海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160727

慈雨、降りそそぐ 11
頭痛に顔をしかめながら、ジョンインは酒なんて最悪だ、と心の中で毒づいた。
それにほんとになんだかすごく、むしゃくしゃする。
「聞いてないよね?答え」
声が思う以上に尖ったものになる。だがジョンインにはそんなことに構っていられる余裕はなかった。
チャニョルはもう一度水を飲み、台の上にコン!と置くと、立ち上がって自分のベッドの周りを檻の中のゴリラよろしくうろうろと回り始めた。
眉をひそめ、口の両端は下がっている。
スウェットから伸びた大きな素足がフローリングの上でぺたぺたぺたぺた音を立てる。
そんなチャニョルを見上げながらベッドに横になったままのジョンインは、珍妙なこの光景に思わず笑いが出そうになった。
しかし頭の重みと痛み、自分の問いかけに対する応答への強い好奇心が、彼の唇をそのままにした。
チャニョルは唸るように言葉を発した。体の移動をやめず、後頭部をがしがしと掻きむしりながら。
「……だって……お前あんな泥酔してて、そんな奴に何言ったって……覚えてないと思ったし……」
「覚えてるもん」
間髪入れず、ジョンインは口を挟む。
ますます苦悩の色を濃くし、チャニョルは口を歪ませ、反論者の顔を見る。
「そっ……だっ……て言われたって、お前だって…………困るだけだろ?」
顔を手で覆って、うあー、と言いながら、自分のベッドの足元の方に、ジョンインに背を向けチャニョルは腰掛けた。
「でも聞きたい」
一度したい質問をしてしまった二日酔いのジョンインは、引き下がるということを知らなかった。
何と言ってもこんな絶不調の今、気になることを放っておくのだけは嫌だった。
ジョンインは自らの性質の一端を、思う存分発揮していた。
肩越しに振り向いたチャニョルは、ほとんど睨むようにジョンインを見た。
「……なんで、……ってつまり…………」
地の底から響いてくるような声でチャニョルは言う。
「なんで………、て…………」
再び顔を背けて向こうを向くと、頭を落とし、両手でわしゃわしゃと搔き回したあとぼそぼそと語り始めた。
「……………お前の……ダンスとか…見てると、誰でも……そうだと思うけど、やっぱりすげー………セクシーって、んん、思うじゃん。…………俺、男に対して本気でそう思ったのって、初めてじゃないかと思うんだけど、お前のそういうの見てて、あー………ていう気持ちになんのと、……いや、だからって別に最初からどうとかとかそういうわけじゃなくて、お前のことはなんつーかダンスに関してって言うかすごい憧れてて、それは口に出してるけど、それ以上つーか…………。俺がどう頑張ってもどうにもなんないことで……。…………で、……普段、…一緒にいて、お前のその……自由さっていうか、間抜けさっていうか、ぼやーっとしてる……素直に、思ったままをしてる……感じが、俺のその憧れ的なもんと、なんかこう、混ざって、………ずっと、見てたい、てゆうか………だんだん…………そう…………」
落とした首の上に手を組み合わせて置き、チャニョルは消え入るような声で、そんなふうに言ったのだった。
ジョンインは言われている言葉ひとつひとつを耳に入れ、目にはチャニョルの尖った耳の先が赤くなっていくのを映していた。
「……間抜けって……」
とうとうジョンインは微かに笑った。笑いを顔に、意識的にこしらえた。
どんな想像もできていなかったが、とにかくどんな想像とも、答えは違った。
「わ、りー。馬鹿にしてんじゃねーんだけど……。…………お前が言う通り俺は女が好きだし、今もそれは変わんねーんだけど、……お前とはやっぱ長くいるし、それだけ色んなとこ見えるし、きも、ちが、こう、濃くなると、ゆーか、……やべー。わり、気持ちわりーよな」
はああーと盛大な溜め息を漏らして、また、チャニョルは頭を抱える。
「………別にそんなふうに、思ってねーよ………」
呟くようにジョンインは言った。なんだか傷付けられた心境だった。チャニョルこそが、自分で自分を傷付けているだろうこのときに。
「……そんなふうに言わなくていーって」
チャニョルが自嘲気味に返す。
「ほんとだって。……慣れた、っつーか……」
ここしばらくの、自分の心の動きを思い返し、ジョンインはごく正直にそう言った。
チャニョルが自分を好きだという状況自体には、いつの間にかすっかり慣れてしまっていた。
もともと周囲に満遍なく気を使えるタイプではまったくないため、気を抜くと自分ひとりしかいないような、ふわふわした心地にすぐなってしまうのがジョンインだった。
ただ今はその中にチャニョルに対する疑問が混じっているだけで、ふわふわの周りの、チャニョルが己に向ける好意というのは、ジョンインの中で天気のような、そう、雨が降るとか、そういうものと同じになっていた。
何と言っても相手はチャニョルだった。
明るく、元気で、気が強いけど優しくて、人生を楽しんでいて、目と耳と口の大きな、ぴかぴか光る、音楽の大好きな、ジョンインの大好きなチャニョルだった。
そんなチャニョルが自分を好きというのは、たとえそれが恋愛感情の混じっているものだとしても、ジョンインの中である種自然という枠に吸収されるのが時間の問題であったのだ。
その、理由を知りたいだけだった。
そして今、やっと、知れた。
「……ほんとか?」
絞り出すように、泣きそうな声でチャニョルは言った。
「うん。俺、兄さんのこと、好きだよ。愛してるよ、前とおんなじに」
ジョンインははっきり、単語それぞれを発音して、答えた。
ちょっと恥ずかしかったが、これは逃げられない、と本能で分かった。
「…………そっか。うん。ジョンイン、ありがと、まじで」
そう言ってチャニョルは振り向いた。
チャニョルは泣いてはいなかった。
引き結んだ唇の両端が、ほのかに上を向いているだけだった。



つづく




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)

20160728

慈雨、降りそそぐ 12
ジョンインの疑問にチャニョルが苦しくも答えてから、チャニョルは最初の告白よりあとのようす以上に、リラックスして、明るい表情をしているように、ジョンインの目には映った。
変わらずに接しようとやはり頑張ってくれていたんだな、とジョンインは切なく思った。
対して心のもやもやが解消されたはずのジョンインは、これで気が済むかと思いきや、答えを聞く前よりもっと、チャニョルのその感情についてよく考えるようになった。
問うたことを少し後悔もした。
そもそも尋ねるつもりもなかったし、あんなに問い詰めるようなことをするなんて自分で自分に驚くほどだった。
チャニョルの辛そうな姿を思い出すと、自分がそうさせたにも関わらず、ジョンインはひどく胸が痛んだ。
結果今、チャニョルが気の楽になったさまを見せてくれているからまだ救いはあるが、自分の幼稚さにジョンインの心は沈んだ。
何より、チャニョルの返答が、彼の中に根を張ったようになった。
あんなふうな告白をされたのは、生まれて初めてだった。
誰のどのそれよりも、ジョンインに何かを訴えた。
それは、こういうこともあるのだ、という人生の底知れなさ、自分が同性から好かれる可能性を持っているという不可思議さ、人が人に好意を寄せることのそのなんとも言えぬやるせなさ、ほかにもそこにいろいろなものが混じった感情をわやわやと抱かせる、ジョンインの目を開かせるような経験だった。
チャニョルに告げた通り、自分の抵抗感のなさにもわずかに驚いていた。
当初あった嫌悪とまではいかないが、強く出た拒否反応は、ほとんど皆無と言ってよかった。
それはチャニョルに対する信頼と愛情の表れでもあった。
ジョンインが嫌がることをチャニョルがしないというなら、しないだろうと、ジョンインは確信していた。
だからチャニョルがたとえ今でもまったく気持ちに変わりがなく、万が一それが強まることがあったとしても、自分は平気だろうと、自信を持って思えた。
鏡の中の自分を、洗面所、浴室、練習場、さまざまな場所で見つめるたび、チャニョルが自分に憧れていたという言葉をジョンインは反芻した。
胸のあたりがむずむずとして、落ち着かない気分になった。
普段の、私生活の自分に対する馬鹿正直な感想に対してすらも、その気持ちの真実味と誠実さをジョンインに改めて感じさせ、ひとり赤面したりした。
そんなに間が抜けて、ぼーっとして見えるのか?
恥ずかしいのか憎たらしいのかなんなのか、ジョンインはチャニョルの背中と後頭部とそこに置かれた大きな両手と色のついた耳の先を眺めながら過ごした回答時間を思い返すと、わー、と言いながら顔をこすり上げたくなるのだった。



つづく



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)

20160729

慈雨、降りそそぐ 13
そんなジョンインは、だんだんと、兄さんてまだ俺のこと好きなのかな?と、日に1回は考えるようになった。
踊っているときだけそんなことはなかったが、それ以外だとふっと突然、その問いかけが浮かぶのだった。
チャニョルと向き合いその妖精みたいな顔を見つめている最中ですら、頭をよぎった。
いや、だからこそなおと言うべきか。
くりくりとした漫画のような目の玉に相対しながら、心の中で尋ねていた。
そうなの?と。
まず、ジョンインの中で、チャニョルが自分に対して憧憬の念を抱いていたということ、それが恋心の深く大きな位置を占めていたということが、自分で思う以上に気にかかる事柄だったためと言えた。
好きでない、つまり、もう自分は兄さんの賞賛を浴びられるような姿を舞踏において見せていない、という思考の流れに、ジョンインは陥っていた。
また、普段の姿にとうとう愛想が尽きたのでは、それで好きでなくなったのでは、という別の思考の流れもあった。
このふたつの思考経路はまったく違う道を通っているが、結局辿り着くのは‘好きでいてもらえなかったら俺はどうなるんだろう’というちょっとした不安だった。
これはチャニョルの気持ちへの何かというよりも、ジョンイン自身の自らへの駄目出しに近かった。
好きでいて欲しいと願うわけではないのに、結果的にそう望んでしまうというジレンマがジョンインを襲った。
チャニョルに好かれる自分で在りたいという気持ち、それはジョンインの中で確実に育っていった。
ここまで書いてきたことを、やはりジョンインはそこまで明確に把握できていなかった。
ジョンインの頭では、兄さんて俺のこと好き?まだ?呆れてない?ダンス大丈夫?いまいちかな。どうかな。と、こんな調子だ。びゅんびゅんと言葉が飛び交う。気まぐれな流れ星のように。
そんなことになっているとはつゆ知らず、チャニョルは目の前にいるジョンインが心持ち自分の顔を食い入るように見てくるのを不思議に思って見返していた。少し顔や耳を赤く色付けたりしながら。
兄さんに好かれ続けたい(実際ジョンインはそうはっきり思っているわけではなかった、繰り返すと)、まだ俺のこと好き?と続けているうち、今度は兄さんは自分と本当はどうなりたいんだろう、という問いが、こちらは明らかな言語化がされ、ジョンインを訪れた。
会話の間なぜかチャニョルがほのかに頬や耳を赤らめることがあると、自分の質問への答えを得たように、ジョンインは心中こっそり安堵し、そのあと、こんな兄さんはいったい何を望んでいるんだろう?という流星が飛んでいくのを、徐々にではあるが意識していった。
そこから、そう言えばキスされたんだった、と、そうだそうだと思い出したりした。
そして今頃、途端に恥ずかしくなった。
もう絶対しない、という言葉を呪文のように浴びたジョンインは、催眠術よろしく唇を合わせられたという事実に対して自分の感情をほとんど持たぬまま今に至っていた。
端的に言うと忘れてしまっていた。
ジョンインにとってキスなどそのあとの告白に比べたらなんということもなかった。
目を開けなければなかったことになると激しく後悔したほどだった。
しかし、チャニョルの気持ちを聞き、それに慣れ、そうであっても構わない、むしろ好かれていたい、チャニョルの望むこととは?という段階を経た現在、キスというのは重大な意味をジョンインにとって持つようになった。
好きというのは、恋愛として好きというのは、そういうことだ。
誰に呆れられてもしかたのない話だが、ジョンインはチャニョルが自分にキスしたりしたいのだということをようやくしっかり、認識した。
その後困惑し、照れた。
キス、キスだけじゃないだろう、キスから先。
………どうやってやるんだろう。
ジョンインはその方面の知識に無頓着な方だった。
なんとなく、自分たちのそういう漫画や小説が書かれていたりするのは知っているし、周りから話を聞いたことはあった。ゲイの知人もいる。
あれってまじなのか?と、耳に挟んだ男同士の営みの方法について改めて懐疑的な気持ちをジョンインは持った。
当時、半信半疑だった。ちょっと嘘だろと思っていた。
だけど、兄さんはそれを望んでいる?
ジョンインは苦悩した。
受け入れるつもりがあるわけでも、今別に付き合っているわけでもないのに、勝手にひとりもんもんとした。
端から見たら、チャニョルはとっくにふられているし、その後ふたりの関係はそんなにもめることもなく平穏無事で万事本当にめでたい、というようなものだったろう(実際知る者は読者のみであるわけだ)が、ジョンインは人知れずかなり悩んだ。
だからと言ってどうなるというものでもないことだが、新たな質問たちはジョンインの仕事の隙間を縫って、彼の心を支配する時間を着実に増やしていったのだった。



つづく



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)

20160801

慈雨、降りそそぐ 14
「お前、大丈夫?」
ある、今にも雨の降りそうな、色の濃い、重い雲が立ち込める空が窓から覗く朝、ギョンスがおもむろにジョンインに問い掛けた。
珍しく、ふたりきりで朝食を取っていた。
薄暗いキッチンから続くダイニングテーブルに向かい合って座ったふたりは、ギョンスの作った料理を言葉少なに食べていた。
ご飯にスープ、キムチなどの漬物に、菜っ葉と豚肉と卵を炒めたもの。
ギョンスはそこに納豆も加えていた。
その独特な匂いにジョンインはいつも通り多少閉口したが、それでも少しずつ慣れはするんだな、などと思いながらスープをスプーンですすっているとき、質問を投げ掛けられた。
スプーンを下げ、ごくりと喉を鳴らすと、「え?何が?」と、自分でも間が抜けているなと思う声が出た。
ご飯茶碗に納豆とキムチを乗せ、姿勢よくそれを見下ろしながら、ギョンスは目も上げずに言葉を続けた。
「最近ちょっと元気なくないか?」
そう言って口に発酵食品と白米の塊を入れ、もぐもぐと動かした。
ジョンインはギョンスの唇から引いた糸を目に映しながら、言われたことを反芻した。寝起きのせいもあり、突然掛けられた予想もしない質問にまったく頭が回らなかった。
咀嚼しながら、ようやくギョンスはジョンインの目をその目で捉えた。
ビー玉みたいな双眸は、ジョンインをいつもただ素直にさせた。
「……そう見える?」
猫背でテーブルに屈み込むようにしているジョンインは、肩をすくめて視線を逸らした。
箸を休めることなくギョンスは答える。
「うん。ちょっとだけな」
ジョンインから目を外したギョンスの方を、逆にジョンインはちらちら見ながら、口を尖らせ、脚をぶらぶら揺らした。
「ほら、食べろ。冷めるぞ」
再び射るように視線を投げながらギョンスが言うのを、ジョンインは上目で見返し、止まっていた手を動かし始める。
「何かあったのか?」
しばらくしてから、グラスの水を口に含んで、ギョンスは更に問い掛けた。
また上目で相手を見、すぐ目を落としてジョンインは呟く。
「…いや、……。何かあったってわけじゃ……」
「そうか?」
「……うん」
「ならいいんだけど」
そう言って、ギョンスは茶碗に残ったご飯を炒め物と一緒にかきこんだ。
そのようすを見守りながら、ジョンインはふと言っていた。
「……男同士のって見たことある?」
ほとんどのものを飲み込みかけていたギョンスが、体を折って口に手を当て、吹き出すのをかろうじて耐えた。
う、ぐ、んん、と唸りながら、咀嚼を繰り返しなんとかすべてを喉の奥へと流すと、涙の浮かんだ目でジョンインを睨む。
「な、なに?」
そしてけほけほ咳をする。
ほとんど無意識のうちに出た質問に、ジョンイン自身も赤面していた。と同時に慌てた。
ばれてしまう。馬鹿か俺は。
「い、いや、あの、なんかこないだ友達が、ゲイのそういう映像見た話してて、へえっ、て思って、俺、あんまそういうの知らないからさ、なんとなく、兄さん見たことあるかなってさ」
顔を赤くして、それでもとにかく笑って、ジョンインはご飯を口に入れた。
頬を大きく膨らませたジョンインを見つめて、ギョンスは瞬きながら、黙った。
口にまだ食べ物を残しながらジョンインは言う。
「いや、兄さん、気にしないで。ちょっと聞いてみただけだから、ほんとに」
もごもごと滑舌の悪い言葉を放つ弟分を眺め、ギョンスが口を開く。
「あるよ」
ぐび、と、無理に喉が料理を送った音を鳴らしたジョンインが、目を見開いてギョンスを向く。
「え?」
「ある」
ギョンスはグラスを取って、中の水をすべて干した。
「そ、っか」
コ、とグラスを置き、うん、とギョンスは首肯する。
「ど、んな感じ、だった?」
また変ににやけた顔でジョンインは聞いた。
ギョンスはどんな表情でもなかった。
まっすぐジョンインを見て、ただ、言った。
「普通だよ。セックスだよ」
かちゃかちゃと食器を集め、ギョンスが立ち上がるのをジョンインはぽかんと見つめた。
手に食器を持ち、キッチンに向かおうとする間際、最後にジョンインを一瞥し、ギョンスは再度言った。
「セックスはセックスだよ」
水を流す音、食器のぶつかるささやかなかしょ、かしょ、という音が聞こえても、ジョンインは変わらず、固まっていた。
遠く、雷の気配があった。



つづく



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)

20160802

慈雨、降りそそぐ 15
ギョンスの言葉は、その後たびたびジョンインの頭を占めることとなる。
しかしはっきりとそれが言わんとすることが理解できていたかと言えば、そうではない。
‘普通だよ’
‘セックスだよ’
そんな返しが来るなんて、これっぽっちも予想していなかった。
そもそも、予想した上でした質問ではなかったが。
‘セックスはセックスだよ’
ギョンスの声を思い返すごとに、ジョンインは恥ずかしさにひとり体を硬くした。
自分がひどく子供のような気がした。
ジョンインはギョンスといるとそういう心境になることが多かったが、今回特にその感覚は強く、しかも自分の知らない彼の一面があるという事実がそこに強く働きかけ、親のひめごとを垣間見た幼児のような、心許ない気持ちになった。
俺はいろんなことを知らないんだな。
そう思うと情けなさが心を支配し、うなだれてしまいそうになった。
だが、それと同時に、掛けられた言葉に表れた別のものを、ジョンインは感じてもいた。
俺は、何を悩んでいるんだろう?
と、ジョンインはかすかに思った。
ここしばらくの彼はずっと、チャニョルの好意、それに対する自分の行状に私生活の思索の多くを割いてきた。
その結果、チャニョルが自分としたい行為に考えが及び、なぜかひたすらそのことが気になった。
なんで、気にするんだ?
女性相手だったら、そんなことはなかったはずだ。
だってたいていの場合、女性とだったらお互い好意と同意があれば、そうなることは当然なわけだから。
やっぱり男性、同性だってことで、無意識のうちに、チャニョルとそんなことするわけないって、どこかで思っていた?
好きだってことは分かったつもりでいたけれど、それが気持ちだけで済む、体は関係のないことだって、見ないふりをしていなかったか?
いちばん最初に、キス、されていたのに。
‘普通だよ’
‘セックスはセックスだよ’
そうなんだ。
キスはキスだった。
目を開けたときに見たチャニョルの大きな瞳や、力の抜けた眉の間を、ジョンインは顔を覆いながら思い出す。
目を閉じていたときの、本当に優しい、そのくちづけの感触も。
唇に指先を、触れてみる。
‘ごめん’
‘したくて’
動転しながら、チャニョルはそんなことを言っていた。
‘したくて’
ジョンインはチャニョルの低い、その顔に似合わぬ声で、困ったようすでそう言ったのを克明に再生し、
「うわあ」
と声に出した。
幸い練習室にひとりだった。
ストレッチを時間を掛けて、これでもかというくらい、続けていた。
床に座り込んだジョンインは、あぐらの姿勢で体を前にぐううと倒した。
額をフローリングに付け、目を閉じる。
そうだ。
当たり前のことなのだ。
チャニョルが自分を好きならば、自分にキスしたいし、自分と……セックスしたいのだ。
ジョンインは目を開けた。
そのとき、練習室のドアが勢いよく開いた。
「おー、ひとりか?」
大きな声で元気よく言いながら、大股でスキップまがいに近寄ってくるメンバーを、ジョンインは体をゆっくり起こしながら、見た。
「……ベッキョン兄さん」
名を呼ばれ、ベッキョンは微笑みながら、お・つ・か・れー、と、言った。



つづく



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)

20160803

慈雨、降りそそぐ 16
脚を伸ばし、それを一直線にすると、ジョンインは左右交互に体を倒した。
そのようすを見下ろしながら、ベッキョンは背後で腕を伸ばすストレッチを行っていた。
ぶらぶらと弟に近付き、ジョンインが脚の真ん中に倒そうとしている背中に手を置き、手伝っちゃる、と言って、力いっぱい押した。
べたー、と上半身すべてを床につけたジョンインの背中を意味なく押すベッキョンが、くるりと背を向けその上に腰を下ろす。
頬まで床につけたジョンインが、
「ちょ、兄さん」
と反抗を示す声を上げてもいっこう気にもとめず、ベッキョンは鏡に映る自分と相対しながら、無表情で言った。
「なー」
ジョンインの体はベッキョンの体から直に声の振動を感じ、苦しいながらも続きを待った。
「最近、どーよ」
「さ、いきん…?」
胸から吐き出すように声を放つ。
「なんか、ニュースないの」
「にゅー、す?」
鸚鵡返しをするジョンインから降り、起き上がった相手の背中にベッキョンは手を這わせ、マッサージを開始する。
「そー。なんかねーの。恋バナとかさ」
体を揺らすように揉まれながら、ジョンインは顔から表情が消える。
「好きな子が出来たとか、告られたとか、誰と誰がいい感じとか、ねーの」
少しだけ笑いを含んだ、ベッキョン特有の通りのよいはっきりした発音で言葉を真後ろから投げ掛けられ、ジョンインは胸の中で音が強く鳴るのを感じ始めた。
ベッキョンはしょっちゅうこんなことを聞く。
だから何も、意外なことなんかではない。
けれど今のジョンインにとっては、タイムリーすぎる話題だった。
むしろ考えているのは、そんなことばっかりだ。
今の今までキスだのセックスだののことで頭をいっぱいにしていたことを見抜かれたような気がして、ジョンインは顔を俯け、ほのかに顔を染めた。
熱くなったその体をベッキョンは触れながら、背骨に沿って親指を押していく。
「………なんもないよ」
心持ち沈んだ声でそう言うジョンインを首の横から覗き込むようにして、ベッキョンはそのさまを窺うと、上目にして思い付いたように、言った。
「そっかー。…あ、そーいやさ、チャニョルのこと、なんか聞いたか?」
どっくん。
自分でも驚くような音を立て、心臓が鳴ると、ジョンインはぐび、と唾を飲んだ。
同じくらいの音を続けて立てていく胸の鼓動がベッキョンへと伝わってしまうと、ジョンインは困惑の態でさりげなく深い息をついた。
「……ううん?なに?」
勇気を振り絞ってそう問うと、ベッキョンはからっとした物言いで答える。
「なんか誰かに振られたっぽいな。全っ然詳しいとこ教えてくんねーけど。落ち込んでる感じあんまないから、大丈夫かなとは思ってんだけどさ」
肩を揉まれ、ジョンインは口を開いて、ベッキョンの声が頭を回転するに任せる。
「あいつなかなかあれで好きな子できねーからなあ。器用なくせにそこらへんの立ち回りはなんかだせーし。まあ、そのうちまた次の子が現れんだろーけど」
はい、終わり、と肩をぽん、と叩くと、ベッキョンは立ち上がった。
「この話、内緒な」
最後に付け足しみたいにそう言ったベッキョンに、ジョンインはかろうじて、うん、と囁く。
ぱちぱちと目を瞬き、ベッキョンがうしろであーあーと声出しするのを耳にしながら、ただ座ったまま、首に触れた。
熱い。
がちゃ、という大きな音とともにわらわらとメンバーが入ってくる。
ぐ、っと力を入れ手を床に着くと、なんとかジョンインは立ち上がった。



つづく



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)

20160804

慈雨、降りそそぐ 17
さて、ジョンインはそれっきり、ほとんどパニックに陥った。
まず、なぜ、ベッキョンがチャニョルのことを持ち出してきたのかが気になった。
ばれてた?
俺かチャニョル兄さんの態度から、勘付かれてる?
ベッキョン兄さんだけでなく、他のメンバーも、もしかして?
その可能性は低そうだ、と、頭のどこかでは分かっていた。
ふたりはお互いを避けてはいなかったし、ふるまいも特別以前と変わった様相を呈してはいないと、客観的に見てみても、思えた。
しかし理性はそう告げても、人間は簡単に心が追いつかない。
もし、ばれたらどうしよう。
そんな妄想への恐れが、ジョンインに棲みついた。
何より、俺以上に、チャニョル兄さんが傷付く。
苦悶しているチャニョルが浮かび、ジョンインは実際怪我をしているかのように、考えれば考えるほど、胸がひっきりなしにずきずき痛んだ。
それに。
あんまり人を好きにならないのに。
そんなに落ち込んではなさそう。
器用なのに立ち回りがださい。
誰かに振られたみたい。
次の子がすぐできる。
ベッキョンの話の内容が順不同に脳に浮かび、ミキサーにかけられた細切れの野菜のように、混ざり合って混ざり合って、ついにはどろどろの得体の知れないものに変貌していった。
けして、口をつけたくない何かだった。
その何かからは目を逸らし、必死に、ジョンインは最善策を思案した。
兄さんが俺を好きだってことを完全にやめる。
ジョンインはそういう結論に達し、ようやく少しだけ、落ち着いた。
それでも少しだけであり、ジョンインは心中乱れたまま、日々を過ごした。
しかもそのためにはどうしたらよいのかなど、ジョンインにはさっぱり判断のつかないままだった。
そんな状態で、チャニョルと会って、話しかけられたり、笑いかけられたり、何かに誘われたりすると、明らかに避けるような態度を取ってしまうようになった。
朝や晩の挨拶すら、顔を見てできなくなった。
チャニョルといると動悸がした。
不安と焦燥と恐怖と困惑と、そこに何かが混じった上での、動悸だった。
体温が上がり、喉が渇いた。
背の高いチャニョルの顔が自分を見下ろしているのを感じながら、つむじを見せて、ジョンインは片方の手で、逆の腕の関節を掴んだ。
どく、どく、どく、どく。
何かにひどく緊張しているときのおかしな心拍に自身で直に触れながら、早くこの場を去りたい、と願った。
それと同時に、なんてことをしてるんだろう、と、自己嫌悪にも陥った。
顔を上げたら、きっと兄さんは驚いた、ひどく辛そうな、そんな表情をしているだろう、と思った。
そうさせているのは、自分だ。
兄さんとちゃんと接したい。俺だって。
こんなのは、いやだ。
そう思いながらも背を向けてチャニョルのそばから立ち去るジョンインは、いったい何をどうしたらよいのか分からず、途方に暮れた。
このままじゃいられない。
それだけは分かるのに、ジョンインは完全に、八方塞がりだった。



つづく



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)

20160805

慈雨、降りそそぐ 18
1日1日がそうやって過ぎていった。
ジョンインも、さすがに人前でこんなようすを見せていたらまずいと思い、誰か他の人間がそばにいるときは、極力普通にチャニョルと接するよう、心がけはした。
しかしやはりふたりきりにはなれなかった。
第三者を交えチャニョルといるとき、ジョンインがなんとか彼を見たり、声を掛けたりすることで、少しだけ安堵した表情を覗かせるのに、ジョンインは気付いていた。
だからチャニョルしかいないと分かったときのジョンインは、彼へ示す態度に自分でより苦悩した。
就寝時間は絶対ずらした。
ベッドに潜り込みながら、ジョンインはチャニョルの姿が頭に浮かんだ。
その表情や仕草がありありと描け、ジョンインは自身びっくりした。
チャニョルはキスしたときや、詰め寄られたときや、あらためて告白したときや、自分に避けられたときの、困惑の態でジョンインを訪れた。
ジョンインは鼓動が速まった。
チャニョルと相対しているときと同様に、胸が早鐘を打ち、落ち着くようにと深呼吸した。
それでもチャニョルは目に水分を溜め、心持ち眉間を寄せ、唇を突き出し、頭を掻いてジョンインの前におり、その長い手脚が自分の間近でぎこちなく動くのを見ていると、心臓が手で握られたようになった。
あるときふとそんなさなかに、端末で、とうとう男性同士のそういう動画を見てみようと思い立った。
長らく抱いていた単なる興味と、そしたら頭や体が覚めるかもしれない、という淡い期待が混じっていた。
こんな状況にほとほと嫌気がさしていた。
布団を被ってジョンインは見た。
ルックスが受け入れやすそうなカップルを見繕い、暗がりの中液晶を眺めた。
想像通り興奮からは程遠かった。
気持ち悪いとすら思いかけた。
なんとなく、片方をチャニョルに置き換えてみた。
自分でもどうかと思ったが、それでも行為や体勢を変えていく男をチャニョルにしてみると、徐々に嫌悪感に近いものは薄まった。
こんなふうにするのか、などと学習のようにジョンインは見た。
短い時間だがそうして目を通し、そのまま普通のアダルト動画にスライドするという流れが、ジョンインの生活の中に組み込まれた。
習慣付くと、同性同士の行為であろうとも、異質なものに対する拒否感というのはもとからなかったかのように、ジョンインから去っていった。
何やってんだろうな、とは思わなくもなかった。
だが、チャニョルへの懺悔のように、ジョンインはほとんど毎夜、そうして映像を目に映した。
兄さんよりかっこいいやつなんて出てないな。
数を重ねていくごとに、そんなふうにも思ったりした。
その考えに自分でちょっと恥じ入った。
自分以上にいい男ってのもな。
と、同時にこっそりジョンインは思ってもいた。
その感想の異様さに、ジョンイン自身は今ひとつ気付かないまま、いつも結局、異性同士の情交へと意識と体は傾いた。



つづく



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)

20160808

慈雨、降りそそぐ 19
その夜もジョンインは既にベッドの中にいた。
イヤホンをして、掛け布団の下、小さな映像に見入っていた。
今日は割と細身のふたりだった。ひどく若そうな。
暗い小さなテントの中、自分の息と体温で、ふつふつと顔は火照った。
耳の中に、男ふたりのなんとも言えない、声ともつかない声が流れ込んでくる。
半ば閉じたような目で、ジョンインは青年たちの昂りを見つめながら、そろそろ寝ようか、と考えた。
今日は異性同士のセックスを見る気に、なんとなくなれなかった。
自身の興奮もなかなか得られそうにない気がした。
無造作に親指を動かし、映像の停止ボタンを押したとき、そっと肩を掴まれた。
反射的にジョンインは、持っていた端末をひっくり返し、布団とともにその手を強く振り払った。
そのまま、顔を後ろに仰いだ。
振り返った先には、チャニョルの大きな、見開かれた目があった。
ベッドランプの小さな小さな光を受けて、これ以上ないほど強く輝いていた。
ジョンインは固まった。
ひとりだと思っていた部屋には、いつの間にかチャニョルが帰宅していた。予定よりずっと早く。
なんとか耳からイヤフォンを抜き、ジョンインは無意識に唇の隙間を大きくした。
「……ごめん」
チャニョルは呟いた。
大きなまなこは変わらぬまま。
振り払われた手を、宙に浮かせて。
なんと言ったらよいのか、ジョンインには分からなかった。
ふたりきりで口をきいたのすら、久しぶりだった。
ぱちぱちと目を瞬いて、ジョンインはその中の黒を泳がせた。
そうしているうちに、チャニョルはゆっくり、視線を落とした。
そしてもう一度、更に小さく、ごめん、と言った。
踵を返し、音も立てず、チャニョルは部屋を出て行った。
やはりジョンインは、何も言えず、何も行動できぬまま、ベッドの上で静止していた。
見上げたチャニョルの顔のさまが、はっきりと目に焼き付いて、ジョンインは体を起こし、猫背になって大きくひとつ、息をはいた。
かすかに体が、震えていた。
自身の体の変調に頭が付いてゆかず、ジョンインは片手で二の腕をぎゅっと握った。
自分は今、何をしてしまったんだろう?
ようやく頭の中で、じわじわといやなものが広がり始めた。
兄さんは、いったい、どう思ったろう?
背筋を悪寒が走る。
あんなに強く、振りほどいてしまった。
きっと何度か俺に、声を掛けてくれていたんじゃないだろうか。
無視された上に、あんなふうな態度を取られて。
イヤフォンに、気付いてくれていただろうか?
それにしたって、もしそうだとしても、無視されていなかった、とは思えないんじゃなかろうか?
もう、俺が、………兄さんを嫌っていると、思ったんではないだろうか。
ジョンインは呆然とした。
震えとともにやってきた動悸がまったく、収まらない。
それなのに、すごく寒い、とジョンインは思った。
風邪をひいたようだった。
しかしこの風邪は、いつか勝手に治るとは言えないものだと、ジョンインは頭の片隅で驚くほどにはっきりと、理解していた。



つづく



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (0) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)

20160809

慈雨、降りそそぐ 20
想像通り、もう、元の状態ではなかった。
ジョンインは、チャニョルと顔を合わせるのは、実質仕事上必要な場合のみくらいとなった。
明らかに、チャニョルはジョンインを避けていた。
こちらを見ることもまったく、なくなった。
激しく、ジョンインは傷付いた。
胃が痛み出しすらした。
外に出さぬよう気を付けたが、ギョンスに真面目な顔で、「お前、本当に大丈夫か?」と問いただされたりもした。
なんとか誤魔化し、その場は収めた。
チャニョルに、自分を好きなのをやめてもらおう、とは思っていた。
だが、関係を断絶したい、と思ったわけではなかった。
チャニョルの大輪の花のようなその顔の満面の笑みや、深いところから響いてその場を征服するような声や、うるさいと感じるほどのちょっかいを、すべてなくしたいなどと、決して願ったことはなかった。
それどころか。
ジョンインは、それだけの頃のチャニョルとの関係を、うまく思い出せなくなっていた。
緊張で染まった顔や、ひそめられた眉、慌てた仕草、上擦った声、そういうものが、ジョンインにとってのチャニョルの中に、この瞬間、含まれていた。
それはすべて、ジョンインに対するチャニョルの、恋の証の数々だった。
やめてもらおう、などと考えていたくせに、ジョンインは今、心の中で、それを失いたくない、と強烈に思った。
動悸と胃痛と微熱を抱えながら、鼻血が出そうなほど、そう、思った。
夜な夜な見ていた動画の中の男たちは、チャニョルとは程遠かったが、そのごつごつと、毛の生えた、硬そうな腕と脚が絡まるさまは、自身とチャニョルの行為の想像を、いつの間にかジョンインにもたらしていた。
まったく魅力のないその画面に映る青年たちと、自分たちとは、きっと違うだろう、と思った。
やっていることは同じでも、チャニョルの必要以上に長い両腕と両脚が、自分の、こちらもやたらと長いそれらに知恵の輪みたいに絡みつくのは、全然違う、とジョンインは考えた。
それが奇異なことだと、これっぽっちも気付かないまま、今日に至った。
が、ようやく、ジョンインは辿り着いた。
見ないふりをしていただけだったと。
たった今、ジョンインはからからだった。
雨の降らない土地のように、そこに生えた草木のように、恵みに飢えてしかたがなかった。
全身に、飽きるほど浴びたい、と欲した。
チャニョルがずっとジョンインに与え続けた、あらゆる意味での愛情を、取り戻したい、とジョンインはただ、願った。



つづく



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ EXO RANKING ⊿⊿
FC2BLOGRANKING
( korea boys rank ) Kiss&Hug.
にほんブログ村テーマ BLラブへ
BLラブ
trackback (0) | comment (2) | 慈雨、降りそそぐ(チャニョル × カイ)
  • ミス・レモン
ようこそお越しくださいました。
EXOのメンバーを登場人物にした二次創作BL小説や、オリジナルのBL小説、好き勝手なことを綴った雑記などを置くブログでございます。
内容を読んでのコメント、メッセージなど、いつでも心よりお待ちしております。
よろしくお願い致します。

最新記事

人気投票 1

人気投票 2

人気投票 3

人気投票 4

人気投票 5

ブログ村

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 韓流二次BL小説へ

人気ブログランキング

アクセスカウンター

有料アダルト動画月額アダルト動画裏DVD美人フェラポルノ動画フェラ動画美人フェラ無修正アダルト動画フェラチオ動画無修正フェラ
アクセスカウンター高画質アダルト動画無修正フェラ動画アダルト動画無修正アニメ動画海外アダルト動画
無料カウンター無修正DVDクレジットカード
無料アクセスカウンターウォーターサーバーアダルトグッズランジェリー無修正盗撮動画AV女優名教えて
ブログカウンター