海の底、森の奥

- EXOの二次創作とオリジナルのBL小説を中心としたブログです。R18表現あり。お気軽にどうぞ。

20160720

心中の道連れ 11
ベッドから起きるのが億劫だ。
音楽を鳴らしながら光っていた携帯電話を放り出すと、俺は体をうつ伏せにした。
枕を抱きかかえ、顔を埋める。
……妙な夢を見た気がする。
それもついさっきまで。
頑張れば思い出せそうな気がした。
でも思い出したくなかった。
ベッドに押し付けた体の中心の出っ張った部分から、痛みを感じる。
……シャワー浴びて……。
時間はどんどん過ぎていく。
俺はぐっとベッドに手を付き、床に足を着く。
まだ薄暗い部屋に寝息の響く中、着替えを静かに引っ張り出す。
そして、音を立てずに部屋を出た。

浴室から出ると、ある程度すっきりした気持ちになっていた。
眠気ももやもやも痛みも軽減され、パンツだけ履いた俺は濡れた髪をタオルで拭きながら、喉の渇きを覚えて着替えを持って脱衣所を出た。
早朝だ。
今日は今の時間からスケジュールが入ってるのは俺だけのはずだ。
……だいたい男ばかりで気にしすぎることもないのだ。
ほとんど裸同然で、俺はミネラルウォーターを飲みながら頭をタオルで拭き続けていた。
熱めの湯を浴び、しかも処理をしたせいもあってそんな格好でも寒さはいっこうに感じなかった。むしろ暑かった。冷たい水が本当においしかった。
キッチンに突っ立ったまま、俺は冷えたグラスを干した。
カチャン。
背後の音に振り返る。
……パジャマ姿のベッキョンが、驚きを含んだ顔で俺を見ていた。
俺は口の奥に残った水分を体内に落とした。
「……おはよ」
そう言った。パンツの尻を向けて。
「……はよ」
ベッキョンは狐につままれたような顔で、俺の後ろで棒立ちになっている。
「……なにしてんの」
俺はシンクにグラスを置きながら答える。
「…見ての通り風呂入って、水飲んでたんだよ」
振り向くのが難しかった。
シンクに手を付いてためらったが、どうにもならないことは分かっていた。
「……俺も、喉渇いた」
「え」
ベッキョンは冷蔵庫の前にいた。
大きなペットボトルを取り出すと、そのグラス貸して、と俺に言う。
言われた通りシンクから取り出して手渡すと、なみなみと水をつぎ、俺を見ながらいっきにそれを飲み干していく。
俺はその華奢な喉が流れる水を落としていくのから、いっときも目を離せない。
カン。
空のグラスを置くと、ベッキョンははー、と強く息を吐き出した。
一瞬そらした視線を、また、戻す。
俺たちは互いを見合った。
「……なんか変な夢見ちゃってさ」
どこもかしこも輪郭の薄い顔をした寝起きのベッキョンが、しかし目の中身だけはおかしなふうに輝かせて、肩の触れ合うところで俺の顔を捉え続ける。
「……そう。…………俺も」
なんの夢だったか思い出してしまう。
だって今だって、夢の中のようなのだ。



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20160720

心中の道連れ 12
石鹸の香りが、鼻をくすぐった。
髪が湿ったままのギョンスをこんなにじっくり見るのは、久しぶりのようだった。
匂い立つようなというのはこういうことか、とどこか不思議と落ち着いて俺は思った。
そしてそれとは裏腹に、心臓が肋骨を折ろうと試みていた。
朝立ちが収まっていないこと、パジャマだとそれが視認できてしまうことが分かっていた。
夢。
変な、と形容したが、それは正しくないかもしれない。
でも、ギョンスも同じだと、言った。
なにが同じなんだろう。
どう、変だったんだろう。
……今の状況だって、きっと、負けず劣らず変なはずだ。
だって、なんで俺たちはキッチンに突っ立って、ふたりでただお互いを見合ってるんだろう。
片方はパンツ一丁、片方はパジャマ。
俺の目の前に立つ、ギョンス本人が気にしている肩の華奢さは、歳を重ねてもまだ失われていない。首から肩のなだらかな線は、画家が繊細にキャンバスに描き出したそれのようだ。
……そこから下に視線を動かすのには、ためらいがあった。
まじまじと見つめたことは、なかったから。
なのに、目と手は意思と関係なく、もう動いていた。
俺はギョンスの乳首のかたちと色を覚え、二の腕の体温を確かめた。
触れた体はかすかにぴくりとした。
「……冷て」
ひんやりした肌は、体温の高い俺の掌の下にある。
勝手に言葉も口から出てくる。
「……服、着ないと」
掴んだ腕に力を込める。自分の熱を分けたかった。本当は、服でなく。その方がずっと理にかなっている。
……理にかなってる?
その考え方にふっと笑いをこぼしてしまう。
笑顔の俺を見て、ギョンスは困ったように眉を下げる。
「…なに笑ってんだよ」
片方の唇の端だけ上がる。
「………合理的ってなんだろうって」
笑いを挟みながら俺は答える。吸い付くようなギョンスの肌から、手が離せない。
「……掴まれてたら服着れないだろ」
ギョンスはシンクを向き、俺に対して体の側面を見せる。でも俺の手はそのままだ。
「……そうだな」
そう言いながら、俺はギョンスの腕を指先で伝って、掌を取った。
そしてソファに向かい、手を引いて連れてきた相手を背中を押して座らせる。
ギョンスの手にあったタオルを取り、髪をごしごし拭いてやる。
突っ張ったあたりが見えぬよう頭を傾けさせ、ごしごしごしごし拭きつつ、言った。
「服着たら、ドライヤーしてやる」
頭を俺に預けたギョンスは、なにも言わない。
背骨を見下ろし、もろもろが隠される前の少しの間に、記憶を作るのに、勤しんだ。




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20160720

心中の道連れ 13
髪の毛の間に、細い指が入り込む感触を覚えている。
温風とともに俺の頭をベッキョンの手が撫でていた。
今、自分でしているのとはまったく違う行為だった。少なくとも俺にとっては。していることは同じなのに。
目を閉じた俺はベッキョンの手に完全に首から上を任せていた。
服は着たと言ってもタンクトップとゆるいスウェットのパンツのみで、晒した肩にたまにベッキョンの腕や肘がぶつかった。
ドライヤーをかけている間、珍しくベッキョンはなにも言わなかった。ひとことも。
暗闇の中で、ドライヤーの轟音のすきまからその通る声を聴きたいような気がした。
沈黙がやけに意味を持っているようだった。
快さと緊張から、俺はなにげなく下げたまぶたを、再び上げることはできなかった。
吹き掛けられる熱ではない温かみが、内から湧いてくるのがはっきり分かった。心臓がどくどくと打っていたから。
口を半開きにして髪が乾くのをただ待った。
待っている間、やはりベッキョンはなにも言葉を紡がなかった。
かちり。
鏡の中の自分と相対すると、同様にスイッチを切ったベッキョンが、ようやく口にした、
「はい、おわり」
という呟きを思い出し、俺は唇を引き結ぶ。
なにを期待してたんだ?
おわり。
そう、終わった。夢からそこで覚めたのだ。
俺も、ベッキョンも、そのあとお互いの顔を見なかった。
それが今日まで、気のせいでなければずっと、続いている。
あのとき、俺はなにか間違ったのだろうか。
俺の期待をベッキョンが悟った?
かっと、頬に血がのぼる。
期待?
期待なんてしていたつもりはなかった。
たとえ腕を掴まれ、手を取られ、タンクトップを着せられ、髪を乾かされても、それ以外のことを望んでいる気はなかった。
ベッキョンのほんの少しの世話焼きを、どうして俺が過大に捉える?
いつだってあいつはそんなふうなんだ。
勝手にちょっかいを出して、勝手に離れていく。
からかい、笑い、甘やかす。
俺に触れることも、俺が触れることも、なんとも思わない。
いつものことだ。
……目が合わず、顔も見てこないと感じるのは、きっと俺の考え過ぎだ。
俺だけが………。
ドライヤーのコードをくるくると巻きながら、俺はベッドを恋しく思う。
早く寝よう。
夢の中では、こんな思いはしない、はずだ。




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20160720

心中の道連れ 14
ミンソク兄さんの着替える姿をベッドに横になって眺めながら、その裸とギョンスの裸の相違に、俺は思いを馳せていた。
目をつむったギョンスは、肩を出した格好で俺に髪を乾かされていた。
座ったあいつと、立った俺では、その顔はよく見られなかったが、代わりに髪に指を入れる手触りを感じ、剥き出しの首や肩や腕を見下ろしていた。
唇の上下をぴったりと合わせたまま、俺はなにも言わなかった。
言えなかった。
時折自分でもわざとなのか分からないくらい軽く、ギョンスの体に自分の体が触れた。
がっしりした肩の筋肉や、割れた腹筋を兄さんはシャツの下に隠した。
白い肌とあどけない顔立ちがすごく不釣り合いに思える裸はもう、見えない。
こっちを向いた兄さんは「なんだ?」と不思議そうな顔をする。
んーん、と言って首をふるふる振りながら、ギョンスのそれはそんなことがない、と思う。
ギョンスはどこを切り取ってもギョンスという感じがする。
首のラインや、肩甲骨の盛り上がりを目に留めながら、頭にのみ俺は手を置き、動かし続けた。
髪の湿り気が失われていくのを望んでいるのかいないのか、自分でも判然としなかった。
俺は体が熱かった。
全身熱かったが、いろいろな末端が特に熱を持ち、さっき水を飲んだのにどんどん体中の水分が失われていくようだった。
ギョンスの顔は俺の腰周りあたりにあった。
目を開けられたら。
血液が勢いよく流れ、左胸は大きな音を立ててそのことを教える中、髪はもう乾いたと言える状態になっていた。
「はい、おわり」
スイッチをoffにしながら、俺はさりげなく体を離した。
ありがと、とギョンスは言ったはずだ。
そのあともなにか言葉は交わしたと思う。
仕事の予定が入っていたギョンスはゆっくりできるはずもなく、パンを食べながら支度を始め、俺は再び自室へ戻った。
それから。
とうとう俺はギョンスをまともに見られなくなった。
今までぎりぎりのところで、そういうあからさまな態度を取らずに済んできた。
しかし、もう、無理だった。
あのとき部屋に入ってベッドに寝転がり、体の熱をなんとかしようとしたように、いつギョンスを見てもそういうむずがゆさややるせなさが俺を襲う。
ギョンスは、気付いているだろうか?
真正面からは、その顔を捉えなくなったことを。
姑息にこっちを見ていないときだけを狙って、その姿を目に入れていることを。
なにを考え、どう感じているかなど、俺に分かるわけはない。聞かない限り。
聞く?
おやすみー、という兄さんの声に俺もなんてことないように答える。
灯りが消え、自分のベッドランプだけが小さく灯っている。
………ギョンスは、もう寝ただろうか。
あのとき、見た夢の内容を聞いていたら、……教えてくれていたのだろうか。
聞けない。
聞けるわけががない。
俺は目を閉じた。
夢の中だけに、希望を託して。




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20160720

心中の道連れ 15
打ち合わせが終わり、俺、ジョンイン、ジュンミョン兄さん、そしてベッキョン、 は、マネージャーの都合でそのまま話し合いを行っていた部屋に待たされていた。
出された菓子を、ジョンインはもぐもぐ食べていた。つまむぐらいではあったが、ベッキョンも。
並んだふたりは、これ結構美味しい、と、最近出たばかりのグミの菓子を口に含みながら、ぼそぼそ話している。
一列に並んだ俺たちは、端に俺とベッキョンが座る格好だった。
最近ずっと変わらず、こうだ。
隣合わせに座ったりすることなど、まず、ない。
俺は携帯の液晶を眺めながらも、なにも目に入っていなかった。
打ち合わせ相手の中にいたひとりのことを、ジョンインとベッキョンがさっきこっそり、笑いながら「可愛い」と言い合っていたのを、聞いていた。
当然ながらジュンミョン兄さんも耳に入れ、困ったように、しかしおかしそうに笑って、
「おいおい、気を付けろ。これから会うとき態度に出すなよ、分かりやすく」
とたしなめる。
「また会えんのかな?」
期待のこもった声でジョンインが言う。
「たぶん、撮影のときもいるだろ」
兄さんがジョンインの肩をぽんぽんと音を立てて叩く。
「やりー」
「ちょっと年上だろ?」
「んー、気になんないな。兄さんなんの?」
「ちょっとな」
「めんどくせー男だな」
「おまっ、おい、分かった風な口きくな」
ベッキョンは笑うだけで、ふたりの会話に口を挟まなかった。
俺は横を向いたらベッキョンが目に入るのが恐ろしくて、残された瞬間からずっと、携帯だけを見つめていた。女性の話も、グミの話も、俺には関係なかった。……関係、させてくれないのだから。
「遅いな、マネージャー」
「腹減ったなー」
「うん、減った。メシどうすんだろ」
こういうとき、前なら、“ギョンス、お前なんか食べたいもんある?”とベッキョンは続けて尋ねてきた。
喉が、ぐっと詰まる。
「午後からすぐ練習だろ?そんな時間取れないだろーなあ」
兄さんが椅子に寄りかかって、大きく嘆息する。
勢いのいい足音がしたかと思うと、がちゃっと派手にドアが開いた。
マネージャーが顔だけ出して、「おい、行くぞ」と声を掛けてくる。
「うーい」
がたがたと席を立って部屋を出ようとする俺たちに、マネージャーが機嫌よさそうに言う。
「今日全然他のやつら終わんなそうだから、練習は夜まで持ち越しなー。もしくは中止。よかったなー、ちょっとのんびりできるぞ」
いえーい、とジョンインと兄さんが歓声を上げる。いそいそと皆でマネージャーの後を追いかけた。
話し合って歩みの遅くなったふたりのせいで、必然的に俺とベッキョンの距離が縮まり、お互い前だけを見て歩いた。
しばらく黙々と足を進めた。廊下。エレベーターが近付いてくる。
「……よかったなあ」
囁くように、俺にしか聞こえない声で、ベッキョンが言った。
俺は驚いた。そして声の主を見た。
ベッキョンは俺を一瞥して口元だけで微笑み、また、視線を戻した。
「………うん」
遅い返事ではあったが、なんとか音を喉から出した。
言葉を交わしたことがこんなに嬉しいなんて、想像もしていなかった。




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20160720

心中の道連れ 16
「じゃあ、俺寝るー」
ごちそうさまーと言いながら、ジョンインは丼とグラス、箸を持ってテーブルを立ち、シンクに置くなりさっさと部屋を出て行こうとする。
「お前洗ってけよー」
俺が声を掛けると、ドアが閉まるぎりぎりで、あとでー、と返ってきた。
「ったく」
と言いつつ、俺は目の前のギョンスとふたりきりになったことに自分の意識が向くのに、気付いていた。
残りの麺を、なんとか無心で食べ切る。
ギョンスもペースを変えず、食べ続けていた。
とうとうなにも口に運ぶものはなくなった。
俺は箸を丼の上に置き、ごちそうさま、と呟く。
うん、と、ギョンスの声が聞こえる。
丼に残った汁を見つめる俺は、逡巡する。
ずるずる、ずるずる、というギョンスの麺をすする音が、鼓膜を揺らす。
グラスを取って、中の水を飲んだ。
氷がからから鈴のように鳴る。
やけに、静かだ。
とん、というグラスを置く音まで、なにか意味があるように響く。
俺は上目でギョンスを見た。
するとちょうどもぐもぐ口を動かすギョンスも、俺を上目で見るところだった。
つまり俺たちは、目が合った。合ってしまった。
そらせなかった。
ギョンスの色の濃い、丸々とした黒目を、久しぶりにじっと見た。
その決して太くはない喉の中を、今噛んでいたラーメンが通って行った。
俺は、恥ずかしかった。
どすっぴんだったし、肌も多少吹き出物ができていた。
ギョンスのような顔に見つめられるほどの価値ある顔をしていないと、俺は思った。
女の子みたいなこと考えてるな、と自分でも思う。
しかし商売柄、いたしかたない部分もあるのだ。
どうしても自分の顔を、商品として考えてしまう。
見られてよいものか。
人に悦びを、与え得るものか。
生まれつきなにもしなくともそういう顔をした相手を前にして、俺は羞恥と嫉妬と羨望が入り混じった思いでいっぱいになりつつあった。
本当はそんなもので満たされていたわけではなかったのに、混乱とともに自己卑下に陥った。
俺なんか。
唇を舐めて、どうしたらいいか、考えた。目を合わせたまま。
……なにか、言わないと。
「おいしかった、ラーメン」
変に声がうわずった。顔が赤くなりかけている。
「うん」
瞬きもしないで、ギョンスは答える。
「わざわざさんきゅー」
「うん」
「……ずっと、食べたかったから嬉しいよまじで」
「…うん」
「……疲れてんのに悪かったな」
「…いや…だいじょぶ、別に」
「……また、食べたい」
「…わかった」
俺たちの間にはテーブル。
テーブルの上には丼、箸、グラスが2組ずつ。ミネラルウォーターのどでかいボトルがひとつ。
これを取り去ったら。
どうなる?
どうなるもなにも。
俺はどうしたいんだ?
ギョンスは?
そう、なにより、ギョンスは?
「…………ジュンミョン兄さん、デートだと思う?」
ギョンスの低い声が、さっきいそいそと出掛けて行ったリーダーについて尋ねる。
「……じゃない?」
「…だよな」
一瞬視線を落とし、すぐに戻して俺の目を射る。そして分厚い唇を開く。
「…………お前」
「ん?」
「……お前は、デートとか…しないの?」
「………し、てないなあ、最近」
「……そう」
「………お前、は?」
「……してるわけないだろ、こんなスケジュールで」
はは、と自嘲して笑うギョンスを目に映しながら、俺はこの会話の意味を考える。
「……最近お前と、……話してなかったな」
ギョンスの声がまた一段下がる。
俺の心臓が音を立てて存在を主張する。
「……そう……だったかな」
「…そうだよ」
その目に恨みがましさが混じるのを俺は認める。
かすかに拗ねたような表情。
……勘違いじゃない。
どくん、どくん、どくん。
テーブルの上に置いた手の、掌が汗をかいている。
「……お前の声聞いてないと、…なんか変な感じ」
瞬きを繰り返しながら、俺はギョンスの顔から目を離さない。
「………なんでだろ」
深い湖のような瞳に落ちそうになりながら、俺の中でなにかが決壊しそうだった。
日が短くなった。
部屋全体が、赤を一滴、落としたようだった。




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20160720

心中の道連れ 17
あのとき、ジョンインが起きてこなかったら。
撮影の間の待ち時間、控室で俺はマネージャーとふたり、休憩していた。
ここのところたとえ寝不足でも、細かく睡眠を取ることがあまりなかった。
うとうとすると、おかしな夢ばかり見てしまう。
人に聞かれたら羞恥で死にたくなるような声を出しながら目を覚ますことが、ままあった。
それを避けるためにも、完全にひとりでない限り、極力昼寝をしないようにした。
音楽を聴きながら、ただ目をつむって、椅子に座っていた。
閉じた瞼の裏に、何度繰り返し思い出したか分からない、あの夕刻の情景がまた、映った。
ベッキョンが俺を見ていた。
長いこと、俺の方を向くことのなかったその小さな瞳が、俺を指した。
そしてなにか、薄い唇は言いたげだった。
言いにくいことを、言おうとしていた。
幾度も唇を薄桃色の舌で湿し、俺はその仕草を数えられるほどベッキョンを凝視した。
なにを言いたいのか。
なにを、言われるのか。
怖かった。
けれど、聴きたかった。
早く、と、自分の手を握り締め、思った。
耐えられない。
夕焼けの色に染まりつつある部屋の中は、なにかが弾けようとしている気配に満ちていた。
そんな一触即発の空間に、ジョンインが喉渇いたー、と言いながら、ゆらゆらと現れた。
俺たちはふたりとも、びくりと体を揺らし、弟分に目を向けた。
ジョンインはもたついた動きで水を飲み、そのままダイニングルームのソファにひっくり返り、ゲームを始めた。なんか目ぇ覚めたー、とぶつぶつ言っては口を尖らせて。
そして、日は暮れた。
またベッキョンは、俺を見なくなった。
膨らみきったなにかをそのままに、ふたりでそこから、目をそらした。
今、俺を見つめるベッキョンを、目を閉じたまま、見つめ返す。
上気した頬。
下がった口角。
訴える黒目。
やっと、唇が開こうとした。
「ギョンス」
大きな、はっきりとした声が、鼓膜を震わせた。
目をぱちりと開け、俺は視界の中にマネージャーの姿を認める。
イヤホンを耳から抜く。
ベッキョンも、赤い部屋も、消える。
「悪い、寝てたか?」
「……ううん、大丈夫」
「お前最近ほんと寝ないな。平気か?」
「うん、…ごめんなさい、ほんと大丈夫」
瞬きをしながら上半身を起こし、座り直す。
「あのな、あれ、できたぞ、CM。見るか?」
マネージャーが嬉しそうなようすで聞いてくるのを見て、疲れて反応の悪い頭をなんとか巡らせる。
「………あの、歌の?」
「そう。届いたんだよ。やーっとな。結局なんか今日からもう流れるらしいんだよ、映像。まあ簡単に編集したものとか確かこっちの人間が前にチェックしてるから、ただ完成品が到着してなかっただけなんだけどな。もう見てるやつもいるかもな、テレビつけてたら」
俺の返事を待つことなく自分も見たいらしい彼が、パソコンを準備しながら、まったくな、遅すぎんだよな、なんでもかんでも、どうなってんだか、でもどうやら出来は……と話し続けるのが耳を通り抜け、そうか、もうあれが世間に出るのか、と俺は不思議な気持ちを抱いてパソコンの液晶を眺めた。
レコーディングしたのがつい最近のような気がするが、確かにかなり日は過ぎた。……あの頃はふたりでスタジオに入って、ベッキョンの歌声をメンバーではひとり、聴いたりしていたのだ。
こんなふうになったのは、なんでだっけ?
いつから?
そんなことを考えていたら、パソコンの画面が暗くなった。
懐かしさすら覚える、あの曲のイントロがひそやかに流れ出す。
そして、秋空の下、木々の葉の間や川の水面から太陽のかけらが撒かれる中、柔らかな茶色い髪の女の子がふわふわとそれを揺らしながら、後ろ姿を見せて軽やかに歩いているスローの映像が、目に入った。
ゆっくりと振り向き、笑うでもなく怒るでもなく悲しむでもなく、しかしなにかを言いたそうな顔で、こちらをじっと見つめてくる。
その目元と、口元の示すこと。
温かそうなコートを着て、裾をはためかせ、彼女は体ごとこちらを向く。
乱れた髪を耳にかける指先、伏せたまつげ、白い頬、唇の膨らみからも、光が生まれては消える。
「おお、いいな」
思わず、という感じで隣に立ったマネージャーが言葉をこぼす。
表情が。
歌が。
俺を飲み込む。


太陽が微笑み ぼくときみはふたり
その粉を妖精のように 体にまとう
空を飛べるようになるわけではないけれど

きみの頬が光を弾く
ぼくはどうしたらいいかわからない
触れたい気持ちばかりが募る
でもきみはぼくのものじゃない
でもきみはぼくのものじゃない

いつも何気なく 触るのをやめて
そのたびに言葉は逃げて 心が宙に浮く
空を飛べるようになるわけではないけれど

爪の先が まつげの影が 唇の色が
ぼくを誘う
触れたい気持ちばかりが募る
でもきみはぼくのものじゃない
でもきみはぼくのものじゃない

すべて見たい
きみをかたちづくるすべて
ぼくはきみを心に彫る
なんどもなんども繰り返し
小さな変化 大きな表情
なんどもなんども繰り返し

ぼくの話を聴いてほしい 決して笑わないで
ひとことで済むんだ

でもきみはぼくのものじゃない
でもきみはぼくのものじゃない

ぼくのものになって




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20160721

心中の道連れ 18
ギョンスの囁きと、化粧品会社のロゴが一緒に、俺の前から去って行った。
俺は口に突っ込んだ歯ブラシのヘッドの横から、歯磨き粉が伝い落ちていくのを感じながら、耳の奥で澄んだ低音が反響するに任せていた。

ぼくのものになって

それは呪文の如く俺に作用して、自分自身が体から抜け出、すべての現実がいっきに遠くなった。
俺のことを見つめる、黒々と太い眉の下の、吸い込まれそうな球体。それは中心がとらえどころのない色と光で丸くかたどられ、俺を金縛りにさせる。
あの夕暮れのその眼差しと、今テレビから流れた言葉が、同じ意味を持って激しく俺を揺さぶった。
思い込み?
顎を伝う液がTシャツに飛び移ろうとしている。
太陽に染まったギョンスが、俺から一瞬も目を離さず、訴えかけてくる。
ぼた、た。
足と足の間にも歯磨き粉が落ちる。
途方に暮れ、しかしなにかが胸から口を通じて飛び出しそうになり、引き返せなくなる恐ろしさにやはり身じろぎできずにいる俺。やって来たジョンイン。暗くなった部屋。蛍光灯のあけすけな光。

ぼくのものになって

きみのものじゃない だって?

口から歯ブラシを抜き、急ぎ足で向かったキッチンのシンクに、口内のものを吐き出す。
何度も何度も口をすすぎながら、体の下から込み上げてくるなにかに圧倒され、俺はシンクに腕をついて体を支えた。顔全体を水浸しにして、息苦しさからくるめまいに耐えた。水の中に腕を掴まれて沈んでいき、どんどん酸素がなくなっていくようだった。腕を掴んでいるのは、もちろん、ギョンスだ。
流しっぱなしにした水道の音と、自分の喉がきゅうと詰まる感覚と、脳裏に浮かぶこちらを振り向く水中のギョンスの顔。俺は経験したことのない恍惚に包まれていた。恐怖と歓喜でますます立っていられない。

なに言ってるんだ

ずっと そうだったんだ

ーーー連れてってくれ

そう、思った。
目に映るギョンスが微笑んだ。



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20160721

心中の道連れ 19
もう、待っていられない。
CMを見てから、熱に浮かされたようになった俺は、仕事をこなし、それでも時間が遅々として進まぬことに必死で耐えた。
どんなに遅くなっても今日は、必ず帰って、会う。
そう決めていた。
演じていたあの若い女優の、そのもともとの薄い顔立ちがベッキョンと重なり、表情が示すひとつのことを俺に熱心に伝えてくるばかりだった。
待てない。
そしてやはり深夜になった帰宅で、そこのみにかろうじて灯された灯りを頼りに、俺はマネージャーと我が家のリビングに辿り着いた。
マネージャーは疲れ切っており、いつもどおり洗面所に向かってそのままベッドへ直行するようすだった。
機械的に就寝の挨拶を交わすと、俺は上着や鞄をソファに置き、冷蔵庫からボトルを取り出し水を一杯飲み干した。
耳をすませ、物音が完全にしなくなるまでそのままじっとしていた。
静寂が夜を包んだ。
黒い、黒い夜だった。
自分がそのなかに取り込まれてしまいそうな、夜だった。
今の俺はまっくろだ。
ひとりの人間に完全に支配され、目的を果たすまでどうにもならない。生きているとは言えない。
寄り掛かったシンクから腰を上げ、勢いよく、しかし慎重に歩き出す。
リビングから、それぞれの部屋へ続く廊下に出るドアを、開けた。


誰かが帰って来たのは分かっていた。
ベッドに横たわったまま、眠れず、寝返りを打ってはぐったりしていた。
遠くで玄関のドアが閉まったらしい音や、洗面の水を流す音などが聞こえ、俺は体を緊張させた。
ギョンスかもしれない、と思った。
勘と言えば勘で、希望と言えば希望だった。
あのCMを見てから、ギョンスの声と顔が離れることなく身内にあった。なすすべなく、それらが体を侵食するに任せていた。
携帯で連絡しようか、とも考えた。
でも、なんと言っていいか、分からなかった。
CM見たか?と打って、消した。
携帯でどうにかなる話なんかでないのだけはよく分かっていた。
なんとか今の状況を打破したいという強い意識だけが俺を覆った。
でないとどうにかなってしまう。
自分で自分を持て余すことがこんなにも辛いなんて、知らなかった。
きい。
目を閉じていた俺は、空耳かと思ったが、反射的に瞼を上げた。
ドアの音に、違いなかった。
体重をかけないよう歩く足音が、どんどん近付いてくるのが聞こえる。
心臓が破れそうな音を立てて、その忍び足の愉悦を消しにかかる。
ベッドの足元を回って、俺の体にそっと屈み込む影が見えた。
「ベッキョン」
声。
囁かれた、俺にのみ聞かせようとする、ぎりぎり声になった、声。
爪先からつむじまで電気が走り、俺はその影の中の瞳を探す。
「……ギョンス?」
見えた。
目の前に、今日ずっとともにいたその顔が、実在した。ぎらり、と目はかすかな光を捉えるのを忘れなかった。
ぐ、と布団からはみ出た腕を掴まれ、デジャヴが襲う。溺れる。
「…来いよ」
俺が昼間思ったことが、聞こえていたんだろうか?
そう訝しむような愚かしさを顔に出したままだろう俺を、ギョンスは安全な寝床から、有無を言わさず引っ張り出した。




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20160721

心中の道連れ 20《終》
ギョンスはベッキョンの手を取ったまま、クローゼットのある部屋へと入って行った。
3人分のクローゼットとなっているそのスペースは、ふたりでいるには多少窮屈だった。
ベッキョンはギョンスの考えを推し量ってひとりで赤くなった。そしてそんな自身を恥じた。
いちばん小さな灯りだけ点け、扉を閉めたギョンスがベッキョンを見た。
ベッキョンはぼさぼさの頭にその華奢な指を差し込みかたちを整えようとした。視線を外して。
ギョンスはベッキョンのパジャマから覗く繊細に、しかし鋭く浮いた鎖骨を見た。唇を湿して。
「……なあ」
その低音を耳にすると、ベッキョンは反射的に体温が上がる思いだった。
相手の顔を見れぬまま、「ん?」と口も開かず返事をした。
熱が出そうな気がしているのはベッキョンだけではなかった。
寝間着姿のベッキョンを久しぶりに目の当たりにしたギョンスは、そこからはみ出る首や指や爪先が否応もなく自分を襲ってくるのに目が回りそうだった。サイズが大きいパジャマの、肩が落ちたり裾が引きずられたりしているさまも堪らなかった。
俺は頭がおかしい。
本気でそう思った。
「……今日、テレビ、見たか?」
ベッキョンは思わず、顔を上げた。重い前髪の隙間からギョンスの目を見た。体を硬直させ、乾いた口で答える。
「……うん」
「……あの、CM、もう流れてるらしい」
瞬きのないギョンスの目は、ベッキョンを離さなかった。事実、逃すつもりなんか彼にはなかった。ベッキョンは捕食者に捕らわれているのを自覚しながら、言葉を絞り出した。
「……知ってる。…見たよ……」
がさついた声が、ベッキョンを悲しくさせた。ギョンスにこんな声を聞かせたくなかった。なぜだか泣きたいような気持ちだった。
「俺も見た」
そう言ってギョンスは、ベッキョンをそれまで以上に意識を込めて、見た。
ベッキョンは自分が今まさに泣くのではないかと恐れた。
ギョンスはベッキョンの垂れた眉と、表面張力で水分のぱんぱんに張った目と、ほのかに開いた唇に。
ベッキョンはギョンスの底のない瞳の光と、そこから伝わる意思と、力の抜けた、しかし膨らんだ果実のような閉じたままの唇に。
同時だった。
欲情が体を突き動かし、恋慕が動作に優しさを加味した。
互いの唇を貪りながら体に腕を回し、ふたりはひとつの影となった。
聞き取れるぎりぎりの大きさで、ギョンスがキスの合間、ベッキョンの目を欲に駆られた目で射ながら、「好きだ」と言った。
ベッキョンは垂れた溶けそうな目で見つめ返し、「死ぬ」と思いながら、「俺も」と答えた。
そうしてふたりはようやく、生きながら死んだのだった。




おわり




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