海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160715

心中の道連れ 1
歌を歌うときは、……どう言ったらいいのか分からない。
自分の魂を無理矢理腹の中から引っ張り出すような、そんな感覚がある。
それは妙な体験で、何度繰り返しても、飽きるということがない。鼻歌であっても、ライブであっても。
ひとりで歌うこともあれば、大勢で歌うこともある。
そして、ふたりで歌うことも。
俺の隣には、瞳の小さな、儚げな顔をした、しかしそれとは真逆の生命力に溢れた声を出す、男がいつも、立っている。
いつまでもどこか、少年のような佇まいを見せて。
(それは俺が言えることではないかもしれない、とは思う。)
その声を一番近くで聴き、次を任される俺は、ジェラシーとプレッシャーを胸の内に隠す。
そいつと俺は、まったく違う人間だ。
どこもかしこも、違いすぎる。
なのにずっとこうして、声を追い掛け、重ねることを、繰り返している。
この感情を正確に伝えることは、できないだろう。
自分と正反対の人間と、目を合わせ、体に触れ、出せる最大限の音を口の中から送り出す、その行為の激情を。
このために生まれてきたと、思うのだ。


「ギョンス、食べるもんなんかない」
昼過ぎまで寝ていたベッキョンが、爆発した頭をそのままに起き出し、目をこすりながらキッチンに立つ俺に聞く。
細い首と細い指と細い目が、振り向いた俺の目に映る。
寝不足なのか、顔色が冴えなかった。
「今ラーメンでも作ろうかと思ったとこ」
俺は答えながら、先程出した鍋を大きいものに変えようと、再度シンクの下を開く。
「やったー」
きちんと喜びを含んだ声で、だが力なく呟くと、パジャマのままベッキョンはテーブルについた。
ベッキョンは寝るときちゃんとパジャマを着ることが多い。
そして恐ろしく似合う。
開襟した首回りの華奢さは、年を経ても変わらない。
水を満たした鍋を火に掛け、俺はテーブルに崩れ落ちるベッキョンのうなじを見下ろす。
ぼきっと折れそうだな。
何百編も思ったことを、また思う。
薄いグレーのストライプのパジャマは、サイズがひとつ大きいのではと勘繰りたくなる。
また、痩せたのだろうか。
「お前ちゃんと食べてんの。またダイエット?」
冷蔵庫の野菜室を覗いて、俺は大きな声を掛ける。
青梗菜、もやし、葱。
「…してねーよー」
「食べろよ。もたないぞ」
ばん、と閉めて、抱えた野菜を水にさらす。
「……んー……」
再び冷蔵庫を開け、今度はハムと卵を手に取った。
湯が沸き始めた音がし、俺は鍋の蓋を取る。
もくもくと料理を進める俺の背後から、弱々しい視線と声がやって来る。
「…ギョンスのラーメンうれしーなー…」
本当に嬉しいのだ。
声で分かる。
寝ずに働いて帰って来た、この国のスターでもある若者が、今一番嬉しいのが俺の作るラーメンとは。
野菜を切っていた手を止め、ベッキョンを向く。
「…バターを乗せてやる」
にや、と笑ったな、と自分で分かる。
モニターやラッシュでさんざんチェックする俺の、あの顔だ。
再びテーブルに付けた顔の中で、消え去りそうになっていた目が光を得、かすかに生き生き輝き出す。
口をだらしなく開き、「やったあー」と言う。
尻尾が付いていたらぶんぶん勢いよく振っていそうなようすを見、俺は手元に視線を戻す。
湯がぼこぼこと俺を誘う。
骨と皮だけになる前に、俺がこいつの肉を増やす。




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20160715

心中の道連れ 2
いつだって、どこでだって、歌ってしまう。
なんか歌わないということが、俺にはできない。
むしろなぜみんな歌わずにいられるのか不思議になる。
あの、胃と喉を震わせる、自分の声が耳に聴こえる、音と体がひとつになる、行為をせずに、生きられない。
俺は俺の声を気に入っている。
ずっと、聴いていられる。
そこに追いついてくる、声がある。
柔らかい、角のない、変幻自在な、男の声。
俺にないなにかが、その歌にはある。
リズムアンドブルースって、よく言ったもんだよな、なんて分かったふうなことまで思ってしまう。
あいつの歌は、まさしくそれだ。
体内で、きっと流れている。
絶え間ない鼓動のように、旋律と、ビートが。
負けたくない、と思う。
だが、勝てない、とも思う。
あいつのようには、なれない。
そのくっきりした顔立ちと同じように、歌だって、俺はあんなふうには、絶対、歌えない。


ものすごい具沢山のラーメンがふたつ、テーブルに置かれた。
俺は本当にくったくたで、だけどギョンスが俺の周りをうろうろしながら食卓の準備をしているさまをテーブルの上に上半身を預けたまま眺めるのは、どうしてかとてもいい気分だった。
ぼごん、と、テーブルに強い振動が伝わって、俺は思わず体を起こす。
ミネラルウォーターのどでかいペットボトルの中身が、ゆらゆら揺れている。
背もたれに体を付け、俺は半目でテーブルの上を見つめる。
ラーメン、グラス、箸、水、……とギョンスの手。
切り揃えられた爪。
ギョンスらしい、その手。
俺の向かいに、ギョンスは腰掛けた。
ペットボトルの水をグラスにそそぎながら、ギョンスは言う。
「ほら、食えよ」
とぷぷぷぷぷ。
ふたつとも満たすと、蓋を閉めてテーブルに置き、俺の目をその揺るがない視線で刺すように見た。
「……うまそー」
まじでうまそうだった。
ほかほかと湯気の立つ、薄い緑やピンクやアイボリーに色付いた、こんもりとした鉢の上は、幸せがかたちを成したようだった。
「…写真撮ろうかな」
「…いいから、そういうの」
呆れたギョンスは、箸を取って食べ始める。
ずるる、ずるると音がする。
俺は立ち上がってよろよろと部屋に戻る。
ベッドの枕元に、携帯が放ってあるのを見付け、手に取り、踵を返す。
再び現れた俺を、ギョンスはもうもうと立ち上る湯気とともに迎え、見ている。
「…まじで撮んの」
「うん」
にへらー、と、おそらくなっているだろう口元で答え、俺はカメラを起動する。
ラーメンのみ。
ラーメンとギョンス。
「…撮んなよ」
そう言いつつも、そのままの姿勢でただ俺を見つめている。少しだけ口の片端を上げて。
「よっし。よく撮れた」
できにすっかり満足した俺は、椅子に座って早速食べ始める。
俺の勢いよくすする姿を見下ろす視線を感じる。
動きを止めて、俺はその視線を受け止める。
「…バターがうまい。超合ってる」
ごくんと飲み込み、また、あの締まりのない笑顔を作る。俺は自分で、自分の笑った顔が好きかどうか、よく分からない。
くはは、と声を出し、ギョンスも笑う。
まさに破顔、といった表情で。
「そーだろ」
俺はこの笑顔は好きだ、と思う。
天使みたいだなと思う。




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20160715

心中の道連れ 3
今日は夜のロケ撮影がある。
夕食を済ませ、俺は撮影場所に向かうため、マネージャーの待つ車へと行くよう、玄関の大混雑の足元をよけつつ、ドアへとたどり着いた。
扉を開けようとすると、向こうから錠を開ける音がし、俺は体を引いた。
薄い顔より更に色味とコントラストを抜いたような、ベッキョンのそれが隙間から覗く。
汗の匂いが俺の鼻を抜けた。
「…ただいまあ」
倒れ込むようにベッキョンは中に入り、俺の肩に首を預け、のしかかって来た。
「疲れたー」
少し湿ったベッキョンの肌が、俺の首に直接触れ、匂いはますます鼻腔を刺激した。
俺はベッキョンの背に腕を回し、ぽんぽん、と叩く。
「お疲れー」
そこもしっとりと俺の手に触れる。
「…ギョンスさつえー?」
体が密着していることで、振動とともに言葉がダイレクトに伝わる。
「そうだよ」
俺の声も、体を震わせる。どちらもの。
「そっかー」
ベッキョンは俺の両腕を掴み、体を起こす。
そして俺と同じ高さの目線をそのまま俺に向け、俺たちは見合う。
とろんとした目をベッキョンは俺から離さず、掌で俺の頬をぺちぺち、と軽く叩いた。
閉じた口の端を、かすかに、にーと上に向ける。
「頑張れー」
笑みを消し、もう一方の手も反対側の頬に持って来て、俺は両頬を挟まれた。
ベッキョンはぱちっと目を開く。それでもまだまだ細く小さいそれである。
「……無理しすぎんなよ」
むにー、と、頬を両手で押され、俺は唇が飛び出す。
ひはは、と笑い、ベッキョンは顔が緩く崩れる。垂れた目は際限なく垂れ、口は半月とは言えないかたちに開く。
ひどい顔をしているに違いないまま、俺はただでさえ元から盛り上がった唇が更に高さを増した状態で、「分かってるよ」と無理矢理答える。
その細い手首に両手を掛け、そっと俺は禁を解く。
「行ってくるよ」
ほんの少しだけ、微笑む。気付かなければ、気付かないくらいの笑顔で。
「ん」
顔をそらし、ベッキョンは靴を脱いで部屋に上がる。
俺は振り向いてそのようすを眺めながら、「ベッキョン」と声を掛ける。
肩越しに俺を見て、ベッキョンは立ち止まる。
「……さっき食ったチゲ、残ってるから」
「……お前作ったの?」
仔犬のように俺を見る目がおかしいのと哀しいのとで、俺は気の抜けた笑いがまた込みあげそうになる。
「…ううん」
「なんだー」
「でも美味かったよ」
残念そうな表情に、俺は素直な感想を急いで告げる。そこにはそうであってよかったという気持ちと、そうでなくてもよかったという気持ちが同じくらいあり、俺は自分で混乱する。
「……ギョンスのラーメン食いてーなー」
そう言って前を向いたベッキョンは、廊下を行く。
また作ってやるよ。
約束をする前に、その華奢な体はダイニングルームへの扉の向こうに消えた。
俺は肩のリュックサックを掛け直し、ドアを開けた。




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20160715

心中の道連れ 4
こもった、玄関の扉が閉じる音が聞こえ、俺は嘆息する。
「おかえりー」
チョコレートをつまみながら、ミンソク兄さんがダイニングルームに現れた俺に言う。ぽり、ぽり、と軽快な音が膨らんだ頬から鳴っている。湯気の立つコーヒーが、ローテーブルに置いてある。
人気のドラマにチャンネルが合わせられており、兄さんは俺を一瞥すると、すぐにテレビに目を戻した。
勉強熱心だな。
俺は、兄さんがただ好んで観賞しているのでないことを、彼の性格からよく分かっている。
その心根のまっとうさに、拗ねたいような、ただひれ伏したいような気持ちに、いつもと同様、なってしまう。
「ただいまー」
結局俺のそんな胸の内など、皆の前では子供の如きいたずらに姿を変える。
重い足取りで兄さんの視界を遮る。
おい、邪魔だーという声とジェスチャーを尻目に、俺はわざと歩くスピードを遅くする。
ようやく画面の前を通り過ぎると、まったく、と言いながら兄さんはクッションを抱え直した。
キッチンの前に立ち、風呂に入るか、飯を食べるか、どちらから先にしようか俺は迷う。
「にいさーん」
コンロの上の鍋に目を留めたまま、俺は声を掛ける。
「んー」
「鍋ん中身まじで残ってんの?」
「鍋?ああ、チゲ?うん、残ってるよ。ギョンスお前の分取っとけってしつこく2回は言ってたから、ひとり分は残ってるはずだよ」
きゃああ、という悲鳴と、男の怒号と罵声が、キッチンの奥を向いた俺の、耳に届く。
なんなんだ、この話。
怯えたようにうわー、と小さく呟くと、その声のボリュームを上げ、兄さんが語り掛けてくる。
「美味かったよ。腹減ってんだろ?食べろよ」
すげー話だな、と言いながら、かり、という歯とチョコレートが会う音を立てるのを背後に、俺は鍋から目をそらさず、口を動かす。
「…先、風呂入る」
「ん?うん。わあった」
ふー、ずー、と、コーヒーをすする音を聞き、よく夜中に飲むなと思いつつ、俺は鞄をずりそうになりながらドアへと向かう。
俺自身、あんなに腹が減って疲れて眠かったのに、シャワーを浴びる前から、体はともかく、頭はくっきりと冴えていた。
コーヒー飲んだみたいだな。
ドアノブに手を掛け、きい、と引くと、後ろからいやあああああ、という絶叫が響いた。
諦めろ、という、はっきりしたひとことが、俺を追ってくる。
それを締め出すように、俺は扉を後ろ手で閉じた。




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20160720

心中の道連れ 5
ごく短い歌録りが始まろうとしている。
化粧品のCMで使われる曲で、今日は俺とベッキョンだけが呼ばれていた。
ミキシングルームに座っていろいろな指示を受けながら、俺たちは楽譜を眺め、少しずつそのメロディを口ずさんだ。
歌い出しはベッキョン、その後を追って俺が続く。
中盤はハモり、俺がひとこと呟いて歌は終わる。
なかなか美しい曲で、俺はかなり気に入り、知らぬうちに笑みが浮かんでいたらしい。気付くとベッキョンがこちらを見てにやにやしていた。
「…なに」
今日録音風景の軽い撮影が入っているため、ベッキョンは薄くメイクを施していた。
今朝見た顔よりかすかに縁取られたその中を見、確かにこの曲の雰囲気にはこのくらいのイノセンスがちょうどいいのかも、と俺は思いながら相手を見つめた。俺に至っては主に肌しかいじっていなかった。
「…気に入ったんだなーこれ」
溶けそうな笑顔でベッキョンは言う。
その顔を見ていると、何故だか俺はそれを手で思いっきりごしごしとこすり上げたくなる。想像の中のベッキョンの悲惨さに、思わず俺も笑ってしまう。
「うん。お前は?」
俺のようすを見、ベッキョンはなにが面白いのかますます笑って俺の腕を軽く押す。
「そりゃ気に入ったよ。長くしてアルバム入れたいくらい」
ふー、と鼻から息を抜き、ベッキョンは楽譜に目を移し、その細く華奢な長い指で、音符をなぞった。それとともに喉から声を響かせる。
色っぽい声だな。
普段話しているときそんなふうには感じないのに、歌い出すと突然それは心身を疼かせるなにかを持つ。
喉の底でかすれる声は、得ようとしたって無理なものだ。
俺はベッキョンの口、顎、首を見る。
歌詞を作り出す舌が、ピンクをちらちらとこちらに覗かせ、顎から首にかけての繊細な線が、空気の増減で緩やかに上下する。
「……どうだ?」
歌い終わり、ベッキョンは俺を向く。
そこには得意げな感じなど微塵もない。
眉も目も口も、端が下がっている。
本気で、俺に尋ねている。
「…いいよ」
「まじで?」
「うん」
「こことか、どう?」
楽譜を指し示す指を、目で追う。
ベッキョンが反対の手の人差し指で、唇を押しているのが、視界の隅に映る。
口を閉じたままハミングで指した部分を繰り返すのが、耳に直接入ってくる。
鼓膜といっしょに、全身が震えたようだった。
俺は楽譜から目を上げベッキョンを見る。
表情、指、唇、声。肩のかたち。
また、俺はそれをぐちゃぐちゃにかき回したい衝動に駆られる。ほんの一瞬、強烈に。
目を動かさない俺を不審げに、ベッキョンは見返し、「だめ?」と聞いてくる。
「……ううん、すげーいいと思う」
そう言うと、俺は楽譜に目を戻す。
この曲は、叶わぬ愛を歌っている。




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20160720

心中の道連れ 6
録音ルームに入ったギョンスが、眉を心持ちしかめながらプロデューサーたちの声を聞き、頷いて楽譜にメモをしている。
膨れた唇がわずかに突き出ているようだ。
録音を先に済ませた俺は、ガラスのこちら側から、歌うギョンスを見つめていた。
周りからどう思われるかを気にすることなく、まっすぐ視線の先に立つあの不思議な男をじいっと観察できるのは、とても楽しく面白い。
俺だけのために歌ってくれているような錯覚すら、覚えた。

きみの頬が光を弾く
ぼくはどうしたらいいかわからない
触れたい気持ちばかりが募る
でもきみはぼくのものじゃない
でもきみはぼくのものじゃない

ギョンスのグルーヴが部屋を包む。すべてのものに、かっと色が付き、抜けていく。

爪の先が まつげの影が 唇の色が
ぼくを誘う
触れたい気持ちばかりが募る
でもきみはぼくのものじゃない
でもきみはぼくのものじゃない

さっき歌った歌なのに、それは全然違うなにかだった。
バックの音と文字通り絡み合い、もとからともにあったかのようにひとつのものとして存在を始める。
ギョンスは音を追いかけるということがない。
いつも一心同体だ。
俺は爪を噛み、前屈みになる。
その、空気に球体を作り出し、そして泡の如く儚く姿を消すような声が、そこにいる人間の体を通り抜けていく。
足から溶けていくような、全身がふわりと浮くような、自分が連れ去られるような不安に、俺は体を小さくする。
嫉妬と恍惚が手を繋ぎ、防御の姿勢をとった俺は、瞼を下ろして歌うギョンスの、いつもは見えぬ奥歯や、勝手に動いているだろう指、幅の狭いなだらかに下りる肩、細く敏捷な腰回りを目に映した。
俺の声と重なる部分を、細かなビブラートを駆使してギョンスは歌う。

すべて見たい
きみをかたちづくるすべて
ぼくはきみを心に彫る
なんどもなんども繰り返し
小さな変化 大きな表情
なんどもなんども繰り返し

爪を噛む口が止まる。

でもきみはぼくのものじゃない
でもきみはぼくのものじゃない

大気の中に放り出された俺は、かたちを成さなくなりながら、リピートされていく曲を聴き続けた。
「はーい。オッケーでーす」
声を掛けられたギョンスは、安堵の表情を浮かべ、途端に少年になってしまう。
「続けてオンリーでセリフ録りまーす。何パターンか録りたいので、間を空けて、ご自分で好きに3回ほど言ってみてくださーい」
スイッチを入れて送り込まれた声を聞き、ギョンスはこくりと頷く。
また、顔は性別と年齢を得る。
「はい、どうぞー」
手を差し出すジェスチャーとともに、録音が始まる。
俺は体勢を変えぬまま、ギョンスが瞬きもせず、そのふくいくたる香りのする声を、変化をつけて発するのを聞く。

ぼくのものになって
ぼくのものになって
ぼくのものになって




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20160720

心中の道連れ 7
移動中の車内は家の中の縮図のようだ。
チャニョルとベッキョンが話したり歌ったりふざけたりしているところに、セフンが自ら入ったり、引き込まれるのを拒否したり、している。
連日の撮影でくたびれ果てた俺は、そんな喧騒の中でもわけなく眠れた。
むしろいつでもどこでもどんな状況でも眠れる。
俺に限ったことではない。
俺たちみたいな仕事をしていると、そうでもしないと睡眠が足りなくなるときが、あるものだ。
正確に言えば今はうとうとしているだけで、3割くらいどこか起きたままだった。
まだ明るい外の光が、窓から俺の顔を照らす。
眩しかったが、頬の温もりが心地よくもあった。
不思議なもので、マネージャーを含めた自分以外の全員が笑い、大声を出していることが、まったく苦痛でなく、むしろ心底からの安心を誘う。
太陽の黄色とぬくみ、仲間の歌声と駄話。
膝掛けを胸のあたりまで引き上げ、目を隠した俺は、ゆったりとした鼓動の音とともに現実と夢の境に落ちた。
「お前たちレコーディングどうだったんだよ、そういや」
チャニョルの低く太い声が、ドアの向こうから漏れるように、聞こえる。
「あーそう言えばそうだった。あれでしょ、化粧品のでしょ」
振り向いて兄たちに口をきく、セフンの尖った声も。
「あれ?すげーよかったよ。ギョンスなんかすごい気に入っちゃってたし」
……ベッキョンの声。
「そーなの?」
「お前に言ってない?お前も好きそうだよ」
「聞いてないなー多分。どんなん」
ベッキョンが旋律をきちんと歌詞を紡いで歌い出すと、俺はあの歌の魔力によって、眠りの世界を浮きながらくるくると回るような感覚に陥った。
あれ、誰が作ってくれたんだっけ…。
作詞と作曲と編曲、全部同じ人だったっけ…。
ゆるい竜巻のように旋回しながら、俺は定かにならない情報を弄ぶ。
「へえー!いいじゃん」
歌い終えたベッキョンに、チャニョルが大きな目を輝かせているだろう声で、言う。
「うん。いいー。すごいいい」
セフンも心躍っているときの声音だ。
「このあと、ギョンスが、……ぼくのものになって。って言うんだよ」
俺の真似をしているのだろう。表情も含め。
えーまじ!?エロいじゃん!!
かっこいーじゃん、あはははははー。
恥ずかしさに、顔に太陽のものでない、自らの体内の色が付くのが自分で分かる。
ベッキョンのやつ。
俺はこちらを見るなと念じながら、口までブランケットを上げた。
「はあー。だいぶクオリティ高い曲出してきたな。あそこの化粧品会社力入れてんだなあ。まあうち使ってるって時点でそうなんだけど」
マネージャーがひとりごとのようにぶつぶつ呟く。
「アレンジもすげーよかったよ。アコースティックでもいけそうだけど、きちんといろいろ工夫されてた」
「へえー。まじで早く聴きてーな」
「いったん音源もらえんでしょ?」
「ああ。ミキシングが済めばデータでもらえるはずだよ」
「CM見たいな。誰が出んのかな。若い子だよね?」
「お前盛りのついた犬みたいだな。やっぱ一番若いだけあんな」
「なんて言い方するんだよ」
「誰だったっけなー。化粧品の対象年齢が10代後半から20代後半だから若手のはずだけど。あれ、まじで忘れたな」
「駄目じゃんマネージャー」
「わりー」
「この歌だと切ない感じになりそーだな、映像も」
「そーだなー。…ギョンスの歌ってるようすそのまま使えそうだったよ、CMに」
「あ、そう?そんな切なげだった?」
「うん。………誰思い浮かべてたんだか」
俺は眠っている。
眠っているから、これは聞いたり、していない。




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20160720

心中の道連れ 8
「ギョンス、ギョンス」
俺は前髪が瞼にかかった子供のようなギョンスを、肩を掴んで軽く揺すった。
熟れきった果実のような唇の間から、穏やかな寝息が漏れている。
「起きろ、着いたぞ」
もう一度揺する。
左右の目がテンポをたがえて薄く開く。
「…だいじょぶか、…仕事だぞ」
俺は目尻と眉尻が下がる。
ギョンスの寝ぼけたさまは本人から年齢をなくし、俺は誰に話しかけているのかがぼやける。
「……ん」
沈んでいた体を起こし、ギョンスは頭を振って荷物を取った。
車のタップから下に降り、俺は背後に立ったギョンスを振り向く。
今日は雑誌の写真撮影だ。
……目の前の青い顔や黒い隈は、メイクでうまく隠してもらえるだろう。
マネージャーが車をロックし、さっさと俺たちの前を歩いて行く。
夕焼けをうまく撮影に盛り込みたいらしく、まだ昼下がりの今、ロケ撮影現場では照明スタッフがカメラマンと相談しながら動き回っている。
ギョンスが眩しさに大きな瞳を凝らし、口を歪めるのを見て俺は笑いを零す。ギョンスの表情のバラエティーは捉えどころがない。完全なポーカーフェイスが突然破顔する。
唇のかたちと歯茎の色を見て、俺がふふふ、と口を閉じたまま笑うと、ギョンスは俺をばしんと叩く。
「いってー」
それでも笑顔をやめない俺と、俺を睨みつけるギョンスは、メンバーたちの待つヘアメイク場所へと向かう。
「……お前さっき」
見た目よりずっと大人びた響きを持って、隣で歩く男が呟く。
「あ?」
「……なんでもない」
「なんだよ」
「なんでもないって」
「なんだよ、言えよ」
「なんでもないってば」
「絶対嘘だろ」
「嘘じゃねーよ」
「言えよ」
「やだ」
「頑固だな」
「そうだよ」
「気になるだろ」
なーなー、と俺はギョンスを肩で小突く。
ゆら、とその衝撃を受けて揺れるギョンスは黙している。
俺は伏せられた目を横から見る。
なんだよ。……そんな顔すんなよ。
陽を受けた鼻から唇、顎の線が、消え入るようになっている。
「………………俺の真似してたろ」
こちらを見ない顔を俺はじっと見ながら、足を止めない。
「…ああ、……寝てるかと思ったのに」
へら、と俺はまた笑う。
なんだか笑う感じでないのは分かっていた。
でも笑わずにいられなかった。
笑わなかったらどうなるかが、怖かった。
「ごめんて。馬鹿にしたんじゃないんだって」
勢いをつけ、俺はギョンスの手を取った。
繋いでカップルみたいにぶんぶん振った。
重なった手は湿っている。俺もギョンスも、ふたりとも。
「あれがすごいよかったからさー。だからだよ」
ギョンスを俺も見られない。
上を向いて間が抜けただろう顔で、おかしな大きな声で言う。
もう、みんながあそこにいる。
「ほんとだって。お前のものになっちゃいそうだったよ」
そう言ってやっと、取った手の主を向く。
なぜか言葉を出した瞬間、俺は繋いだ部分の力をわずかに強めたようだ。
ギョンスは俺を同じ高さの視線で捉えた。
おれのもの。
お前のもの。
「……なに言ってんだよ」
黒と白が俺を見つめる。
「……冗談だって」
笑えない。
そっと、手を、手から抜いた。




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20160720

心中の道連れ 9
もう駄目だ。
ソファに座って、俺は台本を読んでいた。しかし襲いかかってくる眠気は、すでに俺から正気を取り去りかけていた。
字が泳いでどこかに行く。
ずるずると体が滑って横になってしまう。
眠い…。
眠い……。
ぞり。
びくっと、体を震わせ目を開く。
指と、人の顔。
「また寝てんのかよ」
ふはは、と緩く笑って、ベッキョンは手を離した。
眉毛をこすりながら、俺は瞬く。ベッキョンの指先の感触で、目の上がむずむずした。
横になったまま、俺を覗き込む男の顔を見上げ、「おかえり」と呟く。
「ただいま」
深夜の街の気配。
食事と煙草の匂い。
「……飯行ってたの?」
「うん、ちょっと飲んできたー」
俺の尻の後ろにぼすっと、ベッキョンは座った。
「あーねみー」
ずずずず、という音がする。
そして腰あたりに重さを感じた。
「…酔ったなー、ちょっと」
俺の尻の上に体を乗せて、ベッキョンはもよもよと口の中で言った。
瞼にかかっていた眠りの誘いが、目の奥へと消えていく。
手のぬくみを、脚の付け根に近いところで感じる。
肩から腕にかけて、体が強張っていった。
「……重い」
がらがらした声を、絞るように出す。
熱と熱が溶け合って、体がなにか別のものになったかのようだった。
釜の中の、ピザの上の、チーズとか、そういうもの。
空腹な気もした。
夜食を食べたのは、そんなに前のことではなかった。
自分の知らぬ異世界の香りをまとい、体をくっつけて来る相手は、ただそのまま黙って俺にもたれているだけだ。
俺はクッションをきゅ、と握った。
「……部屋で寝ろよ。風邪引く」
んん、と喉を鳴らしたあと、声が返ってくる。
「……お前に言われたくないなあ」
口から漏れる息が、俺のスウェットを濡らすように温める。
「………俺のこと待ってたんでしょ?」
夢の中の言葉かと。
……聞き間違いかと、思った。
しばらくの沈黙が、夜を流れた。
「…なんでお前を待つんだよ」
俺は口以外をいっさい動かさなかった。
相変わらずクッションを握り締めて。
「…そうかなって」
ぼわぼわと声が脚を伝わってくる。
ベッキョンが俺のパンツを握っている。俺と同じように。
全身に熱が回った。汗をかきそうだった。
「………そうだよ」
やはり夢なのかもしれない。
自分の声が、空気の中に泡となったのを、見た。




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20160720

心中の道連れ 10
「俺を憐れんでよ」
「憐れむ?」
「そうだよ。こんなことを言って、こんなことをしている俺を憐れんでよ」
「……そんなこと……」
「嘘つかないでくれ」
「嘘なんか」
「俺のこと惨めだって思ってるんだろ?それをそのまま口と目に出してくれ」
「………そんな………」
ギョンスが追い詰められた顔で俺の手を掴む。揃えられた指が上から突き出した状態で、俺はその力の強さに少なからず驚く。思わず身を引き、痛いと口に出しそうになるのをやっとで押しとどめた。
ぎらぎらした瞳は、俺の見たことのないギョンスのそれだった。
ギョンスだけでなく、他の人間からもこんな目では見られたことがないように思った。
俺は射すくめられるという言葉がぴったりとくる心境で、続く言葉を待った。
「早く。かわいそうにとか、馬鹿なんじゃないかとか、好きに言ってくれ。見下し、蔑み、慈しんでくれよ。頼む」
その声は魔法の呪文を唱えている。
どうしてギョンスはこんな声をしているんだろう?
どうしてこんな顔を?
どうしてこんな唇を?
どうしてこんな目を?
ギョンスのことしか頭になくなる。
俺は震えた。寒さのせいでなく震えるのは仕事以外には、なかった。
「………愛してるって、言えないんだろう?」
そう言って近かった距離を、更にギョンスは縮めた。
ソファのへこみが俺の重みと混じる。
手は掴まれており、俺の汗なのかギョンスの汗なのか、しゅううと音がしそうなほど熱く湿っていた。
俺の目の黒い部分は、ゆらゆらと横に揺れているはずだ。
対照的に、ギョンスのそれはまったくぶれず、俺を一直線に指していた。
もう、のしかかられそうになった俺は、体を反らし、腕を置く部分に背を触れた。
ギョンスは手を離さず、ソファの背もたれにもう一方の手を乗せ、前髪を揺らしながら俺を斜め上から見下ろす。
影になった顔の中で、瞳は変わらず猫のように光っている。
自分の感情が自分で判断がつかない。
ただ、早く、と思った。
「……ギョンス」
掴まれた手の指先を、ギョンスの手に絡めた。
じっと俺を凝視したまま、ギョンスが口を開く。
「………名前、違うだろ」
そう言うと、目線をそらした。
体を起こし、元いた場所に座り直す。
当然手も解放され、俺は倒れたような格好でギョンスを馬鹿みたいに見た。
「…それに、手をなんとか振り払おうとするんだよ」
ゆっくり、上体を起こす。
ギョンスは手をぐっぱ、ぐっぱと握ったり閉じたりするのを自身で見つめながら、続ける。
「……受け入れてんだろ、それじゃ」
「………だってそんなすぐに覚えらんねーよ」
テーブルに置かれた台本に視線を移す。俺も同じ動きがしたかった。むしろ俺の方がしたかった。手がしびれて本当に変だ。
「台詞も動きもほとんどないだろ」
「それでもさっき読んで今ってのはさ」
「……せっかく相手が出来たと思ったらこれかよ」
「なんだよ。勝手にお前がそう決め込んでただけだろ。だいたい俺酔ってんだから無理だっつーの」
「酒なんか飲んでくんなよ」
「そんなの俺の好きだろーが」
「使えないな」
「自己中かよ」
俺たちは顔も見ずに喧嘩のように言い合った。
しかし話の中心をぐるぐる回るような言い争いは、なにも解決しなかった。
台本の中のふたりと、同様だった。



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