぼみにセフンの親指が触れた。
溶けてしまう。
もうすぐ、泣いてしまうのではないかと勘繰られるような顔をして、イーシンは己を見つめるセフンを見返した。
カーテンの隙間から黄色い陽光が差し込む。
薄暗い部屋で、セフンの体に陰影が浮かび、イーシンは彼の美しさに息を呑んだ、信じられないと、思った。
目の前で瞳を潤ませるようにしたイーシンに対し、セフンこそ自分の体内で熱いものと冷えたものが螺旋を描いて回転している感覚に囚われ、したいことは山ほどあるのに、何からしていいのかにやはり途方に暮れた。こんなに甘い顔をした、砂糖菓子のような男は見たことがないと、改めて頭痛がしそうなくらい思った。
食べてしまいたい、今すぐ、残さず。
両手すべてをしゃぶりつくした頃には、セフンもイーシンも、下着を濡らしていた。
もうどうしたらいいのだろう、とイーシンはセフンを見た、眉はしかめられ、口からは上がった息が漏れている。セフンも射るようにイーシンの視線を受けた。直線的な眉は眉尻が上を向いていた。獰猛で狡猾な動物を思わせる双眸だった。
イーシンの脚の間にセフンは顔を埋めた。
あ、とだけ、セフンが体を屈めたときイーシンは零した、だが、それだけだった。いやともなんとも言わなかった。拒めるはずがない、だっておやつの時間はまだ終わっていないのだ。彼は満足していない。
ぷくぷくに膨らみ、先から溢れた液で濡れた亀頭をセフンは舌でべろりと舐めた。
イーシンは自分の口を手で覆った。肩が傍目から分かるほどに揺れていた、強く目をつむる、眉間の皺の深みは増す。
ちゅるちゅると音がする。そしてセフンはイーシンの足の指を空いた手で撫でさすった、寝そべりながら。
頭が変になる、イーシンはそれしか考えられない。
どんどん、どんどん、体の中からセフンの行為への当然の反応が染み出し、セフンの口内を侵していることを知っていた。たまらなかった。わずかに目を開け、イーシンはセフンを見下ろした。こんなことをしているのに、彼は優美としか言いようがなかった。セフンはいつも、彼に若木を髣髴とさせた。細くしなやかで強靭な、何より鮮烈な美を体現する存在の年若い木。体を長く伸ばしたその姿は、イーシンの目に焼きつくように映った。
 愛している、そう、苦しさの中で強烈に思った、妄執だと言われても否定できない。
だが思っただけで、口にはしなかった。
口で奉仕されながらそんな言葉をセフンに吐くだなんてことは不可能だった。心の中だけでほとんど叫ぶようにしてひとりごちた。
好きだ。
好きだ。
好きだ。
ほんとうに、死ぬほど、好きだ。
つ、とセフンの上目とかち合った。
イーシンは声に出していたかと顔から火を噴くような思いに瞬時に襲われた。
するとセフンはじっとイーシンを見つめたまま、相手の体を後ろへゆっくりと倒していった。
脚を掲げられ、膝の裏にみずからの手をあてがわれる。ベッドの上のクッションを、セフンはすばやくそして優しく、イーシンの頭の下に置いた。
されるがままのイーシンは、いったい今がいつでここがどこなのかが遠くに去っていくのをぼんやりと感じていた。かっかと体が熱く、液という液が身中を巡るのを追いながら、セフンが足の指を咥え、指を穴の中に入れるたび、あ、あ、と言葉にならぬ声を上げた。
ぬぬぬと、セフンの長い指はイーシンの尻を犯した、ひくつくそこは、実に温かく、セフンは深く息を吐く。自身もまた、これ以上ないほど身をぬめつかせていた。腰を振らぬよう少し気をつけていたくらいだった。
再びセフンはイーシンを食べた、喉の奥まで。
今度こそイーシンは大きな声を漏らしかけた、だが必死に、あっ、と言ったあと、唇を噛み締めた。強すぎる快感が腰全体を包み、鍛えられた肉体が反射で筋肉をあちこち動かした。じっとしてなどいられない、腰が浮きそうになる。セフンは好機とばかりに指を根深く埋め込み、イーシンのペニスを毛の生え際まで咥え込んだ。そのまま指と舌でかき混ぜる。イーシンは発狂寸前だった。
やめて、と言う声がさすがにセフンの耳に届いた、きれぎれではあったが。切なくかすれたそれであった。要するにセフンにやめる気など起こさせるものではなかった。がくがくと振動するイーシンを、セフンはありったけのしつこさを持って蹂躙した。恍惚としながら。
とうとうイーシンは泣いた。
うう、うう、と、高く清らかな泣き声がセフンを包む。セフンはいとしさといじらしさと焦燥で胸が張り裂けそうだった。爆発一歩手前の火薬に自分がなったように感じた。
仰向けになった、涙を流し、震えるイーシンを俯瞰し、その肌の赤さを目にすると、セフンは紅葉した見事な葉を連想した。どうしてこんな色にという、自然が生み出す神秘だった。
我慢するつもりだったんだけど、とセフンは告げた。
ようやく止まりかけた涙の張った目で、イーシンは問う。何を?ほんとうは知っているくせに。
全部欲しくなった。
そう呟き、セフンは下に履いているものをずり下げた。
イーシンの顔の上に、セフンの顔がやって来る。
太陽のかけらがセフンの、そしてイーシンの、髪の毛、顔の輪郭、鼻の頭、まつげの先を光らせる。
目と目が相手を映す。恋情と羨望と欲望を混ぜた視線。お互いがあれば何も要らないと思うひととき。
キスしてもいい?兄さん。セフンが尋ねる。そうしながら、柔らかい、それなのに硬いものを、セフンはイーシンの中に押し進めた、イーシンはまた、あっ、と、ひとことだけ零す。
もちろん、なんてことも言いたくない、イーシンは反発すら覚える。
だから代わりに、イーシンは片手でセフンの後ろ頭を寄せた。
甘い。
いつだってイーシンの唇は、セフンにとって、つきることのない魅惑的な蜜壺そのものであった。



おわり





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20170105

不文律の逢瀬(リアル短編・お正月&リクエスト企画2)
いつ頃からこれが始まったのか、俺にははっきりとした記憶がない。ただ、ずいぶん前からなのは確かだった。
その日、俺たちは大きな仕事を控えていた。まだほんとうに出たてで、あまり経験のない類の仕事でもあった。
深夜まで練習を重ね、まだ太陽が世界をくっきりとは照らしていない、薄闇に包まれている時間に起き出し、俺たちは出掛ける支度を始めた。
寝起きのいいメンバーとそうでないメンバーがいるが、もちろん、ジョンインは後者のひとりだ。今はだいぶよくなったが、ほんとうに、放っておけばひたすら寝ていた。感心すらするほどだった。
リーダーとして、全体の状況の把握は欠かせなかった。当然だ。そういうわけでジョンインをその朝も起こしに行った。誰が欠けても困るが、なんと言ってもジョンインがいなくては話にならないのがうちのグループだ。
ジョンインは踊るということに関し、特に舞台上ではナーバスになることはあまりない。しかしそれだけで済まないタイプの仕事になると、気合と緊張が入り混じり、思春期のホルモンバランスの崩れた荒れた動物のようになる。暴れるとかそういったことはないのだが、体を持て余し、いたるところで振りを確認し、じっとしていられず、焦点の合わない目をし、掌に汗をかいている。
ベッドの中のジョンインの肩に触れると、ぱちりと目を開くのが見え、俺は「行くぞ」と声を掛けた。
熱に浮かされたような顔をし、具合が悪そうにすら映る代えの効かない弟分は、俺を強い不安で揺さぶった。
 頭も、そして体も、ジョンイン自身に取り戻させなければならないと俺は知った。
「来い」
 そう告げ、俺は脱力した稀有なダンサーを風呂に連れて行った。
もたもたと服を脱ぐジョンインを手伝うと、前がぱんぱんに腫れていた。朝立ちだったが、体に変調をきたしているのか、布越しにかすっただけでも熱さと硬さが伝わって来た。俺は眉を寄せ、とにかく浴室に引っ張り込んだ。
俺も着替えなくてはならなかったため、夜に入浴は済んでいたが、服を濡らすのもなんなので急いで裸になりジョンインの隣に立った。熱いシャワーをみずからに軽くかけると、ジョンインの覚醒を促し、落ち着きを取り戻させるよう、顔から体から、満遍なく湯をかけた。
色の悪かった顔に徐々に血の気が戻ってくる。俺はひとまず軽く安堵し、そそり立ったジョンインのペニスを見下ろした。
「…兄さん」
 目を瞑り何事にも無反応に近かったジョンインが突然声を発し、俺は驚いて目を上げた。
「ん?大丈夫か?」
 細く目を開けたジョンインは言った。
「…痛い」
 苦しげだった、眉はひそめられている。
「え、なんだ、どこが?平気か?怪我か?」
 俺は心底ぞっとし、体を離してジョンインの全身に目を走らせた。
「違う」
 うめくように答えが返ってくる。
「ここ……」
 そして手を上向いた性器に添えた。
俺は気が抜けると同時に、考えが頭の中を錯綜した。
「そ、そうか、そうだな、そんだけそんなになってたら。じゃ、俺出るから処理してきな、早くな」
 恥ずかしさもあいまって早口でそう告げ、踵を返そうとすると、ジョンインはシャワーを浴びながら、両手で顔を覆った。
「……怖いよー……」
 幼子のような声音で、泣いてしまいそうになるのをぐっと我慢しているらしかった。振り向いた俺はシャワー越しにそんなジョンインを見つめ、言葉を逸した。
「だ、大丈夫だ」慌ててジョンインの腕に触れ、諭すように言う。「あんだけ練習したんだし、今日だって、みんながいるんだから。どうにかなる。安心しろ」
 ほかほかと茹だったジョンインの体を両手で擦ってやると、背の高い弟はその長い腕を俺に回して抱きついてきた。
「……どきどきする…どうしよう……兄さん………痛い…」
 う、う、と、泣きはしないが苦しさから来る、絞り出したような声を漏らし、ジョンインは震えていた。
ぴたりと俺にくっついたため、硬化した部分がダイレクトに俺の下腹部にささっており、それも含めたこの有様に完全に俺は混乱した。どうしたらいい。時間がない。
答えを頭の中で出す前に、体が動いていた。
手を、ジョンインのペニスに添え、ためらう間もなく動かし始めた。ジョンインは体がびくりと大きく揺れ、うっ、と零した。
大きな体で、ジョンインは俺に巻きついたままだった。どんどんと体温を上げていくのが如実に伝わり、俺は勢いづいて手の動きを早めに早めた。
何をしているんだ、と、当たり前の考えが脳内を回転していた。
しかし一刻の猶予もなかった。俺たちには仕事が控えている。遅刻も失敗も許されない。絶対に。
長年の夢が、俺の中でどれだけ大きな位置を占めているのかをこのとき俺は強烈に感じた。ここまでのものだったのだと、初めて俺は正確に自覚した。背徳的な罪悪感など、その目的の前では実際、なんということもなかった。
それに。
あらゆるプレッシャーをこのジョンインという若者が引き受けているのも、痛いほど分かっていた。その弟が、これだけ懊悩している、心も、体も。なんとかしてやりたい、なんだってしてやりたいと、心から思ってもいた。
背にシャワーを浴び続けながら、ジョンインは俺の手の中でペニスを泡立たせていた。すごい量の先走りに俺はひたすら驚いた。
「あ、ああ、あ」
 聴いたことのない、甘く上ずった声が聴こえ、俺はいたたまれなくなった。肩の上に顔を出し、耳の近くで問いかける。
「い、いけるか?」
 こんなことを口にするなんてと、羞恥で顔が熱くなった。唇を噛んで返答を待っていると、思わぬ言葉が返って来た。
「い…い、いれたい」
「え?」
「いれたいよ、やりたい、兄さん。したい、たまんない」
 ううー、と言ってとうとう涙をジョンインは流した。顔をくしゃくしゃにして。
正気を失いかけているのは明らかだった。俺は手を止めぬまま、ただ呆然とした。
真っ赤な顔を俺に向け、濡れた目で至近距離から強く見つめ、ジョンインは続けた。
「兄さん…」
 顔と顔の距離は数センチもなかった。
俺はぼんやりと、顔をほんのわずかに上向けた。
ジョンインの唇が俺のそれに乗った。
すぐさまジョンインはむさぼるように俺の口内をめちゃくちゃに荒らした。
息を詰まらせながら、俺はぐっと目を閉じ耐え、ジョンインが自分の棒の液を手で取り、半ば強引に俺の脚の間に指を滑らせるのを感じた。
中指と思しきものが、ずくずくと穴の中に進んできたとき、俺は背筋を経験のない悪寒と痛みが走り抜け、「いっ…」と漏らし、ジョンインの体に爪を立てかけた。だが理性が、この肌に傷を付けてはいけないと言い、すぐ力を抜いた。ただ背中を震わせ、こらえた。
後戻りなどできなかった。
早く。早く。
かき混ぜるように俺の中で指を回すと、ジョンインは引き抜き、キスをやめて俺をくるりと後ろ向きにさせ、浴槽に手を付かせた。尻を掲げられる。
心拍があり得ないほど速い。寒いのか暑いのか分からない。目と喉が渇く。
そして、ジョンインは俺の中に入って来た。 感触を確かめるように、めり込ませるように、進入させた。
壮絶な痛みに俺は一瞬失神しかけた。
気持ちいいとか、そんなことはこれっぽっちもなかった。ただ、痛みがあるのみだった。
ジョンインは持ち前の身体能力ですぐ自由に動き出した。兄さんごめん、ごめんなさい、と言いながら。
「いいから」
 俺は自分の声が遠くから聴こえた。
「気にしなくていいから」
 途切れ途切れにそう言うと、もうジョンインは何も言わず、シャワーの流れる中、俺を突き、果てた。俺の尻に、ジョンインの精液は撒かれた。


行為が済んだあと、ジョンインは呆けた表情を見せていたが、すっきりしたのは明らかだった。冷静さを取り戻し、活力が湧いてきたのがこちらからも窺えた。
「兄さん」
 再びそのしなやかな腕で俺をぎゅっと抱きしめ、ジョンインは謝った、幾度も幾度も。
「愛してる」
 分かってるよ、いいから、気にすんなって言ったろ、そう伝えると、赤い、ゆるゆると膜の張った目で俺をじっと見据え、嫌いにならないで、と言った。
「ならないよ」
 俺は微笑んだ。もう、これでいい、と、本気で思った。
「愛してるよ、ジョンイン」
 真実だった。
抱かれても許せるほど、俺はこの弟を、嘘偽りなく愛していたのだった。


 結果、その日の仕事は成功を納めた。
俺たちは何事もなかったかのように振舞ったし、実際、その夢のような出来事は、ともすれば忘れてしまった。それほど日々忙しく、考えなくてはならないこと、しなくてはならないことが多かった。
けれど、ある重要な仕事の日の朝、ジョンインはまた、あの顔とようすをしていた。
まぶたを開けた瞳の、そのまなざしを目にしたとき、俺は悟った。
あの朝が、再び来たのだ。
その予感は現実となった、俺は浴室で、ジョンインを迎えた。そうせざるを得なかった。
このようにして、ふたりの秘密は継続された。
不定期の、不可避の、情交。
脱衣所の棚の奥に、入れ替えたローションの瓶すら置いておかれた。
仕事のスケジュールを聞かされると、ああ、きっとこの日、ジョンインに抱かれるだろうと、俺は見当がつけられるようになった。ジョンインの苦手な種類の仕事というのがあるのだ。
目を覚まし(もう、時間に余裕を持つためにある程度早くに起き出すことすらしていた)、ジョンインをそっと揺らす。他のメンバーが既に出掛けていたり、準備に追われている中、さも通常の、なんてことのない振る舞いのように、俺は無表情で弟を眠りから引きずり出す。ジョンインはすぐに目は覚ます。
風呂に行く。
 回を重ねればどうしても、楽な方法を模索してしまう。
そうすると、目を逸らしていた自分の快感というものに、否が応でも気付いてしまう。
優秀な身体の保持者であるジョンインは、音楽が身の内に流れているかのように体を用い、セックスをした。
自分が女性と関係を持っていたときのことを考えると、不思議な気持ちすら湧いた。こんなふうに行うものなのかと。純粋な驚きだった。
俺のものに触れられていないのに、しかも射精していないのに、あるとき俺は明らかに達した感覚を得た。無意識に声を出してしまったほどの気持ちよさだった。管という管が振動しているようだった。
「あっ…、兄さん、そんな、締めないで」
 切なげにそう言うジョンインの声が上から降る。自分の中が収縮しているのが分かり、俺は陶然とした。
ことを終え、ジョンインが尋ねた。
「兄さん、出してないよね?」
「うん」
「でも、いったよね?」
 黙るしかなかった。
真っ赤な顔で斜め下を見、ほっとけよ、と呟いた。
「そんなことあるんだ」
 ぱあっと、花の咲くように、心から嬉しそうに、楽しげにジョンインは笑った。妖精みたいだと、横目で見つつ、俺はしかたなしに苦笑する。いつもそうだった。踊っているときと、―――セックスのとき―――、それ以外は、人間でない、踊りに魅入られた小さな生き物か何かにしか、ジョンインは見えなかった。情熱と欲に駆られたときにだけ、人間の雄へと変貌を遂げる。ジョンインは俺にとって、そういう存在だった。


執拗にペニスをいじられ、ジョンインによって中から押し出されるように射精することもあれば、なんとかして中だけでいかされようとすることもあった。
俺のことは気にするなと言っても、好奇心旺盛かつ貪欲なジョンインは、みずからの快楽と俺の快楽、どちらも得ようとすることをやめなかった。
「あ、ジョンイン、も、駄目だって」
 声が聴こえぬよう、必ずシャワーを出して、なるたけ声量を抑えて訴える。ぬめりを持ったふたりの腰周りは、沸騰しているかのような熱だ。ジョンインは一度達した俺を、中だけでいかせようとしていた。
眉を寄せ、ジョンインにしがみつく格好になった俺が、懇願するように見つめると、こともなげにジョンインは言う。
「駄目だよ」
 尻の穴から腿を伝って、ジョンインの液が垂れているのが分かる。
「兄さん、気持ちいい?ねえ。いきそうでしょ?」
 荒い吐息に混じって、そんなふうなことを言うジョンインを、俺は見ることができない。悦びに全身が波打ち、言われたとおりときを得ようとしている。
「あっ…く」
 いったのを見て取ると、ジョンインはひくつく俺の内部をこれでもかと犯す。
頭が真っ白になったまま、ジョンインが俺にくちづけるのを感じると、それが終わりの合図だった。


 そろそろ、もう、こんなことは必要ないんじゃないかと、ずっと俺は考えていた。
頭と体がばらばらになったようなジョンインになることは激減した。
それなら、こんな関係は、いろんな意味でリスクでしかなく、終わらせられるなら終わらせた方がいいに決まっているのだ。
そう思い、俺はまた、ジョンインが身構えるだろう仕事のある朝、その肩に手を置いた。光る頬に囁きかける。
「ジョンイン」
 幸いなことに、この日、同室メンバーはいなかった。それぞれ、バラエティと映画のロケで、帰ってきてすらいない。
それでも大きな声で話すことはできないと、俺はぼそぼそと、ジョンインの枕元にしゃがみこみ、起き出した相手に話を続けた。
「これ」
 いつだったかに、ジョンインが、これほしー、と言っていた、プラチナのブレスレットを、裸のまま指から垂らした。
 寝ぼけまなこで俺とブレスレットを交互に見ると、何?と、かすれた声で問うてきた。
「これな、お守り」
 浅黒い肌の上、手首の細いところに、俺は優しくそれを巻きつけ、留めた。
「…もう、やめに、できるだろ?」
 言いながら、ジョンインの目をまっすぐに捉えた。唇の両端を心持ち上げて。
起き上がったジョンインは、手首を見下ろし、次に俺を見返した。何を考えているのか読めない顔をしながら。
「やめって、…。……兄さん、いやなの?」
 目をぱちぱちと瞬いて、俺から視線を外さない。
 ぐ、と俺は喉が詰まる。何を言ったらいいのか、途端に見失う。
「…だって…続けても、しょうがないだろ。お前、最近、平気になってきたろ?…今日みたいな日。…だから…」
 しどろもどろにそう言うと、遮るようにジョンインは跳ねつけた。
「違うよ」
 目を丸くした俺は、口をぱくぱくさせて黙った。
「俺、待ってたんだもん」
 唇をきゅっと結び、見たことのない表情をして、ジョンインは言った。
「兄さん来る日、いつも待ってた」
 脳天にその言葉がこだまするのを、俺は胸が早鐘を打ちながら受けた。すねたような声。言葉の意味。
 ベッドの上に置いた俺の手に、ジョンインはブレスレットをはめた手を重ねた。しゃらりと鎖は揺れ、掌は俺の手の甲を柔らかく包む。
「…兄さんだって、そうだったんじゃないの?」
 カーテンから、目覚めた太陽がいきいきと己を燃やしているのが透けている。
なんと答えたらいいのか、リーダーとして、仲間として、兄として、よく分かっているはずだ。
それなのに。
俺は、何も言えなかった。
そして、ジョンインがきゅっと俺の湿った手を握り、「お風呂いこ」と言うのが、心臓を甘く締め、また、朝は始まった。



おわり




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20170106

誘惑の作法(リアル短編・お正月&リクエスト企画3)
ジョンデのことを好きだと思ったときのことは、よく覚えている。
レコーディングをしていた時期だった。
そりゃあもう、悩んだり落ち込んだり奮い立ったりと、歌を録っているといろいろある。何度同じことを繰り返しても、満足するということはほとんど皆無だ。
そんな中、ジョンデだけは沈んでいる印象を抱かせたことはまずなかった。ジョンデはああ見えて、プライドが高く、特に歌に関しては他の追随を許さない。全身全霊を捧げていると言っていい。決して、泣き言などを吐くことはなかった。
あるとき、スタジオの休憩スペースに行くと、ジョンデが楽譜を見ながらお茶を飲んでいた。
俺が横に立ち、よう、と言うと、顔を上げてあの笑顔を覗かせた。ギョンス、と俺を呼びながら。
「順調?」
 尋ねつつ隣に腰を下ろすと、苦笑して、そういうわけじゃないけど、と返された。
「でも、やるだけやってる」
 手に持ったペットボトルの中で水がちゃぷりと揺れた。ジョンデが俺の目をじっと見据える。その目の中に潜んだものに、俺は初めて気が付いた。そんなふうな野心を、俺にこれほど強く感じさせたのは、ジョンデだけしかまだ、いない。
驚きと困惑が入り混じった頭で、ジョンデの目をただ見返していた。時間にしたら数秒だ。だがひどく、長く感じた。
いつもは上を向いている口の両端が、ただの平凡な唇にしか見えないような、引き結ばれた状態の、眉もまっすぐ、一の字を描いた顔から、突如ふにゃっとジョンデは再び、笑って言った。
「がんばろーな」
 そのとき、俺は恋に落ちたのだと思う。
背には鳥肌が立ち、心臓がひとまわり縮んだのだ。


だからきっと、俺の方が先にジョンデを好きだったのだろう。ジョンデはそうとは知らないはずだ。知らなくていい。ずっと。言うつもりもない。
 もともと異性愛者であるし、好意を持ったからといって、おいそれとその状態に慣れたわけではなかった。ずいぶんと、途方に暮れた。
だが、そのうちジョンデの俺を見る目に、俺と同質のものが混じっているのに気付き出した。それは最初はかすかなサインだった。本人はばれないように気を付けていた。けれどそんなことは無意味だった。俺がどんなに神経を使ってその一挙手一投足を見ていたか、ジョンデは知らなかったのだ。視線の色、眉の角度、所在なげな指先。ジョンデのすべてが俺に向かってある言葉を発していることに、どんどんと確信が持てた。
そうして、とうとう、ジョンデを俺のものにした。
きちんと、俺のものだと、俺の楽器だと、教え、納得させ、承諾させた。
歌うたいは歌うたいに、愛の歌を聴かせる羽目になったわけだった。


「なあ」
 ジョンデの中は熱い。いつも。そもそもこいつは体温が高い。繋がっていると自分が炎になったような気がする。汗がこめかみを滑り落ちる。
「…な…に、…ん、あぁ、あ、あ」
 顔から胸を真っ赤に染めているジョンデを、眉頭を上に向け、ほのかにひらいたまなこを俺に預け、鼻から息を激しく繰り返すジョンデを俯瞰しながら、俺は聞いた。
「あの子と、何、話してたんだよ」
 囁くように、突っぱねるように、区切りながらそう言うと、どうしても屈辱感にさいなまれ、え?と聞き返すジョンデをもっともっと攻め立ててやりたいという嗜虐心が湧いてきた。
「テレビで、共演してた子だよ」
「…レビって…、あっ、あ、んっ、…あ、あの子…?…あの…グループの……」
 動きはまったく緩められないどころか、その激しさがただ増す中、ジョンデはうわごとのように話した。
「…そうだよ」
 ジョンデのぶるぶると揺れるペニスをぐっと掴む。力を込め、手を激しく上下させる。
「やっ、やめろって、ぎょん、す、い、いった、ばっかりじゃんっ」
 そう、そこはぬるぬると滑らかだった。出したばかりで、大きさは最高潮だ。
今日は、一度いかせるだけで済ます気などさらさらなかった。思い知ればいい。泣けばいい。びくびくと体をひきつらせるさまを見て、俺は笑みを浮かべずにはいられなかった。
 すさまじい速さでしごきながら、絶えず腰も突きたてた。奥の奥まで差し込んだり、上側を擦ったりする。
「…やっ、やだ…ってっ…、う、駄目だってっ…」
 さっきあんなに腹に撒いたくせに、ジョンデの先からは俺の手を汚すものがまたゆるゆると溢れていた。傘の下あたりを親指で重点的に舐ると、いっそう、そこからよだれを垂らした。
「ひぃ、やっ、やだっ」
 両手で俺の手を止めようとしたため、片手でその手首を合わせて上で押さえつけた。ジョンデの方が力は強いが、俺は上から体重を掛け、更に性器への刺激を加速させた。ジョンデは体を起こせなかった。
「あああっ、あ、や、や、やだっ、へん、なるっ」
 きつくつむった目の尻から、ぽろぽろと涙が零れる。眉間の皺が縦に深い。
「なあ、あの子、そんなに感じよかったか?」
 自分の声の毒々しさに心中呆れかえりながら、俺はジョンデの顔の前に顔を下ろす。息がかかったためか、緩くまぶたを上げると、ジョンデははあはあしながら言った。
「…ただの、仕事だよ……そんなん、分かってるだろ…、んん、んんっ」
 口をへの字にして何かに耐えている。その顔がたまらなくて、もっとしろと思ってしまう。
「収録後も、仲よさげだったって、チャニョル言ってたぞ」
 脅すような声音でそう告げると、そんなことない、そんなことないよ、と目に涙をぶわりと膨らませた。
「俺が、俺が……そんなこと、すると、思うの?」
 顔を伝うとめどない涙を見つめながら、体を起こした俺は、ジョンデのペニスの根元を強く握り、中のものを上向け、感じやすい部分を執拗に攻め続けた。
「だ、だめ、だめだ、ぎょんすっ、それ、前、やだっつったじゃんっ」
 痙攣するかのごとく、ジョンデは体全体がびくついた。自由がきかないらしく、俺を止めるすべがない。
「ひあっ、ああっ、ん、あああっ」
 ああ、いい声だ。俺は思う。夢見心地のようにすらなる。
ジョンデの膝の裏を擦る。脛にくちづける。尻を軽くつねる。
もう、ジョンデは抵抗すらしない。ただ口を開けるだけで、声も出せなくなってきた。
そろそろだな、そう考えたとき、訪れた。
「んあっ、ああああーっ」
 最後の理性でジョンデは片手で口を押さえた。俺は収縮するジョンデの中を堪能する。ジョンデが俺を食おうとしている。そのはしたない口で、貪欲に。俺はたっぷり身をさらす。ほら、お食べと誘いかける。
 今日は中に出してしまおうと、最初から考えていた。俺のもので汚れきってしまえばいい。あとできちんと、きれいにしてやるから。
そのまま、俺はジョンデの内で果てた。


風呂を済ませて戻ってくると、ジョンデはベッドの上に腰掛け、向こうを向いていた。
 黙って隣に腰掛けると、横目でちらりと俺を見る。
「……なかなか、全部、出なくて…」
 言いながら恥ずかしくなったのか、もっと下を向き、耳を赤くした。
「…俺の?」
「…うん」
「だから、やってやるって言ったじゃん」
「だって、誰か帰ってくるといけないだろ」
 いっしょに入るつもりだった風呂に、ジョンデはいやだとかぶりを振ったのだ。きっと、わけはそれだけではないだろう。珍しくへそを曲げている。
「……怒ってんのか?」
「…怒ってない…」
「嘘つけよ」
「……あんなふうに、しなくたってさ……」
 指にはまった指輪をいじくりながら、ジョンデは俯き続けた。
「…ほんとに、あの女の子のこと、なんとも思ってないのか?」
 ジョンデは誰に対しても人当たりがいい。そこが当然長所でもあるのだが、俺としてはしゃくに触ることも多かった。たしなめても、人間、簡単に変わることなどできはしない。そう分かってはいても、いやなものはいやだった。
少し充血し、潤んだまなこをそろそろと俺に向け、ジョンデは口を開き、その美しい声で言った。
「……当たり前だろ……」
 その目。
ほんとうは分かっている。ジョンデを見れば、俺に絶えず、発しているのが。
お前を。お前が。お前に。
体の中の黒いものが音を立てて霧散していくのを俺は体感する。頬が緩む。
「…ごめん」
 首をかしげ、ジョンデの顔を覗き込む。
「ごめんな、なんでもするから」
 何してほしい?と、低く甘く、呟いた。
ぐ、と唇を結んだジョンデと、目が合う。
「…じゃあ」
「じゃあ?」
「…こないだ、日本のお土産で買った、……浴衣、着てみて」
 まったく予想外の要望に、俺は一瞬、押し黙った。
自分の欲求の滑稽さをジョンデも分かっているらしく、決まり悪そうな表情で、目を逸らした。
 ふふ、と俺は笑った。
「いいよ。今?」
「…また、今度でいい」
「…それ着たかっこで、したいってことか?」
 耳だけでなく、頬と首まで色濃くし、照れくさそうに顔をゆがめ、ジョンデはうなずいた。俺は途端に胸が甘酸っぱいもので満たされ、苦しくなる。また、したくなってしまう。
「分かった」
 俺をまっすぐ、ジョンデが見た。
「あ」
「え?」
「まつげ、なんか付いてる」
「ほんと?」
「いじんなって、目、閉じて」
 そっと、ジョンデが両の目のまぶたを下ろす。
長い長い、その光るまつげを見つめ、嘘だよ、と告げると同時に、俺をそそのかしてやまない特別な唇に、くちづけた。



おわり






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20170113

落ちるとき(リアル短編・誕生日企画)
「トンボだよ」
 トンボ?
セフンは心から拍子抜けして聞き返した。目の前に座る、肩をすくめてなるたけ冷気を体に当てまいとしている兄貴分に対して。
ここはカフェ。その、店外に設置された道路に面した席だった。今は一月で、正直こんなこと、やっぱり正気の沙汰とは言えない、とセフンは苦々しい心境で唇を噛んだ。
「やっぱ中、入んない?」
 何度も繰り返した提案を、先刻の問い返しへの答えを聞く前にまたセフンは口にした。 可能な限りの変装に身を固めてはいたが、特に自分の身長とスタイルが、人目を惹きやすいことをセフンはきちんと自覚していた(当然だ)。対面からほんの少しずれたところに腰を下ろして、ゆっくりと熱い、それも濃いコーヒーをブラックのまますするのは、特段目立つ風貌をしている男というわけではなかった。むしろその黒づくめの服装と言い、雰囲気と言い、かなり地味なタイプと言えた。しかしセフンは、ほんとうについ最近、彼が実に美しい所作をすることにようやく気が付いていた。伸びた背筋、俯いた顎の角度、コーヒーのカップを手に取るときの指の線。それらがふとしたとき、セフンを非常にはっとさせた。他のメンバーと何が違うのだろうと、この兄さんの演技方面での出迎えられ方を見るに付け考えさせられていたが、きっとこういうことが大きいのだろうと、なんとなく感じられるようになっていた。あるきっかけがあったとは言え、これはセフンの成長の表れと言ってよかった。そこまでの自覚はなかったにしろ。
「お前入りたかったらいいよ、入ってて」
 そんな返答をギョンスはした。目は伏せられている、真っ黒なコーヒーの面を見つめて。
「そんなの意味ないじゃん」
 意味って?言いながらセフンは今の言葉を自分でもよく理解できない。とにかく中でひとりでお茶なんて全然意味がない。さみしいってわけじゃないけれど。
「…いいよ、ここにいる」
 そしてセフンは肩を丸め、手袋をしたままの両手で、まだかろうじて温かいカフェオレのカップを包んだ。指先がじんじんする。ギョンスが片方の唇の端だけで微笑んだのが目の上に映る。
「それで?」ひとくち含み、ぬるくとろりとした飲みものが喉を下っていくのを感じながら、遠ざかっていた質問にセフンは戻った。「トンボって何?」
 黒縁眼鏡の内側にある、白目の目立つまなこを往来にぼんやり向けていたギョンスは、ああ、と呟いた。セフンを向く。
無言のまま、ギョンスは人差し指をセフンの顔の前に突き出した。
寄り目になって、こちらも丸眼鏡を掛けたセフンは、出された指の先とギョンスの顔を交互に、ちんぷんかんぷんだという表情で見た。ギョンスの鼻の頭と同じように、その指先も赤く染まっているのが妙に気になった。
「な、に?それ」
 若干笑いながらそう返すと、それを受けたギョンスは手をまたカップに添え、温かみを取り戻そうとするようにぎゅっと力を込めた。今度は頬全体で微笑んでいた。どうしてか分からないが、セフンは胸の中をかりかりと爪で掻かれたような心地がした。
「なんなの?」
 何故かうっすらと苛立ちを覚え、セフンは食い下がる。誤魔化され、馬鹿にすらされているような気がした。そんなことはまっぴらだった。ガキ扱いなんてさせない。
 ギョンスがセフンの目を見返した。笑いを含んだ声で言う。
「昔、やんなかったか?トンボに」
 再び人差し指を宙に向けると、ギョンスはそれでくるくると円を描くようにした。口を開け、セフンはその動きをただ見つめた。
「ジョンインな」指を止める。深い、鼓膜を震わせる、底のない声。「これやると、絶対見るんだよ。何度やっても」
 馬鹿だよなあいつ、そう言うと、それこそ見たことのないような溶けたような笑顔で、ふふふとギョンスは笑った。
ジョンイン兄さんのどこが好きなの?
黙っているつもりだったし、ある程度までそうしていたのに、このことについて、どうしてもギョンスと話したくてたまらなくなり、年が明けてから、こっそりふたりのことを知っていると、セフンはギョンスにだけ、明かしたのだった。当然ギョンスは驚き、狼狽したが、すぐ諦めがついたのか、自然な振る舞いにたちどころに戻った。
内緒な。
そう小声で囁かれ、唇の前で指を立てられ、しー、というジェスチャーをされたセフンは、細かく幾度もうなずくしかなかった。もちろん元からそうするつもりであったが、ふたりだけの秘密だという考えと、その親密な空気に、セフンはほとんど酔ったようになった。
今日、仕事と仕事の合間の短い時間に、少しだけジョンインと会うとギョンスから聞き出し、無理矢理セフンは付いてきた。そしてずっと気になっていた、この質問を早速ぶつけてみたのだった。
「…そこが、好きなとこ?」
 呆気に取られたセフンは、吐く白い息の向こうに、まぼろしのように映るギョンスに問うた。
 頬杖を付いてまた、人の行き来を眺めていたギョンスは目だけでセフンを捉えた。
「例えば、な」
 はちきれそうな唇からそんな言葉が零れ出る。すぐ、瞳は街の方へ取って返す。
 セフンは気付いていた。
こちらをほとんど向かず、どうしてこうして、凍えながら、外の席で人ごみばかり、ギョンスが注視しているのか。
「来た」
 ふわあっと、白い吐息と共にギョンスの小さな声が漏れた。その声の響きに、セフンはまた、はっとする。
誕生日と誕生日の間に、どうしてもふたりだけで会いたいって、言うから。
この店にやってくる道すがら、ギョンスを見下ろしながら、その黒々とした髪の毛の中のつむじを食い入るように俯瞰しながら、セフンはなんで今日会うかについて、教えられた。それは尋ねたからだった。
セフンはその細面を、白い肌が、たとえぐるぐるにマフラーを顎まで巻いていても、冷え、頬を桃色に変えている細面を、ギョンスの視線の先に向けた。
照れくさそうに小走ってくる、見慣れた、歳の近い兄が映る。彼もまた、セフンの知らない顔をしている。
ジョンインを待つギョンスに目を走らせる。
きらきらと目は輝き、唇は今にも何かを語り出しそうに開きかけていた。
目がくらむような想いに支配され、セフンは小さな子供、それこそ一番下の役立たずの弟に舞い戻ったかのように、ふたりの狭まる隙間をただ黙って、見守った。



おわり




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20170120

おいしい証明(リアル短編)
夢と現実の境から、水面の上に顔を出すようにして目を開き、眠りを遠ざけると、部屋の中はひとつの灯りもなかった。
瞬きを繰り返しながら、ミンソクは手を動かして携帯を取った、強い照明に大きなまなこを細める。二時半過ぎ。
当然まだ眠かった。もう一度寝ようと体勢を変え、目を瞑った。だが小一時間が過ぎても、再び夢の世界へ戻ることはなかった。
疲れているのに、とミンソクはため息をつくように心の中で考えた。日が変わる前に床に就け、それがとても嬉しかったのに、と。
しばらくの間、ミンソクはその白いふたつの足を羽毛布団の中でもぞもぞと擦りあせていた。少し寒かった。喉によくないと、就寝時エアコンをつける習慣はなかった。代わりに布団数枚をきっちりと自分に巻きつけ、いつも眠った。靴下を履けばよかったかもしれないと後悔しながら、冷えた足を互いに摩擦し続けた。
ようやくミンソクは諦めた。
起き上がり、ベッド脇の小さな灯りをつけ、床に足を着いた。ひんやりとしたその感触に、ミンソクの頭はそれまで以上に冴えた。立ち上がった彼は、とりあえずと静かに部屋を抜け出した。
ドアを開けた途端、誰かがまだ起きていることが分かった。墨色に染まった周囲の中で、ドアのガラス板が橙に輝いている。薄く音楽が漂う。ジャズだ。
ぺたりぺたりと、夜、親の起きているところへ起き出した幼子のような寄る辺なさに身を浸して、足の裏を木の板の上で鳴らすミンソクは、その光と音の方へ吸い寄せられるように向かった。
ノブをひねると、静かに、だが確かに空間を満たすフリージャズの鍵盤と弦の絡み合いの中に、ミンソクはいた。キッチンから何か調理する音が聴こえ、その音を立てている張本人の大きな後姿がちらちらと見えた。生姜のにおいが鼻をつく。音楽に合わせ、高いところにある小さな頭と角ばった肩は揺れた。低く、どこまでもくぐもっているのにやけにクリアな声で、たまに旋律をくちずさんでいる。
ぱたん、と扉を閉めると、気付いた弟分がミンソクを振り返った。
「兄さん」
 エアコンと料理の熱で、この部屋はとても暖かだった。それに乾燥していない。コンロの上からの蒸気と加湿器で、触れられるようなしっとりとした空気が周りにあった。
「どしたの、こんな夜中。寝てたっしょ」
 チャニョルは言いながら手元とミンソクに交互に目をやった。ぐつぐつ、という鍋の中の音がミュージシャンたちの昂ぶりの隙間を縫ってミンソクにも届いた。くう、と小さく腹が鳴る。
「目、覚めて」
 寒いし、と呟くと、チャニョルはあー、そうだよねえ、とうんうんうなずきながら料理を続けた。片手で何かをごくりと飲む。とん!と台の上へグラスを置く音が響く。
「何飲んでんの」
 カウンターキッチンに近付いてミンソクは尋ねた。長い首の揃った襟足を見上げる。俯いたために浮かび上がったごつごつした背骨がまるで恐竜のようだとミンソクは思う。
「ああ」鍋の中をかき混ぜる手をチャニョルは止めない、ただ一瞥をミンソクに投げる。「トマトジュース。兄さんも飲む?」
 ミンソクはトマトジュースが好きでも嫌いでもなかった。けれどこのとき、チャニョルの言うその飲み物の名が、何かとても素敵な、あまりよく知らないいいもののようにミンソクの耳にこだまし、彼の目を無意識にきらきらとさせた。
「うん」考える前に返事をしていた。「飲みたい」
 おっけー。そう言うと、チャニョルは冷蔵庫を開け、見たことのない、高価そうなトマトジュースの瓶を取り出し、新しいグラスになみなみと注いだ。はい、と言ってミンソクに手渡す。
「サンキュー」
 すぐ、口を付けた。冷たいグラス、冷たいジュース。唇と舌と体の中の管を冷やす。とろとろとした、食べ物のような飲み物が、胃まで落ちていくのがミンソクにははっきりと分かった。
「うまい」
 すごく、甘かった。
「何これ。すっげーうまい」
 グラスを掲げて残りの朱色を見つめていると、かしゃかしゃと準備に勤しむチャニョルが嬉しそうに告げた。
「ねー!うまいよねそれ。父さんが送ってきたの。まだいっぱいあんの、だから飲みたかったらもっと飲んでいーよ」
 犬みたいな笑顔でそう話すチャニョルを上目で見つつ、ミンソクはまたグラスのふちを咥えていた。
「体にいいからって。俺が肌荒れとかしてるとすごい気になるみたい」
 ははは、と笑うチャニョルは愛すべき存在という以外のなにものでもなかった。俺が親でもこの子を同じように案ずるだろうとミンソクはかつて会ったことのあるチャニョルの父親に思いを馳せた。チャニョルの家族、チャニョルの実家は、チャニョルから想像するそれらとまったくずれがなかった。自分の実家との違いにミンソクはくらくらとした。そしてその家の息子とこうして暮らし、共に働く不思議を思った。今、深夜、彼からトマトジュースを一杯もらっていることの奇跡。
「すごいうまいよ。ごちそうさまでした、おいしかったですって、言っといて」
 飲み干したミンソクは唇を拭ってチャニョルに言った。
「うん」
 顔をほころばせて、もう一杯いらない?と聞くチャニョルに、ううん、と断ると、じゃあ、これは?と続けられた。
「うどん食べない?」
 茹でる前の乾麺を袋のままチャニョルはミンソクに見せた。
「スープは今作ったから。卵と青梗菜と葱の。あったまると思うよ」
 完璧だ。
ミンソクはチャニョルのふたえまぶたの幅を見つめるたびに、そう感心してしまう。自分にはない、その見事な線。下にある黒くて丸い、光を溜める大きな瞳が、まっすぐ自分を指してくる。
「…食べる」
 だよねー、上機嫌にそう返し、チャニョルは茹だった湯の中にうどんをふたつ、投入した。
「少し待ってね」
 カウンターに肘を置き、ミンソクは頬杖をつく。すると自分よりずっと大きなチャニョルの体が、もっともっと大きくなる。
ぼこぼこぼこぼこ。
鍋の中で、煮えている、それはふたりが待つ優しく温かい夜食というだけではない。とっくに大人になった青年たちが、また別にみずから家族を持ったという、おいしい証なのだった。



おわり



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20170124

ハプニング(リアル短編)
昔、一度だけ、男にキスをしたことがある。
そのきっかけは喧嘩で、相手はベッキョンだった。
とにかくふたりとも猛烈に腹を立て、原因なんかはむしろ忘れてしまったが、体じゅうが煮えたぎるようなその怒りの感覚だけはまだはっきりと思い出せるくらいの、ものすさまじい争いだった。
殴ってやろうかと、思った。
すんでのところで止めているだけで、拳はてのひらに熱がこもるほどの力で作られており、俺は若干震えていた。若かったのだ。
ベッキョンの薄い唇が、ぞろりと並んだ歯が、よく動く舌が、俺への悪口雑言を吐き出していた。
化粧をしていないとほんとうにとらえどころのない地味な顔立ちで、特に宿舎暮らしで他のメンバーとも始終顔を突き合わせているために、その百花繚乱ぶりの中で華やかさに欠けるということをいやと言うほど感じさせられる、興味が持てないとしか言いようのない俺にとって魅力に乏しいやつのそれは、そのとき目の前で憎しみの対象に上り詰めた。尖った顎。落ちた目尻。小さな黒目。ふわふわと揺れる髪。
その肉の多くない頬を思いっきりぶっ飛ばしてやろうかと腕を前に出した刹那、凝縮された時間の中で、俺は顔に怪我をさせたらまずいという考えと、より相手を貶めてやれるという思いから、突如次の行動を改めた。何より、くるくる動き続けるその口を封じてやりたいと強烈に思った。
乱暴に片手で頬を顎から抱えるように挟み、上を向かせて食うように唇を被せた。ぶちゃっと、おかしな音がした。
もう一方の手で小さな頭を押さえ、俺の顔から動けなくさせ、固定したまま舌を突っ込んだ。じたばたと本気で暴れるやつは、俺をあらん限りの力で殴ったり蹴ったりし、なおも何かを言わんとしていた。しかし結局ウエイトと身長が違いすぎ、しかも俺は激情によって痛みなどほとんど感じなかっため、抵抗などものともせず、うおう、おう、ぶっ、ばふっ、などという音が口内で溢れかえるのを放って、舌で舌を追いかけ続けた。よだれが口の端を伝った。
もちろん数限りなくキスをしたことはある。だが、こんなキスは、後にも先にもなかった。
そもそもの感情の猛りの上に、嗜虐心が上乗せされ、俺は発情期を迎えた野生動物のような、未知の激烈な興奮を得ていた。全身が燃えるようで、当然いつの間にか勃起もしていた。そのことをベッキョンに知られようがどうでもいいと思った。だからぴったりとその平べったい体を俺に押し付け、好きなように背後をまさぐった。柔らかさなどかけらもない、女とまったく違う、その体。彼女たちを愛撫したときに感じるあの甘い享楽など望むべくもない。ごつごつとした、筋肉と骨を直接触っているような感触。なのに俺は、この男を支配しているという事実にこれ以上ないほど発奮した。
最後、舌を唇で掴み、ぬるりと引っ張って、目を開けた。
視界の中いっぱいに、ベッキョンの顔があった。
さっきまで、血管が浮かびそうに赤い色をして、眉間に深い皺を寄せていたそれが、解放されたショックで呆けた表情を浮かべ、こちらをただ見上げていた。
血走った目に、涙が張っていくのを、俺は引き伸ばされた時間に浮かんで、ゆっくりと眺めた。
「…チャニョル…」
 きちんと俺の名を呼ぶことすらできない。混乱と困惑と驚愕と羞恥。憤怒は逆に消え去っていた。それらを混ぜた感情が、なんとも感じないと思っていたその顔の上で渦巻き、初めて俺に何かを強く喚起させた。
そのまま絶交したっておかしくなかった。だが、俺たちはただの友達ではなく、責任の多い仕事の得がたい仲間であり、関係を修復させるのは当然の義務であった。
どうその場を収め、どうその後謝ったのか、俺の記憶はあやふやだ。喧嘩自体は、どちらが悪いといった類のものではなかったはずだ。しかしその結末としての俺の行動は、俺にすべての責があった。セクハラとして糾弾されてもしかたないような行為なのは分かっていた。
でもベッキョンは許してくれた。時間はかかったが、それでも驚くような短い期間で、俺たちは元通りになった。
俺はこのことすべてを、自分でもどう捉えていいのか分からなかった。ベッキョンの優しさと寛容さに救われ、甘え、頭の隅でただ疑問符と共に弄び続けただけだった。

夕暮れが街の中に穏やかな影を落とし、もの皆すべてが温かさを覚えさせる色に染められている。
ベッキョンと俺はふたり、カラオケでしこたま遊んだ帰り、ぶらぶらと歩いていた。
短い時間のオフであったが、仕事終わりの高揚もあり、その勢いで走るようにしてカラオケに乗り込み、ふたりきりでマイクをずっとそれぞれ離すことなく、歌いまくった。しばらく歌の仕事がないことも手伝い、喉の酷使をいとわなかった。
あの大喧嘩のあと、それは他者がいない空間での出来事であったため、ベッキョンは俺とだけ共にいるのが嫌になるのではないかと不安に駆られたこともあった。だがそれは杞憂で、謝罪のあと、どこでどんなふうにふたりになろうが、そのこと自体に気まずい雰囲気を出して来ることはベッキョンはなかった。俺はそれで、改めて、この同居人かつ同僚を心底見直したりもした。
わあわあと盛り上がるだけ盛り上がり、立て続けに歌い、騒ぎながらも、俺はたまに、静かな心でベッキョンを盗み見ていた。
露わになった細長い首には何も後ろ毛はない。今日もすっぴんで、いたって平凡な顔なのは相変わらずだった。ショートカットの化粧っけのない女の子だという妄想すら無理であった。ゆらゆら揺らめく、弱いとりどりの、幻想を抱きやすい灯りの下であっても。
あのときの感情の奔流を、俺は忘れたことがかたときもなかった。ずっと、たとえ一角ではあっても、脳のある場所から動くことなくそれはあった。そのことをベッキョンに知られていたはずだということも。
どうしてあんなになったのか、俺の語彙では言語化がどうしてもできなかった。他の誰あろう、ベッキョン相手に、心が、体が、ああなったこと。
誰かに相談したいとさえ思った。ギョンスに、もう少しで言いかけたこともある。だが耐えた。ギョンスを困らせることも、ベッキョンを貶めることも、みずからの恥部を曝け出すことも、できなかった。
あのことがあってから、俺は女の子に対する劣情を抱くたび、反射的にベッキョンとのキスを反芻するようになった。何か抗いがたい力で持って、俺をその感覚は圧倒した。そう、快感であったのだ。ライブや、音楽で得られるような、代えの効かない快楽をベッキョンから与えられた。それを繰り返したいと、あれをどうしても手にしたいと、無意識のうちに求めているらしかった。
何事もなくカラオケの終了時刻を迎え、外に出、色の付いた前髪が少しだけ帽子からはみ出ているのをこうして横目で俯瞰している。口元まで上げたマフラーから白い息が漏れている。
ふたりで街に出たのは久しぶりで、俺は相変わらずの高揚感に包まれ、それと同時に夜が始まるという感傷にも否応なく満たされていた。ざわめきすべてが音楽のもとでしかなくなり、暴れ出したいような妙な心地だ。
こんなに寒いというのに、体は変に火照る。細胞が膨らんでぱんぱんになっているような、そんな自分を持て余し、俺は口を開いた。
「俺、コンビニ行ってくる」
 すぐ手前に見えたコンビニへと、俺は返事を待つ間もなく小走りで向かった。
迷わずに商品を掴み、レジで会計し、ちょうど前に差し掛かったベッキョンと合流した。
「何買ったんだよ」
 ベッキョンの唇からもわあと息が溢れる。
「これだよ」
 袋に入れてもらった品を、がさりがさりと取り出す。
「わっ、まじかよ。寒くねーのお前」
 あはははと笑いながら、ベッキョンは目を剥く。
俺はびりびりと封を破き、中から現れたベリー入りのチョココーティングのバニラアイスクリームの棒を掲げた。白いもやがその先から上がる。なんと冷たそうなのだろう。
「食べてーんだもん」
 そう言うと、上からかぶりついた。ベッキョンを食ったときのように。
「うっわ」
 体を折るようにして、見てる方が寒いわ、とベッキョンは目を逸らした。
 きんきんとしたものが口の中を侵す。甘くて、すっぱくて、苦い。
「うまい」
 はふはふと熱いものを食べているかのように俺は口の先で話す。
「まじかよ、どーなってんだお前」
 連れ立って歩き出すと、くはははは、とベッキョンはまた小さく笑っていた。
 喉の中をぬるぬると凍ったものが溶けながら落ちていく、ベッキョンの髪が揺れる、鼻の頭が赤い。
あたりは太陽による色味を失いつつあり、代わりに電飾がちらつき始めていた。派手で、淫猥で、軽薄な色たち。俺は決してそれが嫌いではない。
「なあ」
「ん?」
「お前も食べる?」
 見上げてきた小さな黒い丸ふたつは、まったくもって、俺の好みのそれではない。俺は大きくて、くりくりしていて、光の多い瞳が好きだ。まるで子供のように他愛なく、簡単にいろんなふうに変わってしまう、ベッキョンの不埒な目。
「ええ?」
 くしゃりと眉間を歪めて問い返してくる。
「寒い中で食べる冷たいもんも、またいいもんよ」
 疑いしかないまなざしで、しかしあっけなくベッキョンは降伏し、素直に顔を寄せてくる。マフラーを下ろし、唇が現れる。ほのかにピンク色のそれが、そろそろと開く。
瞬間、俺は再びあの衝動に襲われる。今は怒りなどこれっぽっちもない。あるのはベッキョンに対するまっさらな、認めたくない欲求だけ。
白い歯がチョコレートに突き刺さる。焦げ茶のコートがひび割れる。
「ふめてっ」
 目をぎゅっと瞑ってベッキョンは零す。
「ふめてーよー、まじかよチャニョルー」
 もそもそと口を動かし、顔を戻すベッキョンを笑って見下ろし、俺はやつの咥えたアイスを口に運ぶ。
こんなところで、そんなことは、できない。
間接キスで我慢して、とりあえず、早く家に、暖かいところに連れ込み、話をしようと、俺は思った。



おわり



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  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

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