海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160720

グレーゾーン 1
朝の日課は終えた。
スホは満足げに歯を磨き、仕事に出る準備の仕上げをしていた。
もちろんシウミンには敵わないが、スホもなるべく早く起きることを心掛けている。時間があれば部屋にあるランニングマシーンで軽く走り、様々なサプリメントを自分の配分で白湯とともに飲む。シャワーを軽く浴びて汗を流す。朝食は特に野菜をたくさん食べ、果物もあれば摂る。最近ジューサーを新しくしようか検討中だ。
うがいをし、鏡に映る自分と相対する。
自分の顔が好きだ。スホは自分に向かって微笑み、ごく自然にそう思う。
色の白いところも、眉がしっかりと上を向き濃いところも、鼻筋のまっすぐなところも、目が大きすぎず小さすぎずちょうどよいところも、まぶたの二重がはっきりしているところも、唇が品良く小さいところも、顎までのラインがすっとしているところも、その顔自体が小さいところも、すべてを気に入っていた。気に入っていると同時に自分のそれにこれと言った特徴がないということも理解していた。他のメンバーの顔や体つきにはそれぞれ何かしら人とは異なる部分がある。それはコンプレックスだったりするが、人に覚えてもらうフックにもなる。人気商売とはそういった押し出しが大きく影響するものだ。デビューする前から自分には何かが足りないとよく突きつけられてきた。その度自信など粉微塵になり、芸能界が少しずつ遠のいて行くのを感じた。今、自分が韓国、いや、アジアにおいてトップと言える位置に付けるグループにいられるのは、自分がリーダーであるからだ。リーダー、という特徴を授けられることによって、スホはexoにいる。だからスホは“リーダー”として振る舞う。リーダーである自分、が何より重要だと、分かっていた。
もう、時間だ。
洗面所に置かれた時計を見、スホは髪を軽く手で整える。


移動車の中で、ベッキョンとチャニョルが話す声、それに混じってセフンがくすくす笑う声、うるささやちょっかいにd.oが不満を述べる声が入り乱れ、スホはいつもと変わらぬ日常を味わっていた。
視線は手元のスマートフォンにあった。
数日前に来たメールを、何度目になるか分からないが、また、開いた。
書き言葉でもたどたどしい印象の拭えない文面が、スホの目に映る。
ついこの間まで一緒に生活し、懐いてくるようすをくすぐったい気持ちを持って眺めていた弟分のひとり。出身が違えど、本当に家族の一番下の兄弟のようであった青年。
文章の最後はこう締められていた。
できれば会いたいとおもっています。だめですか?返事まってます。
目を通す回数を重ねても、この言葉にスホは必ず笑みがこぼれた。何故か、スホだけでなく皆の共通の思いだろうが、彼を憎んだり蔑んだりすることはできない。
その名前を口にするとき、彼を知り、彼と接したことのある者は温かい気持ちを抱く。それは当然、スホも例外ではない。絶対に聴き取れぬ大きさで、唇を動かしただけの呼び掛けを、そっと、行う。
タオ。
また、口の両端が上がる。無意識に。




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20160720

グレーゾーン 2
もうすぐ中国での公演がある。
そのための練習を重ねる日々だった。
スケジュールの合間を縫い、集まれる者だけ集まってダンスの振り付けを覚え、全体の動きを把握する。
撮影と並行して行っているため、スホはさすがに疲れを感じていた。
汗だくになって休憩を迎え、皆タオルを取り、ドリンクを体に流し込んだ。
スホも特製の栄養ドリンクを携え、床に座り込む。息が上がっていた。もちろんまだまだ若いのだが、自分たちのような仕事は若ければ若いほど体の動きと持続力に差が出る。年齢を感じるたびスホは体調管理と体質改善という言葉が絡み合うように頭の中をぐるぐる回る。体調管理体質改善体調管理体質改善体調管理。
「大丈夫?」
ぼんやり空を見つめ、マイボトルに口を付けて喉を鳴らすスホの横に、チャニョルがそびえ立っていた。ぴょんと飛び出た耳の先から蛍光灯の明かりが漏れ、スホに向かって光っている。
唇からボトルを離し、蓋を閉めながら答える。
「大丈夫だよ」
照れ隠しで笑うスホの横に、大きな体を折りたたむようにしてチャニョルは腰を下ろす。
「お前こそ大丈夫かよ。体力持つか?」
「馬鹿にすんなよなー。まだまだいけるよ」
額から滴ってくる汗を拭きながら、短いサイクルの呼吸を繰り返すチャニョルを見て、スホは苦笑する。
「…食事に気を付けろよ。ちゃんと食べなきゃ駄目だし、ジャンクなものをあんま食べんな」
「はいはい」
「返事だけじゃなくてだぞ」
「分かってるよ。最近ほんとに気を付けてる。料理もよくするし」
「偉いな。俺料理できないからなー」
「やりなよ。面白いよ」
「うーん。なあー」
また、ごくりとドリンクを飲み、スホは練習室の中を見渡す。
「セフンは元気出たみたいだな」
甘ったるい笑顔を振りまきながらカイと談笑する末っ子を見て、スホはひとりごとのように呟く。スホの視線の先を追い、チャニョルは言う。
「あー。なんかしばらくぼんやりしてたもんなあ。彼女に振られたんだろ?」
「振られたっていうか振ったみたいだなあ、どうも」
「マジで?生意気だなあいつ。兄さんの友達だろ?」
「うん。でもそれはいいんだよ。うまくいかないこともあるさ」
「だってすげー可愛い子だって話じゃん。もったいないなー」
「うん。可愛いよ。あいつには悪かったけどな、確かに」
「兄さんはうまくいってんの?」
「…いってるよー」
満面の笑顔を作ってチャニョルに向かう。
「気持ちわりーなー。なんで兄さんと付き合うんだかなー」
「なんだよー。こんないい男いないだろー」
手で押して来るスホに体を揺らされながら、チャニョルは目を閉じ妙な笑顔を作る。
「はいはいー。そうですねー」
「…お前こそどうなんだよ。あの子と終わって、から」
目をぱちりと開け、大きな瞳をスホに向ける。
「…聞いちゃうんですかー。そこー」
「あっ……悪い」
「なんてねー。なんもないよ、今んとこ」
「…そうかー。もったいないなあ。こんなかっこいい男が」
「ほんとだよな。兄さんにはいるっていうのに」
「なんだよー」
にやにやしながら、再びチャニョルを優しいぞんざいさでどーんと押す。うわー、と言いながらそのまま倒れる。起き上がり小法師のようにすぐ起き上がると、低い声を更に落としてまるで囁くように言う。
「……他のメンバーのことなんか聞いてる?」
チャニョルのようすを見て、少し訝しがりながらスホは答える。
「…いや?お前の方がずっと詳しいだろ、きっと」
「そっか。まあ…そうだよな」
「なんか、気になるのか?」
「…ううん、そういうわけじゃないんだけど」
自分の練習着のズボンの縫い目を指でなぞりながら、チャニョルはその指先を見ている。
「…………中国か」
ぽつりと、その唇から漏れる。
スホが俯いたチャニョルの伏し目の睫毛を見る。
「……そうだな」
タオから連絡があったんだ。
そう、言葉は続けられない。
時計が休憩時間の終わりを告げようとしている。




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20160720

グレーゾーン 3
うまく行っているのは行っているのだが、ここのところスホは彼女とまったく会う時間を持てていなかった。時間があるときスマートフォンを介して連絡を取るのみになってしまっている現状はもちろんスホも辛かった。非常に優しく、おっとりしたタイプの娘で、不満など微塵も伝わってこなかったが、スホはいつも彼女に悪いと思っていたし、スホ自身彼女に会いたかった。セミロングの髪の毛から漂う香りを吸い込んだり、目元にあるホクロに唇を付けたり、整えられた桜色の爪を自分の指でなぞったりしたかった。彼女の空気を含んだ高い声がころころと笑みを含むのを、自分とまったく違う、遠くなってしまった世界のようすをその声が話すのを、時間を気にせず楽しみたかった。セックスだってずっとご無沙汰だった。が、スホは性的な面で決して欲求の強い方ではなかった。メンバー内でからかいの対象になるくらいだった。生来非常に真面目であるため、性に関する事柄もごく真面目に取り扱うのがスホだった。マスターベーションさえ体に悪いから、という理由で行っている節があった。女性は大好きだし、セックスをしたいとは思う。だが女性と実際交わるとき、その体に没頭するということが難しく、マニュアルにあるような手順を踏み、女性が満足を得ているらしいという感触があるかどうかをどうしても優先してしまう。だからスホはセックスのあと、疲れきっていることが多かった。彼女のことを考えるときも、セックスに至る前までの方がスホに幸福な感情をもたらした。その先はちょっとした義務と修行であった。快楽も含まれてはいるが、それとともに登らなければならない壁がたくさんあった。
ベッドに横たわりながら、スホは彼女とメッセージを送り合っていた。
今日も疲れたよ。
お疲れ様。大丈夫?体。
うん。平気だよ。
無理しないでね。
ありがと。
風呂を済ませてくたくたの体をベッドに預けたスホは、もうすぐにでも眠りに落ちそうだった。
明日も早朝から撮影だ。
本当は就寝前に飲むとリラックスできるハーブティーを胃に納めてから寝たかった。ギョンスがいたら頼めば作ってくれるかもしれない。いや、あいつも撮影が終わったばかりで疲れてるのだから、そんな我儘は止めよう。目の下を濃い青紫に染めたスホは、手の中のスマートフォンが滑り落ちていくのに気付かなかった。休息の世界へ落ちて行くさなか、スホはギョンスがハーブティーをきちんとカップとソーサーに淹れ、盆に乗せ持ってくる姿を見た。渦巻く湯気の向こうに心配そうな顔をしたギョンスと、その両肩に手を置いてそれ何!?と盆の上を高いところから見下ろしているタオがいた。
スホは本当に幸せだった。夢だと分かっていても。




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20160720

グレーゾーン 4
いつも、夜眠る前、タオはスホのベッドにやって来る。
「もう寝ちゃうの?」
広い肩幅をすくめ、ひょろ長い筋肉質な手脚をぶらぶら動かし、どこもかしこも狭いといった風にスホを訪れ、ベッドの端にちょこんと腰掛ける。
「つまんないなあ。兄さん、お菓子一緒に食べない?」
既にベッドに入り、うとうとしかけているスホを布団の上から軽く揺さぶる。
「……お菓子って……言ってるだろ、タオ、こんな時間にそんなもの食べるな。肌は荒れるし、太るし、いいことない……」
眉をしかめて枕から頭だけを上げ、寝言のように力の入らない声でリーダーは注意する。
「大丈夫だよ僕は。それに兄さんもたまにならへーきだよ。今日はクッキーがあるんだよ」
「こんな時間に……クッキー……?」
「うん。いろんなのが入ってるやつだよ。ほら、食べようよ」
羽毛布団をばふばふと上から叩き、タオは急き立てる。
「一緒に食べたいよー」
目を閉じて布団を引っ張っていたスホは、しょんぼりとしたその声音に手の力を緩める。
のっそり起き上がり、立ち上がった髪の毛を手で撫でつけ、眉間にしわを寄せて目を細めたスホは、尖らせた口から零す。
「……1枚だけだぞ」
たちまちタオの顔に笑みが広がる。
「やったー。ほら、いこ」
リーチを生かして既にスホの手を取ったタオは、立ち上がってスホを軽く引っ張る。
「分かった分かった」
体がみしみしいうような気がしながらスホは引きずられるようにベッドを出る。自分の手がタオの手に包まれ、ああ、人と繋がっているなと寝惚けた頭の片隅で思う。スホは人に乞われる感覚というものを決して無視できないたちだった。手を取られぎゅっと握られると、生きているという実感があった。
ダイニングルームに向かいながら、半分だけ開いた目でタオの大きな背中を見、兄に引っ張られているような妙な気がしてスホは頭を振る。
「そこ、座っててー」
ソファに身を投げ出すように腰を下ろし、ほとんど横になって再び目を閉じる。
駆け足のような歩みでタオが戻ってくる。
「ほらほら、おいしそーでしょ」
かなり大きめな黄金色の直方体の缶を両手で持ち、ぱかっと蓋を開ける。
「さっき開けてみたんだけど、すごいおいしそーだったから、兄さんと食べよーと思ったの」
吊り上がった目を細め、片方の口角をもう一方より高く上げ、得意げにスホに向かう。
缶の中はきらびやかそのものだった。チョコと混ぜてあるもの、フルーツが乗っているもの、薄い生地をくるりと巻いたもの、丸、四角、ロック型。シナモンやナツメグの香りが鼻に届く。
体を少し起こしたスホは確かにクッキーの詰め合わせの魔法に目が覚めた。それは子供の頃を覚えている体の反射であった。なんとも言えない幸福の匂いであった。
タオはテーブルにカコッと缶を置いた。
「牛乳持ってくる!!」
スキップしかねないようすでタオはキッチンへ向かう。
牛乳、という響き。
スホは苦笑してソファに座り直し、魔法の缶の中身を眺める。
牛乳パックとグラスふたつを手に持って戻ったタオは、スホの横にどすっと座る。
「食べよー!」
勢いよくグラスに白い液体が注がれる。零れるかと思うほどの速さでグラスふたつが満たされ、既にタオは缶の中へ手を伸ばしている。
「どれにしよー」
わくわくしているとしか言いようのない表情でタオは目移りを続ける。肩の筋肉の張りや、筋や血管の浮いた長い腕、指にはまったシルバーのリングなどとその顔は対照的だ。こんなに大きくなるなんて、ときっとタオの両親は思ったに違いない。スホは何度も繰り返すこの夢想をまた繰り返す。今何歳だっけ?20歳。嘘、何かの間違いじゃ?だってあんなに大きいんだから。ああ、そうか。そうだねえ。こんな会話を夫婦で毎年繰り返していたはずである。
タオは赤いゼリーの埋まった花のようなかたちのクッキーを取り出した。
「これにする」
クッキーに歯を立てる。ぼりっという音がする。
スホは牛乳に口を付けて、もぐもぐと頬を膨らませるタオの横顔を見る。
「おいひい。さくらんぼの味?」
大きな目をこちらに向ける。横に広がった白目の分量の多いそれは、自分のそれとまったく違い、スホは見るたび何故か感心してしまう。ぴょんと広がった耳と金髪も合わせたそのさまに、自分は今やたらと大きな妖精に夜中クッキーがメインのパーティーに招かれているという設定の、おかしな想像が頭を巡る。不思議の国のスホ。自分でぶほっと吹き出す。
「何。どーしたの」
手を横に振りながら、「なんでもない、なんでもない」と笑いを殺す。
「ほら、食べなよ。どれがいい?」
タオはまた次の1枚をどれにするか迷っている。
チョコがマーブル模様を美しく描いているクッキーに指を触れる。
「これにするよ。俺は、これだけ」
スホはタオの目の前にクッキーをかざす。
「えー?ほんとに?」
「お前も次ので終わり」
「ええ!?いやだよー2枚しか食べれないの?」
駄々っ子の顔をして、甲高い声を上げるタオに、少しだけ真面目なトーンでスホは諭す。
「明日も仕事だ。吹き出物できた顔で写りたくないだろ」
まだ眉間を寄せたまま視線を落としたタオは、ため息とともに同意する。
「……分かった……」
「で、お前どれにする?」
落とした視線をそのまま缶の中に移動する。心持ち尖らせた唇が不満を表している。
「…………じゃあ、兄さんと同じのにする」
かさ、とクッキーの山からひとつ、仲間を減らす。
再びタオが目をスホに向ける。その顔には笑いが含まれている。
スホはほんのわずかに心が痛む。その中には安堵も同居する。
ふたり同時にクッキーを唇の間に挟んだ。


目を開けたスホは口の周りのクッキーのカスを拭った。
そこにあるのはぽろぽろとした固形ではなく、ぬるりとした自分の唾液であった。
まだ薄暗い部屋の中で、スホはマーブル模様を描く脳内が次第に一色にまとまっていくのを時間が遅く流れるかのようにごくゆっくりと待った。
クッキー。
あれはいつのことだっけ?
あの缶はどうしたんだっけ?
中身は全部食べたんだっけ?
思い出せなかった。さっぱり、見当がつかなかった。
タオが好きなだけ食べられたならいいんだけど。
額に手の甲を置いて、天井を見つめながらスホは思う。
俺ももっと食べたかった。
起き上がり、スホはひとりごちる。
「…仕事だ」
今、クッキーなんか食えない。




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20160720

グレーゾーン 5
明日、中国にたつ。
夜、スーツケースに荷物を詰めながら、スホは床に座り込んでタオへの返信について思いを巡らせていた。
思案するというよりも、考えているとゆるやかにタオのいろんな表情や言葉や笑い声などが浮かんできては消えていくといった風だった。だからもちろんメールの文面などを具体的にはこれっぽっちも準備できていなかった。
会う?
むしろ、何故、会わない?
着替えを端から詰めながら、焦点をどこかに揺らすスホは、自分の心境が掴みきれず、ただタオが兄さん、と呼び掛ける声や、肩に回してくる腕の重み、もともとの隈をより濃くして口を開けて寝入る顔などが脳を占拠するのを感じるしかなかった。
コンコン。
ノック音で我に帰る。
「はい」
自分に聞かせるように大きな声で返事をする。「開けてー」とこもった声が返ってくる。
立ち上がり扉を開けると、d.oが盆にお茶の入ったカップとソーサーを二組乗せ、スホを見上げて立っていた。
「最近兄さんがはまってるハーブティー。俺のも勝手に入れた」
その姿を目に映して、途端にスホはデジャヴに襲われた。すべてが夢なのではないかと思った。
タオはいなくなってなどいない。
中国でなく、いつだってうちの中にいる。
会おうと思えばいつでも会える。
今にもタオが駆けてくる。それ何!?僕の分は!?でかい体をあちこちに振り回してひとしきり騒ぐ。
「兄さん?」
不思議そうな顔で心持ち首を傾げ、d.oがスホのようすを伺う。
上目遣いのd.oと視線を合わせ、スホは微笑む。
「ありがと、ギョンス」
体を横にしてd.oを通す。
一瞬、ドアの外、廊下やダイニングルームへ目を走らせる。誰も走ってきたりはしない。当たり前だ。
ドアを閉め、振り返ると、ふわふわ漂うハーブの香りと湯気が、d.oの体を通り過ぎスホに届く。
床の上に盆を置き、d.oは胡座をかく。
「まだ仕度終わってないんだね」
スーツケースの中身を見ながらd.oはカップを手に取る。
スホはd.oと斜向かいになる格好で床に腰を下ろした「ああ、でもすぐ終わるよ」。
誰がこれを食器類にストックしてくれたのか分からない、イギリス製らしい控えめな花柄のティーカップとソーサーに手を伸ばした。片手にソーサー、もう片手にカップを持つd.oのさまは非常に品が良かった。部屋着に身を包み、裸足で胡座をかいているのに。カップを口に運びながらd.oを眺め、スホはこのメンバーのカメラに愛される力をしみじみと茶とともに体に流し込んだ。このいわく言いがたい人の持つ魅力とは何だろう?スホは自分も撮影を行いながら、自問自答する日々だった。真似ができるタイプのものではないのだ。
腹の中が温かい液体で満ちていく。
目の端にd.oの白目と黒目の境が映る。
「………タオ」
「え?」
「タオから、メールあった」
カチリ、とソーサーとカップのぶつかる音が鳴る。
「…何て?」
目を伏せてd.oが尋ねる。
スホもカップの中を真上から見つめている。
「……会いたいって」
d.oがこちらを見たのをスホは分かった。
「そう」
「うん」
「会うの?」
会う?
また、タオがやって来る。特徴的な笑い声を響かせて、耳たぶのピアスを揺らしながら。
スホをd.oが見ている。その視線を受け止める。
「………そんな哀しい顔しないで」
囁くようにd.oは言う。
哀しい?
おかしい、だってタオはこんなに笑っている。
目を落としたカップの中からは、スホを慰めるようにまだ、絶えず湯気が立ち上っている。




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20160720

グレーゾーン 6
公演は概ね順調にこなされていった。
懸念事項もそこまで大事にならず、スホはその度安堵のため息をついていた。
あと二公演となった夜、スホはタオにメールを送った。
公演にタオが来ているような気がして、客席を眺めながらなんとなく落ち着かない気分でいる自分にほとほと嫌気がさしたのだった。
ごく簡潔な文章になった。
そういう風にしか書けなかった。
送信してすぐ、猛烈な後悔がスホを襲った。ベッドに横になり、思わず頭を抱え体を縮こめる。スホはexoのリーダーになってから、そのストレスが眠るときの体勢に表れた。子宮にいる赤ん坊のような防御の格好を知らぬうちにとっている。周りに指摘され初めて気付いた。そしてそれからは心配をかけないためにも可能な限り体をリラックスさせて眠るように心掛けていた。だが、今また懐かしいそのディフェンスのジェスチャーを無意識に取りながら、スホは目をぐっとつむって、いつ返信が来るだろうと考えた。やはり止めよう、と送ろうかと思った瞬間、メールの到着を告げる音がスホに届いた。
タオからだった。
そのスピードにスホの胸はかき乱された。涙が出そうになり、慌てて瞬きを繰り返す。
文面にはかつてのようなハイテンションさや華やかさはなく、感謝の言葉と、どういう風にいつ会うかの提案がしたためられているだけだった。自分と同じように、何をどう書いていいのか分からないのだろう。スホは別人からのようなメールを見つめて、了解した旨をまた、いっそそっけないと言っていい文章で書き、送った。


最後にタオと顔を会わせたときのことをスホはよく思い出せなかった。
タオがどんな服装でどんなアクセサリーを付けていたのか(あの俺があげたあいつのお気に入りのピアスはどうしていたろう?)、どんな表情でどんな言葉を発したのか(泣いていたのだったろうか?泣き虫なあいつが泣かないことなんて考えられるだろうか?)、自分でも驚くほど霧がかかったような記憶しか残っていなかった。
ひとつ、覚えているのは、スホが胃を喉の奥から引っ張り出されるような感覚を覚え、タオが去ったあとトイレに急いで駆け込んだことだ。嘔吐しながら視界はくらみ、目に溜まった涙を手で拭い、息を荒く吐いていたときの底の見えぬ苦しみ。吐きながらスホは泣いた。顔の穴全てから液体を垂れ流しながら嗚咽をなるべく抑えてスホはうずくまった。それからしばらくまた、スホは繭のように布団の中に丸まり、浅い眠りを連続させる合間に、さまざまなメンバーが自分を気遣いながら見つめたり話し合ったりしているのを感じる夜が続いた。情けなくてまた布団の中で涙が出た。だが自分でも、どうにもできないこともある。
唯一事情を知るd.oに、その夜タオに会いに行くということを、公演直後の着替え中にスホは伝えた。
「これから?」
少し驚いた顔でd.oはスホを見た。
スホがこくりと頷くと、私服のボタンをとめながら、d.oは小声で言う。
「……大丈夫?」
今スホを見つめるd.oの目は、布団にくるまれたスホを見つめる目と同じであると、スホは分かっていた。心臓を手できゅっとつかまれたような、喉が詰まって苦しいような、口を動かすのが難しい。たったひとことでも。
また無言のまま、にこっと微笑んで、スホは首肯した。
もう、d.oにも何も言えなかった。ごく微かに、口の両端を上げて、リーダーを見るのみだった。



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20160720

グレーゾーン 7
以前まだタオがいる頃、中国にやって来た際に皆で行った、ホテル近くの中華料理店が約束の場所だった。
他のメンバーとスタッフたちは今頃大勢でいつも通り食卓を囲んでいるだろう。
自分が抜けたことを不思議に思い、勘が良ければ何をしているかの見当をおおよそつけている者もいるだろう。
それでもきっとこの話題を掘り下げはしないし、自分が帰ってから追及する者もいないだろう。
スホは包装されたクッキーの缶の入った紙袋を持った。
あの夢を見てから、缶を探してあちこち調べたが、やはりどこにも見当たらなかった。見付けたらどうするつもりなのか自分でも分からなかった。ただあの黄金色に鈍く光る缶の表面や、中の焼き菓子特有の香りを思い浮かべて蓋や扉を開けたり閉めたりして回った。ないことが分かるとスホは仕事の帰り、デパートに寄ってあの缶によく似たものを買い求めた。包装の有無を問われ、考える前にお願いしますと答えていた。会うかどうかも決めぬうち、クッキーの缶だけは準備された。
スーツケースの一番上にそっと置いたのは、d.oが部屋を去り、もう寝ようと閉まったスーツケースを一瞥したあとだった。
そして今、スホは紙袋を下げて立っていた。
ファンにばれぬよう完全武装し、近い距離でもタクシーを使った。
車窓の外は暗闇とネオンがダンスを踊っている。
なんだかとても長い道のりだった、とスホは思った。自分はようやくタオの元に運ばれようとしている。クッキーを抱え、マスクの下口を開け、目を半ば閉じるようにして。
美麗な装飾に彩られた、赤い看板の、目指す店の前に着いた。
タクシーを降り、スホは入り口の前に立った。看板を懐かしく見上げ、タオはもう来ているだろうか、と考えた。時間にしっかりしているとはとても言えないタオだったが、そこは変わらぬままだろうか。
口から白い息を吐き出しながら、スホは少しずつ鼓動が早くなるのを感じた。鼻をすすり、扉に手をかける。
そのとき。
後ろから足音が近付いて来るのにスホは気付いた。ひとりの、男の、足音。
スホは振り向いた。
背の高い黒づくめの男が、灰色に陰った道をこちらに向かって歩いて来る。夜なのに大きな真っ黒いサングラスをかけて。黒で固めても、どんなふうに装っても、目立たないということができないのは変わらない。
タオだ。
彼はたぶん視線を外していた。昔のようにまっすぐ目を見、自分に向かって走り寄ったりしなかった。スホは店の前の段になった部分から彼を見下ろし、身じろぎもしなかった。
ふたりの間の距離はもうほとんどなかった。暗く色のない場所から、店の灯りに包まれたカラフルな場所へタオは足を踏み入れた。その足が階段に乗った。かつ、かつ、と高い音が響く。開いた小さな口から煙のように息が流れ出るのがスホの目に映る。タオはサングラスを取った。
毎日自分を見つめていた猫に似た目が、現実として今、スホの前にあった。
タオはぎこちなく微笑んだ。
瞬間、強い店の照明を受け、タオの耳元で揺れるシルバーのピアスが光った。それは、スホの贈ったものだった。
「兄さん」
おそらく久しぶりに口にしたであろうハングルを、スホを呼ぶためにタオは使った。
ハスキーで、高いような低いような独特な、ふわふわとしたその声音。
紅色の光の中、耳たぶにプレゼントを輝かせ、弱く微笑み、自分に甘く呼び掛ける末弟。
黒縁眼鏡の奥のスホの目に、ぶわりと涙が溢れた。
スホは慌て、かじかんだ手を動かそうとして紙袋が滑り落ちた。
カン!と鈍いが高い音が響き渡る。
ぱたり、と横に倒れたその袋を、ふたりは見下ろした。
タオがそれを拾った。
スホに渡そうとしながら、「これ、何?」と聞く。
差し出された紙袋を押し戻し、スホは言う。
「お前に」
「僕に?」
「うん」
落としていた視線をタオに向ける。涙、出るなと念じながら、スホは微笑む。
「俺にも分けろよ」
意味がよくは分からないようすで、ただスホの笑顔に、より自身の笑みをタオは顔に広げる。
マスクの下の鼻水は、もしばれたら寒いからだよ、と店に入ったら言おう。スホは考えながら、背後の扉を引いた。



おわり




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20160720

あとがき「グレーゾーン」
こんにちは。
フェリシティ檸檬です。

ここまで「グレーゾーン」をお読み頂き、本当にありがとうございました。
あまり長いお話ではありませんでしたが、いかがお感じ頂けたでしょうか。

BLという括りに入れられるのかどうか、入れられるのかどうかっていうか入れられないんじゃないかと普通に思ってしまう内容ですが、最終的に個人的にはとても書き甲斐のある物語になりました。
かなり現実に寄せたからと言いますか、本当にこういうことがあってもおかしくないかなあという感じが今までで一番するからでしょうか。勝手にですが。
これを書きながら、スホの重責を自分でもしみじみ感じる日々でした。いや、そんなおこがましいことは言えませんけれども。

スホもタオも、自分が選んだそれぞれの人生を、楽しく歩んでいってほしいです。

次の作品がもう同時進行で始まっておりますが、もしよろしければ、そちらもお読み頂ければ幸いです。

ご感想を頂けると、信じられないほど嬉しく、励みになります。
是非!お待ちしております。

それでは。
心からの感謝を込めて。


フェリシティ檸檬




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  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

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